横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

★新春★【目に見える形でチームの若返り、世代交代が進んだのはエリク3年目の2017シーズン。編成により成された部分が極めて大きい事は明らかだ。過渡期、変革期ってヤツですか。だから2018年、2019年は激動のシーズン間違いなし。 by 蒼井真理】 about エリク横浜3シーズンの総括(3)

f:id:harukazepc:20170419105933p:plain蒼井真理

★新春★エリク横浜3シーズンの総括シリーズ


ここから先はデータや証言ベースでない、より主観的な印象論――つまり蒼井の「思い込み妄想、仮説」「こう考えると俺はしっくりする」「作られたストーリ」をテーマ連投するので、くれぐれも「ああ、そうだったんだ」と鵜呑みにしないで欲しいなと思う

思うだけで感じ方は強制できないが

■エリクの若手育成と世代交代

  • 実際どれだけ若手を起用育成し
  • チームの戦力とし落とし込めたか
  • カップ戦と練習試合
  • 世代交代は成されたのか

「(自分が監督を務めた3シーズンで)多くの若い選手たちが成長した。そのことが私にとって重要なこと。今の方向性を、是非これからも続けていって欲しい」エリク監督

エリク横浜、最後の試合となった天皇杯勝戦後の会見で

「若い選手が多く活躍したのは、エリクが監督だったからというのは大きいと思う。新しく監督を迎えるが、マリノスはまだ若い選手が多い。彼らをもっと成長させ、勝利に拘る監督を迎えるべく人選を進めている」古川宏一郎社長 エリク退任発表に際して

「私は(欧州基準の今後のベースとなる)プレイモデルをチームに落とし込む役割を与えられマリノスにやって来た。加えて若い選手がトップチームで試合に出られるようにする事も重要な仕事だった。なぜならマリノスは育成組織も充実しているクラブだから」エリク監督 退任発表に際して

・リーグ戦での若手起用実績

巷では「樋口は3年間レギュラ固定して若手をテストしたりチャンスを与えなかった」「そのためチームの世代交代は進まずそのツケをエリクが払った」「エリクは沢山の若手を起用し育てた」という論も多いが、果たして事実に即しているのだろうか?

樋口体制3年目の2014シーズン、23歳以下のリーグ先発はゼロ。24歳の佐藤優平がシーズン終盤に出場機会を伸ばし、10試合スタメン出場したのが目に付くぐらい(齋藤学も同年齢だが、学は既にレギュラ中軸選手)…ただこのシーズンのマリノスは編成自体が高齢化していた

背景として、前年2013シーズン最後までリーグ優勝を争い一歩届かず。2014は「世代交代」より、補強や起用も「実績重視、今季こそリーグ優勝」となったのも妥当。カップ戦もナ杯でなくACL天皇杯優勝もあり準備期間や日程含め、とにかく余裕がなかった

エリク横浜1年目の2015シーズン。23歳以下では喜田拓也(21歳)がリーグ戦20試合に先発。アンドリュー(22歳)が3試合に先発したのみ(アデミウソンは別枠だろう) このシーズンも即戦力が期待できるような補強や加入なく、ほぼ前年戦力そのままではあったが――

エリク横浜2年目の2016シーズン。22歳の喜田が25試合、朴正洙が12試合、前田直輝が7試合に先発。23歳の敬真が11試合、新井一耀が4試合スタメン。ユースから昇格した19歳の遠藤渓太が9試合に先発は特筆事項。多くの若手選手が、ナ杯GLでのテストとアピールを経て出場機会を得た

エリク横浜3年目の2017シーズン。新たに23歳以下でリーグ先発を伸ばしたのは、23歳ミロシュ25試合、ダビの15試合、前田直輝7⇒10試合、22歳イッペイ2試合の4人。朴正洙、敬真、渓太、新井一耀は前年よりリーグ先発機会が減少し、新井は夏にローン移籍を選択した(後に完全移籍)

その一方で2017シーズンはリオ世代24歳の両SBが新加入。松原健が22試合、山中亮輔が19試合にリーグ先発。決して年齢的に若手ではないのだが、26歳の天野純が33試合、扇原貴宏が18試合スタメン。オフに多くの中堅ベテランがチームを去った事もあり、相対的にチームの若返りは進んだ

――こうしてエリク横浜3シーズンの、リーグ戦における23歳以下の先発数を改めて検証し改めて実感するのは、チームの若返り世代交代に重要なのは「編成による新陳代謝」であり、与えられた戦力でやり繰りするしかない監督の果たす役割は極めて限定的である、という事だ。それに尽きる

◇選手の成長ステージ
1.ブレイクスルー(突破・進歩期)
2.デベロップメント(発展・成長期)
3.ピーク  (完成・到達期)
4.トワイライト(晩年・黄昏期)

2017新体制発表、利重チーム統括本部長(当時)のプレゼンによる定義

エリク1年目に若手で抜擢されたのは喜田拓也くらい。そもそも樋口体制を引き継いだ戦力に『デベロップメント(発展・成長期)』の選手は少なく、チームは『トワイライト(晩年・黄昏期)』『ブレイクスルー(突破・進歩期)』両極端の占める割合が高く “ベテランとヒヨコ” に偏っていた

2年目は、当然エリク自身も編成に参画し、自ら期待する『ブレイクスルー(突破・進歩期)』キャリアの乏しい選手たちに多くのチャンスが与えられた。しかし、それらの選手でエリク3年目も出場機会を伸ばし、来季以降もチームに在籍する選手は残念ながら、極僅かである

3年目は『ピーク(完成・到達期)』を過ぎ『トワイライト(晩年・黄昏期)』を迎えた選手たちが多くチームを去り、チームに不足していた伸び盛り『デベロップメント(発展・成長期)』の選手たち(ミロシュ、松原、山中、扇原)が加入する編成が成され、彼らは4人ともリーグ18試合以上に先発した

3年目はエリクにとっても1つの区切り決算期であり一定の結果を求める。ACL圏内、カップ戦タイトルという目標も掲げた。“ヒヨコ” のまま計算出来ない、結果を出せない選手はリーグ戦の出場機会を失う(それはリーグ終盤の喜田も然り)天野純は自力で『発展・成長期』まで歩を進めた希有な例

目に見える形でチームの若返り、世代交代が進んだのはエリク3年目の2017シーズン。だが振り返れば、それはエリクの若手起用育成よりも、編成により成された部分が極めて大きい事は明らかだ。「監督は与えられた戦力でやり繰りする中間管理職」という前提は忘れるべきでない

「年齢でサッカーをする訳じゃない」「世代交代は契約書でなくピッチで」「ポジションは与えられるものでなく奪うもの」その言い分も解るし、選手1人ひとりの心構えとしては大事な考え方だろう。しかし編成する側は、そうはいかない。世代交代は現場、監督主導では決して成されない。それが真実だ

「一定のスパンでチーム作りを考える中で、勝つ確率を追い求める作業と育成の割合(折り合い)をどのようにつけるかが、私たちフロントの役目。極端な話、現場主導では世代交代は進まない。フロントが強く意識しなければダメ」鈴木満 鹿島強化部長

「監督から様々な要望を出されたとしても、チームとして若手を育てたいと思うなら、言い方は悪いが “この選手しか与えない、彼らを我慢して使わざるを得ない” シチュエーションを作り出すのが最大の近道となる」鈴木満 鹿島強化部長

「敢えて層を薄くして育てたい選手が試合に出やすいシチュエーションを作る方法もある。戦力は選手層が厚ければ良いというものではない。選手を取れば全てプラスになるとは限らない。『いかに外すか』もチーム編成には重要なポイントで、現場任せにしてはいけない」鈴木満 鹿島強化部長

俺は本当に鈴木満が好きだなあ。

・カップ戦と練習試合

これ↑は若手起用育成、世代交代の本質でなく「手法」であり、本テーマの結論は書いたから蛇足でしかないんだけど。エリクの手法の特徴的な、前任者たちとの違いだからサラッと振り返り検証する

エリクは就任1年目から3シーズン共に「ミッドウィークのカップ戦」ナ杯ル杯GL、天皇杯の2~3回戦は、直近のリーグ戦からメンバほぼ総取っ替え。経験の少ない若手を中心に起用し、多くのルーキがデビュを果たした。そしてリーグ戦で出場機会を得られてない中堅ベテランはヒヨコのお守りに四苦八苦

ナ杯ル杯2年目は見事にGL突破を果たし「榎本哲也の大会」として私は印象深く記憶に残しているが、1、3年目はGL敗退。特に1年目は「入場料を取る公式戦で練習試合か」という批判も少なくなかった。私もそう思っていた

その一方で樋口監督時代までは慣習的に実施されていた「リーグ戦翌日のBチーム練習試合」は一切行われなくなり、リーグ戦で出場機会を得られない選手にとってアピールの場は非常に限られたものになった

選手たちからは「試合勘やゲーム体力の維持が困難だ」「アピールの場すら与えてもらえないのは精神的にキツい」という声もあった。樋口監督時代からの変化として、日々のトレーニングでも「レギュラ組とBチーム」を露骨に分け、Bチームは次の対戦相手のダミー役を務める時間が大幅に増加していた

「次の対戦相手のダミー役」なので、トレーニングでは本来のポジション、またレギュラ組に合流した際とは異なるプレイ、タスクを求められる事が多い。つまり日々の練習では「公式戦に出場するためのアピール」がそもそも困難。序列を覆すのは難しい――と選手たちが感じるのも止む得ない所

そして数少ないアピールの場、カップ戦も「リーグ戦の先発メンバから漏れたあぶれ者のBチーム」これまた本来のポジションで起用されなかったり、試合毎にポジションや隣り合うパートナが変わったり。そんな中で確かな結果を出さなければ、リーグ戦出場のチャンスは巡ってこない。基本、無理ゲーである

「私はチームの全選手を信頼している。出場する選手に求めるのはリーグ戦と変わらない、勝つ事だ。リーグ戦にも出たければナ杯でクオリティを示さねばならない。チームは若手が多いが、信頼して出場時間を与える必要がある」エリク監督 2016年

「練習試合やらない」「カップ戦は総取っ替え、経験値ゼロの若手起用」この手法に、私は1年目はかなり批判的だった。選手たちからも不満の声が多く聞こえた。しかし2年目から少しずつ考えは変わり、カップ戦に臨むBチームの選手たちの取り組みも変わった――というか「開き直った」

エリクは選手たちが「公式戦でどんなプレイができるか、結果を示すか」を見ようとし、要求した。選手たちも2年目には「例え無理ゲーでも、この限られた機会、カップ戦で結果を出さなければ」「いつまでも自分はBチーム、レギュラ組の練習相手」「先々チームに居場所はない」と思い知り、腹を括った

それがエリク2年目、3年目のカップ戦におけるBチームの躍動感や思い切りあるプレイに繋がり、2年目はGL突破と若手のリーグ戦出場に、3年目はギリギリ突破はならずも、Bチームの勇気ある挑戦的なプレイが不振のレギュラ組にも好影響を与え、扇原や山中亮輔はリーグ戦出場の足掛かりを得た

振り返ってみれば、樋口監督時代「リーグ戦翌日の練習試合」で私は常に同じ不満を抱いていた。「相手がアマチュアだから、本気でやってない」「ただ “こなしている” だけ」「こんなんでレギュラ奪取のアピールになるものか」と。頑張る選手はいつも特定の選手ばかり(喜田とか奈良輪とか)

だから「練習試合やらない」「カップ戦は総取っ替え、経験値ゼロの若手起用」「そのカップ戦で結果出さないと先はない」エリクの手法は、若手を中心に危機感とハングリーさを植え付けたし、功罪半ばしつつ「少なくとも今のマリノスと選手たちにとって」必要な変化だったと、2年目以降は評価している

「練習試合」や「カップ戦」はアピールの場であると同時に「リーグ戦に出てない選手たちの調整・ガス抜き」の側面がある。エリク以前は、練習試合をなんとなく「こなして」やってる感だけ得て、この日々を続ければいつか試合に出れるかなあ――悪い意味の「ガス抜き」になっていたのでは、と

もちろんコレについては「手法」に過ぎず「結果論」な部分も大きい。2年目にBチームの選手たちが奮起し、GL突破という結果を出したから言える事でもある。その意味で、俺は今でもあの2016シーズンル杯の榎本哲也を格別に評価し、感謝している

今季アンジェ新監督が、若手に対しどんなアプローチをするのか。トレーニング形式は、カップ戦や練習試合の扱いはどうなるのか。全くエリクと同じという事はないだろう。非常に興味深く楽しみだ

中澤佑二と「伝統の堅守」の正体

妄想、思い込み度の高い連投。この1、2シーズンぼんやり考えてきた仮説が、現時点で自分を納得させられる形になったので書き記す

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「(中澤がチームを去る時がくれば)もしかしたらマリノスにある堅守のイメージが失われ、変革期に突入するかもしれない。それは凄く大事な事で、これからも堅守のチームを築くのか、違うスタイルにシフトするのか。シュンさんが昨季でいなくなり、佑二さんも抜けたら変わると思う」飯倉大樹

「今のチームは佑二さんの経験や遺伝子が継承されていて、その影響は凄く大きい。佑二さんがいなかったら、ここまで守備が安定する事はない」飯倉大樹

ほぼ形になってた仮説が「ああピッチレベルでも同じように感じてる選手がいる」と確証に至ったのが『TRICOLORE 2017冬号』の飯倉インタビュ。結構コレは真に迫るつーか際どい内容だから(しかもインタビュアの欲しい答えでなく飯倉の素が吐露されてる)丹念に読み返すべき

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140試合連続フル出場を達成したアウェイ大宮戦の選手評で私は、「中澤佑二は堅守の顔ではない。“堅守そのもの” だ」と記した。この表現はお気に入りで、その後も繰り返し使ったが――

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先に引用した飯倉の言葉。そして「堅守の顔ではなく」「堅守そのもの」が意味するものが、どれだけの人に届いているだろう。ただ中澤佑二の偉大さ貢献を賞賛しているだけではない。その裏側に「堅守マリノスの伝統」の正体が隠されている

2017シーズンのリーグ失点数は36。終盤に大量失点試合が続き、リーグ5位の数値となったが(最小は磐田の30失点)29節終了時でリーグ最小26失点。1試合平均1.0を切る「堅守」を仕切り支えていたのは間違いなく中澤佑二だった

樋口、エリク体制の通算6シーズンの平均失点数は33.2。1試合1.0以下で、常にリーグ最上位の失点数を記録。その6年間、中澤がリーグ戦を欠場したのは1試合のみ。2013年の14節からフルタイム出場を継続。エリク曰わく「私が指揮した3年間、1度もトレーニングを欠席していない」

来月には40歳の大台を迎え、自身「ラスト」と定めるシーズンを迎える中澤を人は「鉄人」と呼ぶ。しかしそんな生易しいものではない――あれは鬼だ。化け物だ。人外だ。普通ではない。一体何がそこまで、彼のモチベーションを保っているものは何なのか。凡百の理解や想像の範疇を超えている

樋口、エリク体制の6シーズンのリーグ戦ほぼ全てにフル出場した中澤佑二。一方でCBの相方は勇蔵、ファビオ、ミロシュ、朴正洙と変わりGKも哲也と飯倉が交互に務めた。勇蔵と組む時は左CB、ファビオ以降は右CB。隣り合うSBも変化し続けた

変わり続ける周囲の中で、中澤だけが変わらずそこに――マリノスのゴール前に立ち塞がる “鬼神” で在り続けた。6シーズン平均 33.2失点の数値が証明する「堅守マリノス」を支えた、最も貢献したのが中澤佑二である事に異論を挟む者はいまい

――さて、そこで諸兄に問いたい。「堅守マリノスの伝統」とは何か? あらゆるものが移ろい変わり続ける中で「変わらなかったもの」が堅守の正体ではないのか。「堅守」とは “マリノスの伝統ではなく “中澤佑二そのもの” ではないのか

2017シーズンも、中澤はCBのパートナがファビオからミロシュや朴正洙に変わり、右SBが堅実そのものであった小林祐三から若い松原健に変わり、GK含めDFラインに大きな変容があった中で、シーズン終盤までリーグ最小失点を維持した。堅守とは伝統ではなく、中澤佑二そのものではないのか

堅守「それは引き継がれ、受け継がれたものだ」と言う人もいよう。では中澤と同期加入で、16シーズンと日々のトレーニングを共にし公式戦でもCBを組んできた栗原勇蔵は、中澤が不在の試合でミロシュや朴正洙と組み「堅守」を体現できただろうか?

16シーズンの年月を共にしても、勇蔵は中澤の真似事すらできていない。堅守の象徴足り得ていない。だがそれは勇蔵が無能なのではなく、「堅守」の正体は伝統ではなく「継承が不可能」なのだ。堅守とは、中澤佑二そのものである

今のマリノスの「堅守」とは中澤そのもの、言うなれば「中澤システム」だ。中澤が長い年月を掛けて培った経験、個の予測や対応力をフルに活用し、同時にそれをチームの中で「最適化」し、チームの守備力と失点防止に落とし込む――

中澤にも得て不得手はある。アジリティ、反転力、スピードの不足は元からで年々少しずつ劣化も進んでいる。それらも全て織り込み、周囲にもそれを補完する働きを要求し、自らの持つ力と経験を最大限にチームのため還元し最適化する「中澤システム」

故に、栗原勇蔵は「中澤の最高のパートナ」1つひとつ説明や要求をしなくても、阿吽の呼吸で分かり合える――にはなれても、中澤佑二つまり「堅守そのもの」には “なれない”

中澤はシステムの中枢CPUであり、周囲が変われば時間を掛けて「自分の形に合わせさせる」事はできる。その逆はない

「監督が求めるものと、ピッチの中でやっている事に食い違いがあった。まずは監督が求める事をやるのが選手だし一番大事。でもマリノスの色もあるし、チームのサッカーもある。そこの部分で戸惑いはあった」松原健

↑コレは今季初の対外試合、アジアチャレンジで新加入の右SB松原健が試合後に残したコメント。私は一読して「ああ、中澤のことだな」と思った。“マリノスの色もあるし、チームのサッカーもある” それは中澤システムだと

「(戸惑う部分については)ベンチからの指示も気にしつつ、気にしないでやっていたw 良い意味で聞き流すというか」松原健

――この松原健の判断は正しい。マリノスのDFラインにフィットするという事は、“中澤佑二に合わせる” と同義だ

中澤が自らの経験と洞察から培った「中澤システム」は、部分的に現代サッカーのトレンドやゾーンディフェンスの定石、エリクの提示した「守備のプレイ原則」と食い違う。だから新加入の(特に隣り合うCBとSBは)最初フィットするのに時間を要する。パンゾーすらそうだった(後に見事に最適化したが

ただ、それは「中澤が監督の指示に従わず自分のやりたいようにやってる」訳ではない。監督の要求とも擦り合わせ「それでも自分のやり方のほうが失点を防げる」という確信の下に、部分的に自己流の手法――中澤システムを使い周囲にも同調を求めている

歴代の監督にしてもエリクも、その有用性を認めればこそ、中澤はフル出場を続けるし、エリクは退任に際し手放しで最大級の賛辞と感謝の言葉を中澤に残した。堅守とは、中澤佑二である

なまじサッカーの戦術的な知識のある人ほど「中澤はビビってラインを上げない」「ゾーンの基本ができていない」などと腐すが、実際マリノスの失点はほぼ常にリーグ最小レベルだ。無論、そのために「捨てている」出来ていない部分はある。しかし監督が起用し続ける、その意味を今一度考えて欲しい

かつて中村俊輔マリノス在籍時「ボンバー1人でシーズン10失点くらい防いでいる」と中澤を評した。アレは誇張でもなんでもなく、中澤の凄みと「マリノスの堅守とは中澤佑二である」事を表現したものだ

堅守マリノスは「伝統ではない」「継承されない」に異論もあろう。しかし、マリノスの歴史を振り返れば

井原正巳
松田直樹
中澤佑二

この3人が「堅守」だった。25年の歴史で、たった3人。この3人の規格外の人外が、堅守マリノスの伝統――という幻想を作り出した

井原正巳松田直樹中澤佑二。それぞれ少しずつピッチに立つ時間を共有しているが「継承」があったと私は思わない。むしろ「新たな堅守」が「旧い堅守」を蹴落とし、自分を中心とした守備組織を構築してきた。周囲を従える「堅守」は基本、並び立たない

――マリノス晩年の井原には、僅かながら「3バックセンターに陣取る松田直樹に使われる」時期があったように思う。それが出来たのも、彼の懐の深さであったようにも

松田直樹井原正巳から、中澤佑二松田直樹から。「コイツからレギュラ奪えば俺は代表CBのレギュラだ」と考えて、マリノスに加入している

ある時期――松田がDFラインで起用されなくなり久しい頃だったと思うが「もう松田とは組みたくない」と中澤が言った――伝聞の伝聞なので、真偽も真意も不明だが、DFリーダの座を奪い、自らのシステムを構築し始めていた中澤の心中は推し量れないものではない

なんとすれば松田直樹は、歴代3人の中で、最も「独特の直感と感性に従いセオリー無視で守り、周囲にも自分に合わせる事を強く要求する」人外であり、良くも悪くも最も天才的だった

堅守とは中澤佑二であり、堅守マリノスの “伝統” とは井原正巳松田直樹中澤佑二であり、彼らを中心としたシステムだ

小村徳男は井原と松田の、勇蔵は中澤にとって「最高のパートナ」であったが、堅守そのものではない

では中澤佑二が、3代目の「堅守」が今季限りでの引退を表明している今、それは誰が継いでいくのか――

「もしかしたらマリノスにある堅守のイメージが失われ、変革期に突入するかもしれない」

飯倉の言葉が解だ。堅守マリノスの伝統は「3人の人外と彼を中心としたシステム」で、継承されない

「クラブは今年創設25周年だが、これだけ長い年月積み重ねたスタイルだけに変わるとなれば痛みや苦しみを伴うと思う。それをクラブとしてどう考えていくか。これからの10年、20年は凄く大事になる。僕自身、楽しみであり不安でもある」飯倉大樹

――飯倉は「堅守マリノスの伝統継承」についても、こんな回答をしている

「日本のサッカースタイルは育成レベルから年々変わってきている。最近のCBにはポゼッションへの貢献要求も高まる一方で、マリノス伝統のゴールを守る強さ、1対1や空中戦の強さとは少し方向性が異なる。だからマリノスの伝統を継承していく事が正解なのか、少し難しい部分もある」飯倉大樹

マリノスの伝統というより、中澤佑二のDNA。同じ手法、スタイルを次の世代の選手に求めるのが正解か――? たぶん飯倉は分かっている。継ぐ事を目指すべきでないし、そもそも継承など不可能だ、と。だからマリノスが大きく変わるのは間違いない。楽しみであり、不安でもあると。

全く同感です

この妄想、思い込み連投で何が言いたいかといえば「個か組織かの二元論」など陳腐である、という事だ。そういった狭い問答を遥かに超えたところに――

中澤佑二という鬼は 立っている

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あれ?「エリク横浜3シーズンの総括」関係なくね? 中澤さんの話しかしてなくね?

…まあでもね、中澤さんはそんだけ特別なんスよ。部分的には、中澤在りきの中澤システムで、プレイ原則の落とし込みできてないとこもある訳で

過渡期、変革期ってヤツですか

だから2018年、2019年は激動のシーズン間違いなし。今年も来年もマリノスから一瞬も目が離せませんね!