横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

★新春★【タイトルの夢が潰えた終盤戦も、柏戦の前半は今季ベストの内容であったと思うし、学の長期離脱を受けた吹田戦の渓太の決勝ゴールは感無量で1人バクスタでさめざめ泣いた。首位鹿島戦の勝利も含め、3年目のエリク横浜、2017マリノスは最後まで投げ出さず、前を向き続けてくれた。私は誇らしく思う by 蒼井真理】 about 2017シーズンのリーグ戦総括

f:id:harukazepc:20170419105933p:plain蒼井真理

エリク横浜のラストゲーム、元日決勝の前夜大晦日に『2017シーズンのリーグ戦総括』を連投*1

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【基礎的なデータ】

17勝8分9敗 得45失36+9 勝点59 5位

優勝した川崎と勝点13差。ACL圏3位C大阪と4差。4位以内DAZNマネーも獲得ならず

45得点はリーグ8位
36失点はリーグ5位
得失点差+9はリーグ7位

◾前半戦 10勝2分5敗 得22失14+8 勝点32
  • 先制できた試合○○△○○○△○○○○○
  • 先制された試合●●●●●
  • スコアレス試合なし

先制した試合は10勝2分、先制されると全敗。昨季から続く「先制点次第」な傾向は強調。8~10節に3連敗、13~17節に5連勝

◾後半戦 7勝6分4敗 得23失22+1 勝点27
  • 先制できた試合△△○○○○△○○●●△○
  • 先制された試合●●△
  • スコアレス試合△

先制した試合は7勝4分2敗。昨季から続く「先制すれば無敗」記録が終盤に途絶えて連続逆転負け。先制した試合そのものは、前半戦より多かった

◾通年
  • 先制できた試合 17勝6分2敗
  • 先制された試合 0勝1分7敗
  • スコアレス試合 1分

先制された試合は8戦勝ち無しだが「先制できた試合」を昨季の14から25試合に大きく伸ばして総勝点と順位を上げた。一方で目標に届かなかった原因は後半戦の先制できた試合での取りこぼし

◾️単純な勝敗データからの総括

昨季は先制できた試合が14戦無敗、先制された試合が18試合。昨季総括で「先制できる試合を増やしたい」「0ー0展開を主体的にコントロールしたい」と書いたが、その通り先制した試合を25試合と大幅増、勝ちパターンを確立した事が中盤戦の無敗期間に繋がる


【2017シーズンを3つの時期に分ける】

  • 序盤 1~12節
    「若さ勢い好発進も壁に直面し模索」
  • 中盤 13~24節
    「先制勝ちパターン構築し無敗街道」
  • 終盤 25~32節
    「頂に挑むも敗れて負傷者も続出」

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◾序盤 1~12節

「若さ勢い好発進も壁に直面し模索」

開幕戦で浦和に劇的勝利。札幌戦はダビとウーゴが連続ゴールの好発進。学を欠いて鹿島に敗れ、凡ミスから新潟に取りこぼし、長居で何の手応えもない不甲斐なき敗戦。俊輔を擁する磐田に意地を見せ、広島にセットプレイ一発で辛勝⇒

⇒8節から柏、吹田、鳥栖に無得点で3連敗。甲府には伏兵金井のセットプレイ得点で1ー0勝利も、仙台戦は今季ワースト2なダメ試合で勝点1を拾う

リーグ序盤12試合は、意義深い勝利と不甲斐なき敗戦が混在。内容は継続的な上積み前進が乏しく「若いチームらしい」勢い頼み、安定感を欠いた

◾中盤 13~24節

「先制勝ちパターン構築し無敗街道」

学が不在でマルティノスを左WHに置いた13節 清水戦が大きな転機。伊藤翔の負傷を受け途中出場したウーゴが2節以来の2ゴール。決定機3:8もストライカの「決め切る力の差」で勝利し、チームに大いなる勢い⇒

⇒今季ホーム最多動員の川崎戦に勝利。瓦斯、神戸、大宮も下し今季最多の5連勝でリーグ前半折り返し首位と勝点4差。特に瓦斯、神戸、大宮との3戦は「攻守の主体性」内容的な積み上げとチャレンジも感じられ進化の手応え。充実のシーズン中盤期⇒

⇒続く広島戦、サマーブレイク挟み清水は先制しながら連続ドローで勝点を落とす。若さ拙さを露呈も、新潟、札幌、鳥栖に3連勝。神戸と今季唯一のスコアレスを挟み、瓦斯にも1ー0勝利

5試合連続完封、14戦無敗で首位鹿島と勝点5差の2位。挑戦者の権利を賭け、3位川崎との一戦を迎える

中盤 13~24節「先制勝ちパターン構築し無敗街道」において

  • リーグ戦のレギュラ組に先んじ
  • ル杯Bチームが勇気と開き直り
  • 挑戦者としてのマインド示す
  • その中から山中亮輔や扇原が
  • リーグ戦でも出場機会を得て
  • 大きな貢献と存在感を示す
  • 天野純やウーゴも価値あるゴール
◾終盤 25~32節

「頂に挑むも敗れて負傷者も続出」

“リーグ優勝を口にする資格ありや?” 大一番の川崎戦に完敗。柏戦は反発と反骨を示し素晴らしく挑戦的な前半と学の初ゴールも、終了間際のFKに泣く。リーグ最小得点の甲府に3失点、学が長期離脱。リーグ優勝の夢はほぼ潰える⇒

⇒それでも吹田戦「理屈抜きで勝たねばならない試合」に渓太の決勝ゴールで勝利。先制された大宮戦を勝ち切れず、勝点12差に開いた首位の鹿島戦は2点リードを追い付かれたが再び渓太の決勝ゴールで勝利し、意地とプライドを示す⇒

ACL圏とDAZNマネーの可能性を残すラスト4試合。磐田とC大阪に2試合連続で「先制するも逆転負け」仙台戦も先制から逆転許すも幸運なドロー、浦和に勝利してシーズン5位でリーグ戦終了。目標に掲げたACL圏とDAZNマネーの獲得ならず

「先制すれば抜群に強い」エリク就任1年目2015シーズン7月、2nd5節の清水戦で大前元紀の2ゴールに沈んで以降、今季エコパで逆転負けを許すまで、先制した42試合で33勝9分無敗。エリク横浜の勝ちパターンは明確、今季は更に強調され先制しゲームコントロールする試合を増やした

終盤失速しリーグ優勝争いから脱落、ACL圏にも届かなかった理由。チームに足りなかったものは何か。ようやく上向きかけた学の長期離脱、マルやウーゴの離脱、得点力と前線タレントの不足。それらは確かに大きな理由だが、中盤の無敗期間の「勝ち方の偏り」にも私は不足と不安を感じていた

「先制すれば抜群に強い」中盤の無敗期間の特に後半、その成功体験を積み過ぎた

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「先制すれば抜群に強い」その “勝ちパターン” を繰り返し確固としたものにする中で、その成功体験に縛られる

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最初は「先制するため」前半から主体的にリスクを冒し得点を奪いに行こうとしていた。過去のマリノスにない攻守に「前から前へ」の姿勢があった。だが「先制して勝ち切る」勝ちパターンを繰り返す中で、次第に「先制される」事への警戒と怖れが強くなる

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勝利する事、それにより自信を得る事、勝ちパターンを獲得する事は決して悪くない。それによって「上手くいかない前半」も焦らず堪える事もできる。そうやって中盤期間は無敗を積み重ね、首位との勝点差を縮めた

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だが「先制すれば強い」勝ちパターンを繰り返し、それ以外の勝ち方を経験できない中で「先制する、先制されない事」が “手法から目的に” すり変わる。それは自信でなく「前から前へ」の勇気を奪う足枷「前半は堪え忍ぶ」自分たちを正当化するようになる

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瓦斯、神戸、大宮の3戦で「マリノスらしくない主体性、進化の兆し」も、中町や扇原の「前から前へ」の姿勢とDFライン統率する中澤の意識には僅かな齟齬があった。広島、清水戦で先制するも追い付かれ取りこぼした後の、5試合連続完封。そして迎えた川崎戦

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絶対エース学がゴールから見放され、警戒され互いにコンパクトな前半は打開もできない。敬真もフィニッシュの型を見いだせず、攻守ゴール以外での貢献乏しいウーゴが次第にスタメン定着。「前半は堪え忍び後半勝負」の傾向を後押したのは、決して1つの理由ではなく、中澤の臆病さや怠慢でもない

――以下に川崎戦●0ー3の翌日の備忘録の一部を引用する

蒼井真理(@aoi_mari)/2017年09月10日 - Twilog

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『気持ち的に受け過ぎた。積極性が足りなかった――確かに内容と結果を振り返れば、その通り。でもホームでの2ー0勝利も14戦無敗も5連続完封も「そのやり方」ゲームプランで積み重ねた結果。成功体験は人の心を縛る。それはある程度、仕方のない事でもある』

『広島と清水に、先制しながら追い付かれた。続く新潟戦と札幌戦は反省を生かし2点目を奪い勝ちきった。しかし鳥栖、神戸、瓦斯の3試合で2得点。決定機の数も減少傾向に

「ゼロに抑え守り勝つ」「前半が無得点でも焦らない」勝ちパターンやゲームプラン、成功体験と心理形成は背景にあった』

『川崎戦を迎えるまで14戦無敗、5連続完封、2位にいたのはマリノスが今季ここまで積み重ね積み上げてきた確かな成果。「前半耐えて我慢して後半カウンタで」を軸に、でもそれだけでなく自陣ビルドも個に依存しないものを少しずつ積み上げた。昨日の川崎相手にはまだ足りなかったのは確かだけれど』

『チームとして何かスタイルや強み、寄りすがる勝ちパターンやゲームプランを持ち磨き上げる事は「長いリーグ戦で継続性ある強さと成長」のために不可欠。それは監督の趣向や志向より前に、中心選手の強み弱みスタイル志向に強く影響され依存する。だからチームの明確な方向性、編成が大事』

『ベースとなる志向と方向性、課題はずっとブレなく変わらない。中澤や飯倉を中心とした堅牢な守備、両翼マルや学を生かした縦に速い攻め。それだけでは引いた相手を崩せないので、ビルド&ポゼッション、ラスト1/3のコンビネーションや個々の打開と決定力も求めていく――ベース部分も課題も明確』

『シーズン半ばを過ぎ14戦無敗期間、首位と勝点5差の2位に押し上げた「強みと勝ちパターン」は耐え忍ぶ堅守ベース。中澤や飯倉が中心となり、扇原や山中ら周囲の意識ベースも引っ張り上げて、勝点を得るための確かな強みとなった。全方面でなく、その部分が突出した感は確かにある』

『チームのメンタルが守りに、受動的になってしまった川崎戦の結果だけみれば、大きな課題や反省点、あるいは「方向性の誤り」に見えるかもしれない。その側面はある。無敗期間も、中澤の「内容より結果」発言や内包するリスクに対し何度か指摘した。2013年の失敗を繰り返すべきでない、と』

『だがチームのスタイル志向「強みや勝ちパターン」はチームと監督の理想よりも、中心選手に引っ張られ依存する。極論「できる事しかできないし、できない事はできない」。甲府や新潟がバルサみたいなポゼッションスタイルを志向し勝てるか、川崎がマリノスのような堅守ウノゼロ志向し勝てるか、と』

1位 鹿島 40得点 20失点
2位 川崎 48得点 27失点
3位 木白 39得点 24失点
4位 桜大 50得点 28失点
5位 横浜 31得点 20失点

『25節終了時、得点は7位タイ、失点は1位。実に分かりやすく得点力は足りず、拠り所となる強みは確実に堅守にある』

『アレもコレも出来る、主導権を握るための型や勝ちパターン、ゲームプランが複数あるのが理想ではある。しかしソレは難しい。完成度や実効性が40点のゲームプランが3つも4つもあったところで、待っているのは残留争いだ。まず1つ「確かな強み」を獲得する。勝点を積み重ねるため、ほぼ不可欠』

『「もっと主体的にアグレッシブに」「前半0ー0でOK我慢の展開じゃなく」「点を奪いに行こうぜ」その心意気は良しとしても、まあ実際取れてない。取れないから堅守ベースになる。より高い位置での攻撃のためのボール奪取や、攻めに人数と厚みリスクを掛ける事を避ける⇒ 更に得点力は低下する』

『チームの強みスタイル方向性は、中心選手の働きに強く影響され依存する。大雑把に言って2017マリノスの中心は齋藤学中澤佑二であり、今季ここまで2人の残し示した結果が、今の強みスタイル方向性を形作っている。それが全ての説明ではないが、小さくない要素である事は疑いない』

『繰り返すが、実効性が40点のスタイルやゲームプランを複数持っても勝点は積み上がらない。1つだけ愚直で(先制されると詰み、のような)穴があったとしても85点の「勝ちパターン」があれば、運がよければシーズン終盤に上位争いもできる。それが今のマリノスだ』

『「それだけじゃダメだよね」「ロングカウンタ両翼頼みでなく攻めのバリエーションも増やさないとね」「ビルド&ポゼッション、コンビネーションからの崩しも磨いていかないとね」ソレは皆が分かっていて、取り組んで、まだ道半ば。ここまでやってない訳じゃない。まだ強くない、それだけの事』

『攻守で守の部分の中心である中澤が「とにかく引いて守って耐えてりゃいいんだよ」「ラインとか押し上げねーよ」とか言ってミスリードしてきた訳じゃない。「現実的に今はコレが正解」「内容より結果」と言いつつも「コレじゃダメだ」「強い相手には勝てない」と無敗期間も、変わらず言い続けてきた』

『だから何も変わってないしブレてない。2017マリノスのベースも方向性も拠り所も課題も、進むべき道も、やるべき事、やり続けなければいけない事も。何も間違ってない。川崎に勝てなかったのは足りなかったから。まだ強くないから。だから、もっと強くならなきゃいけない』

『自陣からのビルド&ポゼッションは昨季終盤の天皇杯から、今季の序盤に停滞期もあったけど年単位のスパンでは確実に右肩上がりで積み上がっている。より強い圧力に対する精度やリスク管理はまだ不十分、それも課題で伸びシロだ。もっとできる。やらなきゃいけない』

『引いて受けて我慢する守備は、中澤と飯倉が中心に支え、松原や扇原や山中らも感化してチームとしての強度と責任感を高めた。「相手が弱かったから」だけで戦力拮抗するJ1で5試合連続完封は絶対できない。マリノスは堅い。修正すべき課題はあるが、昨夜は大島僚太小林悠を誉めてあげよう』

『一方で「攻めにつなげるための能動的な守備」「前からハメて狩り奪う守備」「攻⇒守トランジションを迅速に奪い返す守備」は、リトリート優先にしてきたツケもあり進捗が乏しい――ぶっちゃけほぼ皆無だ。コレも少しずつ積み上げていかねば。やらなきゃいけない』

『得点力。今は逆算がスゴく難しい。エースFWのウーゴの得点パターン、ゴールする型が「クロスに対しエリア内でマーク外しワンタッチ」正直コレだけなんで、如何に良質のクロスを供給するか。単純に放り込むだけでなく、ウーゴがDFの視界から一瞬消えるための一手間やお膳立ても必要』

『後半勝負ならウーゴはベンチに置いておきたいし敬真を露払いとし70分まで限定守備と相手CBの駆け引きをやらせ疲弊を誘い「勝ちパターン」に誘導するのが吉だが、2人がそれを腹の底から受け入れられるか。エリクも非情に徹せられるか。なかなか難しい問題ではある』

『ぶっちゃけ「前半耐えて後半勝負、堅守速攻だけ」でリーグ優勝するには現状のFWの質では難しい。ウーゴはハマる形があまりに限定的過ぎ、ロングカウンタで独走して決めきる型がない。その強さがFWにないと、今のマリノスの強みスタイルだけでは限界がある。攻めの幅と厚み、変わらぬ課題』

『アウェイ川崎戦0ー3は完敗で力が足りなかった。誰かや誰がじゃなく、今のマリノスが今の川崎に及ばなかった。得られた反省課題は新しいものでなく、ほとんどが繰り越す課題。だから間違いじゃない。方向性、目指すものは変わらない。まだ出来てない。だから、出来るようになるしかない』

――アウェイ川崎戦●0ー3備忘録のコピペで 2017リーグ戦総括が捗って仕方ない。手抜き感あるが、あの「17戦無敗、5連続完封からの大一番での完敗」は、後に川崎がリーグ優勝した事も含め今季のマリノスの積み上げ、強みと弱み、決定的に足りなかったモノを全て包括し象徴している

川崎戦からのリーグ終盤10試合は3勝2分4敗。再び「挑戦者」の気概を見せたが、前線の負傷離脱も重なり負けが先行。C大阪戦その「挑戦者」の姿勢が徒となり「シーズン台無し」な大敗となったが、それも止む得ぬ今季マリノスの現在地。「出来ないから敢えてやる」それを止める訳にはいかなかった

『まだ強くない。これからもっと強くなる。2017シーズン新しいマリノスは最後まで挑戦者であり続けなければならない。できなかった事は、全部が伸びシロで可能性だ。もっとできる。もっとやらなきゃ。言葉やフリだけでなく、もう一度日々のトレーニングから追い込んで行こう。超えて行こう』

『……いや全然強がりでなく、アウェイ川崎戦0ー3はそんな凹んでないっスよ。

昨日のマリノスはこんなもんだ。でも次のマリノスはきっとこんなもんじゃない。もっと強くなれると信じてる』

…極めて個人的には、アウェイ川崎戦の敗戦でリーグ優勝の夢は諦めた――というよりは、川崎戦が「リーグ優勝を口にする資格があるか」その試金石であると捉えていたので「やっぱりまだ足りないか」と再確認し、その上で「今のマリノスは強くなる過程」と割り切った

タイトルの夢が潰えた終盤戦も、柏戦の前半は今季ベストの内容であったと思うし、学の長期離脱を受けた吹田戦の渓太の決勝ゴールは感無量で1人バクスタでさめざめ泣いた。首位鹿島戦の勝利も含め、3年目のエリク横浜、2017マリノスは最後まで投げ出さず、前を向き続けてくれた。私は誇らしく思う

――続いて『TRICOLORE 2017冬号』の飯倉インタビュから、大いなる示唆に富んだ指摘を引用する

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「(中澤がチームを去る時がくれば)もしかしたらマリノスにある堅守のイメージが失われ、変革期に突入するかもしれない。それは凄く大事な事で、これからも堅守のチームを築くのか、違うスタイルにシフトするのか。シュンさんが昨季でいなくなり、もし佑二さんも抜けたら変わると思う」飯倉大樹

「今のチームは佑二さんの経験や遺伝子が継承されていて、その影響は凄く大きい。佑二さんがいなかったらここまで守備が安定する事はない」飯倉大樹

「クラブは今年創設25周年だが、これだけ長い年月積み重ねたスタイルだけに変わるとなれば痛みや苦しみを伴うと思う。それをクラブとしてどう考えていくか。これからの10年、20年は凄く大事になる。僕自身、楽しみであり不安でもある」飯倉大樹

――正に川崎戦の備忘録で指摘した『チームの強みスタイル方向性は、中心選手の働きに強く影響され依存する』部分であり、中澤佑二は堅守の象徴でなく「堅守そのもの」――彼を上回り従わせる程の個や組織の実効性を見いだせなかったから、強み弱みスタイル特徴は、今季も中澤佑二に引っ張られた

「日本のサッカースタイルは育成レベルから年々変わってきている。最近のCBにはポゼッションへの貢献への要求も高まる一方で、マリノス伝統のゴールを守る強さ、1対1や空中戦の強さとは少し方向性が異なる。だからマリノスの伝統を継承していく事が正解なのか、少し難しい部分もある」飯倉大樹

「ポゼッションのためのポゼッションを排し」「よりシンプルに縦に前に早く」の潮流の中で、俊輔が代表でもマリノスでも居場所を減じたのと同じように、堅守の伝統を支えたマリノスCBにも違う方向性がより強く求められていくのだろうか。エリクの3シーズンが、その過渡期にあった事は疑いない


【直近6シーズンの比較(エリク&樋口体制)】

2017 勝点59 5位 17勝 8分9敗 得45失36+9
2016 勝点51 10位 13勝12分9敗 得53失38+15
2015 勝点55 7位 15勝10分9敗 得45失32+13

2014 勝点51 7位 14勝9分11敗 得37失29+8
2013 勝点62 2位 18勝8分 8敗 得49失31+18
2012 勝点53 4位 13勝14分7敗 得44失33+11

今季はエリク横浜3シーズンで最多の勝利数と勝点を記録。樋口体制最終シーズンから、就任以来毎シーズン+8 増加したゴール数は-8で、1年目の数値に戻った。ファビオとパンゾーの移籍で増加が不安視された失点は-2。中澤と飯倉の貢献が光った

得点数に関しては、昨季チームトップスコアラ4名が大幅にゴール数を減らし、得点源として期待されたウーゴの「得点パターン」が極めて狭く限られ、コンディションも終盤まで安定しなかった中で、むしろ健闘した方ではなかったか。2桁ゴールを目指した富樫敬真が2ゴールに終わったのは残念な誤算

「日本に独自のプレイスタイルを持つクラブは多くないが、我々は自分たちのプレイスタイルを確立する事を目的にやってきた。ワイドにアタッカを置き、有効に使っていく。その中でインテンシティを保ちダイナミズムを生み出す――徐々にチームに浸透し、最初の2年より良い戦いができた」エリク監督

「今季だけ見れば勝率5割。悪い数値でないが、もっと勝ちたかった。我々はこの3シーズン、常にストライカに問題を抱えてきた。1年目はラフィーニャが怪我で、昨季のカイケは効果的なプレイができなかった。今季はウーゴが10点取ったが、フィジカル含めフィットするのに時間が掛かった」エリク監督

「得点源たるストライカは少なくとも個人で15ゴール取る必要がある。そういった選手が不在の中、チームの組織力だけでこの成績を収めたのは決して悪くない結果。監督の仕事は、選手のクオリティに依存する部分も大きい。3年目の成績とパフォーマンスは、ある程度満足いくものだった」エリク監督


【2017得点パターンと前年比】

セットプレイ直接 1得点(-1)
セットプレイから 11得点(-4)
PK        0得点(-2)

流れの中から   33得点(-1)

  • セットプレイ得点率26.6%

中町公祐5得点⇒ 中町公祐2得点
ファビオ3得点⇒ ミロシュ0得点

セットプレイはキッカー天野純の精度が批判されるが、昨季の中心ターゲットであるファビオが移籍しミロシュは空中戦が脆弱。中町も先発数とゴールを減じた中で、これも健闘した方ではないか

◾ゴール

ウーゴ  10得点
天野純  5得点(1FK)
マルティ 5得点
前田直輝 4得点
ダビド  3得点
中町公祐 2得点
金井貢史 2得点
富樫敬真 2得点
伊藤翔  2得点(甲府戦で幻1G)
遠藤渓太 2得点

◾2016得点上位4選手

齋藤学  10得点⇒ 1得点
中町公祐 6得点⇒ 2得点
伊藤翔  5得点⇒ 2得点
富樫敬真 5得点⇒ 2得点

26得点⇒ 7得点(-19)
総得点 53⇒ 45(-8)

昨季の中町や敬真が(あるいは学も)望外であったにせよ総得点ダウン止む無し

◾シュート本数と決定率

ウーゴ  58 14.9%
天野純  56  8.8%
齋藤学  54  1.9%
マルティ 42 11.9%
ダビド  21 14.3%
前田直輝 20 20.0%
伊藤翔  18 11.1%
松原健  17  5.9%

◾決勝ゴール

ウーゴ  4
前田直輝 2
金井貢史 2
遠藤渓太 2

ウーゴが得点した試合は8勝1敗。空砲が極めて少なく、決勝ゴール以外に貴重な同点ゴールも多いリアル・ストライカ。前田や金井の勝負強さ「持ってる」感も際立つ

◾アシスト

齋藤学  8
マルティ 6
天野純  5
山中亮輔 5
扇原貴宏 2

両翼とセットプレイ・キッカーのトップ下。山中亮輔の先発19試合で5アシストは立派な数値

◾ラストパス

天野純  59
齋藤学  42
マルティ 32
山中亮輔 24
扇原貴宏 20
金井貢史 15
ダビド  15
松原健  13
喜田拓也 13
中町公祐 13

やはり今季の攻撃をリードしたのは天野純と学、マルの3人。山中と扇原は限られた出場時間で存在感

◾スルーパスと成功率

齋藤学  72(50.0%)
天野純  50(56.0%)
マルティ 48(56.3%)
ダビド  36(44.4%)
金井貢史 30(20.0%)

学はドリブル突破だけの選手ではない。天野純の成功率、伏兵金井のスルーパス企画数にも注目

◾クロスと成功率

マルティ109(18.3%)
山中亮輔 82(20.7%)
天野純  70(17.1%)
齋藤学  61(25.0%)
松原健  53(13.2%)

今季リーグ戦アシストゼロの松原健よ来季こそ頑張れ

◾ドリブルと成功率

マルティ140(50.0%)
齋藤学 120(55.0%)
ウーゴ  57(26.3%)
ダビド  45(35.6%)
天野純  44(52.3%)

マルティノスのドリブル数と、学の成功率はリーグ1位

◾敵陣空中戦と勝率

ウーゴ  61(21.3%)
伊藤翔  49(42.9%)
マルティ 37(45.9%)
中澤佑二 32(56.3%)
齋藤学  28(35.7%)

ウーゴの圧倒的な敵陣空中戦の弱さ、ポンコツ振りが際立つデータ

◾自陣空中戦と勝率

中澤佑二 83(71.1%)
ミロシュ 71(49.3%)
中町公祐 44(54.5%)
松原健  42(42.9%)
扇原貴宏 38(52.6%)

ファビオ(今季133/68.4%)の後釜たとして獲得したミロシュの対空防御力の脆弱性は誤算の1つ

*1:本記事は、2017/12/31の投稿内容となります