横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【先制点という枷が重くのしかかる展開。正直言って、巡りあわせを呪うしかないような1日、この大事な時期に起こらなくてもいいのに by いた】 about [2017-J1-27] 横浜 2 v 3 甲府

f:id:harukazepc:20170419104133p:plainいた

巡りあわせが悪い、全てが悪いほうに転がってしまった。

こんな日もある、そう思うしか。

明治安田生命J1リーグ第27節
ヴァンフォーレ甲府 3-2 横浜F・マリノス @ 山梨中銀スタジアム
得点者:
甲府/11'&49'ドゥドゥ 81'pリンス
横浜/53'ウーゴ・ヴィエイラ 90'+5'イッペイ・シノヅカ
試合記録
www.jleague.jp


試合の印象

勝負の綾①「先制点献上」

天野純が身体を張ってボールをキープしようとするところで引き倒されたように見えるもノーファール、イーブンボールを扇原貴宏が滑り込み痛むもノーファール。

中盤中央2枚が置き去りになった中で、ミロシュ・デゲネクのアプローチを物ともせずドゥドゥがキープ、リンスへと繋ぐタイミングで中町公佑がインターセプトを敢行するも及ばず…。

中盤中央3枚のフィルタが完全に消え去った状況で、後手に回るのは必然。リンスに強烈なシュートを許してしまった状況はこうして作られた。

微妙な判定に関して、あれこれ言うつもりはない。判定が正しいと考えれば、天野純扇原貴宏も負けちゃいけないところで負けた、ということに尽きる。そして中町公佑のインターセプトの判断は「軽い」判断だったようにも思える。

このプレーにより、甲府は自信を深めつつ明確なゲームプランに移行する。横浜は疲弊した選手を抱えつつエネルギーを割いてビハインドを取り戻すためにプレーせざる得ない形に。おまけに失点を食い止めようと身を挺してカバーに入った金井貢史が負傷し、プレー続行が不可能となる不運まで重なってしまう。

試合の趨勢に大きな影響を与えた先制点、このハンディは疲弊した横浜にとって決して軽いものではなかった。

勝負の綾②「横浜の武器を封じる甲府の対策」

→柏戦で機能した"Y・M・O"による左サイドを崩すコンビネーション、当然甲府からしても脅威だったはずで、封じるための対策をきっちりと打ってきた。

インナーセンター(小椋祥平)がサイドに流れる天野純を、ウイングバック(小出悠太)が山中亮輔を捕まえ、ストッパー(新里亮)が齋藤学の進路を塞ぐ。それでも足りなければアタッカー陣も降りてくる。フリーマンを作られないように人を掛けて左サイドを封鎖。これがハマった。

本来であれば、ハイサイド齋藤学が一枚二枚剥がし、警戒を集める中でコンビネーションを繰り出せれば、捕まえられていたとしてもズレを生むことは可能だった。しかし、そのキーとなる齋藤学天皇杯4回戦で120分プレーした影響からかキレなく、対面の相手を剥がし、ズレを生み出すに至らず。

崩しのキーとなるべきメインウェポンを封じられたことにより、先制点という枷が重くのしかかる展開となってしまった。

勝負の綾③「ゲームを壊す失点に繋がる致命的ミス」

→幅を取り、相手を崩す意図をもって反撃に転じようとした後半立ち上がり、ウーゴ・ヴィエイラの裏への動き出しから鮮烈なアウトサイドシュートでご挨拶、さあここから!というところで致命的なミス。

ミロシュ・デゲネク、中町公佑、扇原貴宏が左サイドでボールを動かしつつ、楔を入れるタイミングを伺う中で、ミロシュ・デゲネクのワンタッチパスがズレてしまう。そのミスを逃さなかったのはドゥドゥ、前向きにパスをカットすると快足を飛ばして一気にゴール前まで運ばれ、最終的には飯倉大樹の脇を抜くフィニッシュ。これが決まってしまう。

前で受けるべき選手たちがなかなか相手を外せなかったこともある、パスは出し手だけの問題ではない。ただ、ほぼノープレッシャーの状態で後ろ向きのパスをミスするという事象に関しては「やってはいけない類のミス」であるのも事実。恐らく彼自身もわかっているはず。それ以上でもそれ以下でもない。

2日前に120分プレーしたミロシュ・デゲネクとパク・ジョンスのチョイスに置いて柏戦で90分プレーしていたことも考慮し、ミロシュ・デゲネクを起用するもその起用が裏目と出る結果に。このミスの直後、ミロシュ・デゲネクからパク・ジョンスへとスイッチしたのは明らかに懲罰的な形。最終ラインで交代カードを使うリスクを避けるための起用が、自らの首を絞める形となったエリク・モンバエルツにとってみても痛恨のセレクト。完全なる裏目

交代カードの消費、2点のビハインド、更に大きな枷を背負う形となり、本当に苦しい状況に追い込まれてしまった。


結果としては2-3による敗戦。

マルティノスを左に回すセカンドプランからウーゴ・ヴィエイラがリーグ戦9得点目を上げ、リーグ戦初出場となったイッペイ・シノヅカがセットプレーの流れから初得点を決めるなど、意地も示したが結果としては勝ち点を持ち帰るまでは至らなかった。

劇的な水曜日の歓喜の代償を抱えた中での1戦、難しいことは誰もがわかっていた。しかし、そんなことお構いなしに襲い掛かる負の連鎖、それを跳ね返すことは出来なかった。加えて、エース・齋藤学もエデル・リマとのコンタクトの瞬間に膝をひねり途中交代となるなど次の試合以降にも影響が残りそうな事象まで起きてしまった。まさに泣きっ面に蜂。今はただ、齋藤学金井貢史の負傷が軽いものであることを祈るばかり。

正直言って、巡りあわせを呪うしかないような1日、この大事な時期に起こらなくてもいいのに、と神を呪いたくなった。しかし、こんな日ばかりじゃない。諦めるにはまだ早いだろう?積み上げてきたことを振り絞って、もう一度。

今は前を向くしか。

【ビルド&ポゼッションの改善だけでなく、守備の強度と主体性の向上も意識したものであった訳だ。得られた課題に真剣に取り組み、見事に試合で実践して見せた。間違ってない。この取り組みとチャレンジする姿勢を継続しよう by 蒼井真理】 about 備忘録/選手評 of [2017-J1-26] 横浜 1 v 1 柏

f:id:harukazepc:20170419105933p:plain蒼井真理

等々力0ー3完敗から反発する素晴らしき勇気と意思の力。エース齋藤学の今季初ゴールでウノゼロ完遂目前にクリスティアーノの一撃。表と裏の前後半。ホーム柏戦1ー1の備忘録

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手元トータルスタッツ。シュート5:10(枠内2:3、エリア内4:5)決定機4:4。CK&FK5:4。前半の決定機3:0、枠内シュート2:0。後半は決定機1:4、シュート数0:7。分かりやすく前後半で表と裏。1ー1ドローは妥当だが、後半が防戦一方で全てダメだった訳でもない

「非常にインテンシティの高いゲームだった。前半ほぼパーフェクトな良いプレイができた。1ー0で折り返したのはロジカルな結果だが、もう1点取れていたのではないか。後半はボールを奪う部分が前半より難しくなった。カウンタから得点機会もあったが決め切れず、最後に失点してしまった」エリク監督

Q.攻撃が左サイドに偏り過ぎていたのでは?

「右サイドも左と同じぐらい攻撃できれば、もっと良いサッカーができると思う。この質問に関する答えはシンプルだ。左サイドは天野純山中亮輔という2人のレフティが上手く(齋藤学と)トライアングルを形成して機能している」エリク監督

「右サイドも左と同じように攻められれば理想的だが、現状は左サイドのようなトライアングルのバランスを作る事ができてない。もう一つの要因としては、マルティノスが周囲とのコンビネーションを使うよりも、個人のスピードや突破力で前に出て行くタイプの選手だという側面もある」エリク監督

ホーム柏戦 前半のシンプル総括

  • 川崎戦0ー3の反省も踏まえて
  • 攻守に主体的なチャレンジ
  • 勇気あるアグレッシブな姿勢
  • チーム全員の意思の力
  • 且つ左サイドの有機的な連動性
  • 3対2の局面を何度も作り圧倒
  • 先制点だけでなく多くのチャンス
  • 欲を言えばあと1点欲しかった

「前半、前からボールを取りに行けていたのは良かった。柏も『前から来るんだ』とちょっとやりづらそうで、前半はマリノスの時間帯が多かった。後半も崩された訳ではない。決定的なのはFKだけ。あの展開でカウンタに出ていけるチームになれば、2ー0で勝てるようになる」中澤佑二

「前回(8節 日立台0ー2)の完敗イメージはなく『前からいけば柏を相手にここまでできるぞ』というのは見せられたと思う。引いて守るだけでは、サッカーでは難しい局面に陥ってしまう。全員でハードワークして、勝つために疲れることを嫌がらずやれば、ここまで良い戦いができる」中澤佑二

――まず守備ブロック、ゾーンが高く相手のボールホルダに対しアプローチし圧力を掛ける、チャレンジする位置が川崎戦はもちろん過去のリーグ戦に比べても高かった。「リトリート、引いて待ち構え跳ね返す」守備でなく、より主体的に「前に出て奪いに行く」守備。全員の勇気と連動性

2ラインが背後を取られるリスクにビビらず、前の敬真と天野純が中央へのコースを限定、学やマルティノス、ボールサイドのボランチが前に出て(もう一方のボランチはバイタル監視)柏のサイド縦関係2枚を囲み圧力を掛ける。DFラインも勇気を持ち押し上げる(6分までにオフサイド2つ)

個人では前半、扇原の運動量とカバー領域、前に出て寄せ潰す迫力、富樫敬真の限定して終わりでなく「常にプレスバックで挟み込み背後から奪う」意欲と運動量が尋常ではなかった。柏も繋ぐスキルと連携は低いチームではなく、それを圧倒するには数的有利、ハードワークが必要。…その反動は後半に出たが

今週トレーニングのミニゲームや紅白戦で強調した「ハイプレッシャを去なすビルド、素早い攻守の切り替えとハードワーク」はビルド&ポゼッションの改善だけでなく、守備の強度と主体性の向上も意識したものであった訳だ。得られた課題に真剣に取り組み、見事に試合で実践して見せた

「今日は必ず勝たなければならない、という強い気持をもって臨んだ。前半から私たちのパフォーマンスのほうが相手より良かったと思う。それは激しさだったり、精神的な部分。最後のFKで同点にされて本当に残念」朴正洙

戦術やゲームプラン以前の「戦う姿勢、リスクにチャレンジする勇気、球際の気迫、ハードワークを厭わない責任感」中澤や朴正洙が指摘するように、まずその部分で川崎戦0ー3からしっかり反発して、言葉やフリでなくトレーニングから取り組み、ピッチで実践した。素晴らしい

「内容的には良かったが、勝ち切りたかった。川崎戦から切り替えて、今回はいろんな部分で上手くいっていたから、これを続けて次に臨みたい」飯倉大樹

今季リーグ戦、ここまで主体性ある守備をしてブロックを押し上げペースを握ったのは初。ル杯GL広島戦は更にイケイケな前からハメ込み奪う守備をやったが、アレとは相手の繋ぐスキルや完成度も雲泥の差。リーグ戦の痺れる上位対決、川崎戦0ー3の後に、雨の重いピッチでやれた事に意味がある

――左サイドの有機的な連動性。前半9分の先制点のみならず、14分と34分、37分、AT46分にも数的優位を作り出し好形、チャンス構築。柏の修正はハーフタイムまで成らず、やはり前半に2点を取り切り試合を決めたかった…

「相手チームも研究してきて、なかなか後ろのスペースを空けてくれないが、柏は前からプレスに来るので、SBとCBの間がすごく空いていた。そこで自分がパスを出して、叩いての繰り返しが効いたのだと思う」天野純

柏の右SH伊東純也とSB小池純輝に対し、学がタッチ際ハーフウェイ超えて前を向いてボールを持ち対峙。外を山中亮輔が回り追い越し、内側ハーフレーン(相手SBとCBの隙間)を天野純が出入りして、3対2の数的優位を作り出す。前半はこの繰り返しで何度もチャンス構築した

「前半、前と後ろで守備の意思疎通ができず、相手に上手くスペースを使われてしまった。何回か自分たちのサイドから崩されていたし、相手の齋藤選手、天野選手、ヤマに対し、自分とリュウ(右SB小池純輝)という2対3を作られていた。後半は修して、やられる回数は減らせたと思う」伊東純也

「最初は自分達のやりたい守備が出来ず、その時間帯に失点してしまったのは反省したい。前半、相手のペースで試合を始めてしまったことが要因だと思う。J(伊東純也)と自分の右サイドで数的優位を作られた中で、行くのか行かないのか後手を踏んでいた」小池純輝

アウェイ日立台での0ー2完敗では、安直にタッチ際の学に開き預けるだけで有機的なサポート連動が足りなかった。小池純輝は学との1対1に集中し、伊東純也がプレスバックしてサポート。学は一度も打開できなかった

しかしこの前半は、まずチーム全体が「前から前へ」の意識高く押し上げ、ボールを奪う位置や状況も良く、まず学が前を向きボールを持つ状況からして良くなったし、学は自信を持って仕掛けた。その時点で相手は受け身、後手。加えて山中亮輔天野純2人が適切なタイミングでサポートし、数的優位を構築

齋藤学の仕掛ける「俺は抜ける、相手はビビってる」自信と積極性。コレがないと精神的に相手を上回れない。前提として必要なもの。結果が出てない中で、学はこの試合で絞り出した。直近数試合より前を向きボールを受ける位置も頻度も高く、ミスを恐れず何度も縦にゴール方向に仕掛けた

山中亮輔の、学の外側を回り追い越す勢いスピードと絶妙なタイミング。エリク横浜に必要な方向性に合致した補強、チームのストロングであるWHを補完するSBの高い攻撃性、推進力。古巣相手に、自分の選択の正しさと価値を強く示した

天野純の相手SBとCB、ボランチの隙間に入り込むタイミングとポジション取りだけで後手や不自由な二択を強いる、ハーフレーンを出入りし、時に大外を回り受け叩くセンス。前半の柏は天野純を全く捕まえ切れなかった

『左サイド偏重』の指摘は正しいが、エリクの質疑応答の通り、左ではできて右はできてない明白な理由があり、また左を抑えられれば右や中央も必要になり課題ではあるが、柏戦に限れば左サイドだけで十二分に崩しチャンス構築ができていた。崩せるのだから、ある意味偏るのは当然

もちろん左サイド3人のコンビネーションだけでなく、チーム全体が攻守に押し上げてボールを奪う位置と攻めの起点を高くした事、中澤や朴正洙、引いてサポートする扇原や中町を中心に雨の重たいピッチでも柏のプレスにビビらずしっかり繋いだ事も、大きな意味と価値がある

――前半は本当に素晴らしかった。繰り越す課題であった「主体性ある前から奪いに行く守備」「ブロックの押し上げ」に勇気持って取り組み、全員がハードワークとリスクトライを惜しまなかった。左サイドの有機的なコンビネーション、吹っ切れたようなエース齋藤学の果敢な仕掛け。胸が熱い。最高だった

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【川崎戦の完敗から反発しチーム全員がピッチに強い意思を示し実に誇らしい戦いを見せてくれたが。喜田のギリギリのプレイは、コンタクトが無ければ素晴らしいプレスバック。ファウルなのは間違いないが責められない。 by 蒼井真理】 about [2017-J1-26] 横浜 1 v 1 柏

f:id:harukazepc:20170419105933p:plain蒼井真理

リーグ26節ホーム柏戦。3位の柏が勝点49。5位マリノス勝点47。勝てば順位は入れ替わり上位戦線に踏みとどまる、連敗は許されないビッグマッチ。雨の日産スタジアム、キックオフ1時間20分前に到着

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ホーム柏戦のスタメン

FW 富樫敬真
MF 学、天野純マルティノス
MF 扇原、中町
DF 山中亮輔、朴正洙、中澤、金井
GK 飯倉

SUB:杉本大地、ミロシュ、松原健、喜田、イッペイ、前田直輝、ウーゴ

川崎戦からスタメン4名に変更。過去になく大きく動かしてきた

負傷離脱者は勇蔵、吉尾海夏。2名とも部分合流済みで対人メニュもこなしており全体合流も間近

扇原とウーゴは週前半に別メニュも後半はフルメニュ消化で問題なし

中町公祐金井貢史は6試合振り、朴正洙は8試合振りのリーグ先発。3人とも腐らずチームを優先し真摯に取り組んできた。「ミロシュがダメだからジョンス」では決してない。朴正洙が、スタメンで出られない間もモチベーションや取り組む姿勢を落とさず準備してきたからこそ掴んだ先発

「出たら良いプレイをする自信はある。いい準備はできている。落ち着いてビルドアップできる自分の長所を生かしたい。真剣勝負の舞台。絶対に負けない。セットプレイはチャンス。ゴールを決められたら」朴正洙

薄闇に浮かび上がるピッチ。幻想的でいい雰囲気。やっぱトップのホームゲームはナイトマッチに限るな

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警告累積3枚は扇原と中町の2名。3人でクオリティを下げず回せるポジションだけに「2人同時にツモる」ことだけは回避したいところ

「川崎戦の失点はミス絡みだったが、全体的なパフォーマンスも満足できるものではなかった。特にプレッシャがある中でのビルドアップはもっとできると思っていた。個の部分で力を十分に発揮できない選手が多いとチームとして力を出すのは難しい。川崎の方が我々より力があった」エリク監督

「フィジカルとメンタルが100%の選手が先発する。ただ忘れてはいけないのは、我々は川崎戦前まで14試合負けなしで良いパフォーマンスだった。1試合に負けただけでそれまでがゼロになる訳ではない。自分たちがやってきた事に自信を持ち、状態とバランスを見て先発を決めたい」エリク監督

「柏戦は相手のプレッシャの中でもボールをつなげないといけない。練習はプレッシャの掛かる中でのビルドアップがテーマだった。重要なのは常に向上させる気持ちを持ち続けること。クオリティに満足することはない。1つの敗戦が次への新たな目標設定など気づきを与えてくれる事もある」エリク監督

「柏は自分たちより上にいるが、勝てば順位を引っ繰り返せる。これ以上、鹿島に差を広げられる訳にはいかない。残り9試合あるし、まだ何も失ってない。川崎に負けて崩れるのか、あの負けを生かして這い上がれるか。自分たちは試されている」富樫敬真

――前節のアウェイ川崎戦は「本当にリーグタイトルを意識し争う資格があるか」試された試合で、力が及ばず敗れた。今日の柏戦は「その敗戦から反発し、上位戦線に踏みとどまる気概を示せるか」試される試合になる――プロである以上、常に試されているのだ。常に何かを証明し続けなければならない

厳しい。プロって本当に厳しい。引退しスパイク脱ぐまでずーっと毎日が競争で、個人もチームも常に周囲と比較され優劣が決まり、試合の結果なんて半分は運だけどプロセスでなく結果で評価される。過程を見てもらえるのは「結果を出した時」だけ「ダメだったけど頑張ったね」は絶無の世界。厳しい

でもそんな世界で勝負し続ける「試される」人生を選んだのなら、戦うしかない。「頑張ります」「前向きに必死に」耳障りのいい格好いい事だけ言っても仕方ない。やるしかない。戦って結果を出して、自分の正しさや自分たちの強さを証明するしかない。プロって本当に厳しい

だから天野純が「これまでの自分たちの積み重ねてきたものは間違いだった」と言うのも全然構わない。プロにとって大事なのは「何を思うか、何を言うか」ではないからだ。「何をするか、どんな結果を残すか」評価されるのはそこだけ。これまでが間違いだったと思うなら、違うものをピッチに示すだけだ

「川崎戦の3失点より今後どうしていくか。プレッシャに対しミスせずボールを動かしていくことは、敗戦の中から見えた課題だと思う。残り9試合は勝点3を取り続けるしかない。失点ゼロも大事だがリスクを冒し勝点3を目指すことも必要。チームとしては前に比重を掛けることが大事になる」飯倉大樹

――自陣からのビルド&ポゼッション。俊輔やアデミウソンら個のスキルに依存してきたもの。少しずつ進捗を見せ手応えあったが、川崎戦ではミスも出たし腰が引けてビビっていた。より精神的にもプレッシャの大きい中でも自信を持って確実につなげるか。やらなきゃチームは前に進めない

――リスクを賭けても、仮に失点の確率が上がったとしても前に比重を掛けゴールを奪いに行く。無失点記録のためにやってない。勝点3のため、ACL圏内やリーグタイトルのために。毎試合「前半ゼロで凌いで我慢して」「どこかで1点取れたらそれを守り倒して」それで頂点を掴むのは難しい

サイドだけでなく中央にクサビの縦パスを通し、相手陣内ブロック内側に起点を作る。時に学が大胆に攻め残る。SBやボランチが前の選手を追い越しエリア近辺に侵入する――前半0ー0のスコアを主体的に動かす。相手の疲弊や間延びを待たずに奪いに行く。常に複数得点を理想とし狙う

「相手を褒めるしかない防ぎようのない失点や事故の1失点」はある。これまでの勝ちパターンでは、どうしても0ー0や1ー1の取りこぼし、先制されるとプラン崩壊などの瑕がある。ここから先のマリノスは「2ー1」の勝利をイメージして臨む必要がある。結果としての1ー0や2ー0は全然構わない

1失点は「ある事だ」と仮に先制されても焦らない狼狽えない。勝利とリーグタイトルのためには常に2得点が必要なんだ、と。スコア展開は如何なるものでも構わない。先制ダメ押し、追い付かれ突き放す、逆転勝利、2点先制し&失点に抑える。なんでもいい

無論、常に2点を奪いに行くが1ー0で後半残り10分となったなら、意識をすり合わせウノゼロに頭を切り替えていい。そこはマリノスの既に有する強みなのだから。ただ前半から「1点取れたから攻めなくていい」その意識は変えて行こう、リスクチャレンジしよう、という事だ

ホーム柏戦の注目ポイント

  • 川崎戦の完敗から反発できるか
  • より多くの決定機を作るため
  • 様々なリスクにチャレンジできるか
  • 守備ブロックの高さ
  • 圧力を去なす自陣ビルド
  • FWやトップ下へのクサビ縦パス
  • サイドを深く抉りマイナスクロス
  • 学の攻守位置取り、攻め残り

今週のトレーニングで取り組んできた事を自信と勇気を持ち実践できるか。相手が3位で前線からの圧力も高い柏である事に大きな意味がある。また今節も試されている。前に進むための勇気はあるのか。言葉だけでなくリスクにチャレンジして、本気でリーグタイトルを狙う気概はあるのか。試されている

「攻撃の形を上手く作れないのは川崎戦に限った話ではない。それまで皆で耐えて勝つチャンスをモノにしてきた。次の柏もも強いチーム。でも、だからこそ勝ったときの価値は大きい。川崎戦の負けを意味あるものにするためにも、次の柏戦はとても重要なゲームになる」齋藤学

どれだけチーム内でリスクチャレンジに意思統一できるか。川崎戦は完敗でも、それまで積み重ねてきた勝ちパターンは確かに存在する。単純に匙加減、スコア展開で「今どうする」を同調させるのも難しい。ここは今まで通りか、それとも一歩前に踏み出すのか――誰が仕切るのか。個々が主体性を出せるのか

スタンドも、選手たちの前向きなリスクチャレンジの背中を押し支えて欲しい。トライすればミスは付き物。出来てないからやるんだ。やらなきゃ出来るようにならない。ウノゼロの美学はラスト7分まで考えない。必要なのは複数得点だ。先制されても狼狽えない。先制しても2点目を取りに行く

今季ここまでの全部を否定して変える必要はない。でも「全部そのまま」ではリーグタイトルには届かない、そうあの完敗で思い知った。もっと強くならなきゃ。もっと前に進むための勇気が必要。リスクを採れ。より貪欲にゴールを、勝点3を、勝利を。リーグタイトルはその先にある

1人キーマンを挙げるなら富樫敬真。今週のトレーニングではFWへのクサビ縦パスをかなり意識して取り組んだ。正直できてない。上手く収め捌けてない。でもやらなきゃいけない。そこの手応えと自身のゴールとチームの勝利。時にプロの世界は「一発回答」が必要になる。もしも今季まだ頂を望むならば

あとは川崎戦の敗戦を受けて、学と天野純のプレイにどんな変化が生まれるのか、そのままなのか――。そのままでいいハズはない、それは分かっている。分かりやすいリスクチャレンジが表現できるか、チームへのメッセージをプレイで示せるか

柏スタメン。個人的にはハモン・ロペスより中川寛斗とか武富孝介の方がイヤかな。ハモン・ロペスとキム・ボギョンで前線プレスの圧力と連動性はどんな仕上がりになってるのか

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注目は柏の右サイド伊東純也+小池龍太と、マリノスの左サイド齋藤学山中亮輔山中亮輔は伊東純也のスピードを抑え切れるか? 日立台で完全に抑え込まれた齋藤学は、小池龍太を今度こそ蹂躙できるのか?

「J(伊東純也)のスピードはリーグトップクラス。縦への突破や右足のクロスが武器で、左足のシュートも警戒しないといけない。去年は紅白戦で何度もマッチアップして、お互いの良さは分かっていると思う。僕としては彼の良さを消しつつ、自分が攻撃面で違いを出していきたい」山中亮輔

「ヤマ(山中亮輔)とは互いに知れた仲というか、去年は一番多く紅白戦でマッチアップしたし、あっちも特徴を分かっていると思うけど、分かっていても止められないようにしたい。ヤマも速いけど、自分が上手く抜ければ勝てる。そこは自信を持ってやりたい」伊東純也

フィールドプレイヤのアップ開始

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ゴール裏からは他の誰より早く、山中亮輔へのコール3連。アップでランニングしながらニヤニヤが止まらない山中亮輔。加入初日から基本「半笑い」キャラだから

はいはいトリコロール・ギャラクシー

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新潟が鹿島を相手に2点先制したとか、他会場の動きは気にしない! 目の前の一戦に集中! 気にしない! 首位鹿島が2点リードされてるとか全然気にしない!

ホーム柏戦のビッグフラッグ

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常に試されている。試され続けるのが宿命。ならば超えて行こう。複数得点を狙うため、より多くの決定機を作るための勇気あるリスクチャレンジを

ホーム柏戦、間もなくキックオフ!

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学が左、マルティノス右でスタート

もうマルティノスが倒れてもチームメイトは誰も気遣い近寄りもしないよ

ラインが高い。2つめのオフサイド獲得

中町からハーフウェイ富樫敬真への縦パス、敬真ロスト。厳しい。しかしトライしていかねば

前半9分、左サイド山中亮輔のオーバラップからエリア外シュート。GKの弾いたボールがエリア内フリーの齋藤学の足元に。落ち着いて右足を振り抜く。GKの頭上を超えて、ファーサイドネットに突き刺さる。絶対エース齋藤学、今季リーグ戦初ゴールで先制!

実質的に山中亮輔のアシスト。古巣相手に強烈シュートで先制に大きく貢献!

大事なのは2点目を奪いに行く姿勢。このアグレッシブな姿勢を止めない、変えない

14分、左サイドでコンビネーション。天野純の惜しいニアへのクロス

前半15分まではマリノスがポゼッションで圧倒し、果敢に柏陣内に押し込む。その際の最終ラインも高く設定

最初の距離あるFKは山中亮輔のドッカンミドル。右に枠外

先制してもステイ、リトリートでなく前に奪いに行く姿勢を示す。マルティノスのアプローチに殺気。素晴らしい

扇原も実にわかりやすく戦えている。チャレンジできている。素晴らしい

柏のファーストシュートは前半23分、クリスティアーノ

ジョンスもいいなあ。凄くピリピリやれてる

最初から引くのでなく、奪われた後や奪いに行きスカされた後のリカバリが凄く速い。素晴らしい

2本目のFK。天野純には良い位置

敬真はプレスバックの意識が凄く高く常に狙ってる

30分まではかなり一方的にマリノスペース。でも決定機はまだ1:0。まだまだ物足りないぜ

カウンタを阻止して金井貢史黄紙。攻めに厚みを出せば不可避。ボランチ2人でなく良かった

予測と出足、それを実行する勇気と勢いで完全に柏を上回っている。前半34分まではほぼ何もさせてない

意思の力、勇気だ

マルティノスと敬真の守備意識がここまでべらぼうに高い

学はセカンドルーズボールへの予測反応がスゲー早い

上手くボールを回せている。でもシュート3本。シュートの2つ前のパスのクオリティ

柏がCK2本目でキッカを変えてきて少しマークが混乱したが、大過なし

後半(編集注:前半)45分、左サイド学の仕掛け、天野純のクロス。マルティノスに合わず。左サイドはとても良く機能している。天野純、最後の精度だ。違いを見せろ

前半AT、学に立て続け2つの決定機。決め切れず。複数得点は後半への課題


前半終了、横浜1ー0柏。シュート5:3(枠内3:0、エリア内4:1)決定機3:0。CK&FK3:2。チーム全員の勇気、強い意思で柏に何もさせず圧倒。3つの決定機フィニッシュは全てエース齋藤学。あの完敗から力強く反発した、実に誇らしい前半。最後までこの姿勢を。貪欲に追加点を

他は特に言うことないっス。技術や戦術以前の、完全に意思の力。前に進むチャレンジする変わろうとする勇気。誇らしい。胸が熱い。言葉やフリだけでなく、プレイで強い気持ちを示してくれている。素晴らしい

天野純も左サイドのハーフレーンで学や山中亮輔、扇原と連携して上手くチャンスメイクに絡めている。あとはクロスの質だが、45+1分のマイナスクロスは完全な決定機演出。アシスト未遂。学さん決めきらないと! 大事なのは何を言うかでなく、何を為し示すかだ。やれてる。戦えてる

鹿島が2点ビハインドから4点奪い返して新潟をフルボッコしてるけど、他会場は全然気にしない! 目の前の一戦に集中! こんだけマリノスが選手たちが誇らしい戦いを見せてくれているのだから

さあ後半。やる事は変わらない。変えない。奪いに行く守備を、貪欲に2点目を。FWへのクサビの縦パスを。もっとできる。もっともっと最後まで

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柏は後半頭から武富孝介。イヤな選手かわ入ってきたよ

今のターンは質が高かったなあ天野純

後半2分、クリスティアーノの変態トラップ&ターン&シュートから被決定機も、GK飯倉がストップ!

それをファウルと言われたら会長は何もできねえぜ

いいよ学、その仕掛ける姿勢が大事なんだ

後半の頭は柏の時間帯

誇らしい金井貢史の粘り強いギリギリの守備対応

一度ポゼッションして時間を作り相手を下げさせる狙い。でも柏は前からくる。良いゲームだ!

少しずつ柏の方が間延びして半ば意図的にオープン展開にしようとしている。学さん、あるよコレ全然あるよ

会長もこのチームの流れに上手く乗りたいなあ。ここまではハマってない

自陣に引いてサイドを変えて、学から山中亮輔にウラ取らせて曲げ落とすクロス。素晴らしい。マルティノスは合わし切れずも難しいボール

今日のマルティノスの守備意識の高さはハンパねえ

後半23分、金井⇒松原健

後半は攻めの姿勢は強く示すも30分までシュートがない。チャンスメイクはそれなりにできてはいるが

敬真はシュートを打ちたい

喜田が呼ばれました

後半37分、敬真⇒喜田拓也

明確にウノゼロで意思統一するメッセージ付き選手交代

天野純が1トップのポジション、喜田がトップ下の位置に

あと5分とAT

自陣エリア前、喜田パイセンがすっ飛んできて扇原が前向いてボール持ったけどファウルの判定

後半43分、クリスティアーノに叩き込まれ同点。1失点はある、だから2点目が必要なのだ

追い付かれてもベンチは動かずか

ATは5分

試合終了後にマリノスの選手に警告出たな。抗議したんだろうな。しょうもない


試合終了、横浜1ー1柏。トータル決定機4:3。川崎戦の完敗から反発しチーム全員がピッチに強い意思を示し実に誇らしい戦いを見せてくれたが、2点目が取れなかった。後半はシュートゼロ。チャンスは作ったが、取り切れず。無念だ

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リーグ戦8試合を残し首位鹿島との勝点差は10に。試合数を勝点差が上回り、マリノスC大阪は優勝争いから脱落。だが2位とはまだ勝点4差。だからまた次も試される。気持ちを萎えさせず、1つでも上の順位を目指し最後まで戦えるか。気持ちを作るのは実に厳しい。でも試され続ける。やるしかない

映像確認。2つ目の決定機、クロスは天野純でなく外を回ってきた山中亮輔。実質アシスト未遂が先制点につながったミドル含め3つ。古巣相手に高い攻撃性を見せた

クリスティアーノの同点FKにつながった喜田のファウル。ギリギリのプレスバックで身体をねじ込んだが、キム・ボギョンがシュートモーションに入っていたところを後ろから入ってコンタクトもあったので危険なプレイ、ファウルの判定は妥当。与えられたタスク的に試合後に抗議したくなる気持ちも解るが

喜田のギリギリのプレイは、コンタクトが無ければ素晴らしいプレスバック。ファウルなのは間違いないが責められない。あの時間に最高のコースに沈めたクリスティアーノのFKは相手を褒めるしかない。1失点はある。2点目を取りに行ったが決め切れなかった。それがマリノスの現在地

同点に追い付かれた後もウーゴや前田直輝らを投入しなかった事に対する采配批判もあるだろう。マルティノスは疲弊していた、と。しかし最後の決定機、学への絶妙スルーパスを通したのはそのマルティノスだ。結果論にもなってない

前後半4つの決定機、エース齋藤学は全てに自らフィニッシュ関与。縦とカットインの仕掛けの頻度も高く「自分が決める」強い意思を示したが、最後のビッグチャンスを決め切れず。それが齋藤学の現在地。だからやり続けて、次は決める。それしかない。出来なかった事を、次はできるように

【進歩を示し、勇敢に戦ったことの価値が落ちるわけではない。そして、まだまだ改善の余地はある。 by いた】 about [2017-J1-26] 横浜 1 v 1 柏

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柏戦の記録。

ショックを振り払い、強者に対して勇敢なプランニングを立て、勇気をもって遂行した。

しかし、勝ち切れなかった。判定、相手のクオリティ、そして抱える戦力の幅、様々な要素の複合的な結果。

いいゲームだったけど結果だけが残念、そんな複雑な気持ち。


前半

ほとんど相手に何もさせずに圧倒した前半。そのパフォーマンスはパーフェクトに近いものだった。

その要因は二つ。

〇最前線からの連動したプレッシング

正直なところ、これだけ高い位置からプレスを敢行するとは思わなかった。

前半を耐え、後半の勝負所でエネルギーを懸けるプランニングで結果を残してきたチームであること、そもそもプレッシングというプランをあまり提示していなかったこと、何より前回対戦時に苦しめられた相手のプレッシングへの対応に目が行っていたこと、新鮮な驚きではあった。

そして、そのプレスが機能したことは更なる驚きでもあった。富樫敬真天野純が深い位置からでもディフェンスラインにアプローチを掛け、後方が連動して押し上げる。落ちる相手にも追随し、プレスの抜け道を作らない。柏は明らかに戸惑いを見せ、ボールを捨てるシーンさえあった。

機能した要因は、各選手がリスクを恐れず眼前の選手を捕まえに行く共通理解があったこと。繋ぐために落ちる選手にも追随してプレッシャーを掛けるシーンを見ても、そこにリスクに伴う逡巡は感じられなかった。タフなタスクを全員で遂行したからこその機能性。

勇気ある前進を示した横浜は、こうして試合の主導権を握ることに成功した。

〇"Y・M・A"による左サイドのコンビネーション

ボールを奪えば、左サイドのコンビネーションが機能してチャンスを作り出す。タッチライン際に速いパスを展開してポイントを作り、ハイサイド齋藤学が仕掛けをちらつかせて警戒を集める。その間隙を縫い、外を山中亮介が、内を天野純が走り抜けることで相手の裏を突く。齋藤学の仕掛け、二人のランニング、3つの選択肢を突きつけられると相手は絞り切れない。結果、この形で何度となくチャンスを作りだした。

特に古巣対戦となった山中亮介は出色の出来。タッチライン際でボールを引き出して齋藤学への供給源となりつつ、何本も左サイドを疾走してオーバーラップを仕掛ける。齋藤学が内側のレーンに走る天野純を使うことが多かったため、空走りとなることも多かったが、そのランニングの質はスピード、タイミング共に抜群。前半終了間際にはエンドライン際に切れ込み齋藤学に、後半にはカウンターからのクロスでマルティノスに決定機を提供、ラストパスの質も伴っていた。

また、攻撃性を示したことで伊東純也を守備に奔走させ、本来持ち得るクオリティを出させなかったことを考えると彼の仕事はチームに大きなメリットをもたらした。

そして、充実の左サイドから齋藤学の待望の初ゴールが生み出された。山中亮介のクロスボールのこぼれ球を拾うと、右足インスイングで日本代表・中村航輔も届かないファーサイドに突き刺したビューティフルゴール。このゴールの他にも3つの決定機に絡み、違いを見せつけた。ようやくのエースのお目覚め、この時を待っていた。

これだけ勇敢に、勇気をもってプレー出来たことはこのチームの大きな成長の証。

前を向く、切り替える、言葉にするのは簡単ではあるけれど、ショックを受け、恐怖心や不安を抱えながらも、その全てを振り払い、ピッチの中で表現することは簡単ではないと思うから。

前半のパフォーマンスには諸手を上げて賞賛したい。


後半

充実の前半が横浜の時間だとしたら、後半は柏の時間だった。

その一つのファクターは、主導権を握っていた要因となっていたプレッシングを抑え、低いゾーンでブロックを組む形に切り替えたこと。アドバンテージを奪ったことで現実的なプランに切り替えたのか、柏の勢いを警戒したのか(ハーフタイムのタイミングで武富を投入し、キム・ボギョンボランチに落として攻撃性を高めた)、それとも選手たちの判断なのか、その答えは分からないけれど、後半は柏の攻撃を凌ぐ時間帯が多くなっていく。

柏がボールを握り、横浜の4-4のブロックを切り崩しにかかる、が、守れないチームではない。先発起用されたパク・ジョンスは素晴らしい集中力も保ち、中澤佑二と共に身体を張り続けたし、大きな穴を空けるシーンも少なかった。相手の高いクオリティによって作られたピンチも飯倉大樹の素晴らしいセーブで凌いでみせた。

そして、機を見てカウンターを仕掛ける。山中亮介のアグレッシブな姿勢は後半も衰えず、マルティノスの決定機を演出し、その他にも中町公佑がインターセプトからチャンスを作り出すなど、矛は収めてはいなかった。しかし、75分を境に選手たちに疲労の色が見え始める。前半のハードワークの影響もあるし、雨という気候的要因もあるのかもしれない。

再び訪れる苦しい時間帯、選手を入れ替え、フレッシュな選手の運動量をもってチームを助けたかったはず。しかし、逃げ切りを図る状況下において、運動量の補てん、及び各ポジションに課される守備タスクをきっちりこなせる選手がベンチにはいない。そんな思考が透けてみえたのが富樫敬真から喜田拓也へのスイッチ。

守備タスクや献身性に関してはムラのあるウーゴ・ヴィエイラを使うのは怖さがある、だからこそ天野純を前にあげて喜田拓也を使ったのではないだろうか。天野純と共に高い位置でパスコースを切りつつ、時には低い位置に落ちて危機察知能力とボール奪取能力を活かし扇原貴宏・中町公佑を助けるという意図もあったはず。

しかし、結果としてその策は報われなかった。矛を収めてでも守り切る、そんなスクランブルな守備的布陣を敷きながら、逃げ切りに失敗し、勝ち点3を得るには至らなかった。

トップに前から追う守備タスクと前で収めて時間を作る選手を置けることが出来たなら相手の攻撃頻度を下げることも可能だったかもしれないし、序盤からコンタクトプレーで倒されることも多く、かなり疲弊していたアタッカーのところに一枚でもフレッシュな駒が置けたなら…全てはたらればではあるけれど、現実的に横浜のベンチにその駒はなかった、というのがエリク・モンバエルツの下した評価ということになるのだろう。

メンタルをリフレッシュさせ、勇敢なプランを講じて好パフォーマンスを引き出したエリク・モンバエルツの唯一の失策は、アタッカー陣が疲弊した状態でのクロージングプランを用意できなかったことかもしれない。

(後で映像で見返すと、ボールが離れたところでうまく身体を入れたように見えたけど、ね…コンタクトが激しく、相手が倒れたことの印象が強かったのかな)


勝戦線生き残りを賭けた一戦で、悔恨のドロー。

が、進歩を示し、勇敢に戦ったことの価値が落ちるわけではない。そして、まだまだ改善の余地はある。戦略的な幅を広げ、より逞しく、強いチームになることは意義のあること。

で、J1 200試合出場&2017年リーグ戦初ゴールおめでとう、まな!

「ここから乗っていけるかは俺次第」、って言葉、信じてます。貯まった"ゴールマイレージ"放出祭!

【プレスを掻い潜る、という準備に対しての「目的」の欠如。相手の出来が良かった。相手の質に屈する形で瓦解した。 by いた】 about [2017-J1-25] 横浜 0 v 3 川崎

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完敗の記録。頭の整理も兼ねて。

明治安田生命 J1リーグ 第25節
川崎フロンターレ 3-0 横浜F・マリノス @ 等々力陸上競技場
得点者:14'大島僚太 57'小林悠 75'家長昭博

試合記録

www.jleague.jp


試合の印象

〇相対的な要素
  • 川崎のネガティブトランジッションが、横浜のポジティブトランジッションを上回る。
    →試合を決定づける大きな要因。川崎の出足、収縮、強度、バランスは抜群。大島僚太セカンドボール回収とイーブンボールでのデュエル勝率の高さは出色の出来。
    横浜はその圧力に屈しミスを犯し、意図したはずのカウンターチャンスを作り出せず。結果として守勢に回らされる時間が長くなり、苦しい展開になった。

  • 川崎のポゼッションに対して、横浜のディフェンスは奪いどころを見いだせず。
    →「焦れない」という言葉が川崎の選手から出ていた通り、無理に中央に侵入せず、ボールを握る時間でも冷静にポジションバランスを崩さずにゲームを運んだ。リードして更にその傾向は顕著に。
    横浜は待ち受けつつ、中央で網に掛けたい意図を持っていたものの、相手がそのゾーンでの攻撃を回避したことで狙い通りに事は運ばず。時間帯によっては奪えないことに焦れ、散発的な守備になることも。完全に後手に回った。

  • 川崎の激しい球際、速いアプローチに正確なプレー、クオリティの高いプレーを維持できず。
    →球際での強度や速いアプローチには川崎の選手たちのモチベーションの高さが表れていた感。粘り強く対応し、横浜のストロングポイントである齋藤学マルティノスに対しても高い確率でボールを奪いとり、抑え込んだ。
    試合をする上で負けてはいけないところで負けてしまった横浜。チャンスを作ったシーンもあったが、全般的にミスも多く、仕掛けの成功率も低かった。これでは勝てない。

  • 決めるか決めないか
    →凄く端的に。
    大島僚太小林悠家長昭博が機を逃さず決めきった川崎、決めるべきシーンで決めきれず、やり切れなかった横浜。これが綺麗にスコアに反映された。
    ①左サイドマルティノスの高速グラウンダークロス→ウーゴ・ヴィエイラのスライディングシュート(キーパー正面、不運…)
    ②ラインブレイクしてボックス内に侵入するも山中亮輔のラストパスはカット(打ってよかった…打てるんだから…)
    ③相手のクリアが甘くなったところ、天野純の強烈なシュートは僅かに逸れる(大島僚太は決めたね)
    全部決まってれば3-3、サッカーってそういうものだけど。


〇主体的な要素
  • 先制点に繋がるミロシュ・デゲネクのクリアミス

  • スライディングで奪うも、マイボールにしきれずにロストしてしまった松原健の判断ミス

  • ミロシュ・デゲネクの雑かつ緩い浮き球のパスを狙われ、扇原貴宏もボールを隠し切れずロストしたミス
    →これだけ致命的なミスを低い位置で犯せば、失点に繋がる。彼らだけの責任ではないにせよ、自分たちでゲームを壊した。

  • プレスを掻い潜る、という準備に対しての「目的」の欠如
    →川崎がロスト後に強いプレスを掛けてくることはスカウティングできていたし、そのためのプレス回避を準備していたはずだけど、残念ながら回避することは出来なかった。それ以上に奪った瞬間にスムーズな攻撃移行が出来なかったことはこのゲームの苦戦の大きな要因。相手のプレスを外す、だけになっていなかったか。外した上で「前に運ぶ」、「ポイントを作る」、それが出来なかった。奪った瞬間、スムーズにボールが前に入ったシーンは片手で足りるほど。周辺状況もあるので一概には言えないにせよ、マイボールにするために後ろを向く、戻すということに大きな価値はない。攻撃を遅滞させるプレー。
    プランニングを具現化できなかった。

  • クオリティ低いセットプレーのボール
    こういう苦しい試合だからこそ、ここでチャンスを作りたかったけど、7~8回のセットプレーのチャンスでいいボールが入ったのが1~2回、というのは寂しい。大きくズレるボールもあっただけに修正が必要。


前回対戦時の反省も踏まえ、相手の意図とストロングポイントを把握し、良い準備をしてきたこと。その上で、選手たちが素晴らしいパフォーマンスをしたこと。川崎の出来は素晴らしく、ほぼパーフェクトな試合をしたと思う。

鋭いネガティブトランジッション、プレーへの反応、ボールサイドへのシビアな寄せ、球際の執着、単純な一つ一つのプレー精度、相手の致命的なミスを逃さずに仕留める決定力…欠けるものは何一つなかった。

特に大島僚太の存在感と仕事の質は凄まじかった。
クリアボールを正確に仕留めた先制点は試合の趨勢を決める大仕事。ポゼッションでゲームをコントロールしつつ、ポジショニングバランスに気を遣い、素早い反応によるセカンドボールの回収や仕掛けに対してのデュエルに勝つことで、相手のカウンターの芽を摘み続けたこと。鮮烈な出来。

彼らは勝利に値するパフォーマンスを示した。


相手の出来が良かった。相手の質に屈する形で瓦解した。個としても、組織としても、試合に対してのモチベーションにしても、全て上回られた。これは認めなければならないし、受け入れなければならない。

大一番として臨んだ試合での完敗のダメージは決して小さくない。ただ、これが現実。この試合で至らなかった要素はすべて今後高めていかなければならない課題であることにも違いない。

  • 高い位置から圧力を掛けてくる相手に対しての対処
  • チームとしてスムーズな攻撃移行をするための術
  • プラン通りに進まなかった時の軌道修正と意思統一
  • プレッシャーが掛かる中での技術精度の維持
  • より速いトランジッションと頭の切り替え
    …etc

上げればきりがないけど、取り組まなければ前進はない。これからもう一度顔を上げて、前向きに取り組んでチームとしての質を上げていく。出来ることはそれだけ。

この試合ですべてが決まる訳じゃない、試合は続く。もう一度、みんなでやっていこう。


はっきりいって、凄く落ちる。 個人的に思い入れが非常に強い相手、この試合だけは絶対に勝ちたかった。だからこそ、これだけコテンパンにやられたことのショックは大きい。身を投げたいぐらい。

ただ、今年やり返す機会は恐らくない(天皇杯はあるのか…)
この苦々しい試合の借りは来年にしか返せない。
来年、絶対やり返す。

この思いは一度心の奥底にしまっておいて、目の前のことを、という感じで切り替えていくしかないですね。

頭の整理は出来た、そんな簡単に切り替えられるものではないけれど、次に目を向けないと、ですね。