横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【ボールを握り、押しこむ展開の中、横浜がチャンスを生み出すシチュエーションは浦和の攻撃移行時だったのが興味深い。横浜のネガティブトランジッション時の反応と守備が浦和の攻撃移行を阻むだけでなく、攻撃の起点となっていた。 by いた】 about [2019-J1-19] 横浜 3 v 1 浦和

f:id:harukazepc:20170419104133p:plainいた

浦和戦。

様々な事象が「起こってしまった」試合ではあったけど、ピッチでは起こったことは判定云々を除けば想定内の試合。
ともあれ、浦和相手にシーズンダブル!素晴らしいこと。

横浜の特徴的なサッカーに対して浦和がどのような対策を講じてくるのか。
これが一つの注目点ではあったのだけど、浦和が選択したのは守備時は前線に興梠を残した5-4となる撤退守備。
ポゼッションを許容し、ボールサイドに蓋をしつつ、中央を締める。スペースを管理できる阿部勇樹の起用は納得。

守備に力点を置いたことで、浦和の攻撃は興梠の裏への抜け出し、ファブリシオの単騎突破のみ。選択肢は大きく限られた。
となれば、試合の入りの時点で横浜がこのゲームの主導権を握ることは約束されていたのかもしれない。

となると、試合の争点は「横浜が崩すか/浦和が守り切るか」。
ボールを握り、押しこむ展開の中、横浜がチャンスを生み出すシチュエーションは浦和の攻撃移行時だったのが興味深い。
横浜のネガティブトランジッション時の反応と守備が浦和の攻撃移行を阻むだけでなく、攻撃の起点となっていた。

・浦和の守→攻の切り替えがおざなりなところを逃さずにボールサイドへ収縮
・興梠へのパスコースはボランチが切る
・狙われると思われたサイドへの対角フィードは献身的なテルくんのプレスバック、ティーラトン・広瀬くんのオリジナルポジションへの帰陣で塞ぐ

その結果、相手陣でボールを奪い、人数を揃えていたはずの浦和の陣形が崩れた隙を突けていた、と。
先制点はまさにその形。タカくんがよく長澤を追った。追ったから橋岡への横パスを選択させ、すってんころりんの呼び水となった。

【37分:遠藤渓太先制点】
橋岡の転倒が起点、逃さずピックアップしたティーラトンが素早く岩波-マウリシオ間にポジションを取っていた渓太くんへ。渓太くんは(少し浮いちゃったけど)素早くターンし、思い切り左足振り抜く!鋭いシュートはマウリシオの股を抜けて、サイドネットへ!
やった!

今シーズン初ゴール!よくやったぞ後輩!←
アンジェも凄くエモーショナルなガッツポーズだったし、皆が待ってた一発。膠着してもおかしくない試合を動かすという意味でも凄く意義の大きなゴールでした。
よく前を向いたし、よく振り切った。数字は必要だからね、結果を出せてよかった。

何よりも素晴らしかったのは「受けた位置」。
岩波-マウリシオの間にポジションを取ったことにより、ターンできたしフィニッシュ出来た。
渓太くんだけじゃなく、マルコスも阿部-青木間を意識していたり、テルくんもエジガルもそう。人を多く並べてもギャップはなくならない。

そのギャップで受けることで複数の選択を相手に「強いる」。
この日はウイングが意図的に5バックのギャップにポジションを取ろうとしてた。意図をもって、ギャップで受けて崩すことを狙っていたのだと思われる。
そんな「意図」のある位置取り、こういう形で結果が繋がると手応えになるね。

余談ではあるけれど、誰かが下りたりすると入れ替わるようにその位置に誰がが入ったり、内に入ったら幅を取る選手が出てきたり、というシーンがちらほら。
エジガルとマルコスの関係、マルコスとタカくんの関係、エジガルと渓太くんの関係…有機的な入れ替わり、意思共有が進んでいるのかも。

【61分:(オフサイドなんだけど)仲川輝人
右サイドをエジガルとのワンツーで渓太くんが打開し、ボックス内に侵入。
右サイドの打開を見てテルくんは大外から中央へ進出、渓太くんはパスなのかシュートなのか強いキックでゴールを急襲。宇賀神のブロックをすり抜け、テルくん押し込む。

この後あれこれひと悶着ふた悶着して、10分ぐらいゲームが止まってオフサイドのゴールがゴールとして認められる訳ですが、このシーンはちゃんとJリーグジャッジリプレイでお話しがあると思うので割愛。

このシーン、是非は置いておいて判定がひっくり返ったときのアンジェのリアクションがスーパーかわいい。アンジェはキュート。
でもって、大槻組長が相当シメオネっぽくなってる。
フラッシュインタビュー後に審判を「殺りにいく」と思われるヤバイ雰囲気とかたまんねぇ…

問題は、この後。
ビハインドメンタリティに燃える浦和の勢いをもろに受けてしまい、実際に取り返されてしまったこと。
レフェリングであったり、その他もろもろ、全ての事象を予測するのは難しく、予想外の事象が起きた時に、どうしてもメンタル的に揺れ動く。

その中でいかに普段と変わらずプレーできるか。
相手の変化を感じ取り、必要な対処が出来るか、という点。
後半頭からではあったけど、宇賀神と橋岡が高い位置に張り出す、とか、マウリシオがマルコスを捕まえようとラインブレイクをする、とか、前から追い始めた、とか、変化の予兆はあった。

浦和がかなりリスキーに仕掛けてきたことで横浜はスペースを得てカウンターを何本も打てたわけだけど、その攻撃が不発に終わると、相手も返す刀でスペースを得てチャンスを作る。
要はオープンな打ち合い。オフサイドになったけど同点になっていても不思議ではない展開に「なってしまった」。

エキサイティングな攻防で見ている側は楽しいのだけれども、オープンな打ち合いはどちらに転がるかわからない。そして、それは少なからず望んだ展開ではない。
アンジェもフラッシュインタビューで話していたけれど、後半はコントロール出来なかった。

理想とすれば、前半同様にコンセプトに沿ってずっと自分達のターンでサッカーがしたかった。
安定したポゼッションとネガトラからの即時回収で押し込み、試合のテンションを落とす。そして相手の気勢を削ぎ、静かにゲームを終えたかった。

結果として3点目を奪い、勝ち点3を得れた。事なきを得た訳だけど、カウンターアタックでのイージーミスでロストして反転攻勢を喰らう、というのは、少し幼い。
アタックするな、ではなく、ネガティブトランジッション及び守備に転換した際の準備の問題。プッシュアップして陣形を圧縮したかった。

まあ勝って反省できることはいいこと。
山雅、大分、浦和と同じように完全にゲームを握ってプレーが出来ているのは素晴らしいこと。これをより長い時間して、勝つ可能性を高めたい。
相手の手を抑え、相手を真綿で締め落とす。理想に一歩ずつ近づいてるのも間違いないから。