横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【3ー2ー2ー3に変形する仕組みは面白い。山中亮輔、松原健もそこから縦に持ち運んだりアングル付けたパスを縦に入れたり、WGに開いて外を回ったりとデザインされたプレイはあるし、彼らにその適性もある(だから昨季獲得した) by 蒼井真理】 about [2018-PSM] 横浜 0 v 0 F東京

f:id:harukazepc:20170419105933p:plain蒼井真理

アンジェ横浜始動から1ヶ月、リーグ開幕8日前。初のJ1クラブとの対外試合プレシーズンマッチ瓦斯戦。キックオフ1時間40分前に味スタ到着

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アッパーはおろか、バクスタすら開放されないとスタジアムに入ってから知らされるクソ運営。このあとメインが埋まってもバクスタ開放しないと運営(バイトくん)は断言。早めに家を出たのは正解も、俯瞰厨としては憤懣遣る方無し

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バクスタ開かないなんて瓦斯もマリノスも新監督になったのに人気ねえなあ。補強が地味だからダメなのかなあ

ゴール裏は集会、新チャントの御披露目&練習中。中澤佑二もうすぐ40歳、ラストイヤーでまさかの新チャント!

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今日はメインスタンドこの辺りで観戦。ギリギリ展開とか選手の距離感は確認できるかな

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PSM瓦斯戦のスタメン

FW 尹日録、伊藤翔、イッペイ
MF 天野純、中町
MF 喜田
DF 山中、ミロシュ、中澤、松原
GK 飯倉

SUB:原田岳西山大雅生駒仁山田康太堀研太和田昌士町野修斗

昨季までの4ー2ー3ー1表記の方が画面的に収まりがいいな…。慣れの問題か

Bチームのメンバは明日の小平での練習試合に出場するため今日のプレシーズンマッチにはメンバ入りせず横浜で調整の模様。今季は週末リーグ戦の裏のBチーム練習試合やるのかな? …W杯中断までは過密日程で難しいと思うけど

「シーズンを通して私の戦術を落とし込んでいくが、始動からここまで少しずつ理解してきている選手も出ている。プレシーズンマッチは試合勘とコンディションが全て。翌日の練習試合も含め2試合あるので、なるべく多くの選手に90分間プレイさせ、コンディションを上げることが最も重要」アンジェ監督

昨日のチーム練習でも前半はフィジカルも組み込んだ負荷を上げるメニュ。紅白戦も完全な実戦形式ではなく「デザインされた最後方からのビルド、ボールの運び方&前線からハメるための連動したハイプレス」の確認とトレーニング。フィジカルも戦術の落とし込みも、まだ仕上がり前

最後方からのビルドも、最前線からのハイプレスも、エリクの3シーズンでは十分には積み上げ切らなかったモノ。前者は両翼依存体質からの脱却が不可避の課題で、後者は3シーズンほぼ据え置かれた課題。アンジェ体制となり、その2つの重要課題にチームは真正面から取り組んでいる

樋口さんもエリクも、就任直後は「それまでのチームのやり方」「選手のやり方」マリノスらしさを尊重しドラスティックなスタイル改革は行わなかった。アンジェ体制は近年のマリノスにない、大きな変革への取り組み。だがそれは「足りないもの」不可避の変革として前任のエリクも、選手たちも納得尽く

ビルドもハイプレスも、昨日の練習を見ても全然できてない。組織的にも戦術理解にはムラがあるし手探り状態。個々を見ても適性や技術的に難しい選手も少なくない。全く簡単ではない。今日のメンバがシーズン最後まで継続される事もないだろう。振るい落とし取捨選択、適者生存は必ずある。補強も必要

それでも本気でリーグタイトルを目指すなら、やるしかない。昨季のマリノスは足りなかったのだから。手を伸ばそうとして、その資格すらない事をシーズン終盤に思い知らされた。できるか、できないかは問題ではない。やるしかない。できないからやるんだ

「(監督が変わり始動から1ヶ月の)今この時期にチームが完成しているのは有り得ない。ミスを恐れてやらないという選択肢はない。とにかくやってみて上手くいったこと、いかなかったことを整理して次に生かせればいい」飯倉大樹

今日のプレシーズンマッチはラインを馬鹿みたいに上げてハイプレス掛けて、ガンガン裏取られて大量失点してもいいと思う。むしろすべきだ。絶対やっちゃダメなのはビビって始動からの取り組みを放棄しチャレンジしない事。今は課題を抽出すべき時期。ミスや不備は見えない方が先々のリスク

GK飯倉と原田岳のアップ開始

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ゴール裏のひろあき隊長から「新しい歌(頑なにチャントとは言わない)幾つかやるけど来週(長居での開幕戦)も新しい選手の歌(難しいヤツ)を御披露目するから一遍に覚えるの大変だから今日の歌は今週中に覚えてね」と

自陣後方からのビルド、前にボールを運ぶルート整備としては「GKからショートパスを細かく繋ぎ持ち運ぶ」オンリーではない。昨日の練習でも、高く張り出したSBに飛ばす、インサイドハーフやCF伊藤翔に長いボールを入れる、アンカの喜田が少し引き落ちて受けてターンして前を向く――様々なパターンを練習

フィールドプレイヤは常に「受ける準備」をしなければならないし、且つ1人よがりでなく「連動して」「今誰に出す誰が受けるべきか」を考え、2手3手先を考えたポジションやアングル、距離感を作らなければならない。パターンは1つではなく複数。最適解を導き共有しなければ。そんなの直ぐできる訳ない

フィールドプレイヤがゴール裏に挨拶しアップ開始

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ゴール裏には「誰も彼も知らない17年目 “4 ” “22” 最高のシーズンに」 そして一発目は中澤佑二新チャント! 大きなリアクションで応えるピッチの中澤さん!

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不安よりもワクワクしかないな! プレシーズンマッチ瓦斯戦、間もなくキックオフ!

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前半5分、相手陣内取れそうで獲り切れずからの縦ポン、ハイライン背後を突かれファーストシュートで失点。想定内

前半19分、敵陣混戦、結果オーライな松原健のボール奪取起点にイッペイ⇒エリア内のユンユン。相手のファウルを誘いPK奪取!

伊藤翔さんのPKはGK林彰洋がストップ

前半終了、横浜0ー1瓦斯。シュート5:1(枠内2:1、エリア内4:0)決定機2:1。CK&FK8:1。瓦斯のシュートはイージミスから先制点の1本のみ。ほぼ瓦斯陣内で試合は展開「できているか否か」は別として、攻守に「やるべき事」には一定チャレンジできている。及第点の前半45分

序盤は瓦斯の前線からのプレスにバタつきパスルートもGK⇒CB⇒SBと変化なくハメられ加減も、15分以降は最終ラインを3枚にして瓦斯の圧力を回避、低減させる事に成功。少しずつ直接WGやインサイドハーフに飛ばすパス、喜田を使うルートも見られるが、まだまだ不足。もっとチャレンジを

自陣からのビルド時、アンカーの喜田が落ちてSBがボランチの位置に絞り3ー2ー2ー3に変形する仕組みは面白い。山中亮輔松原健もそこから縦に持ち運んだりアングル付けたパスを縦に入れたり、WGに開いて外を回ったりとデザインされたプレイはあるし、彼らにその適性もある(だから昨季獲得した)

スコアは無関係。あの失点は今この時期はやっておかなければいけない不可避のミス。スタッツ的には、相手も新監督ながらオーソドックスなスタイルで個の能力がそこそこ高い瓦斯を相手に上回っている。セットプレイ数、エリア内シュート――うんまあマリノスも流れの中からはエリア内シュートないけれども

ぶっちゃけ空間認知が低く縦ポンに弱いミロシュ、スピードない中澤さんCBコンビでハイラインはいろいろ無理もある。でもそんなの前提。簡単に縦に蹴らせない、背後を取らせない。そのための取り組み。まだまだ「なんとなく前残り守備」で制限できてないシーンも多い。それは実戦の中で浮き彫りになる

だからあの失点、その後にあったピンチも良いミス。ここで露呈して修正できないと、後々シーズンとんでもない事になる。瓦斯が普通に前からプレスに来たり、背後に縦ポン狙ったりしてくれる事はテストマッチとして非常にありがたい。ありがとう

こんなプレシーズンマッチの1失点くらいでガタガタ言ってたらジェフ千葉サポータに笑われるぞお前ら。ハイラインのリスクとドッキドキバッタバタ感を積極的に楽しんでいこう!

さて後半

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後半20分経過。この時期のテストマッチなので、さすがに両チーム動きが重くなつまてきた。マリノスもハイラインが維持できずかなり間延びしつつある

試合終了、横浜0ー1瓦斯。トータル決定機4:2。6名の交代枠は1つも使わずフィジカル的な最終調整&テストの要素大。前半は目指す方向性チャレンジする姿勢に手応え。後半20分以降は運動量が落ちるといつも通りのマリノス

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さて今日の前半と後半をアンジェが如何に評価し、今後の選手たちへの要求アプローチに繋がるか、興味深い。やろうとしてる部分、なんとなく「やってる雰囲気出してるだけ」な部分どっちもある。疲れると全然やんない、今まで通りな弱さも表れた。どう変わるか、変わらないのか。とても楽しみなシーズン

今日のプレシーズンマッチで最も「今季おもしろそう」と思った選手は右SB松原健25歳。旧態依然なタッチ際アップダウンに松原健の良さは出ない。内に絞ってボランチの位置でボールに絡み、CFへ直接ラストパス出したり被カウンタの芽を摘んでこその松原健。横浜のフィリップ・ラームになれる(といいな

昨季の前半も松原健はかなり意識的にインナラップとか内に絞る動きしてたんだけど、WHのマルティノスや学とプレイ志向、相性が良くなくて使ってもらえなかったから松原健もエリクも途中で諦めて止めた。単純にマルが1人でゲインできて実効性あったしね。仕方ないね

でも守備における「中澤システムへの適合」も然り内に絞る関与を求められない攻撃面も然り、旧態依然なSBの仕事ではパンゾーの粘り強い対人と比較され、クロスのポンコツ振りだけが目立つ結果に。松原健の良さはそこにはない。オープンなクロスでなくアーリクロス。アングル付けたフィードや縦パス

アンジェが、CFGが求める現代的なSBの資質は高いと評価されたからパンゾーを切って松原健を獲得した。今季アンジェ新監督の下で、その適性の高さが証明されるのではなかろうか――右WGが誰になるのかにも左右される問題ではあるけれど。今のメンツなら仲川テルも一度試して欲しいなあ

天野純は地味に取り組んでる体幹トレーニングの効果が見えて、球際の一歩目の寄せの力強さ、上半身や足先で行かずに「腰から下半身で」重心ブレずに寄せ当てたり、コンタクトで我慢できるシーンが増えてて嬉しかった。セットプレイの球質も変化。少し昔の俊輔みたく強くこすり曲げ落とす。球速も意識

天野純はホントに「ここが足りないなあ伸ばさないとなあ」と思った部分が、数試合後には公式戦で必ずその部分に取り組んだ成果を示してくる。一歩一歩、ゆっくりでもコツコツと着実に。だから観ていて楽しい。今季は中軸、中心選手として期待してる。やってあたり前。簡単には褒めないからね!

超ワールドサッカー@ultrasoccer

【試合後コメント】横浜FMのアンジェ・ポステコグルー監督、敗戦の中に収穫あり
http://web.ultra-soccer.jp/news/view?news_no=304487
─掲げるスタイル
「時間はかかるが、落とし込んでいきたい」
─イニシアチブを握るスタイル
「やり方を信じることができれば、より良いチームになる」
#fmarinos #Jリーグ #Jリーグ開幕 #超WS

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「自分たちのスタイルを最後まで貫くことができた。両チームにとっても、良い練習試合になったのではないか」アンジェ監督

「まだ始動から3、4週間だが、選手たちはダイナミックなサッカーをしようと良く頑張ってくれている。今日の試合の中でも、何度かそういう時間帯を作ることができた。時間はかかると思うが、これから落とし込んでいきたい」アンジェ監督

Q.開幕までに詰めたい部分は

「何度かチャンスを作れた。一番大事なのは、選手たちが(戦術的な)理解力を高めること。それを高めることができれば、もっと良い展開ができ、より多くのチャンスを作れて、シーズン中に多くの得点を挙げられると思っている」アンジェ監督

「攻撃だけでなく、守備でも圧倒してアグレッシブに行きたい。最初の2、3週間の準備期間では選手も半信半疑だったと思うが、この1週間で少し進歩した姿を見ることができた。今日の試合を終え、もう一歩、この方向性を信じることができればより良いチームになっていく」アンジェ監督

Q.戦術面におけるボールの受け方は

「もちろん全選手に役割がある。シーズンを通して、ポジションの入れ替わりがあるだろうが、ポゼッションをするためには距離感が重要。その中でも、幅や高さを取らなければいけなくなる選手が出てくる」アンジェ監督

 

ゲキサカ@gekisaka

“結構怖い”守備…横浜FM飯倉「違和感というか慣れない部分はある」 https://web.gekisaka.jp/news/detail/?238011-238011-fl… #gekisaka #jleague

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「最終ラインと俺のところは、違和感というか慣れない部分はある。やっていく中で調整して、より良いものにしなければいけない」飯倉大樹

「ハイラインだから、あそこ(失点シーンのDFライン背後への縦ポン)はGKがカバーしてくれというのは監督から言われていた。チャレンジしないでピンチを迎えるよりも、失点してしまったけどチャレンジしたことに意味があったと思う」飯倉大樹

「今まで以上に自分の運動量やタッチ数は増えると思う。自分のゴールを守るのがGKとしては一番大切だが、高い位置を取ることで(頭上を抜かれる)ロングシュートを浴びるリスクもあるので、結構怖いw」飯倉大樹

「失点の場面も、ああいう形になったけど、もっと良い方法があったと思う。今シーズンは、ああいうシーン(ハイライン背後への縦ポンにGKが対応する局面)がかなり増えると思うので、良い方法を模索して、あれが失点にならないようにしたい」飯倉大樹

――試合前にも試合後にも書いたが、飯倉のコメント通り「ああいうシーン、ピンチ」は今季このやり方を曲げなければ頻繁に狙われ絶対に増える。だから開幕前のテストマッチでそのシーンが出て、ただのピンチで済まず失点という形になったのは大きな収穫。より真剣に「どう対処するべきか」を詰められる

――個人的には「GKが飯倉でいいのか」よりも圧倒的に「中澤とミロシュのセットでリスク&リターンの収支は合うのか」が問題である上に、それが勇蔵でも仮に朴正洙が残留していても新井一耀が戻っていても解決には至らないだろうと思うのだが。みんな反転アジリティ、スピードないから

なので生駒仁のプレイはまだちゃんと見れてないから期待するのは時期尚早に過ぎるが、高卒ルーキでも全くのノーチャンスではないと思ってる。本気で1年目からボスの求めるスタイルへの理解と適合度を高めポジション狙って欲しい。今までのマリノスではあった序列の壁は既に崩壊しつつある

西山大雅は昨季のユース数試合を観る限りだけど、空間認知と反転アジリティのハイラインあんま高くないんだよな…。でもチャンスには違いないから、頑張って

CFGとアンジェの示し求めるスタイル方向性――ハイプレス&ハイラインも、自陣ビルド&幅と奥行きを使うコンビネーションも「今までのマリノス」「今までの序列」そのままでは再現は不可能。選手個々が相当な変化を受け入れレベルアップしない限り。だから取捨選択、適者生存、新たな補強は不可避

「これまで通りのマリノス」なら、こんな変化は絶対的に受け入れられなかった。選手がクラブや新しい監督のスタイル方向性に合わすのでなく、その逆があたり前だった。監督に求められる資質はまず「中庸、妥協、諦観」既存選手に擦り寄る事。その「マリノスらしさ」は、この2シーズンでほぼ破壊された

CFGと監督が求めるスタイル方向性に適合しない、適応しようとしない選手はチームを去るしかない。マリノスは少しずつ着実に変革を進め「普通のクラブ」になりつつある。一部に反発は根強いが、選手もファン・サポータも少しずつそれを理解し受け入れつつある。それが正解か否かではなく、その事実を

「理屈は分かるが感情的に受け入れ難い」ものは、絶対に残る。それは仕方ない。選手にはそれぞれ異なるサッカー観やプロ意識があり、ファンにも共有し積み重ねてきた歴史、選手への思い入れもある。ただマリノスはクラブとして、変革の道を選び進んでいる。歴史の歯車は動き出した

2018どんなシーズンになるか、結果は全く予想ができない。悲観的になろうと思えば幾らでも可能ww ぶっちゃけ戦力的な補強は乏しくマイナス評でも反論は難しい。「このスタイル方向性を受け入れられないなら出て行け」結果、単純に個の総和が低下し勝てなくなりました――別にそうなっても不思議はない

それでも今は、残った選手たちは「今まで通りのマリノスじゃあ限界あるよね」と昨季リーグ終盤の内容と結果を受け入れて、真摯に変革に取り組んでいる。そんな中でも、その流れに適合や適応が追い付かず居場所を失う選手はボロボロ出てくると思う。悲しい事だが、それも受け入れていかねばならない

だから不安も山盛りだけど、マリノスが本当に強いクラブ・チームになるため不可避の変革として、この激動のシーズンを見守りたいと思う。そしてベテランも高卒ルーキーも含め全ての選手に「これまでのマリノスらしさ序列など既にないのだ」という認識の下、貪欲にポジションを奪い合って欲しい

2018シーズンはマリノスが生きるか死ぬか、今後10シーズンを左右する運命の分かれ道。DAZNマネーによる格差拡大リーグ潮流もあり、ここでしくじったらリカバリは絶望的に難しいかも。理屈として正しい方向性や哲学が、必ずしも正しい結果を保証しないカオスなサッカーという競技――

いやあ2018シーズンのマリノス、これは超ドッキドキですね! ヤバいね! なんか今から情緒を安定させるための身体に悪くないストレス解消法とか、気分転換の趣味とか(←YOUにとってマリノスとは?) なんか見つけておいた方がいいかもね!

――ドッキドキなのはハイラインだけじゃないよ!

★新春★【エリクは攻守のプレイモデル(原則)を選手たちに与え植え付けてきたが、それはベースとなる原則であり、そのベースの上に如何なるプレイを選択しゲームを作るかは選手個々の判断、責任において為される。「ルールを守っていれば叱られない」ピッチは小学校ではない。自分で考え、決断しなければ by 蒼井真理】 about エリク横浜3シーズンの総括(4)

f:id:harukazepc:20170419105933p:plain蒼井真理

★新春★エリク横浜3シーズンの総括シリーズ


■エリクのパーソナリティ

エリク・モンバエルツ監督の志向と嗜好と思考。類型的にどんなタイプの監督で、彼の監督としての特性や人間性マリノスに何を残したか。そして彼から何を学んだか

・諦観と中庸の指揮官

ある種の割り切り、目の前の与えられた状況を受け入れ偏りないバランスを重視したチームマネジメント、育成。実にオーソドックスで普遍的、流用性あるベーシックな型を落とし込む教育者タイプの監督

監督の類型、特徴を測る視点として「短期・中期・長期視点におけるリソースの割り振り」がある

【短期】目先のゲームでの勝利、勝点効率。最適化
【中期】チームスタイルや戦術的柔軟性の確立
【長期】1、2年先も考え「必要な選手」の起用と育成

例えば、クラブの方向性や監督の志向として「しっかり後方からビルドアップしてポゼッションの質と実効性を高め、どんな相手にも主体性を持ったゲームができるチーム作り」があるが、現状のチームと選手が出来ていない、そこに強みがない場合にどうするか

【短期】目先のゲームでの勝利、勝点効率。最適化

これを最優先に考えリソースを大きく割くと「実際問題できない、試合でやろうとすればリスクが高いから縦に蹴る。あるいは特定のキープ力ある選手に依存し、今あるチームと選手の強み(例えば堅守速攻、セットプレイ)の最大活用を要求する」

【中期】チームスタイルや戦術的柔軟性の確立

これを最優先しリソースを大きく割くなら「部分的に方向性に適合性の高い選手の抜擢はあるが、基本は現状のチーム序列(実績経験値)に従いレギュラ固定し、プレイモデルや戦術の反復練習で熟練度、連携力などの向上を図り試合における再現性を高める」

【長期】1、2年先も考え「必要な選手」の起用と育成

これを最優先しリソースを割くなら「現在のチーム序列より、先々より理想に近い高い完成度を目指して経験値や信頼性は低くともポテンシャル適合性の高い選手を積極起用して中軸選手足り得るまで我慢して育てていく。当然、短期的な勝率は低下」

エリクの監督としての特徴・資質は間違いなく【長期】先を考え「必要な選手の起用と育成」にあり教育者タイプだが、そこにリソースを全振りはしない。育成でなくプロのトップチーム監督である以上、目先の結果も大事。【短期】【中期】【長期】にバランス考えリソースを振る、中庸の将

樋口さんも中庸の将であったが【中期】にリソースを大きく割いた。彼も嘉悦さんも「マリノスのスタイル確立」を最優先課題、チームのフレーム枠組みを作る。それにより継続性を獲得し、編成に際しても「今のチームにどのタイプの選手が足りないかを明確化して獲得する」指針を得るため必要な過程だった

エリクは、よりバランス中庸派。それは彼の指導者としての長い経験が培った「諦観」によるもので、自らの志向や趣向を優先する事はなく、与えられた目の前の現状と要求を受け入れてバランス維持とベースアップに腐心した。だからこそ1年目は、なかなかエリクの色や果たす仕事の意味が見え難かった

樋口さんはホント監督には珍しいほど馬鹿正直なお方で、就任直後から試合後の会見でも、かなり隠し事なく素直に「やろうとした事、実際の可否をどう捉えているか」あけすけに語ってくださったから、答え合わせは凄く捗った。エリクは最初あまりヒントをくれなかったが、3年目になると喋るようになった

なんとすれば俊輔と中澤の2大レジェンドを同時にピッチに起用し「やれるサッカー採用できるスタイル」は制約も多く限定的。樋口さんもエリクも、マリノスの監督に求められるのは「諦観と中庸」であるのは前提であり一定仕方ない。その中で理想を求めたり、要求に応えていかねぱならない

無論、俊輔も中澤も「チーム作りを邪魔する害悪」ではなく、彼ら1人で勝点+8とか失点-10とか破格のアビリティと問答無用の実効性を持つ。別に昔の名前と人気だけでクラブから起用を義務付けられていた訳ではない。チームが勝つために、樋口さんもエリクも彼らを信頼し起用してきた

チーム作りにおいては制約もある彼らを起用し実効性は最大限活用しつつ、且つチームが持続可能性を持ち成長しスタイル確立し、若手も含めベースアップしてレジェンド2人への依存度を少しずつ下げながら再現性ある(偶然でなく狙ってできる)プレイモデルやチーム連携を構築するのが、求められた仕事

――改めてホントに樋口さんもエリクも、ミッション・インポッシブルだったと思うよw 無理ゲー要素満載。でも仕方ない過渡期、変革期のマリノス中村俊輔中澤佑二という偉大なレジェンド2人を抱えたクラブの、至福の代償。不可避の難題。今ようやく乗り越えようとしている

エリクの監督としてのマネジメント・スキル、人心掌握やモチベータという側面には正直、私も不足を感じていた。「人たらし」「その気にさせる」資質が低く、教育者タイプ丸出しと言うか。例えば俊輔をボランチ起用して気持ち良くプレイさせるため、もっとマシなアプローチがあったんじゃないかとか

昔から俊輔のアンチがよく言う「攻撃の時はボランチの場所と仕事、守備の時だけトップ下のポジション」の指摘は一面の真実だ。俊輔は自分の得意なプレイ、やりたいゾーンを選択する傾向はある

俊輔は2013シーズン、トップ下で素晴らしく守備を頑張り貢献しチームを鼓舞した。ただそれは、あのチーム守備組織においてトップ下は最も「フリーマン」要素が高く、他のポジションより「絶対的なタスク」が少ない。自分の判断で「周りを助ける」事ができるポジションだったからでもある

マルキがプレスに行けばフォローする。ボランチが晒されピンチと思えばプレスバックして助ける。イヤな言い方をすれば「自分自身には絶対的なタスク責任はないが、周りを助ける事で評価される」美味しいポジション。不手際やサボりは見えにくく頑張りは見えやすい「あんなに俊輔が守備してる!」と

部活や職場にも、そういうポジションに上手く収まってる世渡り上手は普遍的にいる。絶対責任はできるだけ上手に回避して「フリーマンお助け役」であちこちに顔を出して感謝されるポジション。いや、2013シーズンの俊輔がそうだったとは言わないし、それはそれで実効性あれば組織の機能性

――また話が脱線しつつあるが、つまりですね「中村俊輔がそういう気質で」「守備ではボランチとして絶対的な責任を負いたくないけど周りを助けるのは好きだし上手」「攻撃では相手守備ブロックの内側で受けるの苦手だけど引いて受けて捌く実効性はリーグ屈指」なのであれば、エリクは「君のやってる仕事と資質はボランチレジスタ)のそれだからトップ下でなく明日からボランチね」とは言わずに「いいだろう俊輔、君は偉大なトップ下だ」と言って “そのまま同じ仕事をさせて” ただ実質的なレジスタとして最低限必要なタスクだけ要求すれば良かったんじゃねーのと

「本人はトップ下に拘るけどやってる仕事は実質ボランチレジスタ)」なんて何年も前から周知。今更それを指摘しトップ下という「肩書き」でも俊輔にとっては大事な称号を剥奪せず、不足は「ボランチの」三門雄大あたりに補完させりゃあ良かったんじゃねーのかと。それで誰も不幸になんない

エリクが縦の運動量やインテンシティを評価して起用した三門雄大からして「俺がトップ下?」と違和感抱いて、後の移籍に繋がったあたりもうエリクの教育者タイプ丸出し! 俊輔の乙女心、ロマンが分からない! 「だってオメー実質ボランチじゃん?」それだけは言っちゃダメなヤツだった!

ただエリクを擁護するならば、エリクに求められたタスクは先々も流用可能な「プレイモデルの落とし込み」であり「あたり前の原則」の周知徹底。「このポジションの選手はこのタスクを果たさねば起用できない」そこは選手たちに教え要求していかねばならず、最初から例外アレンジ認めるとどっちらけ

「過渡期における脱依存、新たなベースとなるプレイモデル構築のため不可避な施策」「とは言えもう少し皆が気持ちよくプレイできるアプローチあったんじゃねーの」「結局、その後も俊輔は起用し続けたしトップ下を認めたし」私としても、この問題は未だに明確な評価是非は出せてない。正解はない

――その辺りも全部含めて、エリクの「中庸と諦観」 以下にそれを象徴する印象的なエリクの言葉をいくつか引用する

「私が(PSG監督時代に)下した唯一の大きな決断は、チームのスター選手だったスシッチを先発から外しベンチに座らせたことだ。(中略)彼を外したのは間違ってなかったと思うし、あの決断をしたことには誇りを持っている」エリク・モンバエルツ

「とはいえ、ある意味そんな事ができたのは私がまだ若くて世間知らずだったからだ。だからファンやパリのメディアのプレッシャを意に介さず、スシッチを控えに回すような真似ができたんだ」エリク・モンバエルツ

「(監督続投に選手から反発があった事について)この世界でやっている限り、あり得る事。選手の中には試合に出られないことへの不満、私が実践しているサッカーへの不満など、様々なケースがある。それは世界中どのクラブでも同じで、サッカーの世界ではノーマルな事だ」エリク・モンバエルツ

与えられた戦力と目指す方向性に乖離があっても、それを擦り合わせていくのが監督の仕事。スター選手とも上手く折り合い付き合っていく。それでも上手くいかない事もあるが、現実は現実として受け入れ、少しでも与えられたタスクの達成度を高めるための取り組みを続ける。そのために必要な諦観

エリクが3シーズンで残したものは「若手の成長」と語られる事が多いが、先の総括で述べた通り最後は編成に拠って成された部分が大きく、朴正洙前田直輝も敬真も賢星も、今季チームにその名前はない。喜田も昨季最終盤はポジションを失い、このまま彼が埋もれればエリクの「若手育成」は何だったのか

より大きなエリクの仕事、遺産とはプレイモデルの落とし込みを中心とした「過去のマリノスの慣習を解体し」「新たな “あたり前” をCFGやクラブの方向性と共有しつつ一定構築した」事だと、今の私は振り返り思う

「ビルドアップは俊さん任せであたり前」「守備は勢い任せのプレスかドン引き最後は中澤さんがなんとかしてくれる」 それじゃ2人がいなくなったら、お前らどうすんだと。1人ひとりが正しいポジショニングや、ビルドや守備のスキーム(プレイ原則)を理解し、組織的に出来るようになりましょうよと

ビルドアップは2年目終盤から3年目にかけて大きく伸びた。結局、俊輔がいなくならないと伸びなかった。守備は樋口前監督の最大の遺産を放棄する事になったが「とにかく内を締めろ背後を取られるな」それはある程度徹底された。前に出る守備は全然まだまだ。結局コレも中澤がいなくなってからか

「公式戦でられてないけど練習試合でガス抜きして、この毎日を続けてればいつか上が抜けたら試合に出られるかな」 いやお前ら無理やで。アマチュア相手に “やってる感” だけ得ても無駄。カップ戦で結果出さないと未来はないから死ぬ気でやれやと

マリノスの旧い慣習、なんとなく「それがあたり前」「このままでいい」「だってそれがマリノスだから」でやって来たものをエリクは解体し、新たな土台を構築した。地均し基礎工事で「家」は完成には程遠いから、成果も見え難い。否成果は「ない」先々の成果のための、ベース作り。それがタスクだった

元日の決勝戦後にも書いたが、エリクの仕事が本当に評価されるのは今季あるいは数シーズン先。築いた土台の上に如何なるチームが構築され、結果を残せるか。チームは生き物なので、今後も新たな監督の下でベース部分も再構築作業は随時必要になる。つまり何処までがエリクの仕事か、実に見え難い

それでも私は、エリク横浜の3シーズンを見てきた中で、解体し構築したもの「エリクが残したもの」は確かにあると感じている。過渡期、変革期のチームにおける難しい仕事をエリクらしい「諦観」で時に妥協や諦めもある中で根底はブレずにやり切ってくれたと感謝しているし、彼からの学びも大きかった

エリクから得た最も大きな学びは「与えられた環境、目の前の現実を現実として受け入れる」「結果にも選手にも大きく失望せず感情をコントロールする」そして「過度に期待しないための妥協や諦めもある、思い通りにはならない。それでもチームと選手に対する情熱を失わない」こと

「チームと選手に対する情熱」もっともっとこのチームと選手たちを良くしたい。成長させたい。それが何よりの喜び。指導者としての情熱。日々のチーム練習で、自ら率先して用具を持ち出し設置し、トレーニング中に最も大きな声が出ているのは常に中澤と金井、そしてエリクだった

あれだけ制限あるチーム作りの中で、中心選手やベテランからの反発食らったり、期待した若手がなかなか結果出してくれなかったり上手くいかない事だらけの中で「割り切り妥協し時に諦め」自らの感情をコントロールしつつ、それでも情熱を失わない。エリク半端ない。そんなんできひんやん普通

「妥協する」「諦める」「失望したくないから期待しない」それは誰にでも出来る。でもエリクは、チームと選手に期待し続けた。もっと出来るもっとやりなさいと。私がエリクから得た最大の学び。思い通りにならない事だらけ裏切られてばかりだ。でも期待し続ける。もっと出来る。もっと強くなれると

エリクのパーソナリティ、チームと選手に向き合う姿勢、情熱。それは選手たちよりむしろ「チームと選手に向き合う」私たちファン・サポータこそ学ぶべき点が大きいのではないか。私はそう思う。エリクの遺産は、私たちも引き継げるものであると

■積み残した課題

エリク横浜3シーズンで改めて顕著になったマリノス積年の課題。2017/18シーズン目標に届かなかった理由について思い込み考察

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・ピッチ上の判断と修正力

端的に言ってコレなんじゃねーのかなと。ホント昔から「与えられた仕事と役割は皆がクソ真面目に実行する」「マリノス意外とチャラくない」

でも各々が自分の頭で考え目の前の展開を見て判断し「今何をすべきか」決断実行する主体性の欠如と、コミュニケーション不足

マリノスに「外から来た」監督は、2つの事に驚く。「言われてない事は、驚くほど出来ない。ベースとなる戦術理解や自主性、ピッチでの修正力がない」そして一方、「言われた事の理解は、驚くほど早い。それを実行する責任感と能力は極めて高い」岡田武史も通った道

  • 俊輔や中澤への依存体質
  • 過剰に「約束事」を求める
  • 提示されたゲームプランに従順
  • スコアが動くと常に動揺する
  • 過去の成功体験に縛られる

つまりピッチにおける「変化」「想定外」への適応力が低い。誰かに思考判断決断を委ねる、自己責任の放棄

この指摘の背景部分は、2017リーグ戦総括やエリク横浜3シーズン総括でも触れてきた。「成功を積み過ぎた」とか「ある程度選手に投げて普通にやらせたらエリク初陣で川崎に大敗」「止む得ずプレイ原則でガチガチに縛り樋口監督最大の遺産放棄」とか

――結局のところマリノスは長くキャプテン資質の高いリーダをピッチに欠いて、松田や上野良治や中澤や俊輔といった「キャプテン資質はないが個の強い選手」の志向、彼らが自然と作り出すチームの方向性や展開に何も考えず付き従う癖が半ば伝統的に培われてきた

「キャプテン資質ある選手」とは、俊輔や中澤のような個の強い選手たちとコミュニケーションを取りつつ、チームとしての方向性をまとめ上げて「今はコレで行くぞ!」と言語化して周囲に伝播できる選手のこと。俊輔や中澤にはない。“話しまとめ上げ言語化し伝播する” そのスキルの何処かが欠けている

だからマリノスは、個の強い選手たち彼らの志向と思考に基づきプレイで示す方向性を「空気を読んで察知し」付いていく、互いにコミュニケーションを求めず「なんとなく俊さん任せ」とか「大体いつも通り」スキルを磨きずーーっとやってきた

各々が自分で「今何をすべきか」考え決断したり周りと擦り合わせる習慣が乏しいから「スコアが動く」とチームが動揺しやすい。珍しく前半10分までに先制できた。畳み掛け追加点を狙いに行べきか、一度ゲームを落ち着かせるべきか。前と後ろで判断がバラバラになったり

同じ勝ちパターンを繰り返した事で成功体験に縛られ「前半ゼロでも大丈夫」と上手くいってない攻めに安穏としたり、先制されたら詰んだり、早く先制できてしまったら逆に動揺したり。全部エリク横浜あるある

「試合中は次々に変化する状況を瞬時に判断してプレイせねばならない。決断するのは選手たちだ。何千もの選択肢ある行動の1つひとつを監督が決める訳にはいかない。ベースとなるゲームプランは提示するが、ピッチで決断し、ゲームをコントロールするのは選手たちだ」ハリルホジッチ

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ハリルホジッチ代表でも、全く同じ課題と向き合ってて笑ってしまった。何年もサッカーやってA代表や欧州クラブ在籍するような選手たちですら、この有り様。もう日本人の文化教育、やっぱそのレベルから見直すべき問題なんスかねえ…

「ついつい空気を読んでしまう」「強い自己主張は忌み嫌われる」「誰が場の主導権を握っているか察して追随する」「察するものであり改めて話し合う事を省略する文化」「組織の(暗黙も含めた)ルールから逸脱しない」「ルールを守るのは得意」「自己責任で判断決断するのが苦手」

でもそれは日本人の美徳であってもサッカー的な思考や文化ではない。刻々と変化する状況に、各々が自己責任で判断決断してプレイ選択しなければならないし、展開に変化があればコミュニケーションを取りチームの方向性を定めなければならない

個の強い選手任せだと「大体いつも通り」の時は問題ないが、変化や想定外の事態に上手く対応できない。「いつも通り」じゃない空気になると、皆の感じ方は違ってくるから齟齬が生じる。イメージする方向性「今すべき事」がバラバラになったり、思考や行動がどんどん受け身に後追いになる

会社でも軍隊でも、究極的には「個々の判断やコンセプトが優れているか否か」でなく「全体が同じ方向性を共有し1つの有機体として連動し行動できるか」が、組織としての強弱を決定する。それはサッカーチームも同じ事。それと同時に個々の局面では完全に独立した個の判断と責任感が求められる

エリクは攻守のプレイモデル(原則)を選手たちに与え植え付けてきたが、それはベースとなる原則であり、そのベースの上に如何なるプレイを選択しゲームを作るかは選手個々の判断、責任において為される。「ルールを守っていれば叱られない」ピッチは小学校ではない。自分で考え、決断しなければ

「プレイ原則を正しく理解し活用する」「その上で必要と判断すれば躊躇なくその原則から逸脱する」その自主性を持たねば、エリクの蒔いた種も芽も枯れ腐る。監督が変われば要求もディテールを中心に異なってくるのは当然。従順に従うだけでは、成長も積み上げもない

「同じ失敗をするな」それと同じく「同じ成功を繰り返すな」つまり思考停止はダメだ。同じじゃない。相手も違えば展開も違う。勝利の中にも露呈しなかった疵は必ずある。「前半スコアレスでも後半勝負」そんな曖昧な「勝ちパターン」に囚われてはダメだ。ウノゼロの美学、それは単なる得点力の欠如だ

「前半10分に先制できた」何をすべきかは、相手により自分たちの状況やコンディションでも変わってくる。普遍的な正解「勝ちパターン」などない。そんなものが出来あがってきた時こそ今の自分たちを疑わなければならない。だから常に、試合中も試合後もコミュニケーションを取る必要がある

それを誰かに任せてはいけない。新人でも40歳になる中澤佑二に問い質し、要求しなければならない。新しい監督とも「その要求について、この判断はアリか」質問し擦り合わせなければならない。決して「空気を読もう」としてはならない。最後にピッチで決断しケツを拭くのは自分なのだから

キャプテン資質のある選手がいないのは問題だ。しかし喜田拓也、あるいは今なら飯倉大樹に主将を任せるのは悪くない判断だと思う。仮に喜田がピッチに立たない試合があっても構わない。彼はそれでマイナスの影響を受けるタイプでなく、更に日々のトレーニングから責務を果たそうとするだろう

ゲームキャプテンは、現ブラジル代表のように「持ち回り制」とし個々の自主性や責任感を喚起するのも今のマリノスには悪くないない。全員がキャプテンの意識で、誰かに依存したり誰かが背負い込み過ぎる事も必要ない。俊輔と齋藤学に主将を任せたのは、あまり良い判断ではなかったと私は思う

マリノスに残った選手たち1人ひとりに、強い責任感と自主性を持ちピッチに表現して欲しい。トレーニングからもっと声を出して厳しく要求し合って欲しい。思考判断決断を、決して誰かに委ねない事。それが出来て初めてエリクの残したものも次に残る。正解はない。それを決めるのは常にピッチの選手だ


最後に

――ようやく俺の2017/18シーズンが終わった。いやあ最後に10番が隣街にゼロ移籍しちゃう超絶な「引き」含め濃密なシーズンだったね! エリク横浜3シーズンを振り返っても、3年間掛けてこそ見えたものが沢山あって感慨深い

さあメシにしよう

小学3年時の「ヘチマ観察日記」以来のやり切った感。やればできる子だが、基本やらないスタイル

俺の2017/18シーズンもようやく幕引きできたので、あけましておめでとうございます。2018年も「ウソ、大げさ、紛らわしい」蒼井真理をそれとなく宜しくお願いします

そもそも「批評」などというものは対象の副次的な楽しみ、読み物でしかない訳であって「解や正しさ」はそこにはありません。マリノスの、サッカーの解や正しさはスタジアムの中にあります。ピッチの選手のプレイにしかありません。極論、試合後の監督や選手コメントさえアレは副次的なソレです

言語化の不可能なサッカーという競技は言語化しなければ語り合い批評する事ができないパラドックス。近年はデータ活用が急速な進歩を見せ数値化「可視化」も進んでますが、おそらく私たちが生きている間は「その数値の取り扱い」どう捉え判断材料とするかに絶対解はでないでしょう

「あの時のあの選手のプレイがこんな意味があった」言語化、あるいは数値化されたそれは、何処までも「超多面体であるサッカーというカオスな競技の1シーンの極めて限られた一面」を切り取ったものに過ぎず、網羅は不可能。且つ同じ言葉や数値でも人により捉え方は異なる。正確な定義付けは不可能

でも人は言語化しなければ語れない――そもそも評価のための「思考」すらできない。だからサッカーを語る言葉は、基本全部ウソです。真理などありません

それでも人はサッカーを語りたい、語らねばならぬので言語化する。私みたいに理屈っぽい人間や、言葉を使い選手を指導し統率しチームを作らねばならない監督も「まず自分が納得できる解釈」ストーリ作りをする。私の備忘録も監督の会見コメントも、あれは脳内で作られた物語。サッカーの本質ではない

他人より先に「自分を納得させる」「もっともらしい」勝敗の理由付けだったり、試合展開や選手の評価をストーリに仕立てる。批評者も監督もペテン師の同類。言語化不可能なものを「さも真実のように」言語化して、自分と聞く者とを納得させる。そうしないと解釈も評価も批評も指導もできないから

だから監督が選手が数値が蒼井がこう言ってるから「そうなんだろう」は間違いですよと。マリノスの、サッカーの解や正しさはピッチの選手のプレイにしかない。あなたが見てあなたが感じたものが、あなたにとっての正解。他人の作った物語なんて、ホント副次的な楽しみのための価値しかない

本当に自分にとって大切なものは、自分の目で見て、自分のアタマで考えよう。周りの意見を見るのは「その後」にすべきだし、安易に無批判に受け入れるのは宜しくない。それは俊輔や齋藤学の移籍についても同じ事。まず自分で見て考える事。大切なものについて他人に同調する必要なんてない

他人の意見は自分と違ってあたり前。だから同調も無批判の受容も、そして排除も必要ない。「そんな事を言うな」「こんな事を言う奴はいなくなるべきだ」それがどれだけ社会にとって危険な思想か、もう少し歴史から学ぼう。判断材料、ニュース発信源は多いに越した事はない。判断するのは自分だから

「自分にとって都合のいい耳障りの良い情報だけを求め」「そうでないものは排除しようとする」「目と耳を塞ぐだけでなく存在すら許容しない」それやってると何度でも同じ過ちを繰り返す。自分は常に正義の側にいると思う人間こそが、最も愚かで残忍になれる

蒼井真理は2018シーズンも藤井さんの記事に期待してます! でもプレミアム課金は、もう少し考えさせてくれ…

★新春★【目に見える形でチームの若返り、世代交代が進んだのはエリク3年目の2017シーズン。編成により成された部分が極めて大きい事は明らかだ。過渡期、変革期ってヤツですか。だから2018年、2019年は激動のシーズン間違いなし。 by 蒼井真理】 about エリク横浜3シーズンの総括(3)

f:id:harukazepc:20170419105933p:plain蒼井真理

★新春★エリク横浜3シーズンの総括シリーズ


ここから先はデータや証言ベースでない、より主観的な印象論――つまり蒼井の「思い込み妄想、仮説」「こう考えると俺はしっくりする」「作られたストーリ」をテーマ連投するので、くれぐれも「ああ、そうだったんだ」と鵜呑みにしないで欲しいなと思う

思うだけで感じ方は強制できないが

■エリクの若手育成と世代交代

  • 実際どれだけ若手を起用育成し
  • チームの戦力とし落とし込めたか
  • カップ戦と練習試合
  • 世代交代は成されたのか

「(自分が監督を務めた3シーズンで)多くの若い選手たちが成長した。そのことが私にとって重要なこと。今の方向性を、是非これからも続けていって欲しい」エリク監督

エリク横浜、最後の試合となった天皇杯勝戦後の会見で

「若い選手が多く活躍したのは、エリクが監督だったからというのは大きいと思う。新しく監督を迎えるが、マリノスはまだ若い選手が多い。彼らをもっと成長させ、勝利に拘る監督を迎えるべく人選を進めている」古川宏一郎社長 エリク退任発表に際して

「私は(欧州基準の今後のベースとなる)プレイモデルをチームに落とし込む役割を与えられマリノスにやって来た。加えて若い選手がトップチームで試合に出られるようにする事も重要な仕事だった。なぜならマリノスは育成組織も充実しているクラブだから」エリク監督 退任発表に際して

・リーグ戦での若手起用実績

巷では「樋口は3年間レギュラ固定して若手をテストしたりチャンスを与えなかった」「そのためチームの世代交代は進まずそのツケをエリクが払った」「エリクは沢山の若手を起用し育てた」という論も多いが、果たして事実に即しているのだろうか?

樋口体制3年目の2014シーズン、23歳以下のリーグ先発はゼロ。24歳の佐藤優平がシーズン終盤に出場機会を伸ばし、10試合スタメン出場したのが目に付くぐらい(齋藤学も同年齢だが、学は既にレギュラ中軸選手)…ただこのシーズンのマリノスは編成自体が高齢化していた

背景として、前年2013シーズン最後までリーグ優勝を争い一歩届かず。2014は「世代交代」より、補強や起用も「実績重視、今季こそリーグ優勝」となったのも妥当。カップ戦もナ杯でなくACL天皇杯優勝もあり準備期間や日程含め、とにかく余裕がなかった

エリク横浜1年目の2015シーズン。23歳以下では喜田拓也(21歳)がリーグ戦20試合に先発。アンドリュー(22歳)が3試合に先発したのみ(アデミウソンは別枠だろう) このシーズンも即戦力が期待できるような補強や加入なく、ほぼ前年戦力そのままではあったが――

エリク横浜2年目の2016シーズン。22歳の喜田が25試合、朴正洙が12試合、前田直輝が7試合に先発。23歳の敬真が11試合、新井一耀が4試合スタメン。ユースから昇格した19歳の遠藤渓太が9試合に先発は特筆事項。多くの若手選手が、ナ杯GLでのテストとアピールを経て出場機会を得た

エリク横浜3年目の2017シーズン。新たに23歳以下でリーグ先発を伸ばしたのは、23歳ミロシュ25試合、ダビの15試合、前田直輝7⇒10試合、22歳イッペイ2試合の4人。朴正洙、敬真、渓太、新井一耀は前年よりリーグ先発機会が減少し、新井は夏にローン移籍を選択した(後に完全移籍)

その一方で2017シーズンはリオ世代24歳の両SBが新加入。松原健が22試合、山中亮輔が19試合にリーグ先発。決して年齢的に若手ではないのだが、26歳の天野純が33試合、扇原貴宏が18試合スタメン。オフに多くの中堅ベテランがチームを去った事もあり、相対的にチームの若返りは進んだ

――こうしてエリク横浜3シーズンの、リーグ戦における23歳以下の先発数を改めて検証し改めて実感するのは、チームの若返り世代交代に重要なのは「編成による新陳代謝」であり、与えられた戦力でやり繰りするしかない監督の果たす役割は極めて限定的である、という事だ。それに尽きる

◇選手の成長ステージ
1.ブレイクスルー(突破・進歩期)
2.デベロップメント(発展・成長期)
3.ピーク  (完成・到達期)
4.トワイライト(晩年・黄昏期)

2017新体制発表、利重チーム統括本部長(当時)のプレゼンによる定義

エリク1年目に若手で抜擢されたのは喜田拓也くらい。そもそも樋口体制を引き継いだ戦力に『デベロップメント(発展・成長期)』の選手は少なく、チームは『トワイライト(晩年・黄昏期)』『ブレイクスルー(突破・進歩期)』両極端の占める割合が高く “ベテランとヒヨコ” に偏っていた

2年目は、当然エリク自身も編成に参画し、自ら期待する『ブレイクスルー(突破・進歩期)』キャリアの乏しい選手たちに多くのチャンスが与えられた。しかし、それらの選手でエリク3年目も出場機会を伸ばし、来季以降もチームに在籍する選手は残念ながら、極僅かである

3年目は『ピーク(完成・到達期)』を過ぎ『トワイライト(晩年・黄昏期)』を迎えた選手たちが多くチームを去り、チームに不足していた伸び盛り『デベロップメント(発展・成長期)』の選手たち(ミロシュ、松原、山中、扇原)が加入する編成が成され、彼らは4人ともリーグ18試合以上に先発した

3年目はエリクにとっても1つの区切り決算期であり一定の結果を求める。ACL圏内、カップ戦タイトルという目標も掲げた。“ヒヨコ” のまま計算出来ない、結果を出せない選手はリーグ戦の出場機会を失う(それはリーグ終盤の喜田も然り)天野純は自力で『発展・成長期』まで歩を進めた希有な例

目に見える形でチームの若返り、世代交代が進んだのはエリク3年目の2017シーズン。だが振り返れば、それはエリクの若手起用育成よりも、編成により成された部分が極めて大きい事は明らかだ。「監督は与えられた戦力でやり繰りする中間管理職」という前提は忘れるべきでない

「年齢でサッカーをする訳じゃない」「世代交代は契約書でなくピッチで」「ポジションは与えられるものでなく奪うもの」その言い分も解るし、選手1人ひとりの心構えとしては大事な考え方だろう。しかし編成する側は、そうはいかない。世代交代は現場、監督主導では決して成されない。それが真実だ

「一定のスパンでチーム作りを考える中で、勝つ確率を追い求める作業と育成の割合(折り合い)をどのようにつけるかが、私たちフロントの役目。極端な話、現場主導では世代交代は進まない。フロントが強く意識しなければダメ」鈴木満 鹿島強化部長

「監督から様々な要望を出されたとしても、チームとして若手を育てたいと思うなら、言い方は悪いが “この選手しか与えない、彼らを我慢して使わざるを得ない” シチュエーションを作り出すのが最大の近道となる」鈴木満 鹿島強化部長

「敢えて層を薄くして育てたい選手が試合に出やすいシチュエーションを作る方法もある。戦力は選手層が厚ければ良いというものではない。選手を取れば全てプラスになるとは限らない。『いかに外すか』もチーム編成には重要なポイントで、現場任せにしてはいけない」鈴木満 鹿島強化部長

俺は本当に鈴木満が好きだなあ。

・カップ戦と練習試合

これ↑は若手起用育成、世代交代の本質でなく「手法」であり、本テーマの結論は書いたから蛇足でしかないんだけど。エリクの手法の特徴的な、前任者たちとの違いだからサラッと振り返り検証する

エリクは就任1年目から3シーズン共に「ミッドウィークのカップ戦」ナ杯ル杯GL、天皇杯の2~3回戦は、直近のリーグ戦からメンバほぼ総取っ替え。経験の少ない若手を中心に起用し、多くのルーキがデビュを果たした。そしてリーグ戦で出場機会を得られてない中堅ベテランはヒヨコのお守りに四苦八苦

ナ杯ル杯2年目は見事にGL突破を果たし「榎本哲也の大会」として私は印象深く記憶に残しているが、1、3年目はGL敗退。特に1年目は「入場料を取る公式戦で練習試合か」という批判も少なくなかった。私もそう思っていた

その一方で樋口監督時代までは慣習的に実施されていた「リーグ戦翌日のBチーム練習試合」は一切行われなくなり、リーグ戦で出場機会を得られない選手にとってアピールの場は非常に限られたものになった

選手たちからは「試合勘やゲーム体力の維持が困難だ」「アピールの場すら与えてもらえないのは精神的にキツい」という声もあった。樋口監督時代からの変化として、日々のトレーニングでも「レギュラ組とBチーム」を露骨に分け、Bチームは次の対戦相手のダミー役を務める時間が大幅に増加していた

「次の対戦相手のダミー役」なので、トレーニングでは本来のポジション、またレギュラ組に合流した際とは異なるプレイ、タスクを求められる事が多い。つまり日々の練習では「公式戦に出場するためのアピール」がそもそも困難。序列を覆すのは難しい――と選手たちが感じるのも止む得ない所

そして数少ないアピールの場、カップ戦も「リーグ戦の先発メンバから漏れたあぶれ者のBチーム」これまた本来のポジションで起用されなかったり、試合毎にポジションや隣り合うパートナが変わったり。そんな中で確かな結果を出さなければ、リーグ戦出場のチャンスは巡ってこない。基本、無理ゲーである

「私はチームの全選手を信頼している。出場する選手に求めるのはリーグ戦と変わらない、勝つ事だ。リーグ戦にも出たければナ杯でクオリティを示さねばならない。チームは若手が多いが、信頼して出場時間を与える必要がある」エリク監督 2016年

「練習試合やらない」「カップ戦は総取っ替え、経験値ゼロの若手起用」この手法に、私は1年目はかなり批判的だった。選手たちからも不満の声が多く聞こえた。しかし2年目から少しずつ考えは変わり、カップ戦に臨むBチームの選手たちの取り組みも変わった――というか「開き直った」

エリクは選手たちが「公式戦でどんなプレイができるか、結果を示すか」を見ようとし、要求した。選手たちも2年目には「例え無理ゲーでも、この限られた機会、カップ戦で結果を出さなければ」「いつまでも自分はBチーム、レギュラ組の練習相手」「先々チームに居場所はない」と思い知り、腹を括った

それがエリク2年目、3年目のカップ戦におけるBチームの躍動感や思い切りあるプレイに繋がり、2年目はGL突破と若手のリーグ戦出場に、3年目はギリギリ突破はならずも、Bチームの勇気ある挑戦的なプレイが不振のレギュラ組にも好影響を与え、扇原や山中亮輔はリーグ戦出場の足掛かりを得た

振り返ってみれば、樋口監督時代「リーグ戦翌日の練習試合」で私は常に同じ不満を抱いていた。「相手がアマチュアだから、本気でやってない」「ただ “こなしている” だけ」「こんなんでレギュラ奪取のアピールになるものか」と。頑張る選手はいつも特定の選手ばかり(喜田とか奈良輪とか)

だから「練習試合やらない」「カップ戦は総取っ替え、経験値ゼロの若手起用」「そのカップ戦で結果出さないと先はない」エリクの手法は、若手を中心に危機感とハングリーさを植え付けたし、功罪半ばしつつ「少なくとも今のマリノスと選手たちにとって」必要な変化だったと、2年目以降は評価している

「練習試合」や「カップ戦」はアピールの場であると同時に「リーグ戦に出てない選手たちの調整・ガス抜き」の側面がある。エリク以前は、練習試合をなんとなく「こなして」やってる感だけ得て、この日々を続ければいつか試合に出れるかなあ――悪い意味の「ガス抜き」になっていたのでは、と

もちろんコレについては「手法」に過ぎず「結果論」な部分も大きい。2年目にBチームの選手たちが奮起し、GL突破という結果を出したから言える事でもある。その意味で、俺は今でもあの2016シーズンル杯の榎本哲也を格別に評価し、感謝している

今季アンジェ新監督が、若手に対しどんなアプローチをするのか。トレーニング形式は、カップ戦や練習試合の扱いはどうなるのか。全くエリクと同じという事はないだろう。非常に興味深く楽しみだ

中澤佑二と「伝統の堅守」の正体

妄想、思い込み度の高い連投。この1、2シーズンぼんやり考えてきた仮説が、現時点で自分を納得させられる形になったので書き記す

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「(中澤がチームを去る時がくれば)もしかしたらマリノスにある堅守のイメージが失われ、変革期に突入するかもしれない。それは凄く大事な事で、これからも堅守のチームを築くのか、違うスタイルにシフトするのか。シュンさんが昨季でいなくなり、佑二さんも抜けたら変わると思う」飯倉大樹

「今のチームは佑二さんの経験や遺伝子が継承されていて、その影響は凄く大きい。佑二さんがいなかったら、ここまで守備が安定する事はない」飯倉大樹

ほぼ形になってた仮説が「ああピッチレベルでも同じように感じてる選手がいる」と確証に至ったのが『TRICOLORE 2017冬号』の飯倉インタビュ。結構コレは真に迫るつーか際どい内容だから(しかもインタビュアの欲しい答えでなく飯倉の素が吐露されてる)丹念に読み返すべき

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140試合連続フル出場を達成したアウェイ大宮戦の選手評で私は、「中澤佑二は堅守の顔ではない。“堅守そのもの” だ」と記した。この表現はお気に入りで、その後も繰り返し使ったが――

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先に引用した飯倉の言葉。そして「堅守の顔ではなく」「堅守そのもの」が意味するものが、どれだけの人に届いているだろう。ただ中澤佑二の偉大さ貢献を賞賛しているだけではない。その裏側に「堅守マリノスの伝統」の正体が隠されている

2017シーズンのリーグ失点数は36。終盤に大量失点試合が続き、リーグ5位の数値となったが(最小は磐田の30失点)29節終了時でリーグ最小26失点。1試合平均1.0を切る「堅守」を仕切り支えていたのは間違いなく中澤佑二だった

樋口、エリク体制の通算6シーズンの平均失点数は33.2。1試合1.0以下で、常にリーグ最上位の失点数を記録。その6年間、中澤がリーグ戦を欠場したのは1試合のみ。2013年の14節からフルタイム出場を継続。エリク曰わく「私が指揮した3年間、1度もトレーニングを欠席していない」

来月には40歳の大台を迎え、自身「ラスト」と定めるシーズンを迎える中澤を人は「鉄人」と呼ぶ。しかしそんな生易しいものではない――あれは鬼だ。化け物だ。人外だ。普通ではない。一体何がそこまで、彼のモチベーションを保っているものは何なのか。凡百の理解や想像の範疇を超えている

樋口、エリク体制の6シーズンのリーグ戦ほぼ全てにフル出場した中澤佑二。一方でCBの相方は勇蔵、ファビオ、ミロシュ、朴正洙と変わりGKも哲也と飯倉が交互に務めた。勇蔵と組む時は左CB、ファビオ以降は右CB。隣り合うSBも変化し続けた

変わり続ける周囲の中で、中澤だけが変わらずそこに――マリノスのゴール前に立ち塞がる “鬼神” で在り続けた。6シーズン平均 33.2失点の数値が証明する「堅守マリノス」を支えた、最も貢献したのが中澤佑二である事に異論を挟む者はいまい

――さて、そこで諸兄に問いたい。「堅守マリノスの伝統」とは何か? あらゆるものが移ろい変わり続ける中で「変わらなかったもの」が堅守の正体ではないのか。「堅守」とは “マリノスの伝統ではなく “中澤佑二そのもの” ではないのか

2017シーズンも、中澤はCBのパートナがファビオからミロシュや朴正洙に変わり、右SBが堅実そのものであった小林祐三から若い松原健に変わり、GK含めDFラインに大きな変容があった中で、シーズン終盤までリーグ最小失点を維持した。堅守とは伝統ではなく、中澤佑二そのものではないのか

堅守「それは引き継がれ、受け継がれたものだ」と言う人もいよう。では中澤と同期加入で、16シーズンと日々のトレーニングを共にし公式戦でもCBを組んできた栗原勇蔵は、中澤が不在の試合でミロシュや朴正洙と組み「堅守」を体現できただろうか?

16シーズンの年月を共にしても、勇蔵は中澤の真似事すらできていない。堅守の象徴足り得ていない。だがそれは勇蔵が無能なのではなく、「堅守」の正体は伝統ではなく「継承が不可能」なのだ。堅守とは、中澤佑二そのものである

今のマリノスの「堅守」とは中澤そのもの、言うなれば「中澤システム」だ。中澤が長い年月を掛けて培った経験、個の予測や対応力をフルに活用し、同時にそれをチームの中で「最適化」し、チームの守備力と失点防止に落とし込む――

中澤にも得て不得手はある。アジリティ、反転力、スピードの不足は元からで年々少しずつ劣化も進んでいる。それらも全て織り込み、周囲にもそれを補完する働きを要求し、自らの持つ力と経験を最大限にチームのため還元し最適化する「中澤システム」

故に、栗原勇蔵は「中澤の最高のパートナ」1つひとつ説明や要求をしなくても、阿吽の呼吸で分かり合える――にはなれても、中澤佑二つまり「堅守そのもの」には “なれない”

中澤はシステムの中枢CPUであり、周囲が変われば時間を掛けて「自分の形に合わせさせる」事はできる。その逆はない

「監督が求めるものと、ピッチの中でやっている事に食い違いがあった。まずは監督が求める事をやるのが選手だし一番大事。でもマリノスの色もあるし、チームのサッカーもある。そこの部分で戸惑いはあった」松原健

↑コレは今季初の対外試合、アジアチャレンジで新加入の右SB松原健が試合後に残したコメント。私は一読して「ああ、中澤のことだな」と思った。“マリノスの色もあるし、チームのサッカーもある” それは中澤システムだと

「(戸惑う部分については)ベンチからの指示も気にしつつ、気にしないでやっていたw 良い意味で聞き流すというか」松原健

――この松原健の判断は正しい。マリノスのDFラインにフィットするという事は、“中澤佑二に合わせる” と同義だ

中澤が自らの経験と洞察から培った「中澤システム」は、部分的に現代サッカーのトレンドやゾーンディフェンスの定石、エリクの提示した「守備のプレイ原則」と食い違う。だから新加入の(特に隣り合うCBとSBは)最初フィットするのに時間を要する。パンゾーすらそうだった(後に見事に最適化したが

ただ、それは「中澤が監督の指示に従わず自分のやりたいようにやってる」訳ではない。監督の要求とも擦り合わせ「それでも自分のやり方のほうが失点を防げる」という確信の下に、部分的に自己流の手法――中澤システムを使い周囲にも同調を求めている

歴代の監督にしてもエリクも、その有用性を認めればこそ、中澤はフル出場を続けるし、エリクは退任に際し手放しで最大級の賛辞と感謝の言葉を中澤に残した。堅守とは、中澤佑二である

なまじサッカーの戦術的な知識のある人ほど「中澤はビビってラインを上げない」「ゾーンの基本ができていない」などと腐すが、実際マリノスの失点はほぼ常にリーグ最小レベルだ。無論、そのために「捨てている」出来ていない部分はある。しかし監督が起用し続ける、その意味を今一度考えて欲しい

かつて中村俊輔マリノス在籍時「ボンバー1人でシーズン10失点くらい防いでいる」と中澤を評した。アレは誇張でもなんでもなく、中澤の凄みと「マリノスの堅守とは中澤佑二である」事を表現したものだ

堅守マリノスは「伝統ではない」「継承されない」に異論もあろう。しかし、マリノスの歴史を振り返れば

井原正巳
松田直樹
中澤佑二

この3人が「堅守」だった。25年の歴史で、たった3人。この3人の規格外の人外が、堅守マリノスの伝統――という幻想を作り出した

井原正巳松田直樹中澤佑二。それぞれ少しずつピッチに立つ時間を共有しているが「継承」があったと私は思わない。むしろ「新たな堅守」が「旧い堅守」を蹴落とし、自分を中心とした守備組織を構築してきた。周囲を従える「堅守」は基本、並び立たない

――マリノス晩年の井原には、僅かながら「3バックセンターに陣取る松田直樹に使われる」時期があったように思う。それが出来たのも、彼の懐の深さであったようにも

松田直樹井原正巳から、中澤佑二松田直樹から。「コイツからレギュラ奪えば俺は代表CBのレギュラだ」と考えて、マリノスに加入している

ある時期――松田がDFラインで起用されなくなり久しい頃だったと思うが「もう松田とは組みたくない」と中澤が言った――伝聞の伝聞なので、真偽も真意も不明だが、DFリーダの座を奪い、自らのシステムを構築し始めていた中澤の心中は推し量れないものではない

なんとすれば松田直樹は、歴代3人の中で、最も「独特の直感と感性に従いセオリー無視で守り、周囲にも自分に合わせる事を強く要求する」人外であり、良くも悪くも最も天才的だった

堅守とは中澤佑二であり、堅守マリノスの “伝統” とは井原正巳松田直樹中澤佑二であり、彼らを中心としたシステムだ

小村徳男は井原と松田の、勇蔵は中澤にとって「最高のパートナ」であったが、堅守そのものではない

では中澤佑二が、3代目の「堅守」が今季限りでの引退を表明している今、それは誰が継いでいくのか――

「もしかしたらマリノスにある堅守のイメージが失われ、変革期に突入するかもしれない」

飯倉の言葉が解だ。堅守マリノスの伝統は「3人の人外と彼を中心としたシステム」で、継承されない

「クラブは今年創設25周年だが、これだけ長い年月積み重ねたスタイルだけに変わるとなれば痛みや苦しみを伴うと思う。それをクラブとしてどう考えていくか。これからの10年、20年は凄く大事になる。僕自身、楽しみであり不安でもある」飯倉大樹

――飯倉は「堅守マリノスの伝統継承」についても、こんな回答をしている

「日本のサッカースタイルは育成レベルから年々変わってきている。最近のCBにはポゼッションへの貢献要求も高まる一方で、マリノス伝統のゴールを守る強さ、1対1や空中戦の強さとは少し方向性が異なる。だからマリノスの伝統を継承していく事が正解なのか、少し難しい部分もある」飯倉大樹

マリノスの伝統というより、中澤佑二のDNA。同じ手法、スタイルを次の世代の選手に求めるのが正解か――? たぶん飯倉は分かっている。継ぐ事を目指すべきでないし、そもそも継承など不可能だ、と。だからマリノスが大きく変わるのは間違いない。楽しみであり、不安でもあると。

全く同感です

この妄想、思い込み連投で何が言いたいかといえば「個か組織かの二元論」など陳腐である、という事だ。そういった狭い問答を遥かに超えたところに――

中澤佑二という鬼は 立っている

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あれ?「エリク横浜3シーズンの総括」関係なくね? 中澤さんの話しかしてなくね?

…まあでもね、中澤さんはそんだけ特別なんスよ。部分的には、中澤在りきの中澤システムで、プレイ原則の落とし込みできてないとこもある訳で

過渡期、変革期ってヤツですか

だから2018年、2019年は激動のシーズン間違いなし。今年も来年もマリノスから一瞬も目が離せませんね!

★新春★【チームは前向きにチャレンジする姿勢を取り戻し、ここからビルドアップはシーズン後半にかけ目覚まし進歩を示す。柏や鹿島を相手に、自信持って自陣深くから繋ぎ前に運べる程に。指数変化を見ると、やはり中盤期に大きく積み上がった。 by 蒼井真理】 about エリク横浜3シーズンの総括(2)

f:id:harukazepc:20170419105933p:plain蒼井真理

★新春★エリク横浜3シーズンの総括シリーズ


◾️2017新体制 補強・チーム編成

蒼井真理(@aoi_mari)/2017年02月24日 - Twilog

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  • 2010/11以来、激震のオフ。パンゾーに始まりファビオ、哲也、兵藤が移籍。中村俊輔マリノスと決別
  • 扇原、松原健山中亮輔が加入。待望のCFにウーゴを獲得し、始動後にミロシュとダビも加入。5人の外国籍枠を開幕前にフルに埋めた

■エリク横浜3年目 2017シーズン

  • 基本布陣とリーグ出場時間
    FW ウーゴ
    MF 学、天野純マルティノス
    MF 扇原、喜田※
    DF 山中、ミロシュ、中澤、松原
    GK 飯倉

ボランチ先発は喜田20、扇原18、中町17と僅差。天野純も序盤中心に13先発

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  • 2017得点上位選手とスタッツ
    ウーゴ 10
    天野純  5
    マルティ 5
    前田直輝 4
    ダビド  3

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■2017リーグ戦総括

蒼井真理(@aoi_mari)/2017年12月31日 - Twilog

天皇杯ファイナル前夜、大晦日に書いたヤツな。3年目だから3シーズンの総括に直結する部分も大

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  • チームと監督が目指す「スピード・インテンシティ・ポゼッション」を体現する編成(4-2-3-1とポゼッションをベースに両サイドアタッカにストロングポイントを置く)
  • 方向性の明確な編成により「両翼頼み、後半のオープン適性大」「先制できればやたら強い」傾向は、更に強調

――3年目は記憶に新たな部分、3シーズン総括と被る部分も多いのでざっくり以上。

さあようやくエリク横浜3シーズン総括だよ。前振りが長すぎだよ

■「エリク横浜3シーズン総括」本論の本論

□エリクが植え付けようとしたプレイモデル(原則)と、その達成度

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「考え方としては2点。1つは、継続すべきポイントと改善ポイントを整理し、新監督選出の基本スペックとする。2012年以降積み上げてきたマリノスのスタイルを継続しながら、特に弱みである攻撃面を具体的に進化させる。そういうスキルや技術、経験を持つ監督を選んだ」嘉悦朗 2015

「もう1つは選出のプロセスを変える。サッカー界で成功しているモデルを参考にする。具体的には我々が提携しているCFGが持っているノウハウやネットワークを使い、より精度の高い人選をする」嘉悦朗 2015

上記がエリク就任時の嘉悦社長の会見コメント。以下が3シーズンの指揮を振り返ったエリクのコメント↓

「日本に独自のプレイスタイルを持つクラブは多くないが、我々は自分たちのプレイスタイルを確立する事を目的にやってきた。ワイドにアタッカを置き、有効に使っていく。その中でインテンシティを保ちダイナミズムを生み出す――徐々にチームに浸透し、最初の2年より良い戦いができた」エリク監督

「この3年間でチームは戦術的に成長した。我々にはコレクティブ(組織的)なプレイモデルがあり、それを試合で表現できるようにトレーニングしてきた。その結果、ポジショニングや、プレッシャの中でもビルドアップする事や集団でのパス回し、プレイスピードが向上したと思う」エリク監督

――より具体的に、エリクがマリノスに落とし込もうとしたプレイモデル、プレイ原則を再確認し、それを裏付けるコメントを引用してみたい

過去の連投の引用も多いが、重要な部分なので

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■エリク横浜 プレイ原則の再確認
  • 両WHにストロングポイントを置く
  • 奪ってから縦に早く相手の守備が整い切らない(ブロック形成しない)間に攻め崩す
  • プライオリティは「ウラ、前、縦、ワイド」
  • 「ポゼッションのためのポゼッション」の排除
  • 横パスやバックパス「やり直し」ポゼッションはウラやサイドのスペースを生み出すためにある

「攻撃における理想のスタイルは、我々がポゼッションして、プレッシャをかけられてもしっかりビルドアップし、チャンスやゴールにつなげる。ただし、日本でポゼッションと言うとボールを回しキープするというニュアンスで語られる事が多いが、それとは異なる」エリク監督

「我々は常に前に進む事を意識している。ポゼッションにより相手をあるゾーンに引き付けて、それによって空いたスペースに展開し、前に進む。狙いはそこにある」エリク監督

「重要なのはインテリジェンスを持ちポゼッションする事。相手の守備形態がどういう状況か、スペースは何処に空きそうか。それを瞬時に判断して行動する。繰り返しになるが、ポゼッションのためのポゼッションに意味はない。意図を持ちボールを運ばなければならない」エリク監督

◇攻めのプライオリティ

1.相手DFラインの背後(CFやWHのウラ抜け)
2.A:相手DFとMFの間(バイタル)で前を向く形
2.B:WHが前にスペースあり縦や内に仕掛ける形
3.↑何れかの形を作るためのポゼッション

1.極論、エリク横浜の理想は、アジアチャレンジ・バンコク戦の3点目「自陣の扇原からピンポイント・フィードにFW仲川輝人がDFラインのウラに抜け出しGKと1対1を決めた」ゴール。シンプルかつノーリスク。1本の縦パスでDFの背後を取れるなら、ビルドアップなど必要ない

あのフィードを出せるから扇原貴宏を獲得したし、CFには常に相手DFラインとの駆け引きが求められる。故に富樫敬真へのエリクの期待値は高いし、カイケやウーゴも「そういうプレイが得意」と見込んで獲得した

2.A:しかしゲーム序盤やタイスコア、ビハインド展開では相手DFラインも背後のスペースは慎重にケアしており簡単にウラは取れない。なのでCFが相手DFラインと駆け引きしてゴール方向に引っ張り、バイタルのスペースを作り出し、トップ下(インサイドハーフ)や内に絞ったWHが活用する

なのでCF(とトップ下の選手)は、自分がウラを取れる可能性は低くとも常に相手DFラインとの駆け引きを続け、ウラ抜けの動きだしは行わなければならない。それにより相手DFにラインの上げ下げ運動量、精神的な疲弊を強いる⇒ ゲーム終盤の間延びを生む効果も期待できる

2.B:エリクが好んで使う「サイドでスピードアップする攻め」という表現。ストロングである両WHの突破打開力の活用。学やマル、渓太が “前を向き自分の間合いで仕掛け相手DFに後手を踏ませられる” 展開。そこからの縦に深く抉ってのクロス、カットインからのシュート

それを導き出すために、中央3枚のMF(あるいはSB)には質の高いサイドチェンジや「飛ばすパス」が求められる。相手の守備ブロックをボールサイドに寄せ、一気に反対サイドでフリーのWHへ。両翼WHにはスピードと、最後の1枚を剥がしきる単独の突破打開力が強く求められる

「相手が高い位置でプレスをかけてくれば、その背後には必ず大きなスペースがあるから、ショートパスで繋ぐよりウラを狙った長いボールが効果的になる。相手が自陣でブロックを組めば、よりピッチ幅を意識し使ったボール回しをしてスペースを生み出す」エリク監督

3.自陣深くからのビルドやポゼッションは1と2の前提が容易に満たせない「相手が疲弊してないorビハインドで間延びしてない、自分たちのストロングを生かすスペースがない」展開で「1や2の局面を作り出すため」に行う。目的とプライオリティは不変で、ポゼッションはあくまで手法である

「選手の中には『日本のサッカーは欧州とは違うんだから、ハイプレスをかけたり、激しくデュエルを仕掛けたり、スピードに乗ってリズムよくプレイしていく必要などない。ボールをもっと回して緩急をつけ、相手を走らせていけばいい』という事を言ってくる人もいる」エリク監督

「確かに何事にもバランスが重要だ。しかし、そんなスタイルを今のサッカー界で追及していこうとすると、国際舞台で袋小路に陥ってしまう。日本は世界から取り残されてしまう」エリク監督

グアルディオラマリノスが所属しているCFGのボスの1人だし、パスを多用したサッカーをしている。でも私は、パスサッカーばかりに偏るのでなく、最適のバランスを見つけようと努めている」エリク監督

「それに何より、グアルディオラ自身はティキ・タカ(ショートパス至上主義)を推し進めた事など一度もない。彼が目指しているのはあくまでもゴールを奪う事であって、ポゼッションを高めたりボールを回す事ではないのだ」エリク監督

「パスをするのはディフェンスのシステムに穴を見つけ、そこからスピードに乗って激しく攻撃して行くためだ。必要以上にパスを回す必要など無いんだよ。私はマリノスと日本サッカーを愛すればこそ、世界のスタンダードを植え付けようとしている」エリク監督

――実際、2年目のリーグ戦も「先制した試合」11勝3分0敗と高い勝点率を記録。シーズン後半は特に「前半はグッダグダでも、ラスト15分の互いに間延びした展開では一方的にフルボッコ」展開が多く見られた。エリク横浜の攻めのスタイルとストロング、それが生きる展開は実に明白・明快

しかし「先制された試合」は2勝7分9敗と振るわず、先制した試合14試合に対し、先制された試合は18試合。つまりエリク横浜の(2年目終了時点での)課題は「如何に先制点を奪うか」「先制された際に引いてカウンタを狙う相手を如何に崩すか」ほぼ2点に集約される

そのために「未だ間延びしてない展開で、相手の疲弊や間延びを誘い」「自分たちのストロングを活用するためのスペースを生み出す」ためのポゼッションや効果的なサイドチェンジ、対角のフィードが求められる。そのための前季天皇杯の取り組み&オフの放出と補強であった

「質の高いポゼッションをするには3つのポイントがある。『ボールの動かし方』『選手のムーブメント』『適切なポジショニング』だ。Jリーグ全般において、3つ目のポジショニングに課題があるように思う」エリク監督

「(マイボール時、敵陣に)スペースが空いているのに、そこに味方の選手がいない・入り込まないから展開できないシーンが散見される。我々もその点は、これまで以上に意識して向上させていかねばならない」エリク監督

◇守備のプライオリティ

実に単純で、攻めのプライオリティの真逆になる

1.DFラインの背後を取らせない
2.DFとMFの間(バイタル)で前を向かせない
3.サイドで縦や内に仕掛ける形を作らせない
4.↑ための制限、サイドチェンジを出させない

「ただ人数を自陣に割いて守るのではなく、個々がインテリジェンスを持ち守備のプレイ原則をしっかり理解して、コレクティブな守備をしなければならない。例えばウラに抜け出そうとする相手選手を如何にコントロールするか、などが重要になる」エリク監督

「まず相手のパサー(ボールホルダ)に余裕と時間を与えないよう寄せるのが理想。もちろん常に寄せるのは不可能なので、相手が自由にプレイできそうなら、我々は組織を作り構えなければならない。そしてウラに抜け出してくる選手は必ずケアしなければならない」エリク監督

――上記の通り、エリクの示したプレイ原則は攻守に渡り非常にシンプルかつ合理的で、プライオリティ(優先順位)も明確。教科書どおり。その現代サッカーにおける「あたり前な」プレイ原則、プライオリティを「再確認し、習知徹底させる事」がマリノス監督就任におけるエリクの大きなタスクであった

■プレイ原則の習熟度、成否

掲げたプレイ原則をどれだけ習熟させ試合で表現できたか。その成否、達成度と「できなかったもの」と「その理由」について、エリクの証言も交えつつ考察したい。エリク横浜3シーズン総括、本論中の本論でもある

・相手のプレスを回避する自陣ビルド

これは就任1年目の序盤から取り組み、GKからCBを経由したショートパスを繋ぎ、相手を自陣に引き付けて背後の広大なスペースを活用しようとする意図は見られた⇒

⇒しかしチームには「ビルド&ポゼッションは引き落ちた俊輔を経由・依存する」体質が根強く、また後方の中心選手である中澤や勇蔵、GK哲也は足元で持ち繋ぐスキルや適性を欠いていた⇒

⇒GKを哲也から飯倉に、CBを勇蔵からファビオに変えていくなど緩やかなスタイル変更への取り組みはあったが、様々な理由から元の陣容に戻ったり、俊輔も離脱と復帰を繰り返す中で、エリク横浜1、2年目は本来目指す方向性に振り切り専念する環境は整わなかった⇒

⇒加えてコレクティブな自陣ビルド&ポゼッションを徹底できなかった背景には「1人でボールを運べてしまうアデミウソンマルティノス」の加入や、マリノスの取り組みを喝破し対戦相手がハイプレスの頻度や強度を高めた事など、複数の要素がある

だが2年目シーズン終盤に、チームは針を振り切る。天皇杯で「できもしない自陣ビルド」に拘り、自らピンチを招きながらも勝ち進む中で、次第に手応えを得て急速にビルドアップの質を高めていった

3年目、2017シーズンもその自陣ビルドに拘る姿勢を貫くが、序盤は昨季から一進二退。ビルドも、そこからの両翼への展開も工夫を欠いて実効性や結果に繋がらない試合も多く、手応え進捗は乏しかった

だが2017シーズン中盤、カピタン学の叱咤や青空ミーティング、ル杯でのBチームの躍進でチーム内競争が活性化。再びチームは前向きにチャレンジする姿勢を取り戻し、ここからビルドアップはシーズン後半にかけ目覚まし進歩を示す。柏や鹿島を相手に、自信持って自陣深くから繋ぎ前に運べる程に

「(2017年9月)現時点での評価は、ビルドアップはだいぶ良くなってきている。サイドからの仕掛けもそれなりに出来ているが、中央からの連動した崩しは更に精度を上げていきたい。フィニッシュの精度もまだまだ低いと見ている」エリク監督

・サイドからの仕掛け

1年目は左WHの学、後半は右WHに定着したアデミウソン、2年目以降はマルティノスと、スピードと打開力ある個が中心となりチームの強みは明確化。加えて3年目は天野純がハーフスペースで効果的に左サイドを活性化。学が警戒・対策される中での打開の一助となった

・敵陣ポゼッションと中央の崩し

残念ながら3シーズンでの進捗手応えは乏しい。引いた相手を崩せてないし、上位クラブ相手には敵陣に押し込み厚みある攻めもできなかった。ブロック内側、中央にパスを打ち込んでのコンビネーションもほとんど実践できていない

敵陣ポゼッション、中央の崩しに進捗乏しく攻撃のパターンが両翼に偏り、その結果として試合展開や勝ちパターンまで限定されてしまった背景も1つではない。しかし端的に言って「前線で収まるCFの不在」は極めて大きく、それを補完できるトップ下(及びインサイドハーフ)の適性や強度もなかった

⇒方向性に沿った補強も成されたが、前田直輝や遠藤渓太は十分な結果を出したとは言い難い。また「サイドでスピードアップした攻め」を導くための効果的なサイドチェンジやフィードも、3シーズンでの進捗は乏しく積み残した課題である

対戦相手やゲームプランによっても異なるが、基本エリク横浜は遅攻時、ボランチの一方はアンカとして中盤の底で散らし役となり、もう一方がトップ下と並び2人のインサイドハーフとなり中央に▼逆三角形を形成。CFを加えた3名のコンビネーションが中央の崩しの肝となる

しかしエリク横浜3シーズンにおいてボールが収まるターゲット型のCFは不在。インサイドハーフを務める俊輔、三門や喜田、中町、天野純の何れも「相手守備ブロック内側で動きながらボールを受ける」スキルや強さは不十分。どうしても「違いを生み出す」攻め崩しは、両翼WHに依存せざるを得なかった

「我々は攻撃における連動性、動きながらのコンビネーションを重視しているが、天野純はそれを最も理解している選手の1人だ。動き出しのタイミングが良く、状況判断も非常に優れている。今季は素晴らしい成長曲線を描いており、チームにとって重要な選手」エリク監督

「あともう少し、スプリントのスピードと敏捷性、パワーといったフィジカル面が伸びてくれば、天野純は更に多くのフィニッシュに絡めるようになるだろう」エリク監督

エリク横浜3年目にレギュラを掴んだ天野純にはブロック内側の隙間で半身受けて前を向くプレイ指向性はあるが、単独でやり切るパワーやクイックネスはない。そして彼の不足を補うCFのポストワーク、前線で守備者を引き付けたりタメを作る仕事も、残念ながらエリク横浜にはないまま終わった

……本当にウーゴがあの希有なゴールセンスそのままに、あと幾許か前線でタメ収めるスキルがあれば――あるいは天野純に単独で1枚剥がすパワーやクイックネスが、喜田がマイボール時にも貢献できる選手であれば。2017シーズンの布陣でも、もう少しリーグタイトルに迫れたのではないかと思う

・ドリブル回数 リーグ順位

2012  6位
2013  6位
2014 14位
2015  8位
2016  2位
2017  1位

学が復帰しドリブル打開は大きな武器になるも、マルキとドゥトラを失った2014は大きく減退。エリク横浜ではマルティノスの加入が決定打に

・ボール支配率 リーグ順位

2012 8位 51.3%
2013 2位 54.9%
2014 3位 54.7%
2015 4位 54.1%
2016 7位 51.7%
2017 9位 50.2%

↑ドリブル数とボール支配率、そのリーグ順位の変遷は、樋口体制とそれを引き継いだエリク横浜3シーズンの明確なスタイルの変化、攻撃の中心が俊輔から齋藤学(やマルティノス、両翼)に変わっていった様を如実に表している

2017シーズン自陣ポゼッション時のゴール率、シュート率ともにリーグ3位。ただ去なし繋ぐだけでない実効性。ドリブル使用率3位、空中戦使用率18位。およそイメージを裏切らない数値データが並ぶ。指数変化を見ると、やはり中盤期に大きく積み上がった

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2017シーズン敵陣ポゼッション時のゴール率15位。シュート率17位。なかなか絶望的。ドリブル使用率1位、コンビネーションプレイ率17位。学とマルを抑えられると完全に手詰まり、ブロック内側を攻略できない事実はデータも実証

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これも遅攻、ポゼッションが機能しななかった事を証明するデータ。2017シーズン(珍しく)ボール支配率の高かった上位6試合で勝利なし。「引いた相手を崩せない」エリク横浜の積み残した課題の最たるもの

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――以上がエリク横浜3シーズン攻撃パートのプレイモデル成否、達成度の考察。他に攻セットプレイとかあるけど冗長になるから省略。Football LABにはいろんなデータ落ちてるから、ヒマな人は検証してみると面白いよ。守備パートは、晩ご飯たべてから

◾️守備パートのプレイモデルの成否、達成度

――さてエリク横浜3シーズン総括「守備パートのプレイモデルの成否、達成度」この考察の大テーマの1つ

“樋口横浜の最大の強み、成果であった「ロストした瞬間、一歩前へ」「適切な選手の距離感」それに拠る「セカンド回収率と2次攻撃」「敵陣でのゲーム支配」は、なぜ継承されなかったか?”

  • 樋口監督とエリクに求められたタスク、監督としての志向や資質の微妙な差異
  • マリノスが伝統的に苦手とする「ピッチ上の判断、意識共有と修正」
  • J1基準と欧州基準の差異
  • エリク初戦の惨敗、ファーストインパク
  • 求められたタスク、志向や資質の微妙な差異

樋口監督
マリノスのスタイルの確立」
「攻守に能動的なサッカー」
「ブレないチーム作り」

エリク
「樋口横浜のベースを引き継ぎ」
「足りなかったものを埋める」
「世界のスタンダードを植え付ける」
「あたり前のプレイ原則の徹底」

樋口監督は、先ず「理想のスタイル在りき」で組織のフレーム(枠組み)重視。類型的に「組織を構築する建築家」タイプだが、パーツやディテールより「理想とするイメージ」とピッチに体現される現象が優先される。「勇気や躍動感、能動性」前に出る姿勢、距離感やセカンド回収率

【過渡期を迎えたチームが新たな時代を見据え、必要不可欠な要素を積み上げるための3年間だったとするならば、この悔しい試合も必要だったのかなと、今となっては思う。この先に結実の時が来ることを信じて。 by いた】 about [2017-天皇杯-決勝] 横浜 1 v 2 C大阪

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どうして勝てなかったのか、どうしたら勝つことが出来たのか。

未だに心の整理はつかないし、その答えがわかったとしても結果が変わることはない事実は重い。

ただ、残しておきたい。この一戦も糧となるはずだから。

その中で、3つの感じたこと。


正しきプランで埋めた力量差

2017年の対戦は0勝3敗。
前回対戦はホームで屈辱の1-4、その力量差は明らか。この結果をどのように受け止め、対峙するのか。

その答えは前回の試合後のエリクのコメントにあったと思う。

「ある時期から、自分たちの守備ラインが低くなりすぎて相手にスペースを与えてしまい、失点につながっています。アグレッシブさや集中力が足りなかったりというのがあると思います。
そしてセットプレーでは、予測や相手のマークに付いていくところが失点につながっていると思います。」

このコメントの通り、前回対戦時には、先制点を守ろうとする余り自陣に引きすぎたことで相手の攻勢を受け続け、最後には瓦解した。

その反省を受け、勇気をもって高い位置からプレッシャーを掛けるプランを携え、この一戦に臨んだように見えた。中盤を逆三角形にし、相手のボランチにプレッシャーが掛けやすくする微調整を行った上で、プレスバックの意識も徹底。ボールを奪えば外に張り出すマルティノス山中亮輔による高速トランジッションからのスペースランニングを軸にしたカウンターでスピードのミスマッチを活かす。

もちろん、全てがうまくいったわけではなく、御しきれず相手の圧力に押し込まれたり、攻撃移行時のチープなミスからロストし劣勢に回ることもあった。事実、最終的にはやられてしまった。しかし、少なくとも前回のようにサンドバックになる時間は大幅に減少、チャンスも攻撃頻度も前回対戦時以上に作り出した。付け加えればセットプレーも飯倉大樹を中心に粘り強く対応し、致命傷を受けることなく、120分凌ぎ切った。

正直なところ、ビハインドを背負った相手が前掛かりになりながらもバランスを失っていた後半立ち上がりに得た何度かのチャンスでもう一度ネットを揺らせていれば、賜杯は横浜の手にあったのかもしれない。

しかし、それは叶わなかった。それが今の現在地。

ともあれ、結果こそ得られなかったが、綿密かつ正しいプランを携えたことが勇戦に繋がった。それは改めて評価したい。


持ってない男

人生の中で幸運と不運の割合を総合的に見た時に、もしかしたら半々ぐらいになるのかもしれない。ただ、ここぞというときに幸運を掴む人と不運を呼び込んでしまう人がいるように思える。

エリク・モンバエルツはきっと後者なのだろう。この日もまた「持ってない」としか言いようがない不運が降りかかった。齋藤学の長期離脱後に左の推進力として欠かせない存在だった山中亮輔が負傷で途中交代を余儀なくされた。

天野純が直前に体調不良となり、コンディションが整わない状況でのプレーだったことも、その不運ぶりに拍車をかけていた。

考えてみれば、2017シーズンの中でも勝負所で負傷者が続出したことは彼にとってみれば災難だった。紆余曲折ありながらも着実に積み上げ、ようやく形になってきたところで、想定しようもない不運が折り重なる形で積み上げたものを失わざるを得なかった。そして、チーム力を維持できずに失速した。

たまたま、偶然、そういう見方もできる。しかし、ここぞ、そんなタイミングで不運が降りかかるのだから、「持ってる」「持ってない」で言ったら「持ってない」んだなぁとふと思ってしまった。

ただ、勘違いしてほしくない。

彼は、一つの時代を終えるタイミングでのソフトランディングと新たな時代の礎を築くというテイクオフのための下準備。そんな難しいタスクを見事にこなした素晴らしい指導者である。彼の指導によって、ビルドアップも、ワンタッチパスも、プレーへの関与意識や連続性も、幅を使った崩しも、カウンターも、トランジッションも、飛躍的によくなった。主戦級の選手も、クラブを離れることになった選手も、成長の跡が見て取れ、特に次世代を担う選手たちの成長は目を見張るものがあった。相手を分析する目にも優れ、その分析結果をチーム状況を鑑みつつ落とし込める手腕もあった。この難しい時期だったからこそ、この指導者が横浜と共に歩んでくれてよかったと心から思っている。

この3年間でもこれだけの災難に見舞われたのだから、エリクの今後に幸多からんことを願わずにはいられない。


勝戦の経験

ピッチに立ったからこそわかること。その独特の空気、高揚感や緊張感、通常とは異なる特別な舞台、それは経験しなければわからない。その経験は次の機会が訪れれば活かすことができるかも知れない。

ただ、負けた経験、自分のパフォーマンスを表現できなかった経験は決して意義がある訳じゃない。それは失敗体験でしかなく、次の機会に勝利を得る秘訣や普段通りにプレーする秘訣を得たわけではなく、もう一度トライする必要があるからだ。

体調不良の影響か、精神的な問題かはわからないけれど消極的なプレーセレクトに終始した天野純、ハイテンションなゲームに入り切れないままチームに貢献できなかった遠藤渓太、逞しいパフォーマンスだったにせよ小さなミスで試合を決める失点を招いてしまった松原健飯倉大樹…、この特別な舞台でなかったら、という気持ちは正直なところ、ある。

繰り返すけれど、意義がある訳じゃない。ただ、経験したことを忘れないでほしい。この経験が彼らをより大きくさせてくれる栄養になってくれるのなら、この敗戦の痛みや損失も決して高くない。

ここまで上り詰めたからこそ得れた糧。もう一度、一つずつ勝って、この舞台に戻ってこよう。そして、次の機会で、この糧があったからこそ、と笑って話せることを待っている。


最後に。

前回対戦の経緯を考えても、セレッソが強いのはわかっていたし、力の差があることもわかっていた。相性の悪さを鑑みた時に非常に厳しい試合になることを誰もが感じていたと思う。その中で勝つ可能性があるゲームが出来たことはひとつの進歩であり、シーズン終盤のスクランブルの時期に培ってきたことが形となった成果だとも感じたり。

それでも届かなかったのは今のチームの現実。それ以上でもそれ以下でもない。タイトルを獲れなかったのは、現時点で強いチームに対して優位性を持てる要素が余りに少なかったこと、試合を決める複数の選択肢を持てなかったことの結果だとも思う。

ただ、望もうと願おうと一足飛びにチームは強くならない。過渡期を迎えたチームが新たな時代を見据え、必要不可欠な要素を積み上げるための3年間だったとするならば、この悔しい試合も必要だったのかなと、今となっては思う。

この先に結実の時が来ることを信じて。ここが到達点じゃない。もっともっとやらなきゃいけない要素も沢山あるし、突き詰めなければいけない要素も沢山ある。間違えなく礎は築かれたからこそ、沢山の宿題を伸び代にして新たなステップに進んでほしい。

一丸となって進んできた2017年、皆で進んできたからこそ苦境を乗り越えられた、と思ってます。お疲れさまでした。今はしっかり休みましょう。