横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【勢いでばーっと気になったことを書きたくなるぐらい面白い、考えたいサッカー。こんなにプレーの内容でワクワクドキドキしたのは久々かもしれない。 by いた】 about [2018-J1-1] 横浜 1 v 1 C大阪

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開幕戦、1-1。

色んなものが見えた試合。手応えはもちろん、目を見張るような成長や、大きな宿題も、変わらない課題も、相手が見せた「対策」も… こういうものを見いだしつつ、結果を出せるのがベスト。今回は叶わなかったにせよ。


手応え

意図したことを勇気をもって取り組んだ前半のチームパフォーマンス。
戦略、トランジッション、判断スピード…複数の要素で相手を上回り、戸惑いを与え、先制点まで取りきった。
改めて今取り組んでいることの意義や実効力を感じられたことは大きな手応えのはず。

攻撃面では少ないタッチでのパスムーブを軸に戦略的な意図(相手2トップ間でのレシーブ、アラバロールによる外側のレーンの活用)と最後の目的(相手がフォローできない状況を作り出した上でのワイドスペースへの1-2的な利用、インナーラップによるポケット攻略)を具現化出来た。

選手達は頭フル回転で敵・味方のポジションを常に把握しつつ動き直してはパスを紡いだ。これがあるから細かく繋げるし、テンポも生まれる。
ターンやスルー、スイッチといった接近時のアイデアにも意欲的に取り組み、相手を手玉に取ったシーンも。

守備は、最終ラインをかなり高く設定した上で相手陣を圧縮する形から前向きでボールを奪ったり、セカンドを回収するシーンが多々。
しっかりと追うこと、塞ぐことが出来ていたことでミスを誘えた。2度追い3度追いもざら。タフなタスクをしっかりこなせたからこそ。

45分間のパフォーマンスはここまで積み上げてきたことの成果。
妥協であったり、恐れといった要素を含んでは機能しない。自分たちがやりきることで機能する。上回れる実感を得れたことは凄く意義がある。この手応えを強い相手に対して掴めてよかった。

目を見張るような成長

この試合における天野純のパフォーマンスは出色。
行動半径の広さ、サイドの崩しにおけるフリーランニング、ショートパスの媒介となることなどこれまで出来ていたことはもちろん、コンタクトへの耐性、球際の強さ、当たられても前に進む意思…その逞しさは目を見張るもので、ひとつ階段を登ったかのような堂々たるプレーぶりだった。

PSMのときから感じていたけれどキックの質も凄くいい。
ボールスピード、変化の鋭さは何かを起こしてくれる期待感がある。今シーズンのボールとの相性がいいのかもしれない。彼に掛かる期待は大きいだけに、今後に凄く期待したい。このまま!

そして、喜田拓也のチャレンジングな姿勢にも諸手を上げて評価したい。
ボールの迎え方(ボディシェイプ)、状況判断(スルーやワンタッチパス、前に運ぶプレー)は飛躍的に進歩しており、アンジェ・ポステゴグルーが仕掛けるパストレーニングを意欲的に取り組んできたことの成果が見られた。

大きなリスクが伴うスタイルの中でアンカーの仕事はリスクマネジメントが主となるけれど(そのプレーぶりも素晴らしかった。セカンド回収、インターセプト、カウンターケア。彼のボール奪取は両手では足りないほど)、ゲームを作る仕事でも重責を担う必要がある。彼がこのポジションで意欲的に取り組み続けることが出来れば必ず一段階段を登ることが出来る。彼の成長にも期待したい。

大きな宿題

前述した前半のパフォーマンスは間違いなくチームの目指すもの。しかし、現段階ではそれが出来たのは45分だった、ということ。

断片的に後半も出来ていたとは思うが、相手を上回り、支配し、圧倒するとまでは至らなかったことを考えれば、今後の宿題はこの時間を伸ばしていくこと。パフォーマンスを維持・継続していくことになると思う。

激しいトランジッションからのプレッシング、スペースランニング、休むことなく動き続けるポジション修正、シビアな球際のプレー…負荷は非常に高く、これを90分間維持するというのは簡単なことじゃない。

その上で常にピッチの状況を感じ取り、正しいポジションを見出す、次のプレーの選択肢を予測するなど、頭の負荷も高い。より深く理解が進み、ある程度オートマティックに動けるように習慣化されれば頭の部分の負荷は軽くなっていくにせよ、強度の高いプレーは常に求められる。

大変難解な宿題ではあるけれど、こういう負荷の高いサッカーをする上での宿命。
選手たちが日々のトレーニングで正面から向き合い、少しずつでもこの時間が伸びていくことを期待したい。

変わらない課題

戦略的にプレーし、沢山のチャンスを作ったことは「チーム」としての大きな成果。

しかし、結果としてゴールはひとつだけ。大きなリスクを背負い、負荷の高いプレーをしても尚。結果に繋げなければ勝利は得れない。
その意味で、「チーム」で作ったチャンスを「個人」が生かし切れているか、ということになっていく。

例えばカウンターのシーン。
数的同数のカウンター。前はオープン、仕掛けて剥がして打つ、スルーパスを合わせる、ワンツーで抜ける、そこで「個人」としての力が示せたのか。足りなかったと思う。だから勝てなかった。

チャンスを萎ませてしまうことが多かったコンビネーションのズレはいずれ解消されるにせよ、最後の局面で個人に掛かる部分の責は変わらない。最後にゴールという形で結実して初めてチームは勝てる。チームとしては着実な進歩が見えているだけに、あとは数字に繋げる「個人」としての強さを、質を。そこが変わらなければ全ては水泡に帰す。やりきれ、決めきれ。

相手が見せた「対策」

自陣で陣形を圧縮されて強いプレスを掛けられる、内に寄せられて外を使われる、速いパス回しに翻弄される。セレッソにしてみれば、大きなモデルチェンジを遂げた横浜に対して、大きな戸惑いが見られた前半だったと思う。

しかし、後半イーブンな展開に持ち込んだ。

早めのタイミングでボールを前に飛ばすことで圧縮されたプレースペースを回避。杉本健勇のフリックと柿谷曜一朗のダイヤゴナルランで大きなスペースを活用。実らなくとも相手を押し下げられる。

動かされてしまった相手の変形ポゼッションに対しては、ある程度低いゾーンでのポゼッションを許容し、ポジショニングバランスを維持。
特徴を生かしつつ、オープンな殴り合いというセレッソの得意な試合展開に持ち込んだ。

特徴的な形だからこそ、相手も警戒し、分析してくる。大きなリスクも抱えている戦略であるからこそ、そのリスクを表面化させるような対策も進められるはず。一つのモデルケースが示されただけに、次の相手がどう出てくるか、それもまた今後のカギを握るのかもしれない。


試合を見返してもいないのですが、勢いでばーっと気になったことを書きたくなるぐらい面白い、考えたいサッカーです。

こんなにプレーの内容でワクワクドキドキしたのは久々かもしれない。この先どのような過程を歩むのか、引き続き注視していきたいし、意欲的に取り組んでくれている選手たちを支えていきたい。

新たな冒険は始まったばかり、楽しみ楽しみ。