横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【若さと勇気と勢いを前面に、裏返しの拙さも山盛りながら、今日はそれで大正解 by 蒼井真理】 about [2017-ルヴァン杯-第3節] 横浜 4 v 1 新潟

aoi_mari.png蒼井真理



ル杯ホーム三ツ沢 新潟戦4ー1の備忘録を連投。逆転大勝! 賢星と渓太と扇原にマリノス公式戦初ゴール。山中亮輔は初出場。下平匠が10ヶ月振りに復帰。多幸感に満たされた平日夜の三ツ沢劇場 その記憶

手元トータルスタッツ:シュート17:11(枠内4:4、エリア内6:7)決定機9:4。CK&FK5:6。前半からシュート打ちまくりも枠内はゴールに結実した4本だけ。若さって素晴らしい。最多は賢星の5本。後半新潟の決定機はATのエリア内3連打のみ。逆転後、まずまずゲームコントロール

「今日は我々が勝利に値する内容だった。ポゼッション率も高くシュートも多く打てた。残念だったのは前半、相手に何度かカウンタを許してしまった事。しかし選手たちは高いインテンシティを発揮してくれた。その姿勢を称えたい。最後まで後押ししてくれたサポータの力にも感謝したい」エリク監督

「何度も言うが、21歳以下の選手を先発させないといけないレギュレーションだから若手を起用している訳ではない。彼らはクオリティを持っているから試合に出ている。カップ戦に起用し実戦を経験させて彼らの力を伸ばしていく事は、個人としてもチームとしても必要だ」エリク監督

「私は普段のトレーニングから彼らを見ており信頼もしているので、今日の賢星や渓太のパフォーマンスは特に驚きではない。今後は山田康太や椿直起ら2種登録のユース選手も試合で能力を試す機会があるだろう。育成組織も含め一体となり戦うことはクラブの誇りやアイデンティティにも繋がる」エリク監督

「今日のゲームでもコレクティブな(組織的な連動した)プレイのクオリティが高かった。それによって各個人の力が引き出されたと言えるだろう。その点についても選手たちを称えたい。それにジョンスも忘れてはいけない。彼もまだ22歳と若い選手だ」エリク監督

――結果だけに食い付いた質問をする記者に「いつも見てるからこれ位できるのは知ってるよ。驚きではない」と返すのは、実に「教育者タイプの指導者」エリクらしいコメント。結果は大事だが、常に過程を見ているよと。リーグ戦では「4番目の外国籍選手」になっている朴正洙への配慮を付け加えるのも

Q.SB起用した遠藤渓太と将来性について

「確かに彼本来のポジションではなかった。もっと前の選手だ。しかし今日の渓太に期待したのはチームのサイドを攻撃的にすること。彼のスピードを生かし、サイドで数的優位を作り、裏に出ていく。その起用意図と期待によく応えてくれた」エリク監督

「右SBの経験が乏しく、前半は特に守備で苦労していた。しかし渓太はメンタルとフィジカル両面に強みがあり、後半は修正してくれたことがゴールにもつながった。彼のような若い選手は複数のポジションをこなすポリバレント性も重要になる。それが出場機会と経験を積むことに繋がる」エリク監督

ル杯ホーム新潟戦のチーム総括

・若さと勇気と勢いを前面に
・裏返しの拙さも山盛りながら
・幸運と勢いでプラス面を押し切る
・今日はそれで大正解
・ビビって無難にこじんまりより
・今の自分を押し切って
・勝って反省するコレ理想
・映像使っての反省は
・たくさん時間割いてください

前半18分に先制された時点での決定機数は2:3。序盤から闘志旺盛でガツガツ感は十二分もリスク管理は拙く、エリクの会見通り被カウンタからのピンチ多数。失い方も悪く、またリスクに備えたポジショニングや距離感、ロスト後の対応も良くなかった。バッタバタ。映像使って要反省

しかし失点直後こそ目に見えてガックリ落ち込んだが、よくここからチーム全体で踏みとどまり反発した。1失点以降は前後半通じて、新潟の決定機は後半ATのエリア内3連打のみ(GK杉本大地がストップ) リスク管理が改善したというよりは、若さ勢いで押し切った。攻めの姿勢。今はそれでいい

「前半は風下の中で先制できたが、PKで同点とされた。後半に入ってからも相手にボールをコントロールされて、自分たちが狙っていたような形で起点を作れず、セットプレイから逆転されて全体のパワーが落ちてしまった」三浦文丈 新潟監督

「(後半のプランは)ある程度は前から圧力をかけて、前半マリノスがやっていたように高い位置でボールを奪いたかったができなかった。相手のボールの動かし方が上手くてボールを奪えず、逆にこちらがプレッシャを掛けられてボールを動かせなかった」三浦文丈 新潟監督

――エリクが言う程にコレクティブだったとも、三浦文丈が誉めるほどボールの動かし方がチームとして上手かったとも思わないが、ポゼッション面で言えばアンカに位置した扇原がよく起点になっていたし、ダビと吉尾海夏の引き出す動きと賢いキープ、この3人と左サイドを中心にボールが動いた

特筆すべきは吉尾海夏の働き。パスを引き出し相手陣内に起点を作り、自ら仕掛けるためのアングルを作りつつ、意欲旺盛な左SB山中亮輔の上がるレーンをタッチ際に確保。中央から流れてくるダビも巧みに使い、左サイドは全くノッキングしなかった。実に賢い受け方、持ち方、ピッチ内の距離感

エリクの「コレクティブだった」という評価、三浦文丈の「相手のボール回しが上手くて奪えず」の戦評は、半分以上が吉尾海夏への賛辞だと思って構わない(と私は思う)…逆に言えばチーム全体にはあまり完成度やクオリティは感じず、むしろ拙かった。ウーゴ、前田直輝、賢星も展開関与は全くの不足

新潟のボール回しを制限したプレッシャという面では、序盤からチーム全体で寄せる早さや球際ガツガツ感旺盛で、特に中盤における扇原、賢星、ダビ、海夏の4名の攻⇒守トランジションとアプローチの速さ激しさは秀逸だった。連動してハメるのは難しいが、個々の頑張り

ただ中盤のプレッシャも「個々の頑張り勢い頼み」で連携は不十分、1つスカされると後は全部ズレる。だからDFラインは大変なんだけど、この4枚も急造。SBはデビュ戦の山中と本職でない渓太。しかしそれら悪条件を差し引いても、CB2枚の対応は少し脆すぎた。もうちっと何とかしてくれよん

ウーゴはPK以外ほとんど仕事できてないしキレも不十分、前田直輝もまあ柏戦から中3日で急成長するハズもなくチームとゲーム展開から独立した動き、ダビはマジ巧いけど攻の実効性はイマイチ。チーム全体のクオリティも個々も、全部が全部素晴らしかった訳ではない。むしろ課題は山盛りだ

ただ浦和とのリーグ開幕戦と同じで「勝って反省するのが一番」 柏戦0ー2から反発する意味でも、大きな逆転大勝。単純にポジティブなトピックも多かった。総取っ替えでないミックス布陣で結果が出たのも、次のリーグ吹田戦に繋がる。とても意味深い勝利――にして行かないと! という事ですね


ル杯ホーム三ツ沢 新潟戦4ー1の、主観と偏見と独善に満ちた選手評

GK杉本大地。どうしても我慢できずフラフラっと前に出て、結果的にシュートストップしても立ち位置が変なシーンが散見。だが前半ATのFKはよく弾き出したし、後半ATの至近シュートは2つ、3つとよく距離を詰め顔を背けず身体を張った。勇気あるプレイ。「出ない勇気」も少しずつ覚えていこう

「得点差ほど簡単なゲームではなかったと思う。その中で勝点3が取れたのは良かった。最後の1対1で防いだ場面は、今週ちょうどシゲさんと練習していたのと同じシチュエーションだったので、練習でやったことを出すだけだった」杉本大地

CB栗原勇蔵コイントスに勝って前半風上を取れた事、前半ATに入れ替わられたシーンの決定機阻止が退場にならなかった事。評価できるのはこの2つのみ。同点に追いついた後の大事な局面で前後半1度ずつ被カウンタから簡単にブチ抜かれ、不用意な自陣深くタッチ際でのボールロスト。不甲斐なし

CB朴正洙。勇蔵と同様、被カウンタ対応で粘り強さを見せられずサクッと置いてかれるシーンは前半16分以外にも。前半6分の自陣深くでサイド変える横パスをカットされた場面といい、簡単に失点に直結しかねないプレイを出し過ぎる。昨季からリーグ戦出場を重ねている朴正洙への評価は辛い

どうも昨季途中からの朴正洙にはピリピリ感が足りない。試合中のアラート、必死さ、危機感。ユル過ぎる。いいとこのボンボンか。責任感をピッチで表現できない選手にマリノスのCBは任せられない。「出世払いで」とか言ってる場合じゃない

右SB遠藤渓太。祝・国内童貞卒業! かなりヤル気満々で、前半はポジションがどんどん前に内にいって被カウンタ対応も疎かになり失点にも絡んだが、今は結果に貪欲な姿勢とそれがゴールに結実した事を最大限評価したい。後半はバランスへの配慮も見えた中での初ゴール

「小さい頃からマリノスでゴールを決めることが夢だった。ここまで長かった。(ゴールが決まった瞬間は)正直いうと『あっ、入ったな』という感じでした。これで満足せず、リーグ戦でもゴールを決めたい」遠藤渓太

「自分のところから失点してしまった。自分のことで手一杯で、周りのことを考える余裕がなかった。もちろんサイドハーフで出場したいけど、与えられたポジションで結果を出すことが大事。自分や賢星くんが決めることでチームが波に乗っていければいい」遠藤渓太

渓太のコメントは期待を裏切らないなw 『あっ、入ったな』なんか思ってたほどじゃなく呆気ない感じ? あんだけ苦しんだのに、決まる時はそんなもんだよね。次はリーグ戦で童貞卒業だよ♡

左SB山中亮輔マリノス公式戦デビュを勝利で飾る。海夏に上手くスペース提供してもらい、序盤から意欲旺盛に攻撃参加。高野遼の直線的なドリブルと違い、スピードとコースに変化を付けて仕掛けに選択肢がある。ある程度タメを作る存在にもなり得るか。クロス精度は中との関係性もあり、今後に期待

「同じ左サイドの学くん、海夏とは話し合いながらやれた。学君は時間をつくれるので、安心してボールを預けて上がっていけた。欲を言えば得点やアシストなど結果を残したかった。そこができなかったのが課題。とにかく自分が出て負けるのは嫌だったので、勝てて良かった」山中亮輔

アンカ扇原貴宏。試合序盤から大きな身振りで「前から行け!」と周囲を煽り、自身も果敢なアプローチから球際ガツガツ感。中盤の底でボール回しの起点にも。運動量と仕事量は多く、終盤には脚をつらせながら左足ミドルでマリノス初ゴール。課題はフィルタとしての被カウンタに備えるアラート意識

「先制されてまた悪い雰囲気になりかけたが、皆すごくハードワークして球際もイケてたし、ファイトしていたので、逆転できると信じていた。自分の得点より勝ったことが嬉しい。カップ戦も可能性がつながった」扇原貴宏

インサイド中島賢星。プロ3年目の危機感、そこから生じた変化「攻守に関与を高める」意欲向上をピッチで体現しつつ、求めていた確かな結果をだした。おめでとう。序盤から攻守の切り替え寄せの速さと激しさ「プレイを切らない、連続性」は神戸戦と同様に素晴らしかった。成長してるし、継続性もある

インサイド中島賢星。決勝ゴールも、前半15分にダビのクロスをボレーで合わせたシーンも、賢星らしい「周りから少し遅れて最高のタイミングでエリア内に入っていく」特徴、センスの顕れ。これは特別な武器なので、今後バランス感覚を獲得する中でも出し惜しみせずに錬磨していって欲しい

インサイド中島賢星。攻⇒守の切り替え、エリア侵入のセンスは良。消える時間は減りつつ、特徴も発揮できている。課題はマイボール時の関与。コレはまだ全然ダメ。どこでパスを引き出し受けるか、周囲との距離感やパスコースを作る動き、顔出し、動き直し。もっともっと映像を見直し考えよう

インサイド中島賢星。出し手の朴正洙や扇原は、賢星に何処にいて欲しかったか? どのタイミングで顔を出して欲しかったか? ダビや海夏はどうしてボールを呼び込めたのか? 話をしよう。見て盗もう。自分より年下でも上手い選手からは学ぼう。もっと貪欲に。ここを伸ばせば、また次の扉が開く

「やっと結果を出せた。素直に嬉しかった。苦しい2年間だった。なかなか結果を出せず、上手くいかない時期も長かった。このゴールで全てが変わるわけではないが、良い意味で次につなげていきたい。リーグ戦にも良い調子で臨める。自分が置かれている立場でアピールしていきたい」中島賢星

「昨季は右SBやCBをやったり、ボランチをやったりしていた。いままでずっとトップ下だったけど、違うポジションだからといってネガティブにならずポジティブに取り組んだことが今日につながった。今日の試合は皆がすごく闘っていた。そういう姿勢が勝利につながったと思う」中島賢星

トップ下のダビ・バブンスキ。この試合も評価が難しい。確かに巧い。サイドに流れ足下の引き球を駆使してキープし持ち運ぶ。しかし対面を剥がし切る訳ではない。前半終了間際に2つの決定機。しかし決め切れない。巧くて惜しいが、攻の実効性は半端。「違い」は出し切らないと周囲と「違う」プレイに

トップ下のダビ・バブンスキ。守の部分ではボールホルダへの寄せもプレスバックも意欲的で献身的。実効性もあるのだが、少し頑張り過ぎ直線的過ぎる傾向。前の2枚の一番の仕事は「制限と誘導」自分が奪う事ではない。70分でガス欠するゲーム体力的にも、より効率良い制限と誘導を学習していきたい

――うーんダビへの評価が辛すぎるかな? 決定機2つ、アシスト未遂も2つ。分かりやすい結果に表れてないだけで実効性がない訳ではないのだけど…。違い、変化を生み出せるスペシャリィは確かにある。ダビ自身だけでなく、それをどう還元するかはチーム全体の問題かな

右WH前田直輝。一朝一夕に課題が改善される訳もなく、展開に馴染めず独立した動き。スーパサブ的な起用なら、それが吉とでる展開もあるのだが…。前半の渓太の「前に内に出て後方を留守にする」ポジションも、責任の一端がある。とにかく学ぼう。もっともっと深く考えよう。あとは試行錯誤の繰り返し

左WH吉尾海夏。私的MIP。実質マンオブザマッチ。プロ1年目ここまで「対人球際に怯まず当たりに行く」ガツガツ感を前面に出してきたが、プロのスピードや当たりにも少しずつ慣れ、海夏の「常に脳味噌フル回転、最適なポジションとボディアングルを取り続ける」最大の特徴を発揮し始めた

左WH吉尾海夏。周囲との距離感、局面を常に観察し次の展開を複数予測し「最適なポジショニングとボディアングル、ボディシェイプ」を考えて細かく修正し続ける。それを90分やり通すのが海夏の素晴らしい特徴。異才。だからパスを呼び込める。前を向ける。奪われない。SBにレーンを用意できる

左WH吉尾海夏。読み取る情報量とその更新頻度、そこからのポジションやボディアングルの修正頻度が、ちょっと他の選手とは別レベル。167cm59kgのサイズで生き残るために獲得した武器。ホントに動き直しが細かい。瞬間的に変化対応できるのは、常に複数予測してるから

左WH吉尾海夏。サイズもなければズバ抜けた走力やキック力や別次元の技術やセンスもない。だが思考判断の精度と速度なら、どこまでも伸ばせる。そこに限界はない。サッカーは徒競走ではない。早く判断すれば、早く動き出せる。相手の逆も取れる。正しくシャビやイニエスタの系譜に連なる選手だ

――吉尾海夏を評すると思想や表現がどんどん風間八宏っぽくなるのはやむを得ない

「前回の神戸戦で、攻撃的なポジションなのにシュートゼロで終わったので、その悔しさを晴らす気持ちで臨んだ。『とりあえず迷わずシュートを打つ』という気持ちで入り、ゴールという形にはつながらなかったが、ひとつ自信につながったと思う」吉尾海夏

左WH吉尾海夏。前後半ともにマリノスのファーストシュートは海夏。「試合毎に1つ自分の中にテーマを持ち臨む」姿勢も良。なんとなくやらないのも賢さ。決勝ゴールは海夏のFK起点。後半23分、伊藤翔の決定機も海夏の好インタセプト起点。実効性と結果も、少しずつ求めていきたい

左WH吉尾海夏。まだプロ1年目の4月。まだ何も成し残してない。武器である判断の精度速度も、これから更に錬磨するには一歩進むためにこれまで以上の思考訓練と実戦経験が必要になる。決して容易ではないが、精進を重ね突き抜けて行って欲しい。大いに期待している

CFウーゴ・ヴィエイラ。シュートはPK以外、前後半に1本ずつ。前線でパスを呼び込み納めるビルド貢献も少なく、リーグ札幌戦や新潟戦で見せた仕掛けのキレやゴリゴリ感もなかなか向上しない。しかし同点PK奪取と成功は大きな仕事。これを次の吹田戦以降にもつなげて欲しい。もっともっと

後半17分から出場の齋藤学。まだ瞬間的なキレは攻守に万全ではない。若手の勢いをサポートする黒子役に。初ゴール決めた渓太に大外刈り、扇原のつった脚を伸ばしたシーンがハイライト。エースの真価は、次のホーム吹田戦で試される

後半23分からCF伊藤翔。学からの横パスを胸トラップで落とし、遠藤渓太のドリブルゴールをお膳立て。なんだかんだ前線で起点に的になる働きは地味でも頼りになる。限定する守備が後追いなのは仕様ですが、なんとか改善していただけないものでしょうか…

後半36分から左SBの下平匠。とにかく公式戦のピッチに戻ってきてくれた事がなにより嬉しい。約10ヶ月振り、本当に長かった。オフィシャルからリリース出ないし合流と離脱の繰り返し、凄く不安だった。まずは試合勘やゲーム体力を取り戻し、左SBのレギュラ争いを活性化して欲しい

「ようやく帰ってくることができた。今までサッカーで緊張した事はなかったが、ピッチに入るときは久しぶりで少し緊張した。去年からずっと試合に出てなくて、自分自身も悔しい気持ちやチームに貢献できない悔しさもあった。これから少しずつ、出場時間を伸ばしていきたい」下平匠