蒼井真理
入場者数 38,803人。ホーム磐田戦2ー1の備忘録を連投する
「予想通り我々がポゼッションできる試合展開になり、ある程度は落ち着いて上手くボールを回せた。だがクオリティをもう少し上げていかねばならない。問題は先制後にセットプレイで失点したこと。2点目を取るためもう一度(イーブンな展開から崩していく作業を)やり直すハメになった」エリク監督
Q.やり直すハメになった、とは?
「ホームゲームでは(ポゼッションして相手陣内に押し込み)相手の守備ブロックをどう崩していくかが課題になる。尚且つ、相手のカウンタも警戒しなければならない。そういう丹念な作業を後半もう一度やっていく必要が生まれたという事だ」エリク監督
「自分たちがポゼッションできる展開では、守備の堅さをキープするのが難しくなる。先制した後、少し下がってしまった。ボールホルダにプレスに行けなくなると、守備が非常に難しくなる。今日は途中から入った選手がボールホルダにしっかりと圧力を掛けて守備を向上させてくれた」エリク監督
「前半のうちに同点にできたのは勇気を持てた。(後半10分)アダイウトンが入ってからの10?15分がこのゲームの肝で、1点取れていればという感じだった。負けはしたが昨年のリーグ戦2試合に比べ、マリノスに対してやれる自信が僕自身は持てた試合」名波浩 磐田監督
エリク横浜は先制すると強い。オープン展開になり相手を呼び込み間延びさせれば、カウンタから学やマルティノスがスピード生かし敵陣スペースを存分に活用できる。でも引いた相手を崩す遅攻ビルド、ポゼッションは構築半ばで稚拙。「如何に先制し、リードした展開で試合を進めるか」がエリク横浜の肝
↑コレは昨季のリーグ総括や今季展望でも繰り返し述べたエリク横浜の特徴、強みと課題。で磐田戦は「直近3試合、進捗が見られずチャレンジする姿勢もなかった」遅攻も、質はともかくトライする姿勢は見えた。先制できた。なのに呆気なくまたCKから失点。エリクもいろんな意味「またか」となるわな
エリク横浜は、ポゼッション率やパス本数が優位になる程に得点率や勝点獲得率が低下する。これは今季もまだ変わってない。相手にボール握ってもらい、人数掛けて押し込んでもらった方が(学やマルティノスが使う敵陣スペース生まれて)都合いい。なんだかんだブロック守備はそれなりにカチッとしてるし
でもホームで「意図的にボール保持を放棄して引きこもる」とかダメだし、戦力予算的に下位のクラブからも取りこぼさず上位進出を狙うには、やっぱポゼッションして押し込み相手のブロックを丹念に崩す「リスクもあり面倒くさい」作業を、上手くやれるようになっていかないとダメだよねと。それが現在地
守備もまた同様で「なんだかんだブロック守備はそれなりにカチッとしてる」けど、それは待ち構える受動的な要素の強い守備であり「より前からハメに行く狩猟的な守備」「能動的な(速攻につなげる前提の)攻撃のための守備」の構築は、エリク横浜3年目もほとんど構築進んでません
「勝ったのは良かったが、チームとしての守備でバラバラになった部分がある。今日は前からボールを取りにく守備をしたが、その部分でチームの成熟度がない。練習から整備していけば、去年とは違ったサッカーが見せられると思う」中澤佑二
――とまあ中澤さんも仰る通り「前からハメに行く守備はぶっつけ本番」レベルなのが今のエリク横浜。両翼の突破打開力とブロック守備をストロングにした多分に「堅守速攻」寄りな堅実で現実的スタイル。1年目からポゼッションや、前からハメる守備も「やろうとはしてる」けど、まだまだこれから段階
…こんなに分かりやすいエリク横浜、なんで「方向性が分からない」「スタイルがない、戦術が見えない」とか言う人が未だ絶えないのか全然分からない。スタイルも方向性も、チームの現在地も課題もメチャメチャ分かりやすい。凄く普通。オーソドックス
試合の総括に話を戻す
磐田戦の勝点3以上、プラスアルファで評価できるポイントは正にエリク横浜の課題である「攻は自陣ビルドからの遅攻ポゼッション、ブロック守備攻略」「守は前からハメに行く能動的で狩猟的な守備」に、チームとしても選手個々にもトライする姿勢が見えた事。それに尽きる
3節のアウェイ鹿島戦から指摘し続け前週のC大阪戦なんてその極み的な試合「プレイ原則やゲームプランには忠実だけど」「約束事は守ってますよ感が面に出て」「それを超えていく主体的なトライがない」「プレイが狭苦しい」
今できる事の縮小再生産。課題への取り組み、進歩性がないねと
「新しいマリノス」はまだまだ若く、キャプテン齋藤学が語るとおり「今強いチームでなく、これから皆で強くなっていく」チームのハズなのに、コレじゃダメでしょと。結果も大事だけど、それだけに固執して課題への取り組み棄てちゃダメでしょと。…磐田戦は、ちゃんと反発してチャレンジしてくれた
学は選手ミーティングを開き、エリクも約束事や縛りを減らした紅白戦を実施して選手にダイナミズムを尊重し要求した。選手たちも、それに応えてトレーニングから「課題に挑戦する」「今の自分たちを超えていく」姿勢を示し、それを磐田戦のピッチで表現してくれた。今はクオリティより、その姿勢が大事
「僕がアシストした事より、1人ひとりが走り切って球際で戦い、最後まで戦う姿勢を見失わなかった事が嬉しい。選手ミーティングで意識的な話をした成果は練習でも出ていたし、ピッチに立てない選手のためにも勝たなければいけなかった。C大阪戦とは皆が本当に違った。それが今日の勝因」齋藤学
磐田戦で見えた遅攻のトライ
・序盤マルへの縦ポン多用で間延び誘う
・ダビが引いて受けて前を向く
・↑コレに中澤が縦パスを付ける
・ミロシュの持ち上がり、対角フィード
・マルが内に絞り、大外の松原を使う
・天野純の周囲を使うプレイビジョン
・右に相手を寄せて、左の学へ展開
…詳細は選手評で書く。どこまでがゲームプランで与えられたモノで、どこからが選手個々の主体的なアイデアかは分からないが――どちらにせよトレーニングから考え話し合い準備されたものではあるだろう。C大阪みたいな「ボール持ってから迷う」シーンは凄く少なかったから
足りなかった「遅攻の幅と厚み」バリエーションの拡充、それに取り組む姿勢。それを磐田戦でチームと選手個々が示してくれた。もちろん質の部分ではまだまだ全然これから。でもリスク負ってもやんないと、出来るようにはならないから。磐田戦は、取り組む姿勢を最大限に評価したい。これを続ける事
――厳しい言い方をすれば、磐田戦の「攻守切り替え頑張る」「球際で闘う」「攻守の課題に取り組む」とか、ホントはプロとしてはあたり前、最低限スタートラインの部分。前提として、やってあたり前。やんないならピッチ立つなよレベルの話。でも出来なかった事が出来たのは素晴らしいから、評価する
でも本来コレが「あたり前」だから。磐田戦の「闘う、課題に取り組む」姿勢は「あたり前」にしてかないと絶対ダメ。日々の練習から、厳しく互いに指摘し合おう。また緩む⇒反省する⇒頑張る⇒緩む ――繰り返すこのマリノス・リズムから卒業しよう。そうしないといつまでも真の強者にはなれない
…こういう説教臭い意識高い系の安い自己啓発本みたいな事を言うのも、そういう視点でチームも見守るのもなかなか正直しんどいものはあるけれど「新しいマリノス」は常に挑戦者であり続けなければ
リーグ優勝を目指す、その気持ちは大事で高い目標も必要。でもそのために「今できる事」だけに汲々として「今の課題」への取り組む姿勢を失ったり、プレイが縮こまって闘う姿勢を失くしたり、自分たちのミスで萎えるのはダメ。あくまで「今の自分たちを超えていく」姿勢を貫いた先に、リーグ優勝はある
磐田戦はチームとしても選手個々の姿勢も素晴らしかった。それはスタンドのファンにも、分かりやすく伝わった。それは貴重な「分かりやすさ」だ。忘れないで欲しい。続けて欲しい。あたり前にしていって欲しい。続ける事は、反発より難しい。超え続けていこう
新しいマリノスは、まだまだこれから
スタンドのファンも「出来た、出来なかった」だけでなく「やろうとしたか」課題に挑戦して今の自分たちを超えていこうとしているかを見て評価して欲しいと思う。「もう○○は見たくない」じゃなく「もっと出来るだろ?」という期待をベースに見て欲しい。挑戦した上でのミスには拍手を送って欲しい