横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【まあ色々重なっちゃったね by 蒼井真理】 about [ナ-準決勝] 横浜 0 v 4 柏

今季はリーグタイトルを獲る収穫期。後にシーズンの「流れ」をちゃんと振り返るためにも、昨夜の柏戦を自分なりに少し落ち着いて整理してみる

柏は立ちあがり、ややクレオへのロングボールを多用する向きもあったが露骨に蹴るだけでなく、ボランチ経由でサイドに展開し繋ぐところは自陣から繋いできた。起点となる左SHワグネルのキープ力と推進力には手を焼いたが、序盤はマリノスも注意を払い自由を与えず

柏は守備では、前線からプレス&コース限定。激しさと躍動感で柏がマリノスを上回った。しかしマリノスも序盤はボールへの寄せ、セカンドボール奪取に集中力を発揮。試合の入りは悪くなかった。10分までのシュート数は0:1、柏のそれはボランチ栗澤の可能性低いミドル

15分過ぎまで「互いにリスク管理徹底しつつ相手の隙を窺う」いつもの展開。ゴール前の局面は少なく中盤の攻防。次第にマリノスがボールを握る時間が増え、柏カウンタの構図。小椋はCBとの距離を保ち富澤的な「余る」役どころ、慎重な入り

18分に試合が動く。中央から右サイド寄りまで進出したワグネルがクサビの縦パス&ゴーでエリア侵入、セカンドボールを右SH狩野がクロス、こぼれ球をワグネル→田中順也が左足強振。兵藤らが悪くない反応でコースを塞ぎにいったが、田中の左足の鋭さと思い切りの良さが上回った

勢い付いた柏がボールを握り、マリノスがカウンタの時間帯へ。マリノスはカウンタ→セットプレイから反撃を試みるも25分と34分にはセットプレイから柏の速攻を浴びて数的不利のピンチ。前者は哲也、後者は小椋の好守で失点にはならなかったが、これは今後に向けて要修正課題

マリノスも23分にドゥトラのポスト直撃ミドル、33分に小林祐三のカットインドリブルからマルキのシュート、43分に端戸が得意の右から中に入り込む動きで惜しいチャンスは作るも崩し切るには至らず、同点ゴールを奪えない

前半は前線の4人が良い形でボールを受ける、収めるシーンがほぼ皆無。特にマルキの足元キープ、兵藤の背負って受ける強さに平時のクオリティ無し。両者の疲労か、柏守備陣の強度がこれまでの相手より高かったのか、その両方か

44分に狩野からのクサビを受けた田中順也が、ターン一発で背負った中澤をかわしまたも左足強振。「狙い通りでなく踵にボールが当たって奪い返せた」偶発性ある一撃。AT47分、自陣でクレオにファウル紛いに激しく寄せられた端戸が痛恨のロスト。ワグネルが綺麗に抜け出しダメ押しの3点目
ハーフタイムに端戸→優平。3失点目の懲罰と、前線で相手を追い回す運動量を投下する2つの意味合いがある交代。優平は期待に応え、特徴である2度追い3度追いで柏に混乱を誘い、ルーズな浮き球に対する身体の入れ合いでも以前のような脆弱さを感じさせず、果敢に競り合った

優平は左サイドでマルキ、ドゥトラ、俊輔と絡みつつ細かい動き出し・動き直しを繰り返しチャンスを演出。優平の奮闘もあり、後半の入りは勢いよく10分までにCKも3本、攻勢を続ける。9分には小林祐三のクロスから中町ヘッドもGK正面。この時間帯に1点でも奪えていれば…

後半序盤の攻勢を柏に凌がれると、10分過ぎから試合展開は極めて難しくなった。柏は自陣に強固なブロックを形成、DFラインと中盤を圧縮しつつ中に入ってくる相手に対し厳しい寄せはそのまま。マリノスの前線が呼吸するスペースと時間的猶予を与えない

ここで柏戦で毎回浮き彫りになる課題が露呈する。プレッシャの少ない中澤と勇蔵、小椋が後方から「局面を前進させるパス」を供給できない。中町や俊輔が自陣まで戻って組み立てに参加を余儀なくされ2人の負担が増加し、必然的に前線の密度は下がり数的優位や変化を作り難くなる

前半の小椋は決して悪くなかったが、後半の状況下ではどうしても富澤とのキャラの違いが悪い方にしか出なかった。柏の守備ブロックに特徴である「攻めの縦パス」を入れるも、性急で工夫と精度を欠いた。隣で俊輔が強く首を振って憤慨する姿がやたら印象に残った

後方の配球役が足りないのは明白。ベンチには火曜から完全合流を果たしている富澤。しかし樋口監督は動かない。手詰まり感に満たされたまま無為に時が流れる。小椋→富澤の交代は残り15分を切った77分だった

ピッチに立った富澤はマイボールになるとCB近くに落ちて後方の配球役を務める。正確なミドルパスがサイドの選手にピタリと収まるシーンが立て続けに2度。富澤が底に位置する俊輔、中町との逆三角形が形成され、中盤のボール回しも滑らかさを増す。しかしここまでに時間を浪費し過ぎた

85分に決勝進出の希望を断つワグネルのFKが炸裂。86分に藤田を投入。取り戻されたバランスは9分間で、再びバランスを崩しアウェイゴールを遮二無二奪いに行く選択。しかしこれはどちらが良いとも検証しようがない選択。惜しまれるのは富澤投入を決断するまでの空隙

…交代の遅さや柔軟性の欠如は、樋口監督の変え難いパーソナリティの問題として随分前に諦めたつもりだったけどなあ。ネルシーニョみたいに直感を信じられる戦術家、即断の人は自身の進退も直感的な即断即決みたいだしw

富澤投入の遅さは「それにしても」な感は強かった。でも基本、諦めて受け入れてます。選手も監督も求められる全ての要素が100点の人なんていない。長所と短所があるから面白いし、得てしてそれは表裏一体だったりする。樋口監督のブレない堅実さと、実戦での決断の遅さとかね

柏戦の敗因や要素を振り返ると、まず球際の激しさや勢いで柏が上回った。ネルシーニョの「監督辞めるの止める」がどれだけの効果を生んだかは検証不可能だが、ゲームに臨むフィジカル・メンタルコンディションで柏がマリノスを凌駕したのは確かだ

立ちあがりからの集中力や慎重さでは負けてなかったが、気迫負けの感は否めない。後半から入った優平が「勢いや球際の迫力」で存在感を発揮したのも、裏返せば前半のマリノスにそれが足りなかったという事にはなるまいか

マルキと兵藤は前線でタメを作れず、中澤は田中順也にターンを許し、他の守備陣も寄せが一歩及ばなかった。柏の守備陣の強度が強かった&田中順也がスーパーだった、マリノスに疲弊が出た。双方に理由があろう。試合は相手あってのもの、一方のみに原因を求めるのは正解じゃない

2つ目には、柏ネルシーニョの特に守備におけるゲームプランがまたもハマりまくった。大谷秀和をアンカー気味に俊輔をマークさせ、栗澤僚一とFW田中順也が中町と小椋を見る。中盤を3対3でハメ込む… おいおいコレって先週、大宮がウチをハメた策の完全なパクりじゃねーかw

まとめます。「監督辞めるの止める」効果かしらんが柏に勢いがあった。対するマリノスは夏の終わりの勤続疲労が毎年出る時期。田中順也の出来過ぎな2発。前節大宮戦の映像をしっかりネルシーニョに利用された巡り合わせの悪さ。小椋の立ち位置を確立したかった樋口監督の挑戦が裏目→ 0-4

まあ色々重なっちゃったね、と。戦力拮抗したJリーグでは対戦時期の巡りあわせにも、1戦1戦の結果も順位も大きな影響を受けてしまう。今回で言えば直近の試合が大宮戦でその情報使われたとか(だから私は短期決戦になる2ステージ制はイヤなんです。運の要素が強くなり過ぎるから)

負ける時は負ける。敗戦は受け入れて、修正可能な課題を抽出して修正する。敗戦を次に生かす。今季のマリノス、樋口監督と選手たちはそれを結構ちゃんとできていると思う

小椋についても、確かに「柏にリードを許した展開で富澤を差し置いて起用」はキャラ的に無理があるが、とりあえず0-2になるまではリスク管理もできていたし、良いカバーもあった。「前から」はそもそも樋口スタイルの根幹、それに従う・現実的にバランスを取るの狭間で思考・配慮も続けた

決して小椋が「無暗やたらに自分の特徴を押し出そうとした結果」「0-4大敗の原因になった」訳ではない。敗戦、特に大敗となるとスケープゴート探しが盛況だが「それはそれ、これはこれ」で結果と原因は諸々整理して考えないと。今後の起用の是非はチーム状況や展開次第かと

ただレギュラを奪取するには、チームも小椋も変わらないといけない部分があるのは確かで、決して容易な事ではない。それだけ富澤・中町・俊輔の補完関係は奇跡的なほど絶妙なバランスで、彼らの関係性がそのまま今のチームスタイルを型作っているのも疑いない事実

その状況下で小椋が今後、どこに自分の居場所を見い出すかは小椋自身が決める事だ

さて0-4の状況で1ヵ月後に三ツ沢で行われる柏との第2戦だが、どのように意味付けて臨み戦うかは樋口監督次第。個人的には決勝進出はとりあえずさて置いて「ホームで目の前の90分の戦いに勝利する」というモチベーションで臨むのが適当かと今は思う