横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【ボランチ天野純。特に攻⇒守トランジションは秀逸。CFウーゴ。片鱗は窺える。期待値ゼロではない。ファンサに行って直接ウーゴに愛と期待を伝えて欲しい。 by 蒼井真理】 about 2017リーグ開幕6日前までの選手評

aoi_mari.png蒼井真理



リーグ開幕6日前、チームは開幕前最後のオフ。日体大町田ゼルビアとの練習試合を振り返り主観に満ちた選手評を連投

GK飯倉大樹。下位カテゴリとの試合で被決定機は多くないが、町田戦は序盤の被セットプレイからの決定機を2つ阻止。シーズンの課題はクロスキャッチ含めた安定感。GK使った最後方ビルドは現状「なんちゃって足下巧い系」判断精度と速度の向上を。切り返しプレスいなしても次のパスをミスれば無意味

CB中澤佑二。町田戦で見せた局面対人対応は百戦錬磨の業。細かなラインの上げ下げ「飛ばすパス」も意欲的。ライン押し上げた際の速攻対応も、松原健とミロシュそこそこスピードある2人が両脇を固め、それなりに対応できるか。狙われるのは間違いないが、日々是抗い。勇気もって押し上げて欲しい

CBミロシュ。相手の速攻を遅らせつつ絡み取る守備対応、周囲とのコミュニケーション、そして鉄板の型になりつつあるWHへのロングフィードに高い実効性。ただ対人もトップレベルでは未知数。攻守セットプレイでは少し不安定で要熟成。チームに馴染み適応しようとするパーソナリティは素晴らしい

右SB松原健。タイでの2試合は「マリノスの守備、中澤の右隣り」の対応に戸惑いあり存在感希薄も、徐々にフィットの兆し。日体大と町田戦では絶妙なタイミングで右ペナ角まで進出し決定機に絡む。本格的なフィット、本領発揮はこれから。球際の粘り強さ奪い切る力は課題か

左SB金井貢史。昨季後半からコンビネーション熟成一途の学が残留、下平の復帰が遅れた事もあってレギュラ当確。学の使い方、絡み方を熟知しチーム最大の武器左サイドのキーマン。外を回るだけでなく内に入って「右利きの左SB」の特徴発揮。消えない軽さはあるが、今は「らしさ」が前面に出ている

ボランチ喜田拓也。宮崎キャンプの負傷で少し出遅れたが、プリメイロ・ボランチの座を中町と激しく争う。背後を消しつつ寄せ奪う激しさ、天野純とのビルド連携に優位性。ミドルシュートの意欲も高い。課題は受ける出すの細かい精度、余裕もってボールを持てる展開でのキーパスのアイデア

ボランチ中町公祐。昨季ずっと指摘し続けた「1つ2つ持ち過ぎる、ワンテンポ遅い」エリク横浜スタイル適応への課題に、意識高く取り組んでおりタッチ数が減った。その中で中央を通す縦パス、前線へのスルーパスを出せるのは今の喜田にない強み。セットプレイでのターゲットとしても変わらず秀逸

ボランチ天野純天皇杯でのブレイクにも慢心なく心身充実。関与意欲高く攻守の「気づき」一歩目が早い。特に攻⇒守トランジションは秀逸。自陣からのミドルフィードやセットプレイの精度も向上の兆し。ほんの少し「往年の奥大介」に近づきつつある新たな背番号14への期待値は高い。もっともっと

トップ下のダビ・バブンスキ。評価の難しい選手。確かに巧い。タッチが柔らかくボールを隠すスキル、パスにも色気がある。しかし攻守の関与時間とトータルの実効性はそれ程高くない。CFに当確が出ない、コンビネーション熟成できない問題も大きいが、より決定機に絡む仕事を。守備はマジ頑張れ

――なまじ喜田、中町、天野純の3人が始動からここまで素晴らしく意欲的で実効性あるプレイを続けているだけに、その3人のうち誰か1人をベンチに置くことになるダビの起用には、どうしても目線が辛くなる。確かな結果と実効性を示して欲しい。変化を作り出せる、おもしろい選手なのは間違いない

右WHマルティノス。変態的な加速とトップスピード+ミロシュのロングフィードは鉄板の武器に。昨季からの大きな変化は守備に戻るスピード、自陣を埋める頑張り。タイで遠藤渓太が童貞卒業、学の残留でWHのレギュラ争いは一気にハイレベル化。「正しい競争原理がチームと個を強くする」良い見本

左WH齋藤学日体大と町田の2試合はやや空回り感あり不発。でも学に期待するのは「J1レベルで警戒し固めてくる相手を更に上回り突き崩す」事であり、結果に導く事。開幕に合わせコンディションもテンションも作ってると思うので練習試合の内容には不安なし。信頼してるし、本気で期待してます

CF富樫敬真。結果を出し続けるワンショット・キラー。敬真は「ファーストタッチ、エリア近辺でのトラップ」が決まるか否かが全てみたいな選手(ゲルト・ミュラー的)だが、日体大と町田戦はダメな日だった。でも決めた、そこに価値がある。レギュラ奪うには「ダメな日」を減らしていくのも課題

CF伊藤翔。町田戦は左太腿裏の張りで出場回避。宮崎での練習試合、日体大戦では地味にゴールとアシストを重ねる。運動量が多い訳でないが、最前線でターゲットとなりパスを呼び込む、味方にスペースを作る「1トップらしい」仕事の安定感と戦術理解は随一。トータルでは最も計算できる頼もしい存在

CFウーゴ・ヴィエイラ。今季チームの成績を左右する最大の不確定要素。日体大戦では2ゴールあったものの運動量と身体のキレは「お話にならない」レベル。85%徒歩。13%軽いジョグ。残り2%のスプリントもキレなく、大学生との軽い接触で転倒。始動から1ヵ月まだこの状態かと、軽く絶望

CFウーゴ。町田戦の前日のチーム練習、簡単なロンド(輪オニ、タッチ限定ショートパス練習)でも他の選手と比べ反応速度が異次元。咄嗟に一歩が出ない、出しても足先だけで身体がついてこない。ファーストタッチの質、紅白戦ではクロスにヘッドで合わせるセンスも見せたが全然仕上がってない

CFウーゴ。加入決定前には「レッドスターと契約で拗れた」「横浜に行きたくないと言った」「そこから練習態度、試合のパフォーマンスもダダ下がり」「20ゴール決めたウーゴではなくなってしまった」「なだめすかして日本行き決定」との現地報道も。ああ、本人が望んだ移籍ではなかったのかと…

CFウーゴ。しかし町田戦では、日体大戦や前日練習とは見違えるほど攻守にスプリント。ウラ抜けや突破打開を狙い、PK獲得し、ポストや守備でも頑張りを見せた。まあ比較対象が「20点くらいの仕上がり」のウーゴで、まだキレも運動量も全然足りないが、「やる気と向上意欲」が見えたのは好材料

CFウーゴ。横からのボール(クロス)が多少ズレても頭や足で無理やり合わせ枠に飛ばすセンス、ポジション取りストライカ要素は確かにある。町田戦では巧みなフェイントで相手をかわしエリア侵入からフィニッシュのイメージも見えた(まだ身体がついてきてないが)片鱗は窺える。期待値ゼロではない

CFウーゴ。最大の武器であったハズの「ウラ抜けスピード、初速と加速」がどこまで戻るか。絞りキレを取り戻せるか。おそらく最大課題は「この移籍を受け入れる、マリノスでベストを尽くす」やる気の問題で、町田戦では向上が見られた。復活の鍵を握るのは来日したフィアンセ、その手料理か

CFウーゴ。なので現状のウーゴには過度な期待も失望もして欲しくない。大事なのは「この移籍を受け入れる、マリノスでベストを尽くす」なので、自宅に大きなポルトガル国旗がある人はスタジアムに持参し振って欲しいし、ポル語が堪能な人はファンサに行って直接ウーゴに愛と期待を伝えて欲しい

続きを読む

【いやーこの約3ヶ月、なかなか濃密だったねえ… by 蒼井真理】 about CFG提携の価値と東欧ルート、今オフ補強についての妄想に近い推測

aoi_mari.png蒼井真理


『CFG提携の価値と東欧ルート、今オフ補強についての妄想に近い推測』および『CFGと日産がマリノスに求めているものは何か? その疑問に対する解』を連投する

比較的、予算規模に恵まれた複数クラブが今オフは強気の動きを見せた。鹿島、瓦斯、神戸、フラれる事が多かったが吹田や鳥栖も。浦和は地味ながらピンポイントにJで実績ある選手を加えた(何より近年流出が極端に少ない)

対するマリノスは新体制発表後ながら外国籍枠を3+2でフルに埋めた事などもあり「近年稀に見る積極補強、大成功」とのサポータからの評価もあるが、Jリーグで確固たる実績ある選手たちではなく、若い選手が多い。獲得に使った金額的にも「大型補強」ではない

日産自動車マリノスへの資金投下の仕方を変えて「CFGと資本提携を伴うパートナシップを三者連携で締結、20%の株式を売却し提携しチーム運営にノウハウを取り入れる」と決めたのが2014年5月。2年半以上前の事

――振り返れば全然ハードランディングじゃない

改めて強調しておくべきは、この提携はマリノスとCFGの二者提携でなく「日産自動車を含めた三者提携」であり、この決定にはマリノスの実質的な親会社である日産自動車カルロス・ゴーンの意向も強く働いているという事。背景を考えれば「むしろ日産自動車の意向が最も強い」提携であった事

…当時は特にCFG側のメリットが見えにくく「CFGと、またそれとの提携を望んだ日産自動車マリノスに何を求め期待しているか」が見えなかった。「数年後にはチームカラーやエンブレムが変更になる事も受け入れないとダメなのかもな」そんな漠然とした不安も、皆無ではなかった

2015.12.31
嘉悦朗が社長を退任

2016.3.31
下條佳明チーム統括本部長が退任

2016.4.1
利重孝夫氏がエグゼクティブアドバイザ就任
アイザック・ドル氏がSD就任

2016.6.1
利重孝夫が取締役就任

2016.7.1
利重孝夫がチーム統括本部長就任

CFGとの提携合意から約2年が経った昨年の3月末から、フロント体制に大きな動きがあった。2010年から嘉悦社長の下で6シーズン統括本部長を務めた下條氏が退任。スポーティング・ダイレクタにアイザック・ドルが就任し、この時点ではドルが下條氏の仕事(編成の長)を引き継ぐ形になった

2ヶ月後の6月に利重氏がアドバイザから取締役に、その1ヵ月後にはチーム統括本部長に就任した。7月はちょうど「来季に向けた編成がスタートする」時期でもある。この「利重+アイザック体制」が既定路線だったのか、必要に迫られての変更だったのかは、全く情報なく不明

――SDという役職名からは総合的な決定権を持つGM(日本で言う強化部長、マリノスなら統括本部長…ただし背後に社長、その背後に親会社がいて決裁権を持つ事が多い)のような決定権を有さない「補強のための交渉人」の意味合いが感じられ「利重+アイザック体制」は既定路線だったと見るべきか…

…つーかクラブにとってこんな大きなフロント体制の変更がある中で情報があまりに無さ過ぎたんだよ。この半年以上、マリノス番記者たちは何をやっていたのかと。なんで利重さんやドルのインタビュ記事が一本もあがってないんだよマジ仕事しろよ

アイザック・ドルのSD就任、利重さんの統括本部長就任の際に「不安と不可解」を覚えたのは2人の経歴に「プロクラブの編成経験が皆無」であった事

利重氏の経歴は超の付くエリート&エグゼクティブで出自にサッカー背景あり、トップビジネス&サッカー界での実務交渉経験は他の日本人で探すのがおそらく難しいレベル。ドルは日本、中東、フランス、母国ルーマニアでU-年代を中心に豊富な指導歴ある国際派。しかし2人とも「編成経験はゼロ」皆無

なので昨季の4~7月頃は「社長も1年生だし、こりゃあ次のオフはどうなる事やら想像もつかんな」と、これまた漠然とした不安になると同時に「番記者どもマジ仕事しろよ…」の念が強くあったが、本当に情報が無さ過ぎて仕方ないのでそのうち考えるのをやめた(第二部完)

そしてシーズン終盤からオフにかけて、ただただ受け入れるのみ。いやーこの約3ヶ月、なかなか濃密だったねえ…

利重氏自身、昨季リーグ終了後の最初の契約更改交渉の後に「1回目の契約交渉で、私自身も初めてだった。今までいろいろな会社で人事面談をしてきたが、やはり似て非なるもの」と語っている

…実際、トップビジネスの世界では感情論を排しロジカルに交渉、議論、説得できても、サッカーの特に代理人を介さない直接交渉ではそういった「交渉の基礎ルール」を持たない選手側が感情論を持ち出し、どう形にしたらいいか分からない「愛」を要求してきたりと違った難しさが絶対的にある

「判断基準をハッキリさせないとマリノスへの愛がなくなってしまう。愛のないクラブは衰退する」中町公祐

「愛あるクラブにしてくれ、と伝えた」飯倉大樹

――全くの余談だがこの当時の利重さんに、加藤清正に「お前には情っていうもんがねぇのかよ!」「お前と飲みたいんだよぉおお!」とすがりつかれ鬱陶しそうに振りほどく石田三成山本耕史)のイメージが重なってた

新体制発表では「マリノスタウンを離れ、本社機能と練習場の距離ができてしまいコミュニケーションが足りない部分もあった」と反省の弁と共に「今季は編成の長である私が責任をもって果たしていく」とも語った。チーム統括、編成の長としての経験不足が否めない部分も確かにあった

――ただ今になって「何故、利重氏だったのか」「何故ドルだったのか」を少し醒めた目線で考えると、思うところがある(ようやくこの連投の本題である。前フリが長いのは芸風だから諦めて、どうぞ)
続きを読む

【「身のこなし方がありえないくらい上手いっすねぇ」「バルサ伊達じゃない!」 by かっつ&いた】 about ダビド バブンスキーについて@2017宮崎キャンプの練習動画(ロンド)より

Facebookマリノス公式が投稿した、練習風景(ロンド)の動画についての感想ツイート

※中央でパスをさばいているのが、バブンスキー(元バルセロナB)




【とてもポジティブなイントロダクションに。すごくきっちりしたサッカーが出来た。遠藤渓太が壁を破った&山田康太のインパクト。 by いた】 about [2017-アジアチャレンジ-2] 横浜 4 v 0 スパンブリーFC

itaruru_gudetama.pngいた

改めて昨日の試合。
まだまだコンディション調整段階の中で、若い選手が結果を残し、大きな怪我人も出ず、とてもポジティブなイントロダクションになったのかな。
トップの内から外への追い出しからのサイドへの誘導、4-4のブロック、フィードによる外展開、すごくきっちりしたサッカーが出来た。

スタンダードな形、各セクションの役割も明確でタスクもある程度整理されていたように見えた。トップの追い方から中盤のスライド、起点となるポイント…特別なことではないけれど、当たり前でスタンダードなことは世界共通、新しい戦力が加わる土台として馴染みやすいのかな。

ここからがスタートで、ポジションブレイクと空いたスペースのケア、切り替えてのフォアチェックと撤退守備の使い分け、ポゼッションのところでの「スイッチ」や連動、カウンターへの移行みたいな細かいところはこれからだと思うけど、改めてこういう形でやるよ、というのは示された、よいこと。

若い選手が結果を出してアピールに成功したこと。
実績ある選手や補強した選手が加わると、押し出されてプレー機会が限られてしまいがちだけど、ここで結果を出せたことでその存在は無視できないものになる。結果、競争が生まれる。
結果がもたらす自信はもちろんのこと、チームにとってもポジティブ

特に遠藤渓太が壁を破ったこと。
タッチライン際でスムーズに前を向き、積極的な仕掛けでチャンスを生んだことは大きな進歩。
これまではスペースランからスピードに乗った状況で良いプレーというのは多かったけど、本人曰く「学くんをイメージして」止まったところからでも良いプレーが生み出せた。

その上で積極的に仕掛けて抜いて、フィニッシュも決めることが出来た。相手のレベルや情報不足は否めないにしても、自信を感じたし、1つ決まったことで落ち着けたかな。ここでつかめた自信を更に深めていけたらブレイクスルーも充分にある。
楽しみが増えた、誇らしき後輩ちゃん♥

そして、ユースから参加していた山田康太のインパクト。
シティへの短期留学などクラブからも大きな期待を受ける新しい天才は、トップデビューでもその可能性を示しあっさりと結果も残した。
1.5列目で泳ぎつつ、スキル・アイデアを発揮、遠藤渓太の2点目を演出したスルーパスは特筆すべきプレー

いろんな事が楽しみになるような2試合で、更には新しい助っ人たちが更なる付加価値をもたらしてくれればその期待は更に膨らむ。
宮崎で「怪我なく!」(重要)、コンディション更に上げつつ、チームとしてまとまっていければ。
滑り出しは上々、よかったよかった。


【長い間マリノスに尽力してくれた現場スタッフの多くがチームを去り、刷新が成された。しかしクラブの目的は「末永く皆で仲良く」ではない。人と人の繋がり「縁」は大事だが、それが主目的となる事はプロの現場では決してあり得ない by 蒼井真理】 about 2017年チーム・スタッフ編成

aoi_mari.png蒼井真理


――新体制発表を受けて、2017シーズンの始動に臨むマリノスの現場体制を確認&備忘録


監督

エリク・モンバエルツ 61歳 3年目

ヘッドコーチ

松橋力蔵 48歳 ★新任(前ユース監督)

テクニカルコーチ

マルク・レヴィ 55歳 3年目

GKコーチ

松永成立 54歳 11年目

フィジカルコーチ

アレシャンドレ・マルレス 37歳 ★新任

アシスタントフィジコ

松本純一 33歳 ★新任

コーチ(分析担当)

小坂雄樹 39歳 8年目

テクニカルスタッフ(分析担当)

杉崎健 33歳 ★新任


Diario de F. Marinos@DdeFMarinos

超エリートな新フィジカルコーチ・マルレス氏のプロフィールを簡単にご紹介。 https://diariodefmarinos.wordpress.com/2017/01/15/... 

実に14年間の長きに渡りトップチームのフィジコを務めた篠田さんは、契約満了で今季から川崎のフィジコに就任。樋口体制1年目から小坂コーチの下で分析担当を6年務めた岡村コーチも退任

アシスタントフィジコに就任した松本純一氏は33歳。熊本出身で2008年から昨季まで8年間 J2ロアッソ熊本で非常勤トレーナ、フィジコを歴任

テクニカルスタッフに就任した杉崎健氏は33歳。東京出身でサッカーのデータ分析企業「データスタジアム」を経て2014~15年に神戸、昨季は仙台で分析担当を歴任。より複雑な数値データから選手とチームのパフォーマンスを読み解く、CFGの提供データを活用する人材として招かれた模様

■ドクタ

深井厚⇒★新任

■トレーナ

日暮清⇒(チーフ)★新任

佐々木康之⇒★新任

宮内信泰⇒★新任

所澤、太田原、松田、3名のトレーナが全員退任。96~2007年にヘッドトレーナを務め、08~16年は新潟に在籍した日暮さんが10年振りにマリノスに復帰

2016⇒2017のマリノス「フィジカル&メディカルのスタッフ全員刷新」の大改造人事に

フィジカルコーチは「始動からシーズン通して選手が(監督の求める)安定して高いパフォーマンスを試合で発揮できるよう、選手個々のコンディションを見極め適正な負荷を設定しフィジカルメニュを与える」のが仕事。居残り自主練では個々の相談に乗り、メニュを与え付きあう事も多い

メディカルスタッフは「主に負傷した選手に適切なリハビリメニュを与え速やかで安全確実な復帰を促す(サポートする)」のがトレーナの仕事。メンタルケアの役割も大。ドクタはその指針となるべく負傷を診断しトレーナ(やフィジコ)と共に負荷と復帰時期を判断する

「フィジコがダメだから負傷者が多い」といった批判は多いが、ぶっちゃけ怪我は、選手の体質やプレイスタイル含め「運」の要素が90%。怪我する時はする。8%が選手個々の意識、節制や積極的休養、日々のケア。スタッフがカバーできるのは残る1~2%の僅かな領域――というのがド素人の自論

シーズン中、次の試合に向けてトレーニングの強度を決定するのは最終的に監督であるし、実際に身体を動かすのは選手であり、今の自分のコンディションを体感的に判断できるのも選手。「練習で発生する筋肉系や関節の負傷がフィジコの責任」であるケースなど、冷静に考えればあるハズもない

――ただ負傷が連続する、しかも同じ部位や左右交互で負傷したり、パフォーマンスが戻り切らない… など「スぺ体質化」の問題は、メディカルスタッフが受け持つ責任は大きいかもしれない。怪我をすると身体のバランスを崩したり、負傷部位を庇い別の部分に負荷が掛かったりする傾向もあり⇒

⇒そのリスクや不安をリハビリメニュや対話を通じて選手から取り除く手助けをするのがトレーナの仕事だからだ。豊富な知識と経験、そして何より選手との対話力・共感力が強く求められる。言葉に説得力、選手との信頼関係が築けなければやっていけない

「選手との信頼関係」が大事な仕事(長期離脱選手にとっては愚痴や弱音の聞き役)であるが故に「来季はトレーナ全員入れ替えるよー」というクラブの判断に、彼らとの付き合いも長いベテラン選手から反発が出たのも――まあ分からなくない話ではある

……おそらくクラブとしては、そういった反発の声も聞き入れ、12年間マリノス在籍経験ある日暮さんをチーフトレーナとして呼び戻したのだと思うけど。日暮さんと仕事した事ある選手は、中澤と勇蔵と飯倉の3人だけになってしまったな

■通訳

松原英輝(仏語・コーチ兼任)⇒留任

高橋建登(韓国語)⇒留任

松崎裕(英語)⇒留任

木下伸二(ポル語)⇒★新任

細川パブロ大(ポル語)⇒退任

※松崎裕氏の役職が前年の「チーム管理サポート」から再び「通訳」に(在籍は2014年から)

■チーム管理統括

袴田聖則⇒留任

■キットマネージャ

山崎慎⇒留任

■副務

緒方圭介⇒留任

――フィジカル・メディカルスタッフを中心に、長い間マリノスに尽力してくれた現場スタッフの多くがチームを去り、刷新が成された。しかしクラブの目的は「末永く皆で仲良く」ではない。人と人の繋がり「縁」は大事だが、それが主目的となる事はプロの現場では決してあり得ない

シゲさんがGKコーチとして留任した事は、小さな驚きだった。GK4人のうち3人がチームを離れ「テツが凄く優しくて若手の面倒見もいいから、GK練習が悪い雰囲気にならない」と評していたGKの長兄、哲也も浦和移籍を決断した。昨季7月に練習中エリクと激しい口論になったという報道もあった

――2010年、木村和司体制1年目にハマトラ紙でインタビュさせていただいた際のシゲさんの言葉を読み返し、思うところがあった部分を以下に引用する

「僕ら(コーチングスタッフ)も結局そのシーズン誰が監督やるか分かった上で契約する訳で、その体制がイヤなら契約しなきゃいいだけ。仮に何か不満があったとしても契約したなら、その監督がやりやすいよう100%協力するのがあたり前なので」松永成立GKコーチ 2010年

「どっちにしろ現役の頃からこういう(プロの契約)世界で生きてきているから。ハンコ押したらもうウダウダ言わずにやるだけ。チームの順位をひとつでも上げるためとかじゃなく、優勝するためにやっている」松永成立GKコーチ 2010年

■チーム世代構成バランス

1978 中澤佑二

1983 栗原勇蔵

1984

1985 中町公祐

1986 飯倉大樹

1987 鈴木彩

1988 ウーゴ 伊藤翔 下平匠

1989

1990 齋藤学 金井貢史

1991 マルティノス 天野純 扇原貴宏

1992 仲川輝人

1993 富樫敬真 新井一耀 松原健 山中亮輔 杉本大地

1994 前田直輝 喜田拓也 朴正洙 高野遼

1995

1996 中島賢星

1997 遠藤渓太

1998 吉尾海夏 原田岳

1987年以降生まれの選手は、昨季始動時に10名在籍したのが、今季は5名に半減。1991~94年生まれ(23~26歳)のボリュームが増し「3年先にピークを見据えたチーム編成」という視点でも、バランスの取れた若返り編成が実践された

■ポジション編成

GK 飯倉 鈴木 杉本 原田

CB 中澤 勇蔵 朴正洙 新井

SB 松原 下平 金井 山中 高野

DM 喜田 中町 扇原 中島

OM マル 齋藤 天純 前田 仲川 遠藤 吉尾

FW ウーゴ 伊藤 富樫

GK 飯倉 鈴木 杉本 原田

4人体制は変わらずも3人が入れ替わり、J1で実績あるGKは飯倉だけになった。飯倉、哲也、六反と遜色ない3人が同時に在籍した当時が夢のようだが、ある意味では金の使い方を間違っていた。とにかく今季は飯倉に怪我なく安定したパフォーマンスを期待したい

CB 中澤 勇蔵 朴正洙 新井

ファビオが移籍、岩波拓也高橋祥平ら若く実績ある選手の獲得もならず。エリク就任時「最も層が厚く計算できる」「堅守の屋台骨を支える」ポジションが、最も不安要素の強いセクションとなった。他のCBを補完できる存在であったファビオの流出は実に痛手

最大の難点は4人共にスピードを欠く事。どう組合せても自陣から繋ぐ、ラインを押し上げるスタイルにおいてリスクが高い。中澤と朴正洙は絶対的なスピードを欠き、新井は反転アジリティが低い。ファビオと組み良さを発揮できるタイプ。勇蔵も往年の快速は失われ、3人を補完できる程ではない

中澤と勇蔵の「跳ね返す力」は未だリーグ屈指だが、チームが目指す「世代交代」「自陣からのビルド」2つの題目から両者の同時起用は現実的でない。勇蔵は中澤のバックアップでしかなく、朴正洙と新井には絶対的に経験実績が足りない。ファビオが抜けずとも実績ある20代CBの獲得はマストであった

――利重さんの表現を借りるなら

◆選手の成長ステージ

1.ブレイクスルー(突破・進歩期)

2.デベロップメント(発展・成長期)

3.ピーク  (完成・到達期)

4.トワイライト(晩年・黄昏期)

朴正洙と新井は「1」中澤と勇蔵は「4」のステージ。「育ち盛り働き盛り」の選手が不在

3年連続フルタイム出場を果たした中澤だが、流石に今季は徐々に出場時間を減らし世代交代を進めて行くべき。しかし現状の朴正洙と新井を組ませリーグ戦を戦うのは(2人に経験を積ませ成長させる意味でも)リスクが大き過ぎる――シーズン前半、どちらかが急激に伸びてくれる事を期待したいが…

高橋祥平(25)は4年越しのオファーに応えず磐田を選択。年齢、サイズとスピードのバランス、足下の技術と得点力、J1・J2で200試合を超える出場経験――ファビオの穴を埋める意味では申し分ないタレントであった(素行面、エリクとの相性問題はさて置き)

総合的に岩波拓也(22)が理想だったのは確かだが――同じクラブで自分より若くレギュラの岩波にアプローチしていた事が印象を悪くしたか? 昨季、磐田から神戸に移籍した伊野波が高橋のポジションを奪い、今オフ高橋が磐田へ。1年越しCBトレード。両者の年齢を考えると磐田は丸儲け

SB 松原 下平 金井 山中 高野

昨季始動時3選手だったSBは左右バランス取りつつ5名。松原と下平は怪我もあり昨季フル稼働しておらず、左右こなす金井の存在はバックアップに限らず心強い。山中と高野は守備の向上が課題で、場合によっては一列前、左WHでの起用もあり得るか

ボランチ 喜田 中町 扇原 中島

守備的なボランチはアンカー展開型の朴正洙もいるが「待ち構える守備」になりやすく、喜田にはフル稼働を期待。機動・展開型には天野純も。中央3枚は固定か、使い分けか。扇原も獲得し選択肢を得たエリクの判断が問われる。中町の残留は非常に大きい

2列目 マル 齋藤 天純 前田 仲川 遠藤 吉尾

リーグ屈指のドリブラ昨季18ゴールに絡んだ学の去就が目下焦点。俊輔の移籍は、むしろ中盤構成においては方向性が定まりエリクの悩み軽減。「旧態依然としたトップ下」は今季のエリク横浜に不要となり「実質的な4-3-3」化が進むだろう

中盤3枚はマイボール時は守備的なボランチを底に1枚残し、残り2枚はインサイドハーフ的に(天野純や中町、吉尾)展開と崩しの局面に積極関与する。1トップが孤立するようなら前田や仲川を1.5列目、縦関係の2トップ的に起用する――エリク横浜は「4-2-3-1」と見ない方が理解しやすい

FW ウーゴ 伊藤 富樫

結局ターゲット型、ファーストトップの補強は成されず。ウーゴはウイングに近い7・11番タイプで「学の始動後の移籍も前提として」の補強と思われる。より2トップに近いシステムも考えられるが、現状では敬真が化けねば積年課題のリアリズム克服は難しい

続きを読む