横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【昨季より「チームの勝利」のため考える事も、周囲にプレイで示すべき事も増えた。でももう少し、自分の閃きや感覚を信じてあげてもいいんじゃないかしら by 蒼井真理】 about "カピタン" 齋藤学

f:id:harukazepc:20170419105933p:plain蒼井真理

――主にマリノスのNo.10絶対エースにしてカピタンの齋藤学さんへ。最近すごく自陣担当サイドの守備を頑張ってますね。川崎戦の備忘録でも触れた「今のチームが勝つための勝ちパターン」的にも「やらなきゃいけない」という責任感が増しているのも解ります。攻め残りが一層少なくなった

ただチーム全体トータルの攻守リスク&リターンはそれで改善されているのでしょうか? 直近3、4試合の得点数や決定機、チャンス構築数は減少傾向で、チームは「得点があまり期待できないから尚更失点できない⇒攻めにリスクを掛けられない⇒得点力が更に低下する」ループにハマりつつあります

確かに「得点に絡めないなら守備を必死で頑張る貢献もある」とは言いました。でもそれはあくまで「どうも今日は足にボールが付かない」とか「抜ききるイメージが閃かない」試合に限った話であり、守備に追われ攻めの比率を下げる齋藤学など、相手をラクにさせ利するだけです

中澤佑二が「今季の俺はビルドアップの意欲と実効性を凄く向上させたから、対人対応やシュートブロックはそこそこでも」なんて言うでしょうか? 積み上げた強みの衰えは最小限に抑え更なる進化を見せ39歳にしてキャリアハイかと思わせる鬼神の働きには妥協や言い訳は微塵も感じません

ゴールがないから、その分もアシストと守備で貢献する。チームの勝利が最優先。ウーゴがもう少し得点パターンが豊富な万能型のストライカなら、それでも良かったのかもしれません。でもそうではない。今のマリノスはセットプレイ含め得点の逆算が極めて乏しく、少しずつジリ貧な状況にある

もっと相手の脅威となる攻めの太い柱と幅と厚み、打開するパワーが必要で、今のマリノスマルティノスの少し気紛れな個の打開に依存しがちです。対戦相手はマルティノスと同等以上に齋藤学を警戒し脅威に感じているのに、その事をフルに活用できていないように感じます

もう少し、昨季の齋藤学がそうしたように感覚的に「ここは攻め残っても大丈夫」「攻め残れば次に大きなチャンスがくる」と感じたら、大胆に攻め残ってもいいと思います。やってはいるけど、その頻度を上げてもいいんじゃないかと

昨季の特に後半の齋藤学は「来季は欧州に行く」と決めて、チームのリスク&リターン効率より自分が直接ゴールに絡む効率を優先させた。目的は単純で、それに必死だった。その結果の10ゴール8アシスト。リーグで最も打開できる怖いドリブラになった

今季はマリノスに残り10番を自ら希望して背負いカピタンにも指名され、昨季より「チームの勝利」のため考える事も、周囲にプレイで示すべき事も増えた。それはよく解るしプレイからも伝わります。ただ今の少しずつジリ貧なチーム状況で、齋藤学に求められるプレイは何なのか

単純に客観的なリスク&リターンの収支を考えても、攻め残りと守備に奔走する比率は今の値が適正でしょうか? 相手に脅威を与え、敵味方のメンタルに与える影響は? チャンス構築力が下がれば、チームの意識は更に守備に傾く。川崎戦だけでなく、ここ数試合の傾向も然り

何度となく指摘してきたことですが、齋藤学はもっと自分の感覚、閃きや天才性を信じ身を委ねてもいいと思うのです。自分は思考と試行を積み上げる努力型、端戸仁とは違う――果たしてそうなのでしょうか

本当の天才とは端戸のように意外性ケレン味あるプレイをする選手ではなく、人とは違う景色が見える選手、人にはできないプレイができてしまう選手だと思います。例えば 2人、3人の守備者の先にドリブルコースが見える。そこを実際に抜き切ってしまえる選手

「そんな簡単じゃねーよ俺だっていろいろ考えて工夫して試行錯誤してやってんだよ」と言われるかもしれませんが、対面DFを2人、3人ブチ抜くなんてのは中澤佑二にはたぶんプレイだけでなくイメージすることもできない。特別な選手にしか想像も許されないプレイなんです

サイドの守備も、そんなにチーム&ゲームプラン通りでなくとも齋藤学は以前から「ここは絶対」な局面はそれを察知して長い距離でも戻り埋めてチームを助けていました。敵味方にとって危険なスペース、タイミングを察知する感覚は思考するより早く機能して身体を動かしている

思考と試行錯誤を積み上げる、自分の感覚や天才性に身を委ねないクソ真面目な性格も、それも齋藤学の特徴であり良さであり、それ故に迷いの森に入ったり遠回りしてしまうのも齋藤学の「らしさ」でありサガかもしれません。でももう少し、自分の閃きや感覚を信じてあげてもいいんじゃないかしら

あるいは欲、ですか。W杯で日本を勝たせる選手になるために、もう一度A代表に呼ばれるために、日本一のドリブラだと認めさせるために――もう少しプレイを先鋭化させて、より直接ゴールに絡むためゴールに近い場所で、ゴールに向かうプレイを増やしてもいいのではないでしょうか

単純に今のマリノスが置かれたチーム状況からも、リスク&リターン効率からも、それは決してマイナスになる選択ではないと思うのですが。新加入選手たちの守備意識や責任感も、シーズン序盤に比べ大きく向上しています。今のチームに足りないものは何でしょうか?

攻め残りを増やす事で、それが理由で失点し負ける試合が1つ増えても、2つ勝利が増えるなら収支は大きなプラスです。まあサッカーはそんな単純な計算が成り立つものではありませんが、もう少し周りの選手たちとその成長を信じて頼ってもよいのではないでしょうか

「俺は攻め残る。守備には穴や数的不利が生まれるかもしれないが、その分必ず得点に絡むプレイをするから、ここは我慢して守って奪って俺にパスをくれ」そんな信頼が、時と場合によってはあってもいいんじゃないかしら。その頻度をもう少し高めてもいいと思います

ズルい話をするならば、スタンドの小中学生や、ピッチサイドのボールボーイは齋藤学の守備に期待して見ているでしょうか? ドリブルで2人、3人とブチ抜きゴールを決める齋藤学を見て「僕も将来あんなプロサッカー選手になりたい」と思うのではないかしら?

百歩譲ってアウェイはいいです。でも日産スタジアムのホームゲームでは、ガンガン対面のDFにドリブル突破を仕掛ける齋藤学を、2人、3人とブチ抜きゴールを決める齋藤学を見せてあげてください。決して誰にでもできる事ではない。それは「齋藤学だからできる」プレイです。できます。絶対できます

齋藤学に2人、3人ブチ抜くプレイが1つ出れば、あとは勝手に相手がビビって引いて受けに回るし、他の選手は空いて攻めの選択肢は拡充する。山中と松原の守備を信じてもっと大胆に攻め残れ! アイツらあんだけカピタンをイジってきたんだからw きっと責任取ってケツ拭いてくれるよ♡

周りを助けるだけじゃなく、周りを信じて頼り任せ責任を与えるのも、カピタンの大事な仕事ですよ