蒼井真理
――長い長いオフに、昨季のチームの振り返りや選手評、今季展望、あるいは退任された嘉悦朗前社長の仕事について書き記そうと思考と下書きを重ねるも、満足いくアウトプット完成形に至らず2016開幕当日。
とりあえず備忘録的に「どう読み解くか」は読み手に投げっぱなし、その断片を連投する
横浜F・マリノス2005?2014財務データ
横浜F・マリノス 広告料収入と営業収益における割合の変化
日産自動車の営業利益1998?2014
横浜F・マリノス リーグ平均観客動員数とリーグ平均値2000?2015
横浜F・マリノス チーム人件費コスパ 2005?2014
浦和、広島との比較
横浜F・マリノス チーム人件費の推移2005?2014
浦和、広島との比較グラフ
2013・2014シーズンのJ1チーム人件費と勝点の相関図
(単位は百万円)
監督
エリク・モンバエルツ 60歳 2年目
ヘッドコーチ
マルク・レヴィ 54歳 2年目
GKコーチ
松永成立 53歳 10年目
フィジカルコーチ
篠田洋介 44歳 13年目
コーチ(分析担当)
小坂雄樹 38歳 7年目
コーチ(分析担当)
岡村保志 35歳 5年目
■トレーナ
所澤俊幸⇒留任。チーフトレーナ
太田原裕幸⇒トレーナから「アスレティックトレーナ」
松田拓也⇒トレーナから「フィジオセラピスト」
原田尭⇒退任
■通訳
松原英輝(仏語)⇒アシスタントコーチ兼任
細川パブロ大(ポル語)⇒留任
高橋建登(韓国語)⇒★新任
■チーム管理統括
袴田聖則⇒留任
■チーム管理サポート
松崎裕⇒★新任
松崎氏は鎌倉市出身の35歳。15?20歳まで英国にサッカー&語学留学。U-代表やジェフ千葉、大分で通訳経験有。2014年から通訳としてマリノスに在籍。CFGからのスタッフ派遣時などに重宝か
■副務
山崎慎⇒副務から「キットマネージャ」
緒方圭介⇒留任
■チーム世代構成バランス
1978 中村俊輔 中澤佑二
1983 栗原勇蔵 榎本哲也
1984
1985 兵藤慎剛 中町公祐 小林祐三
1986 三門雄大 飯倉大樹
1987 ラフィーニャ
1988 伊藤翔 下平匠
1989 ファビオ 高橋拓也
1990 齋藤学 金井貢史
1991 天野純
1992 仲川輝人
1993 富樫敬真 新井一耀
1994 前田直輝 喜田拓也 朴正洙
1995 北谷史孝
1996 中島賢星 田口潤人
1997 和田昌士 遠藤渓太
■ポジション編成
GK 飯倉 哲也 高橋 田口
CB 中澤 ファビオ 勇蔵 朴正洙 新井
SB 小林 下平 金井
DM 三門 喜田 中町 兵藤
OM 俊輔 齋藤 天純 前田 仲川 中島 遠藤
FW 伊藤 富樫 和田 ✚ラフィーニャ
GK 飯倉 哲也 高橋 田口
飯倉と哲也の2人は「リーグ優勝を狙う正GKには少し物足りないが1、2番手の総量としてはまずまず充実」で今季も変わらず。3番手以降の2人にプロでの出場経験が皆無のため、哲也に小さな負傷離脱が多いと少し不安も
CB 中澤 ファビオ 勇蔵 朴正洙 新井
レギュラ級3名の対人守備と「跳ね返す力」はリーグ屈指。中澤とファビオは怪我も少なく、簡単に堅守の屋台骨が崩壊する事は考え難い。大卒2人が加入し、北谷をローン修行に。2、3年後を考えるとカップ戦で「ファビオ+若手」のセットも試したい
右パンゾー、左下平は信頼性が高く、両サイドのバックアップとして秀逸だった奈良輪の移籍は痛手だが個の能力は同等以上の金井を補強。層が薄くなったようにも見えるが、天野貴と比嘉の2人は昨季ほぼ戦力として稼働・計算されていなかった
――右SBは新井もテストされ、ユース3年の常本も練習参加。左SBはキャンプにも帯同した日体大4年の高野遼が強化指定となる可能性も。練習試合やサテライトで布陣に困る事はないだろう。危ぶまれるのは、奈良輪と異なりメンタルにムラっ気ある金井が「左右のバックアップ」に備え続けられるか
ボランチ 三門 喜田 中町 兵藤
昨季7月に富澤が移籍、オフにアンドリューがローン移籍したが、それでも中町や兵藤ら実力者がベンチに座るリーグ上位の質と層の厚さ。エリクの趣向的には今季も三門と喜田がファーストチョイスだろう。アンカー展開型にはルーキながらCB朴正洙も対応可能
2列目 俊輔 齋藤 天純 前田 仲川 中島 遠藤
リーグ屈指のアタッカ、アデミウソンの抜けた穴は如何ともし難く、「競り納め、前に運ぶ」スペシャリティの低下と小粒感は否めない。ターゲット型FW不在への嘆き、学に掛かる重責は更に大きくなるだろう
――エリクの求める「トップ下像」として俊輔は異質・例外で、彼を起用できない場合は三門や兵藤らボランチタイプの選手が入る事も。サイドには「ラスト1/3で前を向いて変化を生む、ゴールに絡む」スペシャリティ、よりウイングハーフ的な仕事が期待される。FW和田も、現状こちら枠
FW 伊藤 富樫 和田 ✚ラフィーニャ
またもターゲット型、純ストライカ型の補強は成らず。ラフィの長期離脱で、今季も伊藤にシーズン通し1トップの軸としての貢献を期待せざるを得ない。遅くとも夏には補強があるだろうが、あまりにも後手。積年課題のピースを今季も欠いたまま開幕を迎える
■IN 8名
前田直輝(東京V)金井貢史(千葉)高橋拓也(YS横浜)朴正洙(慶煕大)新井一耀(順天堂大)富樫敬真(関東学院大)和田昌士(ユース昇格)遠藤渓太(ユース昇格)
◆ユース新3年 2種登録
GK原田岳 GK千田奎斗 右SB常本佳吾
■OUT 10名
アデミウソン(G大阪)藤本淳吾(G大阪)奈良輪雄太(湘南)端戸仁(湘南)矢島卓郎(京都)比嘉祐介(千葉)天野貴史(長野)熊谷アンドリュー(金沢※)鈴木椋大(東京V※)北谷史孝(山口※)
◆ローン⇒完全移籍
佐藤優平(山形)松本翔(未定)
2016シーズンは28名体制でスタート(ラフィの6か月以上離脱が確定、実質27名) ※昨季は30名体制で始動し、開幕直前にアデミウソンが加入。7月に富澤がジェフ千葉に完全移籍、佐藤優平が新潟にローン移籍
GKとDFライン、ボランチの守備寄りセクションは、レギュラ陣はやや突出した個の能力やCBとボランチの展開能力が不足だがリーグ上位。バックアップも含めた質と熟練度、総合的な戦力評価はリーグ屈指、今季も失点数はリーグ上位が期待でき「降格のリスク」は小さいと考える
しかし前線「打開し決める」攻撃のセクションは「アデミウソンの移籍」と「ターゲット型、純ストライカ型CFの不在」があまりに厳しい。昨季、シーズン中盤以降にチームが勝点を伸ばしたのはアデミウソンがチームとリーグにフィットし、貢献度を高めた事が理由として大きかった
「アデ頼みの糞サッカー」でなく、チームとしての狙い(シンプルに縦に前に速く)はあったが、それを成立させるため「相手陣内で50・50のボールを競り納め、ゴリゴリ前に、ハーフウェイ付近からペナ角まで運ぶ」を1人でやってしまうアデミウソンの仕事量、個の能力は不可欠であった
単純な個の打開力(による効果)と同等かそれ以上に、アデの「個の打開力」はチーム戦術の前提に組み込まれていた――アデは、それだけ短期間でマリノスにフィットし、エリクの要求に応えた。「巧い速い強い」だけでなく、賢く実直で献身的であった
――アデミウソンがいなくなる「エリク横浜2年目がどうなるか」ポジションと役割こそ違うが「素晴らしき2013年の樋口マリノスから、前線の軸たるマルキーニョスが抜けた2014シーズン」に近いものになる…可能性は小さくないように思う
「エリク横浜1年目」昨季に比べて確かな上積みは、レギュラクラスの選手たちが攻守における「エリク横浜」のスタイル、攻守トランジションにおける「すべき事」の共通理解が確立している事。またエリクのチームと選手たち、他チーム、Jリーグへの理解が既にある事
大崩れは考え難い。リーグ34試合で失点は30?34あたりに収まるだろう。得点は補強が成功しなければ40に届かないかもしれない。得失点差+15以上を期待するのは現状では難しい。勝負強さ、勝ち運が順位を左右する――つまり「1-0や2-1の勝利を如何に増やせるか」
加入1年目の前田直輝や、ルーキの富樫敬真、和田昌士、遠藤渓太らに「ラフィやアデの穴を埋める」活躍を期待するのは酷だ。しかし彼らがシーズン1試合だけでも「勝点1を3に変える」0-0を1-0に、1-1を2-1にするような――昨季ガス戦の富樫敬真のような――仕事をしてくれれば
仮に4人が1度ずつ、そんな仕事を果たしてくれれば勝点は8上積みされる。それがどちらかのステージに偏れば、ステージ優勝だってあり得る。優秀なストライカの獲得が成りフィットするまでは、エリク横浜の2年目は「とにかく先制を許さない」事が至上命題「忍耐」のシーズンになるだろう
■2013?15シーズンのJ1における勝点と、2012?14シーズンのチーム人件費の平均値相関図
※G大阪と大宮、湘南はJ1に在籍した2シーズンの平均勝点。
■主観に満ちた2016 J1順位予想(年間勝点)
【CS進出有力候補】
01鹿島
02広島 ACL
03浦和 ACL
04吹田 ACL
【安定の中位&予測困難】
05川崎
06瓦斯 ACL
07横浜
08大宮
09磐田
10名鯱 💀
【1つ歯車狂えば降格も】
11鳥栖
12木白 💀
13新潟
14神戸
【残留できれば御の字】
15湘南
16仙台
【予算・戦力的に厳しい】
17甲府
18福岡
■根拠の乏しい残留争い展望
・予算・戦力的に厳しい福岡と甲府も一定のクオリティ
・最下位チームですら勝点30前後稼ぐのでは?
・残留には勝点40以上必要になるのでは?
・残り3節で10クラブ降格可能性ある中下位接戦とか
・ナ杯をバッサリ捨てる思い切りがカギになりそう
マリノスの日程だと、1stステージ17試合中6試合が「中2、3日」で迎える連戦。うち5試合が、直近の試合がナ杯。他クラブも似たような日程だと思います。この5試合の「直近のナ杯」をメンバほぼ総とっかえでバッサリ捨てられるか。残留争いしそうなチームはカギになりそう
特に福岡や仙台、新潟などは、予算・戦力的に厳しい上に「アウェイゲームの移動にかかる負担」が大きい。あまり指摘されないテーマなのが不思議ですが、関東の9クラブより年間の「アウェイ移動距離・時間」はかなり大きくなる。特にベテランや腰痛持ちの選手にはツラい
マリノスのファン・サポータは「来月は関西アウェイが続いてキツいなあ」とか「鹿島ですら遠い」とか言いますが、福岡や鳥栖、仙台にしたら、ほぼ全てが「遠方アウェイ」な訳で
「シーズン通してホーム&アウェイなら公平」はJリーグではウソです。関東にホームタウンを持つクラブに比べ、東北や九州のクラブには絶対的な「アウェイ移動」のハンデがある
福岡や仙台、新潟や鳥栖が1stステージの過密日程を如何にやりくりするか「ナ杯をバッサリ捨てるか」は、残留の可否を左右するであろう大きな注目ポイント。エリク横浜も、昨季はナ杯を「若手のテストの場」と割り切りましたが、さて今季はどうするか…