横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【嘉悦社長の「リアルでサカつく」も、モンバエルツ新監督の異国での挑戦も。何事も始まる前からネガティブになり過ぎず、挑戦を見届けよう。 by 蒼井真理】 about 2015 チーム始動に寄せて

aoi_mari.png蒼井真理



エリク・モンバエルツ新監督の実力や適正は蓋を開けてみるまで全く未知数。「フランス以外で指揮を執るのは初」で「マリノスJリーグに対する予備知識がほぼ皆無」であろう事は、正直かなり不安な要素ではある。期待するし楽しみだが、不確定要素の大きな博打には違いない

エリクを選んだ嘉悦社長は、エリクの実際の手腕や人柄を直接的には知らないしフランスにおける実績とJでの可能性を測る物差しも持ち合わせていない。エリクはJリーグマリノスの実情を知らない。彼を推挙したCFGにしても似たり寄ったりだろう(チキ・ベギリスタインの関与は如何程か

このポイントが、ジーコや歴代OB監督および選手が「フロントと新監督候補の間に入り、互いを紹介しニーズの刷り合わせに協力する」鹿島とのリスク差になる。CFGとのパイプは、時間をかけ熟成させ相互理解を深めるべきであり、最初から完全な機能は期待できない

Jは世界的にも珍しい程にトップリーグ各クラブの「予算規模や戦力格差が小さい」リーグで、前年のACL出場クラブが降格したり、昇格クラブが即優勝したりする。今季で言えば山形と松本が(昨季の徳島のように)数段落ちるだろうが、他は大きな差はなく「順当勝ち」や「番狂わせ」は、ほぼ無い

なればこそ監督の手腕も、結果を大きく左右する。しかし戦術理論や指導・采配力と同等かそれ以上に「Jリーグを、各クラブや選手の特性を熟知しているか」も問われる。選手と同様に、監督もまた「Jリーグに、日本に、マリノスに馴染めるか」が肝要。趣向性と適応力、パーソナリティ

ヘッドコーチに同じフランス人のマルク・レヴィが選ばれたのは妥当。他のコーチ陣は全て残留、異国での経験ないエリクだけが新任では孤立する可能性が高くなる。アフリカやジアでの経験(環境変化への対応力)はエリクが自分に足りないモノと自覚しての人選か。直接の面識はあるのか?

エリクは指導者としての経験は豊富だが、育成年代の指導が多く欧州トップレベルや代表での「痺れる」経験はない。キャリアのピークがトゥールーズを3部から1部にまで引上げた事とするなら、それは10年も前の話になる。マリノス監督就任は、彼のキャリアにとっても大きな変化・チャレンジ

是非ともエリクにはマリノスで成功してほしい。それはマリノスとCFGのパイプを強化し、フランス方面にパイプを構築する事にもつながる。マリノスが過去20年疎かにしてきた事、嘉悦社長の新たな取り組みの一歩目。軌道に乗るか、盛大にコケるか。次の10年の編成力を左右しかねない



ここからは蒼井の中の人格を

□擁護派
◆罵倒派

の2つに分裂・デフォルメし、漫談形式でチーム編成を考える

◆ターゲットタイプのFWも、2列目の局面打開タイプの獲得もないまま、実質的な補強ゼロ。去年「FW補強の失敗」を認めておきながら、補強ゼロで『改めて3大タイトルに挑戦する』とか嘉悦と下條の脳は沸いてんのか?

□「獲得します」とは言ってないぞ。「挑戦する」のは自由だからな。お前が明日からJリーガーを目指し「挑戦する」のだって、それはお前の自由だ

◆ 『皆さまの熱い期待に応えていく』と年頭挨拶で言いつつ、ファンの「得点力あり1トップが務まる強力FW獲得」への期待には何ひとつ答えようとしてない。 『動きがないことに不安やネガティブな声があるとすれば、それはオレは違うと思う』とか、メシアニスタに開眼でもしたのか

□『ラフィーニャも戻ってくるし、怪我人は仲川だけ』という社長の発言からは、「ラフィの復帰が最大の補強!」って認識なのかな。まあ実際、昨季ラフィは加入から負傷離脱までリーグ戦381分で4得点。90分あたり0.94、フルタイム出場すれば32点で得点王だぞ

◆ラフィの4点のうち2点は、ダントツ最下位で年間74失点の徳島から奪ったものなんだが…。そもそも遅攻時は「足下で受けドリブルで狭い密集地帯に突っ込んでいく」ラフィーニャが、年間フルタイム出場とか期待する方がどうかしてるだろ

□昨季は齋藤学が4得点2アシスト、藤本淳吾が3得点3アシスト。彼らが復調し期待通りの活躍をしてくれれば――っていう思惑も当然あるだろ。学は怪我と代表、移籍問題とかもあったし、淳吾は1年目で役割も整理されないままフィットし切れなかった感は強いし

◆ 結局、樋口が失敗した「2列目の得点力に期待」か? チームの得点力と順位を上げる最も効果的で信頼性の高い方法は「優秀なストライカを獲得し、彼に点を 取らせるチーム作り」なのは、どんなリーグやクラブを見ても明らかだろ? 未知数のフランス人監督に丸投げとか博打すぎる

□昨季の淳吾は、俊輔がいる時は「如何に俊輔と共存するか」いない時は「如何に俊輔の代役を務めるか」ばかりに配慮して、自分らしさを出せなかった印象が強い。これは樋口監督が上手く整理できなかったせいもあるんじゃないかな

◆で結局、モンバエルツに丸投げか? 30歳の実績あって期待もって獲得された選手が、自分で自分の居場所・役割をピッチの中に見つけられないのって問題ないのか?

□学は、個人的にはウイングでなくストライカだと思ってる。タッチ際に張り付いて前方にスペースある状況を求めすぎる傾向を改善し、もっとバイタルでフラつけば狭い局面打開は活きるはず。これもモンバエルツの起用法に期待したい

◆仮に学にストライカ資質があったとしても、本人が自分をウイングだと思っててタッチ際に張り付く傾向が改善されなきゃどうにもならんだろ。自信ない時に、全然中に入って関与しない・消える傾向はユース時代から変わってない

□ストライカ特性なら、昨季はなぜか不運な負傷離脱が多く、0得点0アシストに終わった矢島卓郎の復活に期待する。勇蔵も「矢島のフィジカルの強さと予測つかない動きはリーグでも異質」と、川崎在籍時から高く評価してるぞ

◆矢島は「なぜか不運な負傷離脱」じゃなくて、川崎時代からの慢性的なスぺ体質だろうが!

□川崎の練習グラウンドやリハビリ環境、治りかけで起用してしまう現場の判断が悪かったのかもしれない。矢島がスぺ体質と決めつけるのは時期尚早だ

マリノスに来ても変わってねーじゃねえか! 怪我あけは大抵アゴまわりに贅肉蓄えてるし。デカい身体と速筋多めのパワーを支える身体作りとか、怪我を予防するための体重管理・節制とか、プロとして当たり前の事ができてないからこそのスぺ体質じゃねえのかよ

□さすがに2年目の今季は、肉体および意識改革にも真剣に取り組むんじゃないかな、矢島も

◆矢島ってもうすぐ31歳だよ。スぺ体質も昨日や今日の話じゃないだろ

□ そんなことより昨季のチーム得点王、伊藤翔にもっと期待しようぜ。加入1年目、年俸1000万に満たないながらキャリア・ハイのリーグ8得点。しかも彼に 得点を期待するチーム作りでなく、守備や汚れ仕事もこなしつつ、ラスト3試合で連続ゴール。本格的な覚醒を予感させる終わり方だった

伊藤翔は得点力もスピードも足元の技術も守備も、全部が中途半端でコレっていう武器がないだろ? だから「頑張り」だけが目立ち評価されたけど、逆に言えばそこしか褒めるとこがないんだよ。元「和製アンリ」のくせに、なんであんな初速スピードがないのか

□昨季の伊藤翔は、マルキの穴を埋められない中で「劣化版マルキ」みたいな役割を求められ、その中で本当に頑張ってくれたと思うけどな。あの役割が、彼の最も生きる形だったとも思わない。トップ下とかシャドウで、彼の器用さ・マルチな才能はより生きるかもしれない

◆それもこれも全部「樋口のやり方がマズかった、選手たちのポテンシャルを引き出す型を見い出せなかった」っていう責任転嫁だろ? じゃあ「今季の編成」に、それを補うものがあるのか? 監督替えて丸投げ、そんなの編成の在り方として正しくねえよ

□「得点力あり1トップが務まる強力FW獲得」が唯一の絶対解とは限らんだろう? もしかしたら昨季と同じ戦力で、得点力を改善できるかもしれない。樋口監督に致命的に足りない部分があったかもしれない。そう判断したからこその監督交代だろうが

◆そもそも論として、モンバエルツ新監督が今季の編成にノータッチじゃねえかよ。その上での補強ゼロだから「丸投げ」だって言ってるんだ

モンバエルツの就任リリースはリーグ終了後の12月16日。このタイミングから新たな補強を検討し、効果的に実行するのはほぼ不可能だ。まともなクラブは 秋前からシーズンを査定し、来季への動きを始める。新監督を迎えるシーズンは「丸投げ」になるのは、ある程度は仕方ない

◆だからよ、新監督を迎えるなら諸々もっと前倒しで進めて、新監督にも編成に参加してもらい、少しでも意向を反映させるべきじゃなかったのかって言ってるんだよ。樋口監督退任リリース、そっから新監督探して決定まで1ヵ月間とか、何だそれ

□樋口監督を切り新監督を迎える決断に「リーグ5位以内」という指標があったから仕方ない。嘉悦社長は、そこはちゃんと筋を通した

◆筋を通して、新シーズン1年を棒に振るのか? スタイル構築、継続性を求めるからこそ、新監督招聘にはもっとちゃんとした準備期間があってしかるべきだったのではないか。名古屋がピクシーや西野を招く際は、もっと時間的猶予があったと思うが

□樋口監督が今季も監督を続ける、という可能性もあった。そこは明確に「リーグ5位以内なら」という判断基準を設けた。だから退任、新監督の人選もズレ込んだ。これはある程度仕方のない事だ

◆そうは思わんね。チームの継続性において監督交代は大きな分岐点になる。丸投げでモンバエルツが結果を出せず、降格危機⇒解任になったら元も子もない。その場合、責任所在はどうなる? 結局はトカゲの尻尾切りになるんじゃないか

□チームの継続性を重視し、監督交代を重く考えるからこそ慎重になるし、1年目はドラスティックな編成を行わず、これまでのチームを託し「そこから何をどう変えて行くか」をじっくり見極めてもらい、話し合って新たな補強をするという考え方だろう

◆豊田にしても外国籍FWにしても、ホントは新監督の意向とか無関係に欲しかったけど「金がなかった」だけじゃねえの

□それもあるだろう。巷で言われる「シティマネー」などというものは存在しない。CFGはマリノスに「投資」するのであって、趣味でお金を出すタニマチではない。実質は、日産がCFGをスポンサード(資金投下)し、それをCFGがマリノスに還元する仕組み――らしい

◆「らしい」って何だよ

□実際のところ、CFGがマリノスに「何を」「どのくらいの規模で」期待し求め、投資するのか正確に見えてこないし、リリースは上っ面のものだけ。嘉悦社長自身も把握しかねているか、あるいはそのフリをしている。CFGには善からぬ話や噂もいろいろある

ランパードニューヨーク・シティFCの移籍問題か

□日産がマリノスに「何を」「どのくらい」期待し求め、今後どうしたいのかすら、よく分からない。単純にパージしたいのか、経営的な自立をきっちりと後押しする親心的な考えなのか――後者だと思いたいし、そうでなければ昨年の10億投下もなかったと思うが

◆なんか補強の話から脱線してないか

□いつも通りだ、問題ない。実際のところ補強の話とクラブの経営状況は切り離して考えられるものではない。「欲しいほしい」「買ってかって」と駄々をこねるのはガキでもできるが、買い物をする時は自分の財布と相談しなきゃならない

◆そんな事は分かってる。しかしマリノスと同等か、それ以上に財政が厳しいクラブだって沢山あるはずだ。今オフのマリノスほど、実質的な補強がゼロなクラブが他にあるか? 補強できないのは財布の問題だけとは思えんな

□今のマリノスの財務状況的に「博打は打てない」という事だと思うな。まずモンバエルツに現有戦力をチェックしてもらう。その上で、不要な選手は切り、必要な戦力を獲得する。正しい手順を踏み、ムダ金を使わない――と

◆ 確かに『始動して3月のある時期までは補強できる。大きな目で見ている。明らかにこれはマズいという事態であれば動くが、そんな感じではない』と嘉悦も 言ってるが「3月のある時期」じゃ、獲れる選手なんてホントに限られてるだろ。フリーの選手か「複数年だけどいらない選手」くらいだ

□てめえ矢島さんディスってんのか

◆だからさあ、結局のところ樋口解任も後手なら、モンバエルツ就任まで全部が遅いんだよ。問題はそこじゃねえの? 11月初旬くらいに契約結んで日本に呼んで、公式戦やVTR視ながら編成できれば、補強ゼロはなかったんじゃないのかと

モンバエルツル・アーヴルでの任期途中で、契約解除してマリノスと契約した。契約上の手続きとか残務処理とか、初めての海外赴任で引っ越しと心の準備とか、いろいろあっただろうし、それは難しかったんじゃねえの

◆いや別に絶対にモンバエルツじゃなくても良かっただろうが。そもそも「外国で監督した事ありません」とか、その選択が既にじゅうぶん博打的じゃねえか。論理破綻だ

□嘉悦社長が直々にTV会議で「人柄が気に入った」んだからしょうがないじゃないか。どの監督を選んだにせよ、結局はその監督のパーソナリティとマリノスが合うか合わないか、博打要素ゼロはありえん。それを嫌えばJリーグで経験ある監督しか選択肢がなくなる

◆しかし嘉悦は、監督人事だけでなく補強にまで「俺が俺が」って前に出てコメント出すようになったな。もうまんま「リアルでサカつく」だな。下條の立場っつーか存在意義は何なんだ。匿名掲示板の下條叩きを生きがいとする人たちもきっと悲しむぞ

□経営トップが補強編成まで実権と対外的なコメント出すようになるのは、昨季のC大阪を見るまでもなく全く良いイメージはないんだけどな…。最悪、実権あって口出してたとしても、対外的には出るべきでない。責任問題になるから。これも、昨季のC大阪を見ても明らか

◆「マリノスは誰が強化の権限と責任を持っているか分からない」って言われたから、潔く前に出てきたのか? 漢気があるというか能天気というか。目立ちたがりで自己顕示欲が強いのは間違いなさそうだが

□しかしこれで万が一にもモンバエルツが大コケして残留争いにどっぷり足を突っ込んだあげく「こんな戦力、FWでは戦える訳ないザンス」とか良い残しフランスに帰ったりした日にゃ嘉悦社長の責任問題は不可避で、彼が辞任したらもうマリノスの社長のなり手はないだろ

◆お前がネガティブな意見を述べ始めると、この漫談の趣旨がいろいろとおかしな事になるんだが――。まあ嘉悦は「ACL出場権を取れなかったら辞めます!」って言いながら、和司のクビ切って自分は居残った腹の座った御仁だし、何があっても大丈夫だろ

□権限と責任の所在を明確にするのは大事だけど、責任者が責任を取るのはもっと大事だと思うのだが。…まあ、嘉悦社長も変なノルマ設けたりするのは止めたみたいだし、仮にモンバエルツがハズレでも責任を取るような事はないか

◆『3大タイトルに挑戦する』とは言ったが、『獲ります』とは言ってないからな

□そう、「挑戦する」のは自由だ。嘉悦社長の「リアルでサカつく」も、モンバエルツ新監督の異国での挑戦も。何事も始まる前からネガティブになり過ぎず、挑戦を見届けよう。評価は事が終わってからで構わないだろう