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2月第3週から12月第1週、長い長い2014年が幕を閉じました。
そんな2014年を来季への糧とするため、区切りつつ振り返り、自分なりの総括したいと思います。
【短すぎた準備期間】
2014/1/1 国立競技場で天皇杯のタイトルを手にした横浜にとって、ようやくのシーズンオフ。
1/2~1/26をオフとし、1/27より始動、2/1からキャンプイン、2/22に公式戦開始。その間ほぼ4週間。定常に比べ1週間から2週間短い時間内で全ての準備を整えることは難しいとの樋口監督の言葉にもあったが、シーズンを戦いながらコンディションを整えつつ、チームを構築する形にならざるを得なかった。
しかし、その目論見は脆くも崩れる。
新シーズン到来を迎えるゼロックススーパーカップ。
またチーム作りに置いても、マイナーチェンジのための時間が必要だった。
2013年シーズン1トップとして16ゴールを上げ、また最前線の起点、プレッシングのスイッチャーとしての役割もこなしていたマルキーニョスとの契約交渉がまとまらず、躍進のキーとなっていた前線の核を失った。
彼らの能力をうまくチーム力に還元出来たなら、苦境を乗り越えられたかも知れないと思うと、悔いが残る。共に優秀な選手である事に間違いはないだけに。
選手個々が心身ともによい準備をすることも出来ず、解決すべき大きな課題を消化する事も、又更なる進化のための新しいピースを加えブラッシュアップした組織を構築する事も出来ないまま迎えざるを得なかった新シーズン。二つの目標を失い、2014年が苦しいものに繋がっていく一つの原因だったのではないだろうか。
【重なり、長引く、怪我と不調】
WC期間に伴う中断期に降格圏に沈んでいたチームが、的確な補強とエースの復帰を起爆剤に一気にJの頂に到達した。
言うまでもなく2014年リーグタイトル獲得したガンバの話。
「たられば」ではあるけれど、横浜もその可能性は「0」ではなかった。しかし、その可能性は「怪我と不調」によって叶うことはなく、空しい夢物語に終わった。
しかし、そのラフィーニャは、川崎戦で複数回の悪質なタックルを受けて負傷、一度は復帰を試みるも悪化。そのままシーズン最後まで復帰する事が出来なかった。
ラフィーニャ以外にも、中断明けの横浜は負傷者が続出。またその復帰及びコンディション向上にかなりの時間が掛かり、毎試合メンバーが変わるような事態に陥った。その結果、勝負所の9月では不安定な戦いに終始、アウェイ・鹿島戦のような内容的に凄惨たる試合もあったりと、V字回復どころかチーム状態は底を打ち、この時点で全てのタイトルレースから脱落した。
2013年シーズンの躍進の大きな要因として、負傷者や大きくコンディションを崩す選手が同時期に複数出ず、練度の高い組織を維持出来たことがある。
試合中の受傷は不慮の事故でしかなく、その他負傷やコンディション不良の事情は外からは伺い知れないため、原因特定は難しいが、2014年が横浜にとって間違いなく「受難の年」であり、反撃の気勢を削いだ要因となった。
【新たな発見、積み上げの成果、変わらない課題】
負傷者続出のチームの中で、新たなチャンスを掴んだ選手がいた。長髪を振り乱しピッチを駆ける背番号20・佐藤優平。実績ある選手に阻まれなかなか出場機会に恵まれなかった彼にとっては大きなチャンスが巡ってきた。
本来、3列目で長短問わず精度の高いパスでゲームを作る事を本分とする彼だが、与えられた役割は2列目の右サイド。そこで彼のもう一つの特徴が最大限に発揮された。
それは、プレーを「繋げる」こと。ギャップに顔を出す、スペースに抜ける、全てのプレーに絡むかのように運動量豊富にプレーへ関与して、ボールを動かす。これが停滞したチームのカンフル剤として効果てきめんだった。
決定機でのシュート技術の低さ、本来持っているはずのパスのクオリティの維持、コンタクトに対しての耐性など課題は抱えているにしろ、苦境にあえぐチームを活性化し、自らも層の厚いチームの中で存在意義を示した。
サイズ、対人能力が共に抜群、カバー範囲も広く、展開力もあるファビオをバイタルエリアのフィルタ役として配置し、兵藤慎剛が2列目の3人+1として後方からスペースを見つけて顔を出して流動性あるパスワークに絡む。又、繋ぎに絡むだけではなく、ゴール前に顔を出す、パッキングしてボール奪取をするなど攻守に絶大な存在感を見せ、新境地を切り開いた。
神戸戦のパフォーマンスは特筆すべきもので彼らの良さが凝縮された形であり、大きな可能性を感じさせてくれた試合だった。
例えば、ハイサイドに起点を作り、3人から4人が絡んでのインナーラップやカットインなど同サイドを崩しきる形の発展系として、ショートパスでの崩しで選手間の距離を縮めることで相手のDFラインの幅が収縮したことを逆手に取り、サイドバックが大きなサイドチェンジで相手の裏を取るといった形。
その他、ボランチ脇やバイタルに生まれるギャップを斜めの動きで使いポイントを前に作る繋ぎ、ショートカウンター、サイドからのクロスに対してニア潰れなど、シーズン終盤にかけて狙いとする形がピッチ上で具現化され、積み上げの成果を示した。
そして、シーズン最少失点。29点という数字は2013年から更に2点減少。誇れるものであり、切り替えの速さ、能動的に奪いに行く守備の成果であると樋口監督自ら胸を張った。
衰えこそ垣間見えるシーンはあったものの裏打ちされた経験と途切れない集中力、そして抜群の対応能力を見せてフルタイム出場を果たした中澤佑二、伝統の堅守の担い手として抜群の強さと高さを武器に潰し続けた栗原勇蔵を中心とした守備陣のクオリティだけではない、チーム全体の守備が打ち立てた金字塔だったと思う。
新たな芽も出てきた、積み上げも出来た、守備陣も素晴らしい数字を打ち立てた、だからこそ後はゴールを奪う部分。崩しのアイデアがあれど、ラストパスの精度が伴わない。ラストパスが通れど置きどころ悪くシュートが打てない、シュートの精度が伴わず決め切れない。これは個人の問題でもあり、数字的には悪化している。
(2013年49点→2014年37点、12点の減少)
もちろん、よりクオリティの高いアタッカーの獲得も必要ではあるが、攻撃回数に比べアテンプトの数は非常に少ないだけに、自信を持ってアテンプトの数を増やせるよう、日々研鑚し、課題の解消に努めていくしかない。ローマは一日にならず。
【最後に】
日程、怪我、コンディション、巡り合わせ。
本文中に「たら・れば」を使ってしまうぐらい、外部に原因を求めた安易でエクスキューズに満ちた総括かもしれない。ただ、その全てを整え、乗り越え、戦える状況を揃えてこそのチーム力。そこにエクスキューズは存在しない。
その結果としてのシーズン7位、そして今シーズン上位3チームに対して1勝5敗、上位5チームに拡大しても1勝9敗2分(ナビスコ含)これが2014年のチームの力だったことに変わりはない。特に鹿島とのアウェイゲームは自分の心に深く深く残っている。
それでも、もがいた先に掴んだ手ごたえもあった1年ではあった。課題もはっきり見えている。樋口監督体制は終わりを告げたにしても、積み上げたものは未来に繋げる価値のあるもの。この積み上げを大事にした上での未来の選択をクラブにはお願いしたい。
来期こそ、頂点に立つために。やるべきこと、やれることは沢山ある。それがこのチームの更なる伸びしろだと信じて疑わない。