横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【いろんな経験を重ねた35歳の中村俊輔、そして巡り合わせ? by 蒼井真理】 about 俊輔とリーグタイトルを獲りたい

俊輔は連戦の疲労、3日前の栃木戦でパスやトラップがズレ気味だった事を心配したが、この大一番でも期待に違わぬ存在感を発揮。65分の被カウンタに対し長駆のカバーには、バクスタ2Fからも大きな拍手があがった。映像見直すとカバーの後、広島のミスパスにガッツポーズ。攻守にチームを牽引した

17分の中澤へのCK、終了間際のFKとセットプレイの精度は回復傾向を示した。セットプレイの精度はその日限りのフィーリングもあり必ずしも次につながるものでないかもしれないが、技術的に「明らかな不調」ではない(あるいは復調傾向にある)事を確認できたのは残り5試合に向け明るい材料だ

「優平は厳しく言うと、シーズンの最初からチャンスはあった。その時から今日くらいのプレーができていたら今頃はレギュラだったかもしれない。でも今日のような試合で勝てたのは自信になると思う」中村俊輔

この優平を評したコメントに、改めて俊輔の「変化」を感じる。今季の俊輔はチームや他選手を批判するだけのコメントは残さない。特に若手や普段レギュラとして出場してない選手には、結果が出なかった時も「ここは良かった」と付け加えるし、逆に広島戦で良かった優平には冒頭はダメ出しから入る

練習風景や過去のインタビュ、試合後のコメントを見ても、マリノス復帰直後の俊輔は、もう少し若手に対して突き放した考えを持っていたように思う
「欧州から戻って2年。若い選手には上手くなるために大事なことを日々の振る舞いで伝えているつもり。盗むか盗まないかは彼ら次第。ただ正直、彼らから欲や野心が感じられないのは物足りない」中村俊輔 【2012年 1月】

「プロ意識のない選手に、自分の考えを押し付けるようなやり方を自分はしない。厳しいことを言うようだけど、手を取り合って"一緒に頑張ろうぜ"なんていう考えは自分にはないので」中村俊輔 【2012年 11月】

「この世界は生存競争が激しいし、プロフェッショナルじゃない選手は落ちていくだけ。だけどプロ意識を持って努力している選手にはアドバイスというか、気になったことを話したりはしている」中村俊輔 【2012年 11月】

「見て盗め」2011年まで→「努力している選手にはアドバイスする」2012年→「ダメ出しだけでなく誉める。飴と鞭の使い分け」2013年

結構分かりやすく、俊輔の若手に対するアプローチの手法は変化してるように思う

試合後のコメントは、以前は若手に対してだけでなく、チーム全体(監督の指揮も含む)に対しても「ダメ出しのみ」が多かった。極端に言えば「自分の考えや要求、不満をぶつけるだけ」で「聞いた相手やチームの空気がどうなるか」まで考えていなかった

過去3年間キャプテンを務め、常にチームのため最善と思われるアプローチを続けてきたはず。マリノスが最初から「精神的に熟成したプロフェッショナルの集団」であれば、2011年までのアプローチで良かった。しかしチームや若手が伸びてこなかった事実を受け止め、俊輔は自分が変わる事を選択した

「周囲を変えたければ、まず自分を変えろ」よく言われるセリフだが、実行するのは難しい。特に俊輔や中澤のように、常に自らに高い目標と強い自制を求める中でキャリアを築いてきた者は、どうしても「プロなんだから、それくらいあたり前」と周囲にも高い要求をする傾向がある

それでも俊輔は、まず自分が変わる事を選んだ。無論プロとしての一線はあり、無条件に手を差し伸べている訳ではないだろうが、明らかに昨季までよりも自らが目線を下げ、歩み寄った

守備に奔走しチームを鼓舞する姿も、若手への対応の変化も「これまでの俊輔らしさ」を捨てさせたのは、全てはタイトルへの執着。それがプレイや言動から痛いほど伝わるから、今季なんとしても俊輔とリーグタイトルを獲りたいのだ

「選手にはそれぞれ特徴がある。選ぶのは監督だけど、それを生かすのはピッチ上の選手。コミュニケーションを取りながらやるのが何より重要」 今季の俊輔は「気遣いの人」だ。自分が輝くよりも、周囲の選手を生かすこと、チームの調和を優先する。数年前までの俊輔からは想像もできなかった変化だ

水沼貴史が語る~メンバー固定の弊害が出ているザックジャパンp.tl/C39Q

今のマリノスと比較して読むと興味深い記事なので、ヒマな人は全文読んでほしい

要約すれば「本田や遠藤ら絶対的なレギュラは、自分たちの嗜好する&これまで築いたスタイルに頑なで、監督が新たなオプションに挑戦をしたり、柿谷やマイクを生かす事に対し非協力的ではないか?」と水沼氏は現在の代表の問題点を指摘している

レギュラ固定の弊害。新しいスタイル構築や若手の融合を困難にする、監督以上の影響力を持つ中心選手。どんなチームにも起こり得る、昨今のマリノスにも無縁と言えないテーマだ。だが今のマリノスは、その問題を少しずつクリアしながら前身しており、その背景に「俊輔の変化」があると私は思う

私は27歳の本田圭佑が、自分の嗜好するスタイルを貫こうとする事、時に監督やチーム全体にも押し付けようとする(他者の目にそう映る)事が必ずしも悪だとは思わない。それが本田圭佑のパーソナリティであり、彼の強さを支えているものと源泉を等しくする部分だと思うからだ

アンサイクロペディア中村俊輔」のページに書かれたような、幼児的とも言える強がりだったり自己弁護だったりの遍歴・語録は間違いなく俊輔を中村俊輔足らしめてきた性格的特徴の顕れであったと私は思う』と書いたら、一部の俊輔大好きな皆さんに大変不評だった

しかし過去の俊輔にしても、現在の本田にしても、時に周囲に自己中心的に思われる言動はあっても、それがあっての俊輔であり本田だと思うのだ。こんな事を書くとまた「本田なんかと一緒にしないで」と言われる方がいらっしゃるかと思いますが…

俊輔自身、某誌インタビュで「若いころは仲間と食事に行くより、自分のプレイ映像を見たいと考えていた」と自分大好きだった頃を振り返りつつ「そういうサッカーに没頭した時期を過ごせたのは良かった」と、頑なさや自己中心的な傾向もあったけど「その頃の自分あっての今」と肯定的に受け入れている

…広島戦の俊輔評が、また脱線して(いや大筋では脱線してないのだが)無駄に長くなってしまった。代表や本田の話をしたい訳ではない。中澤や勇蔵についても書きたいことがあるのに…。まとめます

今季の俊輔のキャプテンシの発露、ピッチ内外の言動の「変化」は素晴らしく、それがチームの一体感を生み出し、プレイだけでなくチームを牽引している。それは「タイトルへの執着」が呼び起こしたものだが、そこに至るまで積み重ねなければならない時間と経験があった

だから私は、『結構最近まで俊輔があまり好きでなかった。より正確に言えば「そんな俊輔を中心に据えたチーム」が好みではなかった』けれど、今の俊輔が大好きだから、その俊輔を形作るために必要だった過去も全部ひっくるめて大好きだ。解りにくい? でも誰かを好きになるってそういう事だと思う

木村和司監督時代あんまり上手くいかなかった事も、最後のW杯でレギュラを失った事も、スペインで出場機会を得られなかった事も、一度マリノスへの復帰がご破算になった事も。それ以前の過去も全部が全部、今の「マリノスを牽引する中村俊輔」を形作ってる、必要な要素

いろんな経験を重ねた35歳の中村俊輔だから、今こうして若手にも配慮して、守備も誰より頑張って、チームがギクシャクしないよう焼肉パーティ開催して、いろんな気遣いをしてチームを牽引できている。これが27歳の中村俊輔だったら、こんな風にチームをまとめる事はできてない

去年マルキとドゥトラが復帰してバリバリ活躍してるのも、富澤と中町が加入して俊輔と素晴らしい補完関係を築いているのも、優平や奈良輪が戻ってきたのも、全てが奇跡的なタイミングで、こんな素敵なマリノスはおそらく今後何十年も見られない

もっと強いマリノスは見られるかもしれないけど、単純な強さを超えた――何スかね、巡り合わせ? ご縁? 運命的シンクロニシティ? 物語性が強いと言うか。とにかくソレ的なものを強く感じるんです今季のチームに。だから今季は絶対に優勝する。もう「優勝したいね」とかいうレベルではない

「優勝するの! だって決めたから」っていう駄々っ子レベルで優勝したいです。安西先生の前で膝をつく三っちゃんレベルで優勝したいです。俊輔と、リーグタイトルが獲りたいです