横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【過去4戦の「勝点を拾うだけ、今はこれが精一杯」なゲームよりは、トライ&エラーでより実戦的な修正課題を抽出できた by 蒼井真理】 about [2016-J1-1st-7] 横浜 5 v 1 磐田

aoi_mari.png蒼井真理



――無事に東神奈川まで帰り着いたので、昨夜のユルガバ磐田嬢との一戦をできるだけ簡潔に振り返る備忘録

前半3分にCKから先制、11分にFKから追加点。「90分は無理」な負傷明けの学をスタメン起用、受け身にならず先行したいゲームで、呆気なくセットプレイから2点リードを奪えた。俊輔のキック精度、こぼれ球によく詰めたファビオと中澤は賞賛されるべきだが、運も味方した出来過ぎな序盤展開

あまりに簡単な序盤2点リードで、少しチーム全体にフワッとしてしまった部分はあり反省点。「あたり前のように弱者を蹂躙する」強者足るには、ここで一度ゲームを落ち着かせたり、相手の良さを消す、嫌がる事だけする、時間を使うなど出来るようにならないと。でもそれは、少し先の課題

昨夜の磐田はジェイという前線の軸、逆算の起点を欠いてJ1レベルにない弱者であった。その上に序盤のセットプレイ2失点で、プレスの連動性やリスク管理、前と後ろの距離感やライン統率がバラバラ、無駄に食い付いては剥がされウラ空けるユルガバ状態。とは言え、前半更に2点を追加できたのは秀逸
 
戦前に挙げたチェックポイント

・どんだけ前からハメて制限できるか
・とんだけ自陣深くから繋ぎ運べるか
・↑そろそろチームの上積み見たい

目に見える成果、実効性は全く不十分だが、試合の序盤から「挑戦する姿勢」は多く見えた。これは確かな手応え

まず守備の「どんだけ前からハメて制限できるか」は、最前線で方向付け舵取りする1トップのカイケが、戦術理解力や守備センスに乏しい事をチームとして受け入れ、ほぼ「ストーン役」に仕事限定。とにかく「無駄に追うな、動いて穴を空けるな」と。センタサークルあたりで、ボールホルダを向いてろと

カイケは驚くほど守備の仕事量少ないけど、チーム守備を理解せず動き回るより全然マシ。ただの「石」でも、ないよりマシ。その石を使って、斜め後ろの俊輔が忙しなく動いて守備を方向付けして、ドリブルやパスのコースを限定し、中町や喜田に食い付かせ、必要ならプレスバックで挟み込む

磐田戦の俊輔の守備の仕事量と実効性は、本当にハンパなかった。アレは2013シーズンに匹敵。しかも相方がマルキでなくカイケ。夏場までには、カイケに守備の戦術理解と仕事量を上げてもらわないと俊輔が過労死するレベル。私的マンオブザマッチに選出した大きな理由の1つでもある

磐田が逆算の起点ジェイを欠いてターゲット、シンプルな攻撃パターンを有さなかったため、DFラインも上げコンパクトさ保ちやすかったし、ボランチ2人も前に食い付きやすかった。それは確かだが「前で限定し、中町と喜田が食い付く」能動的な守備の体現は、過去のゲームには少なかった。確かな進捗

攻めの「どんだけ自陣深くから繋ぎ運べるか」も、ユルガバ磐田嬢が無駄に連動性低く食い付いてくれたのは確かだが「ウラのスペースある時はシンプルに縦に早く」「無理なら、横パスを挟みつつ、ボランチ2人が間あいだに顔を出し受け捌く」その使い分けとトライが、序盤から多く見られた

「ウラのスペースある時はシンプルに縦に早く」これも磐田嬢がちゃんと圧力掛かってないのにライン浅くしてくるから出来た側面は大きいけど、もっとカイケを使い切るため、ミドルサードから「相手SBとCBの間に、アングル付けたスルーパス」をチーム全体でかなり意識的に出していた

「無理なら、横パスを挟みつつ、ボランチ2人が間あいだに顔を出し受け捌く」これも磐田の下手な食い付きのおかげながら、トライは多数。ただし出し手と受け手のイメージがズレて、危険な横パスのミスも散見。技術ミスより、イメージ共有のミス。実戦でトライできた意味が大きい

かように「ユルガバ磐田嬢だからこそ」「序盤にポンポンと先制できた」トライ、試行錯誤ではあったが、過去4戦の「勝点を拾うだけ、今はこれが精一杯」なゲームよりは、トライ&エラーでより実戦的な修正課題を抽出できた意味で、内容的な進捗は大きい。攻守に「出来た」部分も少なからずあるし

なので

・磐田いろんな意味で、手頃な相手
・戦力的にも戦術的にも普通で、半端
・一定の手応えなければ、1stは難しい

7節アウェイ磐田戦は、ここからグッと上向き本格的に優勝戦線に挑むか、まだまだ耐え忍び組織連携構築に時間を割く必要あるのか――その見極め分岐点となるゲーム

個人的に磐田戦をそう位置付けていたが、磐田は
想像以上にユルガバで、コンセプト向上に実戦の中で取り組むには「手頃な相手」だった

なので5ー1の大勝に浮かれるべきではないが、チーム全体でコンセプトへ取り組み実践できた事、その上でチームも個々も結果も得られた事は大いに評価できる

大雑把に言えば、新潟・鳥栖・吹田・浦和の4試合は「45点のコンセプト達成率を狙い、45点のコンセプト達成率で」「勝点を拾った」それぞれの段階で、それが限界だった。無理に「80点のコンセプト達成率を目指し、35点のコンセプト達成率しか出せず」「勝点を落とす」よりマシだから

一般社会の仕事とか、新人教育でもあるよね? 最初から身の程をわきまえずアレもコレも全部100点狙って、結局アレもコレもミスが連鎖して自信失い40点。だったら手堅く今、出来る事を判断して75点狙っていこう――それができたら次は80点のタスクに取り組もう、とか

まあこんなのは結果論で「45点のコンセプト達成率を狙って、45点のコンセプト達成率で」『勝点を落とす』とかも、全然ありえた訳だけど。でも幸運にも、エリク横浜は3節からの4戦で「勝点を拾えた」

そして「手頃な磐田」から、次に進むための内容的な上積みと個々の結果を得られた

アデとラフィを失い、補強が遅れたシーズン開幕までと2節までの結果を考えれば、ここまで序盤の流れはむしろ出来過ぎなくらい、良い流れにあると思う

まあ課題は山積だし、まだまだこれからなんだけど、道筋はできた

磐田戦で言えば「コンセプト達成率70点を狙って、コンセプト達成率55点で」「大勝し」「個々の結果もでた」目標と結果に差がある、それはリスクを負って現状に対し背伸びしてチャレンジしたから。コレを全然やらずに、チームの成長はない

これも結果論なんだけど、エリクはその「現実的に今できる事だけやって、勝点を拾う」相手と、「背伸びしてコンセプトに挑戦して、かつ勝利する」相手の選別を間違えなかった。繰り返すが結果論、でも監督はその「選択、決断、結果」で評価されるんだから、この序盤のエリクの判断は高く評価されるべき

「我々がゲームをコントロールしつつチャンスも作り、相手にはチャンスを作らせなかった。今日の結果(5ー1)は正しくプレイ内容を反映していると思う」エリク監督

「今日のような大量リードは、皆さんが想像するほど簡単にコントロールできる展開ではない。メンタル的に緩み、相手に流れを取り戻す機会を与えてはダメ。ハーフタイムは選手たちに、イージなミスからパフォーマンスを落とさぬよう、前半以上に守備を厳しくやるよう要求した」エリク監督

磐田戦は前半、8本のシュート全てが枠内・エリア内。7つが決定機で、4ゴール。後半はシュート全て3本、決定機1で1ゴール。「後半は低調」「もっと取れた」というのは簡単だが、エリクの言は正しい。感情を持った人間がプレイしているから、3点リードで同テンションは不可能。異質な問題も孕む

「だからもう少し早く、遠藤渓太や富樫敬真を投入しても良かった」という論もあるかもしれないが、磐田戦には「背伸びしてコンセプト達成率向上に挑戦」の趣もあった。レギュラ構成で、少しでも長くやる意味があった。若い2人は「大勝の勢い借り、俺も俺も」で掛かり過ぎた面も。なかなか簡単ではない

なので私は「コンセプト達成率70点を狙って、コンセプト達成率55点で」「大勝し」「個々の結果もでた」磐田戦を、かなり高く評価し手応えも感じている

「コンセプト達成率65点くらい出るかしら」と期待してて「ああ、まだこんなものか」感はあるけど、その差点はまんま課題という成果だし

2012シーズン終盤、ホーム磐田戦の「いきなりマルキ1トップ、俊輔と中町と富澤のトライアングルが奇跡的にハマっていきなり完成形が見えました!」とか、そんなねーから

でもアレも「無駄に食い付くユルい」磐田戦だったから、今回も再現を期待してたのは正直あるよ

磐田戦「コンセプト達成率70点を狙って、コンセプト達成率65点くらい出るかしらと期待したら55点でした」の差点は、守備では「カイケがただの石で俊輔の負担デカ過ぎ、夏には過労死」なとこと、攻撃では「あんだけユルガバな磐田でも、ビルドのパスがズレてヤバいロストが結構ある」とこ

まあ、いきなり内容的な進捗ケチャドバ期待は駄目ね。ゆっくり成長するチームを楽しむ余裕がないとね…。でも願わくば3歩進み2歩下がる、緩やかでも右肩上がりで。3歩も4歩も下がらないで!

俊輔や中澤に残された時間は、そんなに多くないのも確かだから。2人とリーグ優勝したいから

――できるだけ端的にピンポイントな磐田戦の選手評を

私的マンオブザマッチの俊輔。改めてパンゾーの言を借りれば「この方は戦術ですよ」と。磐田戦の守備の仕事量と実効性、磐田のユルガバを加速する、ボールを受け引き付け捌くポジショニング。依存問題がどうとか、そういう議論を無価値にしてしまう影響力と実効性。だって「存在が戦術」なんだもの

――磐田戦の俊輔の守備、あの実効性と途切れぬ集中力や関与意欲はちょいヤバいレベルでした。だから学でなく、俊さんが私的マンオブザマッチ。アレは2013レベル。しかも大量リードの後半も緩めず周囲を激しいプレイで戒める。ああ、この人は今季また本気でリーグ優勝ねらってらっしゃる…

FW9カイケ。祝・マリノス初ゴール! CK先制ゴールも一発で仕留めて欲しかったけど、今はそこにいて枠に飛ばした事を評価。ウラ抜け、少し引いて起点の使い分けとイメージ共有はまだ時間掛かりそう。まだまだ要経過観察。夏までには守備の質と量を高めてね。俊さんがマジで過労死しちゃうから

喜田拓也、祝・マリノス初ゴール2人目! カミンスキーのクリアからポジションのリカバリがアレ過ぎたのは確かだが、自ら詰め奪い思い切りよく振り抜いた。俊輔の限定を生かし、中町やCBと距離感リスク管理しつつ寄せ奪う。パスのズレは技術ミスより、イメージ共有問題。全体的に、かなり秀逸

齋藤学。復帰戦で攻撃隊長としての面目躍如、絶大なる実効性。ここ最近の「見えてる」感、消える・関与するタイミングやポジショニング、落ち着きは結構ヤバいレベル。まだバイタルでやるキレが戻らない俊輔がレジスタ役でも、攻めは停滞しない。ついに、完全に攻めをリードする存在となった

マルティノス。違約金6万ユーロ(約750万円)のキュラソー代表は、もしかしてとんでもない大当たり!? ウラ抜けするスピードがあり、学とは既にイメージ共有できつつある。「守備は苦手だよー」と笑いながら凄くマジメにやる。チームに馴染もう、コンセプト理解しようとする姿勢が素晴らしい

中町公祐。俊輔が方向付けして、喜田と2人でコンパクトさを保ちエリクの「中央は開けちゃダメ!」を守りつつ激しく寄せ奪う。新しいトライアングルの雛型が見えてきた。でも遅攻関与は俊輔がレジスタやってるから、ハーフウェイより前での展開精度、イメージ共有の構築は至急課題。もっとマエストれ
 
…磐田がジェイ不在で、いろんな意味でユルくてコンパクトにできたからっつーのは大きいけど、本当に磐田戦の俊輔を舵取り役にした、中町と喜田の中を締めつつ寄せ奪う判断と激しさ、実効性はかなり秀逸でした。中町と喜田、奪うとこまでは95点。展開関与は、もっともっと