横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【 敗因は明白、課題も明瞭。しかし修正が容易かと言うと、いささか難しい問題 by 蒼井真理】 about [2014-XEROX] 横浜 0 v 2 広島

蒼井真理



もうすぐ今季最初の公式戦、ゼロックス杯のスタメン発表かな。1トップは矢島卓郎端戸仁か。端戸は「現状は中央でのプレイは生きる相手と展開が限られる」が、広島には元日の天皇杯決勝で存在感を発揮。ただ今季の広島はもっとDFライン押し上げバイタル圧縮してくるかもしれない

あとスタメンが流動的なのは、右SHに兵藤か藤本淳吾か、左SBにドゥトラ下平匠か。「ボランチボランチを食いに行く」現行の対ミシャ戦術では、SBは瞬間的にCBやSHと意志疎通し「シャドウを見るかWBを見るか」の判断、受け渡しが求められる。いきなり下平匠の先発はリスキーか?

スタメン発表。ドゥトラ藤本淳吾端戸仁。左SBは実績と守備連携重視、右SHは着実にコンディションも上がっている藤本を「公式戦でフィットさせたい、手応えが欲しい」という事か。端戸は元日決勝、相模原との練習試合1本目ラスト10分で見せた存在感。逃したくない大きなチャンス

広島は高萩でなく野津田岳人がシャドウで先発。そしてボランチ柴崎晃誠。2010/11オフ、マリノス藤本淳吾柴崎晃誠の獲得を試みるも加入したのは谷口博之。その谷口は柏を経て今季は鳥栖へ、柴崎は川崎と東京V、徳島を経由し広島に。そして今日、マリノス藤本淳吾とピッチで対峙する

いやあ選手とクラブの巡り合わせ、移籍したりしなかったりは、本当に「ご縁」ですね。柴崎晃誠も個人的にかなり好きなタイプの選手なので、今日の俊輔や藤本淳吾とのマッチアップは楽しみです

広島は「昨季よりDFライン高く、前線からのプレス」に取り組む。マリノスもリーグ後半の反省から、天皇杯準々決勝から再び「攻撃のための能動的な守備」を強く押し出している。広島は昨季王者、マリノスは広島に3戦全勝。互いに「挑戦者」として臨む今季初対戦。激しいゲームを期待!

今季のリーグ対戦を見据えても、互いに絶対勝っておきたいカード。マリノスは広島に絶対的な苦手意識を植え付けておきたいし、広島は払拭したい。タイトルに拘りながらもアグレッシブな展開になる…ハズ。テレビ観戦者にも、熱を伝えられる、リーグ開幕戦に行きたくなるようなスリリングな試合を!

立ち上がりの注目ポイントは、両チームの守備ゾーン。最終ラインの高さ。特に奪い所をどこに設定するか。藤本淳吾の球際における存在感。藤本と端戸がどれだけボールに絡めるか

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前半終了、横浜1-0広島。シュート6:5(枠内0:2)決定機1:3。CK3:1、FK6:0。広島はコンディションが万全でないドゥトラミキッチ中心に1対1、ウラ狙い。先制点もここから。守っては端戸へのパスを厳しく潰し前線で起点を与えず。2つの策がハマり20分まで優位に進める

立ち上がりから双方アグレッシブに高いゾーン設定からプレス。マリノスは惜しくもファウルで攻撃の起点となる奪取できず。広島はハーフウェイ付近でビルドの横パスを相手ゴール方向に強くカット狙い。30分過ぎから中盤圧力下がりボール支配するもクサビへの潰しは強烈。端戸には厳しい展開

端戸が狙い撃ちされ、前線のレシーバとして最も信頼できる兵藤が不在のため、強引に突っ掛けるかアーリクロスなど確率の低い攻めしか打開策を見いだせず。今季取り組む攻めのコンビネーションは見せられていない

「今日の広島」を考えると早めに兵藤投入、端戸→矢島卓郎。コンディション的にドゥトラ下平匠など、早めに動くのもアリかもしれない。少なくとも端戸を生かすなら、もっとサポートが必要

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試合終了、横浜0-2広島。トータル決定機は1:7。完敗。チームとしてのフィジカルコンディション、フィットネスに大きな差。試合序盤から明らかだったゲームイメージの誤差を修正できず。敗因は明白、課題も明瞭。しかし修正が容易かと言うと、いささか難しい問題

明らかな敗因1.広島は元日の広島ではなかった。試合に臨むモチベーションも、フィジカルコンディション、フィットネスも。守備強度も狩場の設定も。あと石原直樹がキレっキレ。あの石原+ミキッチを、全然仕上がってないドゥトラで対応するなんて無理ゲーもいいところ

明らかな敗因2.二択で迷った先発起用がことごとく裏目。あのコンディションのドゥトラでは、起用する意味がなかった(今日の石原直樹ミキッチ下平匠でも奈良輪でも止まらなかっただろうけど)。兵藤→藤本淳吾矢島卓郎→端戸も、結果論だが全くハマらなかった

兵藤でなく藤本淳吾を右SHで起用したため、前線唯一のターゲット役とならざるを得なかった端戸が完全に狙い撃ち、広島の狩場となった。少なくとも今日は、藤本淳吾と端戸の同時先発は妙手ではなかった。悲しい程に結果論ではあるが

元日決勝では1トップで存在感を見せた端戸だが、コンディションと守備の圧力を高めバイタル圧縮した広島には、周囲のサポートが薄かった事を差し引いてもまるで無力だった。やはりまだ、端戸が中央で貢献できる相手と状況は非常に限定的だ(兵藤がスタメンなら、もう少し違っただろうか?)

明らかな敗因3.修正・対応力の欠如。序盤の数分でドゥトラのコンディションがミキッチ(+石原直樹)の仕掛けに全く対応できてない事、広島が元日とは異なるチームである事は明らかだった。ボランチとSH(と樋口監督)は「完成した対ミシャ戦術」を一時放棄し、ドゥトラをヘルプすべきだった

ドゥトラを除く昨季レギュラ陣のコンディションは決して悪くなかった。しかし万全でない選手、連携や意志疎通が十分でない選手が1人、2人入るだけでプレスの掛かりや距離感が悪くなり、奪い切れずセカンドを拾えず、ゲーム支配できない。本当に絶妙なバランスに成り立ったチーム故に

「敗因は明白だけど修正が難しい」理由。昨季までのベースはある、立ち返れば良い…と言ってもマルキはいないし、ドゥトラもどこまで状態を上げていけるか分からない。何より新戦力や若手を融合させて行かねば、今より上も未来もない。決して上手くいく保証はなくとも我慢して挑戦しなければならない

今日の試合で藤本淳吾を先発、フル起用したのも樋口監督なりの挑戦であり覚悟なのだろうと私は思う。まだコンディションもフィットも十分でないが、少しずつ上向いている。彼がチームに上手くハマってくれなければ、俊輔を休ませる事もできない

本当に今季は、厳しく難しいシーズンになると思う。昨季までに一度ほぼ完成をみた絶妙なチームバランスを、意図的に崩し再構築を試みる必要があるからだ。良くなる保証はない、悪化するだけかもしれない。でも、やるしかない。結果がついてこないと、本当に苦しい

ただ私は、樋口監督は試合中に臨機応変な即断を下すのは苦手でも、シーズン前に熟考し腹を決めた事は、意地でもやり抜く頑固さを持っていると思う。欠点と表裏一体の美点。挑戦は避けて通れない道。厳しくとも、曲がらずやり切るだろう。それを今季は見届けたいと思う