横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【「昨季からの積み上げ」を実感&藤田について by 蒼井真理】 about [2/15 練習試合1本目] 横浜 1 v 0 群馬

群馬との練習試合雑感。1本目は俊輔トップ下、マルキと藤田2トップの4-3-1-2。得点は相手ミス絡みの1ゴールだけだが、全体の攻→守の切り替えの早さと相手をハメこむ連動性は昨季終盤から継続して秀逸。この時期に「昨季からの積み上げ」を実感できるのは近年のマリノスに無い素晴らしさ

群馬はオーソドックスな4-4-2。ボールを握られてもズルズル引くでもなく、またマイボールも繋ぐ意識が高い。攻守の連動性が高く約束事の徹底された好チームだった。20分あたりまではイーブンな展開も、以降は徐々にマリノスの連動したプレスがハマり始めてゲームを支配

守備でハメこむ、あるいはプレスをいなされた際のリスク管理など組織的な連動性は素晴らしく、ビルドアップもまずまずであったが、2トップへの配球やアタッキングサードで崩し切ることはやや不十分。前日練習した「遅攻から押し込んでペナ前で崩し切る」シチュエーションは少なかった
個人では俊輔と中町が抜群の仕上がりの早さを見せた。俊輔はトップ下(バイタル中央)に留まらず、大きな動きで攻守に奔走。逆に「今の時期にここまで仕上がって年間通して大丈夫か」不安になるほど心身充実。ピンチには自陣深くスライディングによるカバーを見せる献身も

中町は昨季終盤、天皇杯で見せた別次元の反応速度・身体のキレを維持。セカンドボールへの反応、連動したプレスの最後の仕上げ(奪いどころで寄せて獲り切る)、間あいだで受けてのワンタッチのパス交換、どれもが素晴らしい。目下の懸念は「夏場もこのキレと運動量を維持できるか」のみ

昨季中盤過ぎからBチームの練習試合でキングとして君臨、後にトップ公式戦でも素晴らしい貢献を見せた中町だが、陽射しの強いゲームでのヘタれっぷりは半端なく、周囲の若手から「マチさん頑張れ!」と励まされるほどだったので…。まあ公式戦なら夏場のデーゲームはないから大丈夫、だといいな

注目の藤田祥史は、2トップへのパス供給が多くない中で、それでも随所にワンタッチでの落としや鋭いスペースへの動き出しを見せた。身体を張ってキープするより「叩いて動きなおしてリターンをもらう」タイプ。パスを預ける際は周囲が距離を詰めてパスコース(選択肢)を作ってあげる必要がある

藤田が機能するか否かという意味でも、中町の存在は大きい。パスセンスとゴール前への飛び出し能力が高い中町と藤田の相性は良く、今日の試合でも何度か良いコンビネーションを見せた。共にダイレクト志向が高く、おそらく基本的なプレーイメージが近いのではないか

藤田にマルキーニョス不在時の1トップが務まるかと言うと、やはり厳しいか。特に押し込まれた展開や蹴り合いになり間延びして前線で孤立した際、DFと競り合いながら長いボールを受けて全体が押し上げるための3秒を稼ぐ、という仕事を求めるのは難しい

そういった展開で「とりあえず大きく蹴っただけのクリアを懸命に追いかけて無理やりキープして、味方が押し上げる時間を稼ぐ」局面を考えると、小野裕二の不在は大きい。チームが機能不全の際に「個の力で何とかしてしまう」存在が、万全な体調時のマルキだけになった

いなくなった選手を嘆いても仕方がないので、チームとしてゲームをコントロールする(≠ボールを握る)時間帯を増やし、その中で決定機を多く作り出し、確実にものにする組織づくりを熟成させるしかない。練習ではその取り組みが見られるので、それが実ることを期待しよう

とりあえず今日の1本目、藤田祥史とマルキの2トップ(および藤田と中町の補完関係)には一定の可能性が感じられた。藤田とマルキ、さらに周辺の選手との相互理解とコンビネーションが高まれば、昨季なかった新たなオプションとして得点力向上も期待できるのではないだろうか