横濱戦術四天王(仮)~マリノスの戦術を読み解く〜

横浜が誇る戦術四天王による、横浜F・マリノスについてのつぶやきをまとめます。 ちなみに、あと2人がみつかりません。

【欧州では「あたり前」な監督を中心とした監督の要求に基づくセット招集、現場体制。マリノスでは95年のソラリ体制以来か。CFGとの提携で、現場の体制作りも変革・・・ by 蒼井真理】 about 2018シーズンのマリノスの現場体制

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2018シーズンのマリノスの現場体制をリーグ開幕3日前に確認&備忘録

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監督
アンジェ ポステコグルー 52歳 ★新任

ヘッドコーチ
ピーター クラモフスキー 39歳 ★新任

コーチ
松橋力蔵 49歳 2年目(前ヘッド)

フィジカルコーチ
グレゴリー ジョン キング 36歳 ★新任

GKコーチ
松永成立 55歳 12年目

エリクが3シーズンの任期を終えてマリノス25年の歴史でほぼ初となる円満退任。元オーストラリア代表監督のアンジェが新監督に就任。片腕となるヘッドコーチに親交あるピーター(元豪州Uー17代表監督)フィジコにはグレッグ(アデレードU)を招聘。オーストラリア人3名が現場首脳となる体制に

昨季フィジコのマルレスはシーズン途中退任、後を引き継ぎアシスタントから昇格した松本純一氏も退任。8シーズン分析担当コーチを務め2004年からマリノス在籍の小坂雄樹コーチも退任し今季は浦和のコーチ。前年14シーズンの長きフィジコを務めた篠田洋介氏の退任に続き、現場体制は大変革された

――篠田フィジコ、小坂コーチ、岡村コーチ、久保田&所澤&太田原 トレーナ、工藤ドクタ。この3シーズンで長くマリノスの現場を支え続けたスタッフの多くがクラブを去った。樋口さんとエリクが3シーズンずつ監督を務めるまで監督とヘッドコーチは頻繁に変わる中、現場スタッフの刷新は少なかった

篠田さんにはハマトラ紙でインタビュをさせて頂き、練習見学の際にお話をさせていただく機会もあった。小坂さんと岡村さんは工学院の監督を務めた頃から、いろいろお世話になった。それぞれ川崎、浦和、柏と在籍クラブを変えて寂しさはあるが、これも不可避の変革だろう

岡田監督以降から樋口監督までの約10シーズンの現場体制が、逆に歪だった側面もある。監督だけが成績の責任を問われてチームを追われ、監督を支える現場スタッフはヘッドコーチ以外は安泰。新しい監督が、変わり映えしないスタッフの中に放り込まれる。やり難さはあっただろう

特に第2次早野体制や木村和司体制では、現場における監督とスタッフの距離感や一体感に難があるのは、傍目から見ても明らかだった。樋口体制以降、少なくともヘッドコーチは監督自らが招聘しマシな現場体制が構築されるようになったが、それまでが結構露骨にアレだった

監督とコーチ陣がトレーニングの場でほとんど会話をしない。コーチ同士が話し合い選手に接触するが、監督を露骨に無視するとか女子校のノリ。「試合に負けて喜ぶクラブスタッフがいた」とかいうアレな話も聞いた。その監督を据えた派、それに反対する派。企業クラブあるあるですわ

監督のアンジェが親交あるヘッドコーチを招き、フィジコも同朋を指名。ボスとその両腕、オーストラリア人3名が現場を仕切る。欧州では「あたり前」な監督を中心とした監督の要求に基づくセット招集、現場体制。マリノスでは95年のソラリ体制以来か。CFGとの提携で、現場の体制作りも変革

――そんな中で松永GKコーチが留任したのは昨季に続き小さなサプライズ。…ただ個人的には、指導手腕が評価されているというよりはCFGによる変革のソフトランディングによるものかなと邪推。シゲさんは今のマリノスにおいて、中澤と同等かそれ以上のレジェンドだから

ビデオアナリスト
杉崎健 34歳 2年目

コンディショニングコーチ
安野努 39歳 ★新任

■ドクタ
深井厚 2年目

■トレーナ
日暮清(ヘッド) 2年目
佐々木康之 2年目
宮内信泰 2年目

メディカル部門は昨季と同体制。日暮さんの肩書きはヒューマンパフォーマンスダイレクタ(分かり難いw

■通訳
今矢直城(英語)⇒★新任
松崎裕(英語)⇒留任
高橋建登(韓国語)⇒留任
木下伸二(ポル語)⇒留任

新任の今矢直城氏は少年期をオーストラリアで過ごし、選手としても豪州で5シーズン以上のプレイ経験あり。2010ー17は早稲田U監督。完全に「アンジェのため」の人選

エリクの通訳に松原英輝氏を付けた前3シーズン然り、近年マリノスの通訳セレクトは「サッカー人でありサッカー言語を理解する(指導者経験もある」「通訳する言語地域のサッカー文化に直接触れている」人選が為されており、実に素晴らしい。後は監督と通訳の人間的な相性だけ

■チームオペレーションダイレクタ
袴田聖則⇒留任

■主務
山崎慎⇒留任(副務から昇格)

■副務(キット)
遠藤伸明⇒★新任

■ホペイロ
緒方圭介⇒留任

慎くんが8年務めたホペイロを卒業し主務に昇格。アウェイの荷造りは新任の遠藤氏が引き継ぎ、緒方くんの肩書きは副務からホペイロに変更

■チーム世代構成バランス

1978 中澤佑二

1983 栗原勇蔵
1984
1985 中町公祐
1986 飯倉大樹
1987 鈴木彩貴
1988 ウーゴ 伊藤翔 下平匠
1989
1990 大津祐樹 金井貢史
1991 天野純 扇原貴宏

1992 尹日録 仲川輝人
1993 松原健 山中亮輔 杉本大地
1994 ダビ 喜田拓也 ミロシュ
1995 イッペイ
1996
1997 和田昌士 遠藤渓太
1998 吉尾海夏 原田岳
1999 町野修斗 堀研太 山田康太 西山大雅 生駒仁

ベテランの退団はなかったが、93ー95年組が5名去り高卒5名が新加入。チーム平均年齢は24.7歳に下がり、吹田と瓦斯に続きリーグ3番目に若い陣容に。世代構成バランスは一見良好だが、エリク2年目に積極起用された20代前半「伸び盛り」の選手たちは多く移籍の道を選んだ

■ポジション編成

GK 飯倉 杉本 鈴木 原田
CB 中澤 ミロシュ 勇蔵 西山 生駒
SB 松原 山中 下平 金井
DM 扇原 喜田 中町
IH 天純 ダビ 吉尾 康太
WH ユン 渓太 大津 仲川 イッペイ 堀 椿(2種)
FW ウーゴ 伊藤 和田 町野

キャプテン:中澤佑二
副キャプテン:勇蔵、中町、飯倉、喜田

選手会長中町公祐
副会長:天野純、遠藤渓太

◆チームスローガン
『Brave and Challenging ~勇猛果敢~』

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◆2018強化テーマ

  • 「攻撃的」「リーダーシップ」「スピード」 3つの相乗効果
  • ピッチ内の修正と対応、最適なオプション選択自主的に行なう。プレイだけでなく判断のスピードを上げ「勝つための攻撃的なプレイ」
  • 常に自分たちのサッカーを貫く「5400秒、ブレイブ。相手は関係ない」

■IN 9名
尹日録(FCソウル大津祐樹(柏)仲川輝人(福岡※)和田昌士(山口※)山田康太堀研太西山大雅(ユース昇格3名)町野修斗履正社高)生駒仁鹿児島城西高)

■OUT 5名
齋藤学(川崎)マルティノス(浦和)朴正洙(柏)前田直輝(松本)富樫敬真(瓦斯※)

◆ローン⇒ローン
カイケ(サントス※⇒バイーア※)高野遼甲府※)

◆ローン⇒完全移籍
新井一耀(名古屋)中島賢星(岐阜)田口潤人(新潟)

2018シーズンは30名体制でスタート。昨季は27名で始動しキャンプ後にミロシュとダビが加入、開幕戦から出場。実質29名体制。シーズン中に新井一耀、高野遼仲川輝人中島賢星がローン移籍

昨季3名だった新卒加入が5名(しかも全員高卒)の今季は、戦力的に質も厚みも低下は否めず

本日発売のサッカーダイジェストにボス、アンジェ監督のインタビュ記事が3ページ。藤井さんエルゴラはアレになったけど仕事してるよ。次はアイザックや利重さんや古川社長に突っ込んだインタビュお願いします

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発売中のオフィシャルハンドブックにもなかなか濃密なボス、アンジェ監督インタビュ記事が4ページ。エリクの築いたチームの印象とその引き継ぎについての言及もあり、ボスがマリノスをどう変えていこうとしてるのかシーズン開幕前に確認するには必読テキスト

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――始動から約1ヶ月、マリノスの新しいボス、アンジェ監督ここまでの印象は「ザ・ボス」なイメージ。教育者的で合理主義的で選手たちへの育成の愛はあっても感情的な接触は避けようとしたエリクとは対照的で、その感情的な接触にも重きを置く「ロボットじゃねえ所詮は感情的な人間がやるもんだろ」と

トレーニングではグレッグやピーターに任せ少し離れた所から寡黙に観察する時間も多いが、トレーニング中も後もピンポイントで選手に声を掛ける。キレべき時はキレる。凄く「そのアプローチで受け取る側の選手はどう感じるか」「結果選手のアクション態度はどう変わるか」を考えている印象

黙ってる時間が長かったり表情を変えなかったり選手と距離を置いたり言葉を選ぶのもボスの威厳を保つ言葉に重みを出すためのイメージ作り。何考えてるか分からない、起こったら怖そう、だからこそ声掛けられたり誉められたら嬉しい。この人に認めてもらいたいと思う――そんな雰囲気は出てる

どんなに理論が正しく合理的でも「感情的な生き物である選手」の心にアプローチできなければ、その指導は届かない。おそらくエリクに最も足りない不得手な部分(モチベート、マネジメント)であったと個人的に思うので、強そうなボスが来たのは対象事例として非常に興味深い

是非シーズン開幕後でも、ボスの醸し出す雰囲気の確認にトレーニングを観に行って欲しい。凄くボス感出てる。社長や王様でなく「ゲリラ部隊の親分」って感じ――分かりやすく言えばランバラルみたいな。親父にも打たれた事ない小僧でも「あの人に勝ちたい、認めさせたい」と思わせるような雰囲気が

――ただボスがそんな雰囲気を出せていて、今は選手たちも過去に取り組まなかった不得手なスタイルに真摯に取り組んでいても、開幕から2つ3つと手応えなく敗れ続ければランバラル感とかザ・ボスの貫禄とか全部新聞紙より軽く風に飛ばされる。サッカー怖い。ホント早めに手応えと結果出るといいなあ…

【下平匠の偽SB適性、戦術理解は桁外れにハイレベル。右SB金井貢史も偽SB適性は高い。アンカーは扇原一択と言っていいと思うのだが。 by 蒼井真理】 about [2018-練習試合] 横浜 4 v 3 F東京

f:id:harukazepc:20170419105933p:plain蒼井真理

2014年9月、松本翔のCKから関東学院大3年FW富樫敬真のヘッドにより1ー0で勝利したトップ練習試合以来、3年半振りの小平瓦斯練習グラウンド。その敬真は後に瓦斯戦のゴールでプロ契約を勝ち取り、今季は瓦斯にローン移籍。不思議な縁

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選手たちがピッチに出てきてフィジコのグレッグとアップ開始。昨日のプレシーズンマッチで誰一人出場のなかったベンチメンバも帯同。今日は出場機会あるかしら

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ユース新3年WGの椿直起も帯同してアップに参加中

ピッチサイドにはアイザック・ドルSD、小倉勉氏の姿も。ボスのアンジェは不在かな? 指揮を採るのはヘッドコーチのピーターか

勇蔵先輩はサッパリした若々しい髪型に。顔や首周りを見ても昨季より絞れてる印象。今季は気持ち新たに、強い覚悟でシーズン通し怪我なく臨んで欲しい

ウーゴも金曜のトレーニングからキレある動きを見せてます(前年比)いやまあ、昨季のこの時期が問題外の鈍重さだった訳ですが。ウーゴの課題はW杯中断期間、たぶんチームがミニキャンプやる際に「ちょっと国に帰ってくる」とか言い出して脂肪を土産に戻ってこないか

ローン移籍から復帰の和田昌士は、キャンプの練習試合でSB起用されたりプレシーズンマッチでもベンチ入りしなかったり、現状はトップ登録選手の中でも序列は最下層。でも厳しい競争は覚悟の上での復帰のハズ。絶対に腐らず強い気持ちで反発していって欲しい

練習試合 瓦斯戦1本目

FW 渓太、ウーゴ、仲川
MF 海夏、ダビ
MF 扇原
DF 下平、西山大雅、勇蔵、金井
GK 杉本大地

キャプテンマークは栗原勇蔵の左腕に

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練習試合も、相手陣内のボールに対しDFライン全員がハーフウェイを越えて行くハイライン。開始3分、2つ目のGKとの1対1で先制されてます。想定内

左サイドのコンビネーション、下平が外を回って渓太をフリーにさせて、そこから中央より左サイド寄りに入ってくる右SB金井に付ける。上手く成立すれば面白い

1本目19分、ハーフスペースに侵入し渓太からのパスを受けた吉尾海夏が獲得したPKをウーゴが決めて1ー1

20分に同点、25分にもハイプレスがハマりペナ前中央で奪いダビのゴール。3ー1

杉本大地は「危ない! 危ない!」言い過ぎw

1本目45分終了、横浜3ー1瓦斯。シュート10:4(枠内3:3、エリア内7:2)決定機4:3。CK&FK5:0。昨日と同様に背後を突かれ簡単に先制を許すも、15分以降はほぼ瓦斯陣内でゲームを展開、昨日とは違いPKが決まりw 追加点まで。惜しいクロス、敵陣でのセカンド回収から2次攻撃、流れの中からシュートも多し

まあ簡潔に言えば、クソ面白い

下平匠の偽SB適性、戦術理解は桁外れにハイレベル。ハーフスペース、ボランチの位置からの落ち着いたキープと配球、WGに預け外を回ってのクロス、絶妙なポジショニングと高さを生かしたセカンド回収率。被カウンタ対応でのスピードの無さを除けば、これ以上の適合性はないほどに戦術にマッチ。極上だ

右SB金井貢史も偽SB適性は高い――もともとポジションなどあって無きが如くフリーダムだからね。でも金井なりにチーム戦術の枠内でフリーダムさを発揮。下平との両偽SBセットはエンタメ性高く楽し過ぎるww ピッチ中央にパスコースがあんなに沢山! あとはムラっ気とクロス精度をなんとかすればだね

両SBがポゼッションに大きく関与し目立つ展開も、扇原もアンカとして地味ながらシンプルなボール叩きで貢献。ヘソとして抜群の安定感。ワンタッチで止めて、叩く。淀みなく無駄がない。昨日と今日の前半を見る限りにおいては、アンカーは扇原一択と言っていいと思うのだが

吉尾海夏や渓太も含め、昨日のプレシーズンマッチ以上に戦術適合性が高く、とてもが高くて超楽しい。まあプレッシャある公式戦で勝てるかと言えば、また別の話になるのですが

さて2本目。メンバ交代なし

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2本目4分、仲川輝人のパスをフリーで受けた遠藤渓太が左ペナ角からゴール右スミに流し込むコントロールショットを決めるが直後の5分、久保建英に決められて1ー1

ドッタバタで2本目もエンタメ性高し

2本目17分、仲川⇒椿直

椿直起が左、渓太が右WGへ

たぶん椿と同じタイミングで

ダビ⇒山田康太
西山⇒生駒仁

やっぱ山田康太、フィジカルコンタクト強くなってる♡

前半24分、エリア内抜け出した相手をCB生駒仁が後ろから倒してPK献上

2本目25分、PK決まって1ー2

2本目30分、海夏⇒和田昌士

昨日のプレシーズンマッチも、今日の練習試合も「前半は極端にハイライン&ハイプレス、後半は現実的なライン設定」という縛りかゲームプランでやってる気配あり

ウーゴ様のフィニッシュシーン以外でのポンコツっ振りは今季も健在! 今日もここまでほとんど仕事してません!

金井貢史とウーゴ様の2トップタイムです

2本目45分終了、横浜1ー2瓦斯。決定機5:9。トータル横浜4ー3瓦斯。決定機9:12。「スコア4ー3」「決定機9:12」うーん今季マリノス理想のスコアと展開&スタッツ! ドッキドキ☆バッタバタの極上で誰にも分かりやすいエンタテイメント

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小平まで足を運んだ沢山のマリノスサポータに挨拶。お疲れさまでした

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小難しい戦術論とか成功の可能性とかさて置いて、今季ボスが掲げる新しいマリノスのスタイル、アタッキングフットボールは「Brave and Challenging~勇猛果敢」のスローガンに偽りなく挑戦的で、楽しい! 是非ともチームと選手たちにも、この姿勢を貫いて欲しい

単純に分かりやすく楽しいです!

――凄く雑で個人的な願望でアレですが、今日の下平匠の偽SB振りがあまりにも極上だったから、来週の開幕戦は「左SB下平匠、左WG山中亮輔」ユンユンは決定打の出ない右インサイドハーフを会長と争うとかそんな形ではダメなんでしょうかねえ

アンカー扇原は、ポゼッションのヘソとしての適性としては間違いないんだけどたまーに守備がめっさ軽かったり、変な失い方(昨季のアウェイ鳥栖戦みたいな)あるのと、1試合&シーズン通しパフォーマンスにムラっ気あるのが難かしら。クラブの期待値的には完全なる主軸になってもらわないとですが

あと練習試合中は「いっそ下平匠左CBでいいんじゃないか」説が俺の中でムクムクと。被カウンタ対応? 対人守備の粘り強さ?

そこはそれ「ボールを失わなければいい」風間八宏イズムで

左WG遠藤渓太は、守備におけるコース限定しながら寄せて行く賢さ強さの進化が著しい。サイドでも内に絞っても、プレスバックでも貢献度大。ただ相手陣内に押し込む攻めの局面では、前方のスペースが昨季のオープン展開万歳スタイルより少ない中でも違いを出す工夫を。今日のクロス精度はポンコツ

インサイドハーフに入ったダビ・バブンスキは、凄くスカイセルフ。ある意味、金井様よりずっと感覚的つーか「自分のフィーリングでプレイやポジション選択する」んですよね。今日はそれがチーム内で良いアクセントになってたけど、もう少しタスク理解徹底しないと。だから昨季のエリクも扱いに困った

インサイドハーフ吉尾海夏。とにかく運動量と攻守の関与率がハンパない。だから何度も削られ倒されるし、多くのチャンスと決定機に絡む。PK奪取のハーフスペース侵入は真骨頂。半身で受けシンプルに叩く、海夏は無意識にできる。現行スタイルにおけるIH適性は非常に高い。あとは個の強さ、特別な武器

右WG仲川輝人。左サイドの機能性が高過ぎ、右SBの金井も中央またぎ左へ進出する中、テルは右で強かにチャンスを窺い狙う展開に。なかなか関与率を上げられず。右サイド相手陣内で上手くかっさらいエリアに仕掛けるシーンもあったが、また違うセットで見てみたい。…なかなか環境に恵まれないなあ

【3ー2ー2ー3に変形する仕組みは面白い。山中亮輔、松原健もそこから縦に持ち運んだりアングル付けたパスを縦に入れたり、WGに開いて外を回ったりとデザインされたプレイはあるし、彼らにその適性もある(だから昨季獲得した) by 蒼井真理】 about [2018-PSM] 横浜 0 v 0 F東京

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アンジェ横浜始動から1ヶ月、リーグ開幕8日前。初のJ1クラブとの対外試合プレシーズンマッチ瓦斯戦。キックオフ1時間40分前に味スタ到着

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アッパーはおろか、バクスタすら開放されないとスタジアムに入ってから知らされるクソ運営。このあとメインが埋まってもバクスタ開放しないと運営(バイトくん)は断言。早めに家を出たのは正解も、俯瞰厨としては憤懣遣る方無し

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バクスタ開かないなんて瓦斯もマリノスも新監督になったのに人気ねえなあ。補強が地味だからダメなのかなあ

ゴール裏は集会、新チャントの御披露目&練習中。中澤佑二もうすぐ40歳、ラストイヤーでまさかの新チャント!

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今日はメインスタンドこの辺りで観戦。ギリギリ展開とか選手の距離感は確認できるかな

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PSM瓦斯戦のスタメン

FW 尹日録、伊藤翔、イッペイ
MF 天野純、中町
MF 喜田
DF 山中、ミロシュ、中澤、松原
GK 飯倉

SUB:原田岳西山大雅生駒仁山田康太堀研太和田昌士町野修斗

昨季までの4ー2ー3ー1表記の方が画面的に収まりがいいな…。慣れの問題か

Bチームのメンバは明日の小平での練習試合に出場するため今日のプレシーズンマッチにはメンバ入りせず横浜で調整の模様。今季は週末リーグ戦の裏のBチーム練習試合やるのかな? …W杯中断までは過密日程で難しいと思うけど

「シーズンを通して私の戦術を落とし込んでいくが、始動からここまで少しずつ理解してきている選手も出ている。プレシーズンマッチは試合勘とコンディションが全て。翌日の練習試合も含め2試合あるので、なるべく多くの選手に90分間プレイさせ、コンディションを上げることが最も重要」アンジェ監督

昨日のチーム練習でも前半はフィジカルも組み込んだ負荷を上げるメニュ。紅白戦も完全な実戦形式ではなく「デザインされた最後方からのビルド、ボールの運び方&前線からハメるための連動したハイプレス」の確認とトレーニング。フィジカルも戦術の落とし込みも、まだ仕上がり前

最後方からのビルドも、最前線からのハイプレスも、エリクの3シーズンでは十分には積み上げ切らなかったモノ。前者は両翼依存体質からの脱却が不可避の課題で、後者は3シーズンほぼ据え置かれた課題。アンジェ体制となり、その2つの重要課題にチームは真正面から取り組んでいる

樋口さんもエリクも、就任直後は「それまでのチームのやり方」「選手のやり方」マリノスらしさを尊重しドラスティックなスタイル改革は行わなかった。アンジェ体制は近年のマリノスにない、大きな変革への取り組み。だがそれは「足りないもの」不可避の変革として前任のエリクも、選手たちも納得尽く

ビルドもハイプレスも、昨日の練習を見ても全然できてない。組織的にも戦術理解にはムラがあるし手探り状態。個々を見ても適性や技術的に難しい選手も少なくない。全く簡単ではない。今日のメンバがシーズン最後まで継続される事もないだろう。振るい落とし取捨選択、適者生存は必ずある。補強も必要

それでも本気でリーグタイトルを目指すなら、やるしかない。昨季のマリノスは足りなかったのだから。手を伸ばそうとして、その資格すらない事をシーズン終盤に思い知らされた。できるか、できないかは問題ではない。やるしかない。できないからやるんだ

「(監督が変わり始動から1ヶ月の)今この時期にチームが完成しているのは有り得ない。ミスを恐れてやらないという選択肢はない。とにかくやってみて上手くいったこと、いかなかったことを整理して次に生かせればいい」飯倉大樹

今日のプレシーズンマッチはラインを馬鹿みたいに上げてハイプレス掛けて、ガンガン裏取られて大量失点してもいいと思う。むしろすべきだ。絶対やっちゃダメなのはビビって始動からの取り組みを放棄しチャレンジしない事。今は課題を抽出すべき時期。ミスや不備は見えない方が先々のリスク

GK飯倉と原田岳のアップ開始

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ゴール裏のひろあき隊長から「新しい歌(頑なにチャントとは言わない)幾つかやるけど来週(長居での開幕戦)も新しい選手の歌(難しいヤツ)を御披露目するから一遍に覚えるの大変だから今日の歌は今週中に覚えてね」と

自陣後方からのビルド、前にボールを運ぶルート整備としては「GKからショートパスを細かく繋ぎ持ち運ぶ」オンリーではない。昨日の練習でも、高く張り出したSBに飛ばす、インサイドハーフやCF伊藤翔に長いボールを入れる、アンカの喜田が少し引き落ちて受けてターンして前を向く――様々なパターンを練習

フィールドプレイヤは常に「受ける準備」をしなければならないし、且つ1人よがりでなく「連動して」「今誰に出す誰が受けるべきか」を考え、2手3手先を考えたポジションやアングル、距離感を作らなければならない。パターンは1つではなく複数。最適解を導き共有しなければ。そんなの直ぐできる訳ない

フィールドプレイヤがゴール裏に挨拶しアップ開始

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ゴール裏には「誰も彼も知らない17年目 “4 ” “22” 最高のシーズンに」 そして一発目は中澤佑二新チャント! 大きなリアクションで応えるピッチの中澤さん!

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不安よりもワクワクしかないな! プレシーズンマッチ瓦斯戦、間もなくキックオフ!

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前半5分、相手陣内取れそうで獲り切れずからの縦ポン、ハイライン背後を突かれファーストシュートで失点。想定内

前半19分、敵陣混戦、結果オーライな松原健のボール奪取起点にイッペイ⇒エリア内のユンユン。相手のファウルを誘いPK奪取!

伊藤翔さんのPKはGK林彰洋がストップ

前半終了、横浜0ー1瓦斯。シュート5:1(枠内2:1、エリア内4:0)決定機2:1。CK&FK8:1。瓦斯のシュートはイージミスから先制点の1本のみ。ほぼ瓦斯陣内で試合は展開「できているか否か」は別として、攻守に「やるべき事」には一定チャレンジできている。及第点の前半45分

序盤は瓦斯の前線からのプレスにバタつきパスルートもGK⇒CB⇒SBと変化なくハメられ加減も、15分以降は最終ラインを3枚にして瓦斯の圧力を回避、低減させる事に成功。少しずつ直接WGやインサイドハーフに飛ばすパス、喜田を使うルートも見られるが、まだまだ不足。もっとチャレンジを

自陣からのビルド時、アンカーの喜田が落ちてSBがボランチの位置に絞り3ー2ー2ー3に変形する仕組みは面白い。山中亮輔松原健もそこから縦に持ち運んだりアングル付けたパスを縦に入れたり、WGに開いて外を回ったりとデザインされたプレイはあるし、彼らにその適性もある(だから昨季獲得した)

スコアは無関係。あの失点は今この時期はやっておかなければいけない不可避のミス。スタッツ的には、相手も新監督ながらオーソドックスなスタイルで個の能力がそこそこ高い瓦斯を相手に上回っている。セットプレイ数、エリア内シュート――うんまあマリノスも流れの中からはエリア内シュートないけれども

ぶっちゃけ空間認知が低く縦ポンに弱いミロシュ、スピードない中澤さんCBコンビでハイラインはいろいろ無理もある。でもそんなの前提。簡単に縦に蹴らせない、背後を取らせない。そのための取り組み。まだまだ「なんとなく前残り守備」で制限できてないシーンも多い。それは実戦の中で浮き彫りになる

だからあの失点、その後にあったピンチも良いミス。ここで露呈して修正できないと、後々シーズンとんでもない事になる。瓦斯が普通に前からプレスに来たり、背後に縦ポン狙ったりしてくれる事はテストマッチとして非常にありがたい。ありがとう

こんなプレシーズンマッチの1失点くらいでガタガタ言ってたらジェフ千葉サポータに笑われるぞお前ら。ハイラインのリスクとドッキドキバッタバタ感を積極的に楽しんでいこう!

さて後半

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後半20分経過。この時期のテストマッチなので、さすがに両チーム動きが重くなつまてきた。マリノスもハイラインが維持できずかなり間延びしつつある

試合終了、横浜0ー1瓦斯。トータル決定機4:2。6名の交代枠は1つも使わずフィジカル的な最終調整&テストの要素大。前半は目指す方向性チャレンジする姿勢に手応え。後半20分以降は運動量が落ちるといつも通りのマリノス

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さて今日の前半と後半をアンジェが如何に評価し、今後の選手たちへの要求アプローチに繋がるか、興味深い。やろうとしてる部分、なんとなく「やってる雰囲気出してるだけ」な部分どっちもある。疲れると全然やんない、今まで通りな弱さも表れた。どう変わるか、変わらないのか。とても楽しみなシーズン

今日のプレシーズンマッチで最も「今季おもしろそう」と思った選手は右SB松原健25歳。旧態依然なタッチ際アップダウンに松原健の良さは出ない。内に絞ってボランチの位置でボールに絡み、CFへ直接ラストパス出したり被カウンタの芽を摘んでこその松原健。横浜のフィリップ・ラームになれる(といいな

昨季の前半も松原健はかなり意識的にインナラップとか内に絞る動きしてたんだけど、WHのマルティノスや学とプレイ志向、相性が良くなくて使ってもらえなかったから松原健もエリクも途中で諦めて止めた。単純にマルが1人でゲインできて実効性あったしね。仕方ないね

でも守備における「中澤システムへの適合」も然り内に絞る関与を求められない攻撃面も然り、旧態依然なSBの仕事ではパンゾーの粘り強い対人と比較され、クロスのポンコツ振りだけが目立つ結果に。松原健の良さはそこにはない。オープンなクロスでなくアーリクロス。アングル付けたフィードや縦パス

アンジェが、CFGが求める現代的なSBの資質は高いと評価されたからパンゾーを切って松原健を獲得した。今季アンジェ新監督の下で、その適性の高さが証明されるのではなかろうか――右WGが誰になるのかにも左右される問題ではあるけれど。今のメンツなら仲川テルも一度試して欲しいなあ

天野純は地味に取り組んでる体幹トレーニングの効果が見えて、球際の一歩目の寄せの力強さ、上半身や足先で行かずに「腰から下半身で」重心ブレずに寄せ当てたり、コンタクトで我慢できるシーンが増えてて嬉しかった。セットプレイの球質も変化。少し昔の俊輔みたく強くこすり曲げ落とす。球速も意識

天野純はホントに「ここが足りないなあ伸ばさないとなあ」と思った部分が、数試合後には公式戦で必ずその部分に取り組んだ成果を示してくる。一歩一歩、ゆっくりでもコツコツと着実に。だから観ていて楽しい。今季は中軸、中心選手として期待してる。やってあたり前。簡単には褒めないからね!

超ワールドサッカー@ultrasoccer

【試合後コメント】横浜FMのアンジェ・ポステコグルー監督、敗戦の中に収穫あり
http://web.ultra-soccer.jp/news/view?news_no=304487
─掲げるスタイル
「時間はかかるが、落とし込んでいきたい」
─イニシアチブを握るスタイル
「やり方を信じることができれば、より良いチームになる」
#fmarinos #Jリーグ #Jリーグ開幕 #超WS

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「自分たちのスタイルを最後まで貫くことができた。両チームにとっても、良い練習試合になったのではないか」アンジェ監督

「まだ始動から3、4週間だが、選手たちはダイナミックなサッカーをしようと良く頑張ってくれている。今日の試合の中でも、何度かそういう時間帯を作ることができた。時間はかかると思うが、これから落とし込んでいきたい」アンジェ監督

Q.開幕までに詰めたい部分は

「何度かチャンスを作れた。一番大事なのは、選手たちが(戦術的な)理解力を高めること。それを高めることができれば、もっと良い展開ができ、より多くのチャンスを作れて、シーズン中に多くの得点を挙げられると思っている」アンジェ監督

「攻撃だけでなく、守備でも圧倒してアグレッシブに行きたい。最初の2、3週間の準備期間では選手も半信半疑だったと思うが、この1週間で少し進歩した姿を見ることができた。今日の試合を終え、もう一歩、この方向性を信じることができればより良いチームになっていく」アンジェ監督

Q.戦術面におけるボールの受け方は

「もちろん全選手に役割がある。シーズンを通して、ポジションの入れ替わりがあるだろうが、ポゼッションをするためには距離感が重要。その中でも、幅や高さを取らなければいけなくなる選手が出てくる」アンジェ監督

 

ゲキサカ@gekisaka

“結構怖い”守備…横浜FM飯倉「違和感というか慣れない部分はある」 https://web.gekisaka.jp/news/detail/?238011-238011-fl… #gekisaka #jleague

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「最終ラインと俺のところは、違和感というか慣れない部分はある。やっていく中で調整して、より良いものにしなければいけない」飯倉大樹

「ハイラインだから、あそこ(失点シーンのDFライン背後への縦ポン)はGKがカバーしてくれというのは監督から言われていた。チャレンジしないでピンチを迎えるよりも、失点してしまったけどチャレンジしたことに意味があったと思う」飯倉大樹

「今まで以上に自分の運動量やタッチ数は増えると思う。自分のゴールを守るのがGKとしては一番大切だが、高い位置を取ることで(頭上を抜かれる)ロングシュートを浴びるリスクもあるので、結構怖いw」飯倉大樹

「失点の場面も、ああいう形になったけど、もっと良い方法があったと思う。今シーズンは、ああいうシーン(ハイライン背後への縦ポンにGKが対応する局面)がかなり増えると思うので、良い方法を模索して、あれが失点にならないようにしたい」飯倉大樹

――試合前にも試合後にも書いたが、飯倉のコメント通り「ああいうシーン、ピンチ」は今季このやり方を曲げなければ頻繁に狙われ絶対に増える。だから開幕前のテストマッチでそのシーンが出て、ただのピンチで済まず失点という形になったのは大きな収穫。より真剣に「どう対処するべきか」を詰められる

――個人的には「GKが飯倉でいいのか」よりも圧倒的に「中澤とミロシュのセットでリスク&リターンの収支は合うのか」が問題である上に、それが勇蔵でも仮に朴正洙が残留していても新井一耀が戻っていても解決には至らないだろうと思うのだが。みんな反転アジリティ、スピードないから

なので生駒仁のプレイはまだちゃんと見れてないから期待するのは時期尚早に過ぎるが、高卒ルーキでも全くのノーチャンスではないと思ってる。本気で1年目からボスの求めるスタイルへの理解と適合度を高めポジション狙って欲しい。今までのマリノスではあった序列の壁は既に崩壊しつつある

西山大雅は昨季のユース数試合を観る限りだけど、空間認知と反転アジリティのハイラインあんま高くないんだよな…。でもチャンスには違いないから、頑張って

CFGとアンジェの示し求めるスタイル方向性――ハイプレス&ハイラインも、自陣ビルド&幅と奥行きを使うコンビネーションも「今までのマリノス」「今までの序列」そのままでは再現は不可能。選手個々が相当な変化を受け入れレベルアップしない限り。だから取捨選択、適者生存、新たな補強は不可避

「これまで通りのマリノス」なら、こんな変化は絶対的に受け入れられなかった。選手がクラブや新しい監督のスタイル方向性に合わすのでなく、その逆があたり前だった。監督に求められる資質はまず「中庸、妥協、諦観」既存選手に擦り寄る事。その「マリノスらしさ」は、この2シーズンでほぼ破壊された

CFGと監督が求めるスタイル方向性に適合しない、適応しようとしない選手はチームを去るしかない。マリノスは少しずつ着実に変革を進め「普通のクラブ」になりつつある。一部に反発は根強いが、選手もファン・サポータも少しずつそれを理解し受け入れつつある。それが正解か否かではなく、その事実を

「理屈は分かるが感情的に受け入れ難い」ものは、絶対に残る。それは仕方ない。選手にはそれぞれ異なるサッカー観やプロ意識があり、ファンにも共有し積み重ねてきた歴史、選手への思い入れもある。ただマリノスはクラブとして、変革の道を選び進んでいる。歴史の歯車は動き出した

2018どんなシーズンになるか、結果は全く予想ができない。悲観的になろうと思えば幾らでも可能ww ぶっちゃけ戦力的な補強は乏しくマイナス評でも反論は難しい。「このスタイル方向性を受け入れられないなら出て行け」結果、単純に個の総和が低下し勝てなくなりました――別にそうなっても不思議はない

それでも今は、残った選手たちは「今まで通りのマリノスじゃあ限界あるよね」と昨季リーグ終盤の内容と結果を受け入れて、真摯に変革に取り組んでいる。そんな中でも、その流れに適合や適応が追い付かず居場所を失う選手はボロボロ出てくると思う。悲しい事だが、それも受け入れていかねばならない

だから不安も山盛りだけど、マリノスが本当に強いクラブ・チームになるため不可避の変革として、この激動のシーズンを見守りたいと思う。そしてベテランも高卒ルーキーも含め全ての選手に「これまでのマリノスらしさ序列など既にないのだ」という認識の下、貪欲にポジションを奪い合って欲しい

2018シーズンはマリノスが生きるか死ぬか、今後10シーズンを左右する運命の分かれ道。DAZNマネーによる格差拡大リーグ潮流もあり、ここでしくじったらリカバリは絶望的に難しいかも。理屈として正しい方向性や哲学が、必ずしも正しい結果を保証しないカオスなサッカーという競技――

いやあ2018シーズンのマリノス、これは超ドッキドキですね! ヤバいね! なんか今から情緒を安定させるための身体に悪くないストレス解消法とか、気分転換の趣味とか(←YOUにとってマリノスとは?) なんか見つけておいた方がいいかもね!

――ドッキドキなのはハイラインだけじゃないよ!

★新春★【エリクは攻守のプレイモデル(原則)を選手たちに与え植え付けてきたが、それはベースとなる原則であり、そのベースの上に如何なるプレイを選択しゲームを作るかは選手個々の判断、責任において為される。「ルールを守っていれば叱られない」ピッチは小学校ではない。自分で考え、決断しなければ by 蒼井真理】 about エリク横浜3シーズンの総括(4)

f:id:harukazepc:20170419105933p:plain蒼井真理

★新春★エリク横浜3シーズンの総括シリーズ


■エリクのパーソナリティ

エリク・モンバエルツ監督の志向と嗜好と思考。類型的にどんなタイプの監督で、彼の監督としての特性や人間性マリノスに何を残したか。そして彼から何を学んだか

・諦観と中庸の指揮官

ある種の割り切り、目の前の与えられた状況を受け入れ偏りないバランスを重視したチームマネジメント、育成。実にオーソドックスで普遍的、流用性あるベーシックな型を落とし込む教育者タイプの監督

監督の類型、特徴を測る視点として「短期・中期・長期視点におけるリソースの割り振り」がある

【短期】目先のゲームでの勝利、勝点効率。最適化
【中期】チームスタイルや戦術的柔軟性の確立
【長期】1、2年先も考え「必要な選手」の起用と育成

例えば、クラブの方向性や監督の志向として「しっかり後方からビルドアップしてポゼッションの質と実効性を高め、どんな相手にも主体性を持ったゲームができるチーム作り」があるが、現状のチームと選手が出来ていない、そこに強みがない場合にどうするか

【短期】目先のゲームでの勝利、勝点効率。最適化

これを最優先に考えリソースを大きく割くと「実際問題できない、試合でやろうとすればリスクが高いから縦に蹴る。あるいは特定のキープ力ある選手に依存し、今あるチームと選手の強み(例えば堅守速攻、セットプレイ)の最大活用を要求する」

【中期】チームスタイルや戦術的柔軟性の確立

これを最優先しリソースを大きく割くなら「部分的に方向性に適合性の高い選手の抜擢はあるが、基本は現状のチーム序列(実績経験値)に従いレギュラ固定し、プレイモデルや戦術の反復練習で熟練度、連携力などの向上を図り試合における再現性を高める」

【長期】1、2年先も考え「必要な選手」の起用と育成

これを最優先しリソースを割くなら「現在のチーム序列より、先々より理想に近い高い完成度を目指して経験値や信頼性は低くともポテンシャル適合性の高い選手を積極起用して中軸選手足り得るまで我慢して育てていく。当然、短期的な勝率は低下」

エリクの監督としての特徴・資質は間違いなく【長期】先を考え「必要な選手の起用と育成」にあり教育者タイプだが、そこにリソースを全振りはしない。育成でなくプロのトップチーム監督である以上、目先の結果も大事。【短期】【中期】【長期】にバランス考えリソースを振る、中庸の将

樋口さんも中庸の将であったが【中期】にリソースを大きく割いた。彼も嘉悦さんも「マリノスのスタイル確立」を最優先課題、チームのフレーム枠組みを作る。それにより継続性を獲得し、編成に際しても「今のチームにどのタイプの選手が足りないかを明確化して獲得する」指針を得るため必要な過程だった

エリクは、よりバランス中庸派。それは彼の指導者としての長い経験が培った「諦観」によるもので、自らの志向や趣向を優先する事はなく、与えられた目の前の現状と要求を受け入れてバランス維持とベースアップに腐心した。だからこそ1年目は、なかなかエリクの色や果たす仕事の意味が見え難かった

樋口さんはホント監督には珍しいほど馬鹿正直なお方で、就任直後から試合後の会見でも、かなり隠し事なく素直に「やろうとした事、実際の可否をどう捉えているか」あけすけに語ってくださったから、答え合わせは凄く捗った。エリクは最初あまりヒントをくれなかったが、3年目になると喋るようになった

なんとすれば俊輔と中澤の2大レジェンドを同時にピッチに起用し「やれるサッカー採用できるスタイル」は制約も多く限定的。樋口さんもエリクも、マリノスの監督に求められるのは「諦観と中庸」であるのは前提であり一定仕方ない。その中で理想を求めたり、要求に応えていかねぱならない

無論、俊輔も中澤も「チーム作りを邪魔する害悪」ではなく、彼ら1人で勝点+8とか失点-10とか破格のアビリティと問答無用の実効性を持つ。別に昔の名前と人気だけでクラブから起用を義務付けられていた訳ではない。チームが勝つために、樋口さんもエリクも彼らを信頼し起用してきた

チーム作りにおいては制約もある彼らを起用し実効性は最大限活用しつつ、且つチームが持続可能性を持ち成長しスタイル確立し、若手も含めベースアップしてレジェンド2人への依存度を少しずつ下げながら再現性ある(偶然でなく狙ってできる)プレイモデルやチーム連携を構築するのが、求められた仕事

――改めてホントに樋口さんもエリクも、ミッション・インポッシブルだったと思うよw 無理ゲー要素満載。でも仕方ない過渡期、変革期のマリノス中村俊輔中澤佑二という偉大なレジェンド2人を抱えたクラブの、至福の代償。不可避の難題。今ようやく乗り越えようとしている

エリクの監督としてのマネジメント・スキル、人心掌握やモチベータという側面には正直、私も不足を感じていた。「人たらし」「その気にさせる」資質が低く、教育者タイプ丸出しと言うか。例えば俊輔をボランチ起用して気持ち良くプレイさせるため、もっとマシなアプローチがあったんじゃないかとか

昔から俊輔のアンチがよく言う「攻撃の時はボランチの場所と仕事、守備の時だけトップ下のポジション」の指摘は一面の真実だ。俊輔は自分の得意なプレイ、やりたいゾーンを選択する傾向はある

俊輔は2013シーズン、トップ下で素晴らしく守備を頑張り貢献しチームを鼓舞した。ただそれは、あのチーム守備組織においてトップ下は最も「フリーマン」要素が高く、他のポジションより「絶対的なタスク」が少ない。自分の判断で「周りを助ける」事ができるポジションだったからでもある

マルキがプレスに行けばフォローする。ボランチが晒されピンチと思えばプレスバックして助ける。イヤな言い方をすれば「自分自身には絶対的なタスク責任はないが、周りを助ける事で評価される」美味しいポジション。不手際やサボりは見えにくく頑張りは見えやすい「あんなに俊輔が守備してる!」と

部活や職場にも、そういうポジションに上手く収まってる世渡り上手は普遍的にいる。絶対責任はできるだけ上手に回避して「フリーマンお助け役」であちこちに顔を出して感謝されるポジション。いや、2013シーズンの俊輔がそうだったとは言わないし、それはそれで実効性あれば組織の機能性

――また話が脱線しつつあるが、つまりですね「中村俊輔がそういう気質で」「守備ではボランチとして絶対的な責任を負いたくないけど周りを助けるのは好きだし上手」「攻撃では相手守備ブロックの内側で受けるの苦手だけど引いて受けて捌く実効性はリーグ屈指」なのであれば、エリクは「君のやってる仕事と資質はボランチレジスタ)のそれだからトップ下でなく明日からボランチね」とは言わずに「いいだろう俊輔、君は偉大なトップ下だ」と言って “そのまま同じ仕事をさせて” ただ実質的なレジスタとして最低限必要なタスクだけ要求すれば良かったんじゃねーのと

「本人はトップ下に拘るけどやってる仕事は実質ボランチレジスタ)」なんて何年も前から周知。今更それを指摘しトップ下という「肩書き」でも俊輔にとっては大事な称号を剥奪せず、不足は「ボランチの」三門雄大あたりに補完させりゃあ良かったんじゃねーのかと。それで誰も不幸になんない

エリクが縦の運動量やインテンシティを評価して起用した三門雄大からして「俺がトップ下?」と違和感抱いて、後の移籍に繋がったあたりもうエリクの教育者タイプ丸出し! 俊輔の乙女心、ロマンが分からない! 「だってオメー実質ボランチじゃん?」それだけは言っちゃダメなヤツだった!

ただエリクを擁護するならば、エリクに求められたタスクは先々も流用可能な「プレイモデルの落とし込み」であり「あたり前の原則」の周知徹底。「このポジションの選手はこのタスクを果たさねば起用できない」そこは選手たちに教え要求していかねばならず、最初から例外アレンジ認めるとどっちらけ

「過渡期における脱依存、新たなベースとなるプレイモデル構築のため不可避な施策」「とは言えもう少し皆が気持ちよくプレイできるアプローチあったんじゃねーの」「結局、その後も俊輔は起用し続けたしトップ下を認めたし」私としても、この問題は未だに明確な評価是非は出せてない。正解はない

――その辺りも全部含めて、エリクの「中庸と諦観」 以下にそれを象徴する印象的なエリクの言葉をいくつか引用する

「私が(PSG監督時代に)下した唯一の大きな決断は、チームのスター選手だったスシッチを先発から外しベンチに座らせたことだ。(中略)彼を外したのは間違ってなかったと思うし、あの決断をしたことには誇りを持っている」エリク・モンバエルツ

「とはいえ、ある意味そんな事ができたのは私がまだ若くて世間知らずだったからだ。だからファンやパリのメディアのプレッシャを意に介さず、スシッチを控えに回すような真似ができたんだ」エリク・モンバエルツ

「(監督続投に選手から反発があった事について)この世界でやっている限り、あり得る事。選手の中には試合に出られないことへの不満、私が実践しているサッカーへの不満など、様々なケースがある。それは世界中どのクラブでも同じで、サッカーの世界ではノーマルな事だ」エリク・モンバエルツ

与えられた戦力と目指す方向性に乖離があっても、それを擦り合わせていくのが監督の仕事。スター選手とも上手く折り合い付き合っていく。それでも上手くいかない事もあるが、現実は現実として受け入れ、少しでも与えられたタスクの達成度を高めるための取り組みを続ける。そのために必要な諦観

エリクが3シーズンで残したものは「若手の成長」と語られる事が多いが、先の総括で述べた通り最後は編成に拠って成された部分が大きく、朴正洙前田直輝も敬真も賢星も、今季チームにその名前はない。喜田も昨季最終盤はポジションを失い、このまま彼が埋もれればエリクの「若手育成」は何だったのか

より大きなエリクの仕事、遺産とはプレイモデルの落とし込みを中心とした「過去のマリノスの慣習を解体し」「新たな “あたり前” をCFGやクラブの方向性と共有しつつ一定構築した」事だと、今の私は振り返り思う

「ビルドアップは俊さん任せであたり前」「守備は勢い任せのプレスかドン引き最後は中澤さんがなんとかしてくれる」 それじゃ2人がいなくなったら、お前らどうすんだと。1人ひとりが正しいポジショニングや、ビルドや守備のスキーム(プレイ原則)を理解し、組織的に出来るようになりましょうよと

ビルドアップは2年目終盤から3年目にかけて大きく伸びた。結局、俊輔がいなくならないと伸びなかった。守備は樋口前監督の最大の遺産を放棄する事になったが「とにかく内を締めろ背後を取られるな」それはある程度徹底された。前に出る守備は全然まだまだ。結局コレも中澤がいなくなってからか

「公式戦でられてないけど練習試合でガス抜きして、この毎日を続けてればいつか上が抜けたら試合に出られるかな」 いやお前ら無理やで。アマチュア相手に “やってる感” だけ得ても無駄。カップ戦で結果出さないと未来はないから死ぬ気でやれやと

マリノスの旧い慣習、なんとなく「それがあたり前」「このままでいい」「だってそれがマリノスだから」でやって来たものをエリクは解体し、新たな土台を構築した。地均し基礎工事で「家」は完成には程遠いから、成果も見え難い。否成果は「ない」先々の成果のための、ベース作り。それがタスクだった

元日の決勝戦後にも書いたが、エリクの仕事が本当に評価されるのは今季あるいは数シーズン先。築いた土台の上に如何なるチームが構築され、結果を残せるか。チームは生き物なので、今後も新たな監督の下でベース部分も再構築作業は随時必要になる。つまり何処までがエリクの仕事か、実に見え難い

それでも私は、エリク横浜の3シーズンを見てきた中で、解体し構築したもの「エリクが残したもの」は確かにあると感じている。過渡期、変革期のチームにおける難しい仕事をエリクらしい「諦観」で時に妥協や諦めもある中で根底はブレずにやり切ってくれたと感謝しているし、彼からの学びも大きかった

エリクから得た最も大きな学びは「与えられた環境、目の前の現実を現実として受け入れる」「結果にも選手にも大きく失望せず感情をコントロールする」そして「過度に期待しないための妥協や諦めもある、思い通りにはならない。それでもチームと選手に対する情熱を失わない」こと

「チームと選手に対する情熱」もっともっとこのチームと選手たちを良くしたい。成長させたい。それが何よりの喜び。指導者としての情熱。日々のチーム練習で、自ら率先して用具を持ち出し設置し、トレーニング中に最も大きな声が出ているのは常に中澤と金井、そしてエリクだった

あれだけ制限あるチーム作りの中で、中心選手やベテランからの反発食らったり、期待した若手がなかなか結果出してくれなかったり上手くいかない事だらけの中で「割り切り妥協し時に諦め」自らの感情をコントロールしつつ、それでも情熱を失わない。エリク半端ない。そんなんできひんやん普通

「妥協する」「諦める」「失望したくないから期待しない」それは誰にでも出来る。でもエリクは、チームと選手に期待し続けた。もっと出来るもっとやりなさいと。私がエリクから得た最大の学び。思い通りにならない事だらけ裏切られてばかりだ。でも期待し続ける。もっと出来る。もっと強くなれると

エリクのパーソナリティ、チームと選手に向き合う姿勢、情熱。それは選手たちよりむしろ「チームと選手に向き合う」私たちファン・サポータこそ学ぶべき点が大きいのではないか。私はそう思う。エリクの遺産は、私たちも引き継げるものであると

■積み残した課題

エリク横浜3シーズンで改めて顕著になったマリノス積年の課題。2017/18シーズン目標に届かなかった理由について思い込み考察

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・ピッチ上の判断と修正力

端的に言ってコレなんじゃねーのかなと。ホント昔から「与えられた仕事と役割は皆がクソ真面目に実行する」「マリノス意外とチャラくない」

でも各々が自分の頭で考え目の前の展開を見て判断し「今何をすべきか」決断実行する主体性の欠如と、コミュニケーション不足

マリノスに「外から来た」監督は、2つの事に驚く。「言われてない事は、驚くほど出来ない。ベースとなる戦術理解や自主性、ピッチでの修正力がない」そして一方、「言われた事の理解は、驚くほど早い。それを実行する責任感と能力は極めて高い」岡田武史も通った道

  • 俊輔や中澤への依存体質
  • 過剰に「約束事」を求める
  • 提示されたゲームプランに従順
  • スコアが動くと常に動揺する
  • 過去の成功体験に縛られる

つまりピッチにおける「変化」「想定外」への適応力が低い。誰かに思考判断決断を委ねる、自己責任の放棄

この指摘の背景部分は、2017リーグ戦総括やエリク横浜3シーズン総括でも触れてきた。「成功を積み過ぎた」とか「ある程度選手に投げて普通にやらせたらエリク初陣で川崎に大敗」「止む得ずプレイ原則でガチガチに縛り樋口監督最大の遺産放棄」とか

――結局のところマリノスは長くキャプテン資質の高いリーダをピッチに欠いて、松田や上野良治や中澤や俊輔といった「キャプテン資質はないが個の強い選手」の志向、彼らが自然と作り出すチームの方向性や展開に何も考えず付き従う癖が半ば伝統的に培われてきた

「キャプテン資質ある選手」とは、俊輔や中澤のような個の強い選手たちとコミュニケーションを取りつつ、チームとしての方向性をまとめ上げて「今はコレで行くぞ!」と言語化して周囲に伝播できる選手のこと。俊輔や中澤にはない。“話しまとめ上げ言語化し伝播する” そのスキルの何処かが欠けている

だからマリノスは、個の強い選手たち彼らの志向と思考に基づきプレイで示す方向性を「空気を読んで察知し」付いていく、互いにコミュニケーションを求めず「なんとなく俊さん任せ」とか「大体いつも通り」スキルを磨きずーーっとやってきた

各々が自分で「今何をすべきか」考え決断したり周りと擦り合わせる習慣が乏しいから「スコアが動く」とチームが動揺しやすい。珍しく前半10分までに先制できた。畳み掛け追加点を狙いに行べきか、一度ゲームを落ち着かせるべきか。前と後ろで判断がバラバラになったり

同じ勝ちパターンを繰り返した事で成功体験に縛られ「前半ゼロでも大丈夫」と上手くいってない攻めに安穏としたり、先制されたら詰んだり、早く先制できてしまったら逆に動揺したり。全部エリク横浜あるある

「試合中は次々に変化する状況を瞬時に判断してプレイせねばならない。決断するのは選手たちだ。何千もの選択肢ある行動の1つひとつを監督が決める訳にはいかない。ベースとなるゲームプランは提示するが、ピッチで決断し、ゲームをコントロールするのは選手たちだ」ハリルホジッチ

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ハリルホジッチ代表でも、全く同じ課題と向き合ってて笑ってしまった。何年もサッカーやってA代表や欧州クラブ在籍するような選手たちですら、この有り様。もう日本人の文化教育、やっぱそのレベルから見直すべき問題なんスかねえ…

「ついつい空気を読んでしまう」「強い自己主張は忌み嫌われる」「誰が場の主導権を握っているか察して追随する」「察するものであり改めて話し合う事を省略する文化」「組織の(暗黙も含めた)ルールから逸脱しない」「ルールを守るのは得意」「自己責任で判断決断するのが苦手」

でもそれは日本人の美徳であってもサッカー的な思考や文化ではない。刻々と変化する状況に、各々が自己責任で判断決断してプレイ選択しなければならないし、展開に変化があればコミュニケーションを取りチームの方向性を定めなければならない

個の強い選手任せだと「大体いつも通り」の時は問題ないが、変化や想定外の事態に上手く対応できない。「いつも通り」じゃない空気になると、皆の感じ方は違ってくるから齟齬が生じる。イメージする方向性「今すべき事」がバラバラになったり、思考や行動がどんどん受け身に後追いになる

会社でも軍隊でも、究極的には「個々の判断やコンセプトが優れているか否か」でなく「全体が同じ方向性を共有し1つの有機体として連動し行動できるか」が、組織としての強弱を決定する。それはサッカーチームも同じ事。それと同時に個々の局面では完全に独立した個の判断と責任感が求められる

エリクは攻守のプレイモデル(原則)を選手たちに与え植え付けてきたが、それはベースとなる原則であり、そのベースの上に如何なるプレイを選択しゲームを作るかは選手個々の判断、責任において為される。「ルールを守っていれば叱られない」ピッチは小学校ではない。自分で考え、決断しなければ

「プレイ原則を正しく理解し活用する」「その上で必要と判断すれば躊躇なくその原則から逸脱する」その自主性を持たねば、エリクの蒔いた種も芽も枯れ腐る。監督が変われば要求もディテールを中心に異なってくるのは当然。従順に従うだけでは、成長も積み上げもない

「同じ失敗をするな」それと同じく「同じ成功を繰り返すな」つまり思考停止はダメだ。同じじゃない。相手も違えば展開も違う。勝利の中にも露呈しなかった疵は必ずある。「前半スコアレスでも後半勝負」そんな曖昧な「勝ちパターン」に囚われてはダメだ。ウノゼロの美学、それは単なる得点力の欠如だ

「前半10分に先制できた」何をすべきかは、相手により自分たちの状況やコンディションでも変わってくる。普遍的な正解「勝ちパターン」などない。そんなものが出来あがってきた時こそ今の自分たちを疑わなければならない。だから常に、試合中も試合後もコミュニケーションを取る必要がある

それを誰かに任せてはいけない。新人でも40歳になる中澤佑二に問い質し、要求しなければならない。新しい監督とも「その要求について、この判断はアリか」質問し擦り合わせなければならない。決して「空気を読もう」としてはならない。最後にピッチで決断しケツを拭くのは自分なのだから

キャプテン資質のある選手がいないのは問題だ。しかし喜田拓也、あるいは今なら飯倉大樹に主将を任せるのは悪くない判断だと思う。仮に喜田がピッチに立たない試合があっても構わない。彼はそれでマイナスの影響を受けるタイプでなく、更に日々のトレーニングから責務を果たそうとするだろう

ゲームキャプテンは、現ブラジル代表のように「持ち回り制」とし個々の自主性や責任感を喚起するのも今のマリノスには悪くないない。全員がキャプテンの意識で、誰かに依存したり誰かが背負い込み過ぎる事も必要ない。俊輔と齋藤学に主将を任せたのは、あまり良い判断ではなかったと私は思う

マリノスに残った選手たち1人ひとりに、強い責任感と自主性を持ちピッチに表現して欲しい。トレーニングからもっと声を出して厳しく要求し合って欲しい。思考判断決断を、決して誰かに委ねない事。それが出来て初めてエリクの残したものも次に残る。正解はない。それを決めるのは常にピッチの選手だ


最後に

――ようやく俺の2017/18シーズンが終わった。いやあ最後に10番が隣街にゼロ移籍しちゃう超絶な「引き」含め濃密なシーズンだったね! エリク横浜3シーズンを振り返っても、3年間掛けてこそ見えたものが沢山あって感慨深い

さあメシにしよう

小学3年時の「ヘチマ観察日記」以来のやり切った感。やればできる子だが、基本やらないスタイル

俺の2017/18シーズンもようやく幕引きできたので、あけましておめでとうございます。2018年も「ウソ、大げさ、紛らわしい」蒼井真理をそれとなく宜しくお願いします

そもそも「批評」などというものは対象の副次的な楽しみ、読み物でしかない訳であって「解や正しさ」はそこにはありません。マリノスの、サッカーの解や正しさはスタジアムの中にあります。ピッチの選手のプレイにしかありません。極論、試合後の監督や選手コメントさえアレは副次的なソレです

言語化の不可能なサッカーという競技は言語化しなければ語り合い批評する事ができないパラドックス。近年はデータ活用が急速な進歩を見せ数値化「可視化」も進んでますが、おそらく私たちが生きている間は「その数値の取り扱い」どう捉え判断材料とするかに絶対解はでないでしょう

「あの時のあの選手のプレイがこんな意味があった」言語化、あるいは数値化されたそれは、何処までも「超多面体であるサッカーというカオスな競技の1シーンの極めて限られた一面」を切り取ったものに過ぎず、網羅は不可能。且つ同じ言葉や数値でも人により捉え方は異なる。正確な定義付けは不可能

でも人は言語化しなければ語れない――そもそも評価のための「思考」すらできない。だからサッカーを語る言葉は、基本全部ウソです。真理などありません

それでも人はサッカーを語りたい、語らねばならぬので言語化する。私みたいに理屈っぽい人間や、言葉を使い選手を指導し統率しチームを作らねばならない監督も「まず自分が納得できる解釈」ストーリ作りをする。私の備忘録も監督の会見コメントも、あれは脳内で作られた物語。サッカーの本質ではない

他人より先に「自分を納得させる」「もっともらしい」勝敗の理由付けだったり、試合展開や選手の評価をストーリに仕立てる。批評者も監督もペテン師の同類。言語化不可能なものを「さも真実のように」言語化して、自分と聞く者とを納得させる。そうしないと解釈も評価も批評も指導もできないから

だから監督が選手が数値が蒼井がこう言ってるから「そうなんだろう」は間違いですよと。マリノスの、サッカーの解や正しさはピッチの選手のプレイにしかない。あなたが見てあなたが感じたものが、あなたにとっての正解。他人の作った物語なんて、ホント副次的な楽しみのための価値しかない

本当に自分にとって大切なものは、自分の目で見て、自分のアタマで考えよう。周りの意見を見るのは「その後」にすべきだし、安易に無批判に受け入れるのは宜しくない。それは俊輔や齋藤学の移籍についても同じ事。まず自分で見て考える事。大切なものについて他人に同調する必要なんてない

他人の意見は自分と違ってあたり前。だから同調も無批判の受容も、そして排除も必要ない。「そんな事を言うな」「こんな事を言う奴はいなくなるべきだ」それがどれだけ社会にとって危険な思想か、もう少し歴史から学ぼう。判断材料、ニュース発信源は多いに越した事はない。判断するのは自分だから

「自分にとって都合のいい耳障りの良い情報だけを求め」「そうでないものは排除しようとする」「目と耳を塞ぐだけでなく存在すら許容しない」それやってると何度でも同じ過ちを繰り返す。自分は常に正義の側にいると思う人間こそが、最も愚かで残忍になれる

蒼井真理は2018シーズンも藤井さんの記事に期待してます! でもプレミアム課金は、もう少し考えさせてくれ…

★新春★【目に見える形でチームの若返り、世代交代が進んだのはエリク3年目の2017シーズン。編成により成された部分が極めて大きい事は明らかだ。過渡期、変革期ってヤツですか。だから2018年、2019年は激動のシーズン間違いなし。 by 蒼井真理】 about エリク横浜3シーズンの総括(3)

f:id:harukazepc:20170419105933p:plain蒼井真理

★新春★エリク横浜3シーズンの総括シリーズ


ここから先はデータや証言ベースでない、より主観的な印象論――つまり蒼井の「思い込み妄想、仮説」「こう考えると俺はしっくりする」「作られたストーリ」をテーマ連投するので、くれぐれも「ああ、そうだったんだ」と鵜呑みにしないで欲しいなと思う

思うだけで感じ方は強制できないが

■エリクの若手育成と世代交代

  • 実際どれだけ若手を起用育成し
  • チームの戦力とし落とし込めたか
  • カップ戦と練習試合
  • 世代交代は成されたのか

「(自分が監督を務めた3シーズンで)多くの若い選手たちが成長した。そのことが私にとって重要なこと。今の方向性を、是非これからも続けていって欲しい」エリク監督

エリク横浜、最後の試合となった天皇杯勝戦後の会見で

「若い選手が多く活躍したのは、エリクが監督だったからというのは大きいと思う。新しく監督を迎えるが、マリノスはまだ若い選手が多い。彼らをもっと成長させ、勝利に拘る監督を迎えるべく人選を進めている」古川宏一郎社長 エリク退任発表に際して

「私は(欧州基準の今後のベースとなる)プレイモデルをチームに落とし込む役割を与えられマリノスにやって来た。加えて若い選手がトップチームで試合に出られるようにする事も重要な仕事だった。なぜならマリノスは育成組織も充実しているクラブだから」エリク監督 退任発表に際して

・リーグ戦での若手起用実績

巷では「樋口は3年間レギュラ固定して若手をテストしたりチャンスを与えなかった」「そのためチームの世代交代は進まずそのツケをエリクが払った」「エリクは沢山の若手を起用し育てた」という論も多いが、果たして事実に即しているのだろうか?

樋口体制3年目の2014シーズン、23歳以下のリーグ先発はゼロ。24歳の佐藤優平がシーズン終盤に出場機会を伸ばし、10試合スタメン出場したのが目に付くぐらい(齋藤学も同年齢だが、学は既にレギュラ中軸選手)…ただこのシーズンのマリノスは編成自体が高齢化していた

背景として、前年2013シーズン最後までリーグ優勝を争い一歩届かず。2014は「世代交代」より、補強や起用も「実績重視、今季こそリーグ優勝」となったのも妥当。カップ戦もナ杯でなくACL天皇杯優勝もあり準備期間や日程含め、とにかく余裕がなかった

エリク横浜1年目の2015シーズン。23歳以下では喜田拓也(21歳)がリーグ戦20試合に先発。アンドリュー(22歳)が3試合に先発したのみ(アデミウソンは別枠だろう) このシーズンも即戦力が期待できるような補強や加入なく、ほぼ前年戦力そのままではあったが――

エリク横浜2年目の2016シーズン。22歳の喜田が25試合、朴正洙が12試合、前田直輝が7試合に先発。23歳の敬真が11試合、新井一耀が4試合スタメン。ユースから昇格した19歳の遠藤渓太が9試合に先発は特筆事項。多くの若手選手が、ナ杯GLでのテストとアピールを経て出場機会を得た

エリク横浜3年目の2017シーズン。新たに23歳以下でリーグ先発を伸ばしたのは、23歳ミロシュ25試合、ダビの15試合、前田直輝7⇒10試合、22歳イッペイ2試合の4人。朴正洙、敬真、渓太、新井一耀は前年よりリーグ先発機会が減少し、新井は夏にローン移籍を選択した(後に完全移籍)

その一方で2017シーズンはリオ世代24歳の両SBが新加入。松原健が22試合、山中亮輔が19試合にリーグ先発。決して年齢的に若手ではないのだが、26歳の天野純が33試合、扇原貴宏が18試合スタメン。オフに多くの中堅ベテランがチームを去った事もあり、相対的にチームの若返りは進んだ

――こうしてエリク横浜3シーズンの、リーグ戦における23歳以下の先発数を改めて検証し改めて実感するのは、チームの若返り世代交代に重要なのは「編成による新陳代謝」であり、与えられた戦力でやり繰りするしかない監督の果たす役割は極めて限定的である、という事だ。それに尽きる

◇選手の成長ステージ
1.ブレイクスルー(突破・進歩期)
2.デベロップメント(発展・成長期)
3.ピーク  (完成・到達期)
4.トワイライト(晩年・黄昏期)

2017新体制発表、利重チーム統括本部長(当時)のプレゼンによる定義

エリク1年目に若手で抜擢されたのは喜田拓也くらい。そもそも樋口体制を引き継いだ戦力に『デベロップメント(発展・成長期)』の選手は少なく、チームは『トワイライト(晩年・黄昏期)』『ブレイクスルー(突破・進歩期)』両極端の占める割合が高く “ベテランとヒヨコ” に偏っていた

2年目は、当然エリク自身も編成に参画し、自ら期待する『ブレイクスルー(突破・進歩期)』キャリアの乏しい選手たちに多くのチャンスが与えられた。しかし、それらの選手でエリク3年目も出場機会を伸ばし、来季以降もチームに在籍する選手は残念ながら、極僅かである

3年目は『ピーク(完成・到達期)』を過ぎ『トワイライト(晩年・黄昏期)』を迎えた選手たちが多くチームを去り、チームに不足していた伸び盛り『デベロップメント(発展・成長期)』の選手たち(ミロシュ、松原、山中、扇原)が加入する編成が成され、彼らは4人ともリーグ18試合以上に先発した

3年目はエリクにとっても1つの区切り決算期であり一定の結果を求める。ACL圏内、カップ戦タイトルという目標も掲げた。“ヒヨコ” のまま計算出来ない、結果を出せない選手はリーグ戦の出場機会を失う(それはリーグ終盤の喜田も然り)天野純は自力で『発展・成長期』まで歩を進めた希有な例

目に見える形でチームの若返り、世代交代が進んだのはエリク3年目の2017シーズン。だが振り返れば、それはエリクの若手起用育成よりも、編成により成された部分が極めて大きい事は明らかだ。「監督は与えられた戦力でやり繰りする中間管理職」という前提は忘れるべきでない

「年齢でサッカーをする訳じゃない」「世代交代は契約書でなくピッチで」「ポジションは与えられるものでなく奪うもの」その言い分も解るし、選手1人ひとりの心構えとしては大事な考え方だろう。しかし編成する側は、そうはいかない。世代交代は現場、監督主導では決して成されない。それが真実だ

「一定のスパンでチーム作りを考える中で、勝つ確率を追い求める作業と育成の割合(折り合い)をどのようにつけるかが、私たちフロントの役目。極端な話、現場主導では世代交代は進まない。フロントが強く意識しなければダメ」鈴木満 鹿島強化部長

「監督から様々な要望を出されたとしても、チームとして若手を育てたいと思うなら、言い方は悪いが “この選手しか与えない、彼らを我慢して使わざるを得ない” シチュエーションを作り出すのが最大の近道となる」鈴木満 鹿島強化部長

「敢えて層を薄くして育てたい選手が試合に出やすいシチュエーションを作る方法もある。戦力は選手層が厚ければ良いというものではない。選手を取れば全てプラスになるとは限らない。『いかに外すか』もチーム編成には重要なポイントで、現場任せにしてはいけない」鈴木満 鹿島強化部長

俺は本当に鈴木満が好きだなあ。

・カップ戦と練習試合

これ↑は若手起用育成、世代交代の本質でなく「手法」であり、本テーマの結論は書いたから蛇足でしかないんだけど。エリクの手法の特徴的な、前任者たちとの違いだからサラッと振り返り検証する

エリクは就任1年目から3シーズン共に「ミッドウィークのカップ戦」ナ杯ル杯GL、天皇杯の2~3回戦は、直近のリーグ戦からメンバほぼ総取っ替え。経験の少ない若手を中心に起用し、多くのルーキがデビュを果たした。そしてリーグ戦で出場機会を得られてない中堅ベテランはヒヨコのお守りに四苦八苦

ナ杯ル杯2年目は見事にGL突破を果たし「榎本哲也の大会」として私は印象深く記憶に残しているが、1、3年目はGL敗退。特に1年目は「入場料を取る公式戦で練習試合か」という批判も少なくなかった。私もそう思っていた

その一方で樋口監督時代までは慣習的に実施されていた「リーグ戦翌日のBチーム練習試合」は一切行われなくなり、リーグ戦で出場機会を得られない選手にとってアピールの場は非常に限られたものになった

選手たちからは「試合勘やゲーム体力の維持が困難だ」「アピールの場すら与えてもらえないのは精神的にキツい」という声もあった。樋口監督時代からの変化として、日々のトレーニングでも「レギュラ組とBチーム」を露骨に分け、Bチームは次の対戦相手のダミー役を務める時間が大幅に増加していた

「次の対戦相手のダミー役」なので、トレーニングでは本来のポジション、またレギュラ組に合流した際とは異なるプレイ、タスクを求められる事が多い。つまり日々の練習では「公式戦に出場するためのアピール」がそもそも困難。序列を覆すのは難しい――と選手たちが感じるのも止む得ない所

そして数少ないアピールの場、カップ戦も「リーグ戦の先発メンバから漏れたあぶれ者のBチーム」これまた本来のポジションで起用されなかったり、試合毎にポジションや隣り合うパートナが変わったり。そんな中で確かな結果を出さなければ、リーグ戦出場のチャンスは巡ってこない。基本、無理ゲーである

「私はチームの全選手を信頼している。出場する選手に求めるのはリーグ戦と変わらない、勝つ事だ。リーグ戦にも出たければナ杯でクオリティを示さねばならない。チームは若手が多いが、信頼して出場時間を与える必要がある」エリク監督 2016年

「練習試合やらない」「カップ戦は総取っ替え、経験値ゼロの若手起用」この手法に、私は1年目はかなり批判的だった。選手たちからも不満の声が多く聞こえた。しかし2年目から少しずつ考えは変わり、カップ戦に臨むBチームの選手たちの取り組みも変わった――というか「開き直った」

エリクは選手たちが「公式戦でどんなプレイができるか、結果を示すか」を見ようとし、要求した。選手たちも2年目には「例え無理ゲーでも、この限られた機会、カップ戦で結果を出さなければ」「いつまでも自分はBチーム、レギュラ組の練習相手」「先々チームに居場所はない」と思い知り、腹を括った

それがエリク2年目、3年目のカップ戦におけるBチームの躍動感や思い切りあるプレイに繋がり、2年目はGL突破と若手のリーグ戦出場に、3年目はギリギリ突破はならずも、Bチームの勇気ある挑戦的なプレイが不振のレギュラ組にも好影響を与え、扇原や山中亮輔はリーグ戦出場の足掛かりを得た

振り返ってみれば、樋口監督時代「リーグ戦翌日の練習試合」で私は常に同じ不満を抱いていた。「相手がアマチュアだから、本気でやってない」「ただ “こなしている” だけ」「こんなんでレギュラ奪取のアピールになるものか」と。頑張る選手はいつも特定の選手ばかり(喜田とか奈良輪とか)

だから「練習試合やらない」「カップ戦は総取っ替え、経験値ゼロの若手起用」「そのカップ戦で結果出さないと先はない」エリクの手法は、若手を中心に危機感とハングリーさを植え付けたし、功罪半ばしつつ「少なくとも今のマリノスと選手たちにとって」必要な変化だったと、2年目以降は評価している

「練習試合」や「カップ戦」はアピールの場であると同時に「リーグ戦に出てない選手たちの調整・ガス抜き」の側面がある。エリク以前は、練習試合をなんとなく「こなして」やってる感だけ得て、この日々を続ければいつか試合に出れるかなあ――悪い意味の「ガス抜き」になっていたのでは、と

もちろんコレについては「手法」に過ぎず「結果論」な部分も大きい。2年目にBチームの選手たちが奮起し、GL突破という結果を出したから言える事でもある。その意味で、俺は今でもあの2016シーズンル杯の榎本哲也を格別に評価し、感謝している

今季アンジェ新監督が、若手に対しどんなアプローチをするのか。トレーニング形式は、カップ戦や練習試合の扱いはどうなるのか。全くエリクと同じという事はないだろう。非常に興味深く楽しみだ

中澤佑二と「伝統の堅守」の正体

妄想、思い込み度の高い連投。この1、2シーズンぼんやり考えてきた仮説が、現時点で自分を納得させられる形になったので書き記す

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「(中澤がチームを去る時がくれば)もしかしたらマリノスにある堅守のイメージが失われ、変革期に突入するかもしれない。それは凄く大事な事で、これからも堅守のチームを築くのか、違うスタイルにシフトするのか。シュンさんが昨季でいなくなり、佑二さんも抜けたら変わると思う」飯倉大樹

「今のチームは佑二さんの経験や遺伝子が継承されていて、その影響は凄く大きい。佑二さんがいなかったら、ここまで守備が安定する事はない」飯倉大樹

ほぼ形になってた仮説が「ああピッチレベルでも同じように感じてる選手がいる」と確証に至ったのが『TRICOLORE 2017冬号』の飯倉インタビュ。結構コレは真に迫るつーか際どい内容だから(しかもインタビュアの欲しい答えでなく飯倉の素が吐露されてる)丹念に読み返すべき

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140試合連続フル出場を達成したアウェイ大宮戦の選手評で私は、「中澤佑二は堅守の顔ではない。“堅守そのもの” だ」と記した。この表現はお気に入りで、その後も繰り返し使ったが――

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先に引用した飯倉の言葉。そして「堅守の顔ではなく」「堅守そのもの」が意味するものが、どれだけの人に届いているだろう。ただ中澤佑二の偉大さ貢献を賞賛しているだけではない。その裏側に「堅守マリノスの伝統」の正体が隠されている

2017シーズンのリーグ失点数は36。終盤に大量失点試合が続き、リーグ5位の数値となったが(最小は磐田の30失点)29節終了時でリーグ最小26失点。1試合平均1.0を切る「堅守」を仕切り支えていたのは間違いなく中澤佑二だった

樋口、エリク体制の通算6シーズンの平均失点数は33.2。1試合1.0以下で、常にリーグ最上位の失点数を記録。その6年間、中澤がリーグ戦を欠場したのは1試合のみ。2013年の14節からフルタイム出場を継続。エリク曰わく「私が指揮した3年間、1度もトレーニングを欠席していない」

来月には40歳の大台を迎え、自身「ラスト」と定めるシーズンを迎える中澤を人は「鉄人」と呼ぶ。しかしそんな生易しいものではない――あれは鬼だ。化け物だ。人外だ。普通ではない。一体何がそこまで、彼のモチベーションを保っているものは何なのか。凡百の理解や想像の範疇を超えている

樋口、エリク体制の6シーズンのリーグ戦ほぼ全てにフル出場した中澤佑二。一方でCBの相方は勇蔵、ファビオ、ミロシュ、朴正洙と変わりGKも哲也と飯倉が交互に務めた。勇蔵と組む時は左CB、ファビオ以降は右CB。隣り合うSBも変化し続けた

変わり続ける周囲の中で、中澤だけが変わらずそこに――マリノスのゴール前に立ち塞がる “鬼神” で在り続けた。6シーズン平均 33.2失点の数値が証明する「堅守マリノス」を支えた、最も貢献したのが中澤佑二である事に異論を挟む者はいまい

――さて、そこで諸兄に問いたい。「堅守マリノスの伝統」とは何か? あらゆるものが移ろい変わり続ける中で「変わらなかったもの」が堅守の正体ではないのか。「堅守」とは “マリノスの伝統ではなく “中澤佑二そのもの” ではないのか

2017シーズンも、中澤はCBのパートナがファビオからミロシュや朴正洙に変わり、右SBが堅実そのものであった小林祐三から若い松原健に変わり、GK含めDFラインに大きな変容があった中で、シーズン終盤までリーグ最小失点を維持した。堅守とは伝統ではなく、中澤佑二そのものではないのか

堅守「それは引き継がれ、受け継がれたものだ」と言う人もいよう。では中澤と同期加入で、16シーズンと日々のトレーニングを共にし公式戦でもCBを組んできた栗原勇蔵は、中澤が不在の試合でミロシュや朴正洙と組み「堅守」を体現できただろうか?

16シーズンの年月を共にしても、勇蔵は中澤の真似事すらできていない。堅守の象徴足り得ていない。だがそれは勇蔵が無能なのではなく、「堅守」の正体は伝統ではなく「継承が不可能」なのだ。堅守とは、中澤佑二そのものである

今のマリノスの「堅守」とは中澤そのもの、言うなれば「中澤システム」だ。中澤が長い年月を掛けて培った経験、個の予測や対応力をフルに活用し、同時にそれをチームの中で「最適化」し、チームの守備力と失点防止に落とし込む――

中澤にも得て不得手はある。アジリティ、反転力、スピードの不足は元からで年々少しずつ劣化も進んでいる。それらも全て織り込み、周囲にもそれを補完する働きを要求し、自らの持つ力と経験を最大限にチームのため還元し最適化する「中澤システム」

故に、栗原勇蔵は「中澤の最高のパートナ」1つひとつ説明や要求をしなくても、阿吽の呼吸で分かり合える――にはなれても、中澤佑二つまり「堅守そのもの」には “なれない”

中澤はシステムの中枢CPUであり、周囲が変われば時間を掛けて「自分の形に合わせさせる」事はできる。その逆はない

「監督が求めるものと、ピッチの中でやっている事に食い違いがあった。まずは監督が求める事をやるのが選手だし一番大事。でもマリノスの色もあるし、チームのサッカーもある。そこの部分で戸惑いはあった」松原健

↑コレは今季初の対外試合、アジアチャレンジで新加入の右SB松原健が試合後に残したコメント。私は一読して「ああ、中澤のことだな」と思った。“マリノスの色もあるし、チームのサッカーもある” それは中澤システムだと

「(戸惑う部分については)ベンチからの指示も気にしつつ、気にしないでやっていたw 良い意味で聞き流すというか」松原健

――この松原健の判断は正しい。マリノスのDFラインにフィットするという事は、“中澤佑二に合わせる” と同義だ

中澤が自らの経験と洞察から培った「中澤システム」は、部分的に現代サッカーのトレンドやゾーンディフェンスの定石、エリクの提示した「守備のプレイ原則」と食い違う。だから新加入の(特に隣り合うCBとSBは)最初フィットするのに時間を要する。パンゾーすらそうだった(後に見事に最適化したが

ただ、それは「中澤が監督の指示に従わず自分のやりたいようにやってる」訳ではない。監督の要求とも擦り合わせ「それでも自分のやり方のほうが失点を防げる」という確信の下に、部分的に自己流の手法――中澤システムを使い周囲にも同調を求めている

歴代の監督にしてもエリクも、その有用性を認めればこそ、中澤はフル出場を続けるし、エリクは退任に際し手放しで最大級の賛辞と感謝の言葉を中澤に残した。堅守とは、中澤佑二である

なまじサッカーの戦術的な知識のある人ほど「中澤はビビってラインを上げない」「ゾーンの基本ができていない」などと腐すが、実際マリノスの失点はほぼ常にリーグ最小レベルだ。無論、そのために「捨てている」出来ていない部分はある。しかし監督が起用し続ける、その意味を今一度考えて欲しい

かつて中村俊輔マリノス在籍時「ボンバー1人でシーズン10失点くらい防いでいる」と中澤を評した。アレは誇張でもなんでもなく、中澤の凄みと「マリノスの堅守とは中澤佑二である」事を表現したものだ

堅守マリノスは「伝統ではない」「継承されない」に異論もあろう。しかし、マリノスの歴史を振り返れば

井原正巳
松田直樹
中澤佑二

この3人が「堅守」だった。25年の歴史で、たった3人。この3人の規格外の人外が、堅守マリノスの伝統――という幻想を作り出した

井原正巳松田直樹中澤佑二。それぞれ少しずつピッチに立つ時間を共有しているが「継承」があったと私は思わない。むしろ「新たな堅守」が「旧い堅守」を蹴落とし、自分を中心とした守備組織を構築してきた。周囲を従える「堅守」は基本、並び立たない

――マリノス晩年の井原には、僅かながら「3バックセンターに陣取る松田直樹に使われる」時期があったように思う。それが出来たのも、彼の懐の深さであったようにも

松田直樹井原正巳から、中澤佑二松田直樹から。「コイツからレギュラ奪えば俺は代表CBのレギュラだ」と考えて、マリノスに加入している

ある時期――松田がDFラインで起用されなくなり久しい頃だったと思うが「もう松田とは組みたくない」と中澤が言った――伝聞の伝聞なので、真偽も真意も不明だが、DFリーダの座を奪い、自らのシステムを構築し始めていた中澤の心中は推し量れないものではない

なんとすれば松田直樹は、歴代3人の中で、最も「独特の直感と感性に従いセオリー無視で守り、周囲にも自分に合わせる事を強く要求する」人外であり、良くも悪くも最も天才的だった

堅守とは中澤佑二であり、堅守マリノスの “伝統” とは井原正巳松田直樹中澤佑二であり、彼らを中心としたシステムだ

小村徳男は井原と松田の、勇蔵は中澤にとって「最高のパートナ」であったが、堅守そのものではない

では中澤佑二が、3代目の「堅守」が今季限りでの引退を表明している今、それは誰が継いでいくのか――

「もしかしたらマリノスにある堅守のイメージが失われ、変革期に突入するかもしれない」

飯倉の言葉が解だ。堅守マリノスの伝統は「3人の人外と彼を中心としたシステム」で、継承されない

「クラブは今年創設25周年だが、これだけ長い年月積み重ねたスタイルだけに変わるとなれば痛みや苦しみを伴うと思う。それをクラブとしてどう考えていくか。これからの10年、20年は凄く大事になる。僕自身、楽しみであり不安でもある」飯倉大樹

――飯倉は「堅守マリノスの伝統継承」についても、こんな回答をしている

「日本のサッカースタイルは育成レベルから年々変わってきている。最近のCBにはポゼッションへの貢献要求も高まる一方で、マリノス伝統のゴールを守る強さ、1対1や空中戦の強さとは少し方向性が異なる。だからマリノスの伝統を継承していく事が正解なのか、少し難しい部分もある」飯倉大樹

マリノスの伝統というより、中澤佑二のDNA。同じ手法、スタイルを次の世代の選手に求めるのが正解か――? たぶん飯倉は分かっている。継ぐ事を目指すべきでないし、そもそも継承など不可能だ、と。だからマリノスが大きく変わるのは間違いない。楽しみであり、不安でもあると。

全く同感です

この妄想、思い込み連投で何が言いたいかといえば「個か組織かの二元論」など陳腐である、という事だ。そういった狭い問答を遥かに超えたところに――

中澤佑二という鬼は 立っている

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あれ?「エリク横浜3シーズンの総括」関係なくね? 中澤さんの話しかしてなくね?

…まあでもね、中澤さんはそんだけ特別なんスよ。部分的には、中澤在りきの中澤システムで、プレイ原則の落とし込みできてないとこもある訳で

過渡期、変革期ってヤツですか

だから2018年、2019年は激動のシーズン間違いなし。今年も来年もマリノスから一瞬も目が離せませんね!